●オープニング本文

　九州某所。乙女隊駐屯基地。
　ブリーフィングルームに乙女隊のメンバー全員が集まっていた――。
「α−０１部隊の諸君、先の関東での任務ご苦労だった」
「はっ！　ありがとうございます！」
　直属の上司である高ノ宮・茜中佐の労いの言葉にビシッと敬礼する少女。
　α−０１部隊‥‥通称乙女中隊の隊長、早乙女・美咲少尉。
　中隊の他のメンバーもそれに倣い、敬礼。
「‥‥それから、α−０２部隊の諸君も九州バグア軍残党の掃討任務、ご苦労」
「はっ！」
　もう１人の少女もビシッと敬礼。
　彼女はα−０２部隊‥‥通称乙女小隊の隊長、横山・利瀬軍曹。
　小隊の他のメンバーも続いて敬礼。
「それで、だ。諸君らが気になっているであろう‥‥もう１つのご褒美の件だが‥‥その内容は‥‥」
　言葉を溜める高ノ中佐。その補佐、片瀬・歩美少佐が隣でにこにこと微笑んでいる。
　ごくりと唾を飲み込む乙女達。
「‥‥‥‥南国のリゾートでバカンスだ」
　高ノ宮中佐は言い放つ。
「！！？」
　場がざわつく。
「まあ、落ち着け。場所はモルディブだ」
「す、すごく綺麗なところなんですよね？！　ど、どうしよう‥‥あたし、水着とかは‥‥」
　乙女小隊の隊員、岩崎・智里軍曹は少々パニクった様子。
「うむ。このような場所だ」
　スクリーンに画像が映し出される。‥‥青い空。白い雲。透き通った海。
　まさに絵に描いたような南国の海。これには乙女達から「おおぉ〜！！」と歓声が上がった。
「ふふふ。そこまで喜ばれると依頼を持ってきた甲斐があるな」
「依頼‥‥ですか‥‥？」
　乙女中隊の舞浜・ちずる軍曹が首をかしげた。
「ああ、そうだ。流石に遊びだけというわけにはいかぬからな。これは、とある調査チームの護衛も兼ねている」
　高ノ宮中佐は乙女達のために、やや強引にこの依頼を引っ張ってきたのだった。
　詳しいことは後で説明する、と中佐は言う。
「無論、傭兵も一緒だ。それでは準備にかかれ。数日中に出発となる」
「了解しました！！」
　最初よりも力強く、元気いっぱいに敬礼する乙女達であった。

●参加者一覧

●リプレイ本文

●島々の花輪へ
　目的地のモルディブへ向かう前に一度乙女隊の駐屯基地へ集合し、乙女隊と合流した傭兵達――。
　現在は全員が基地の食堂へ移動し、各々でくつろいでいる。出発時刻までの暇潰しなのだが。

「先日の傷も出発前に癒えたし、今度も頑張らないと。ティリアさんも無理しないでくださいね？」
「ええ、ボクももう大丈夫です。ノエルさんこそ、無理はしないでくださいね。うふふ」
　ノエル・アレノア（ga0237）の言葉に微笑むティリア＝シルフィード（gb4903）。
　２人は恋人同士。実に仲睦まじい‥‥。
　
　ティリアはふむりとあごに手を当てる。
（そういえば２年くらい前にも似たようなことがありました。
　あの時は東南アジアの無人島、今回はモルディブ‥‥高ノ宮中佐の配慮かな）
　楽しかった思い出が頭に浮かぶ。思わず顔がにやけてしまう。
「‥‥っとと。バカンスと言っても、調査チームの護衛が最優先。あまり気を抜きすぎないように、ですね」
「つい浮かれちゃいますよね。僕も気を引き締めないと」
　ノエルとティリアはまた笑い合った。

（いかん、乙女隊については何も知らん‥‥）
　頬から汗を垂らす須佐　武流（ga1461）。
（というか‥‥同じ班の森ノ宮４姉妹‥‥全員同じクラスだし‥‥）
　まったく面識がない多数の乙女達を前に、困惑した様子の武流。
　‥‥本来ならば過去の報告書に目を通すなどすれば、
　彼女達の性格やら特徴やらが解るはずだが、今回彼は負傷を押しての参加であり‥‥
　まあ、そのような余裕がなくとも致し方無いだろう。
「え〜と、お前が‥‥あれ、間違えたか？」
（あぁ、区別が付かない！　わかりやすくするための何かを教えてくれ！）
　武流は頭を抱える。‥‥乙女たちは不思議そうに、頭の上にはてなマークを浮かべた。

（モルディブに調査ねぇ、何をするんだか）
　優美な雰囲気の美人、百瀬　香澄（ga4089）は想い人の九条・冴と肩を合わせ、ソファーに座っていた。
「それにしても青い海に白い砂浜、楽しみだねー」
「ええ、すごく楽しみです」
　冴はうふふと笑い、頭を香澄の肩に預けた。

　黒のレザーを身に纏ったワイルドな雰囲気の美人、風間・夕姫（ga8525）。
「乙女隊と会うのも久しぶりだな‥‥っと、ここは禁煙か」
　煙草を取り出そうとして、途中で止める。

　スーツを着た恰幅の良い体型の米本　剛（gb0843）は、今回は色々と目標を持っていた。
（まずは護衛任務が重要、まずはきっちり仕事をこなさなければなりませんな）
　仕事はもちろんだが――その後のバカンスは――
　前回の温泉旅行では緊張のし過ぎでどうにも言動や行動がぎこちなかった。
　‥‥ものすごく反省。
　今回は肩の力を抜いて正式なお付き合いをしている片瀬・歩美少佐との時間を過ごしたいと思う。
　恐らく拝めるであろう水着姿などもおろおろせず、しかと見て感想を言いたいところである。

「バグア星人の魔の手から調査チームと船を護り切り、美咲と一緒にモルディブでバカンスを楽しむぜ！」
　長い赤髪を後ろで結わえた少年、夏目　リョウ（gb2267）はいつもの調子。
　その様子に恋人の早乙女・美咲少尉は「あはは‥‥」と、少し苦笑。
（もう水着は見納めかと思っていたが、うれ‥‥いや、モルディブタワー計画の為にも、
　しっかりと調査チームを守らなくちゃいけないからな。勿論、美咲と一緒のバカンスは、何よりの楽しみだ）
　リョウは水着やバーベキュー用品、花火をしっかりと用意して、美咲達の元へやって来ていた。
「嬉しい依頼もあるものだな。今回もよろしく頼むぜ。‥‥仕事の後は、思いっきり楽しもう」
「そうだね。せっかく高ノ宮中佐が用意してくれたご褒美だもん」
　美咲はにっこりと笑う。

　妙齢の美人、樹・籐子（gc0214）は――
「さあさあ、南の海でバカンスー」
（可愛い女の子一杯なので、色々交流を図って楽しみたいところなのだけれどー‥‥。
　一応名目上は調査護衛ということで。
　ただ、内容が『モルディブタワー計画』という名称以外は不明確なのよねー‥‥）
　おちゃらけた外面とは裏腹に、何やら色々と企てている様子。
（この件に関してもちょっと興味が有ることだし、顔を突っ込んでも良いかなとー。
　そうなると先々考えて乙女隊の皆と仲良くするのも手よねー）

（ん‥‥無事に調査をしてもらえるように頑張る‥‥。
　隊のみんなと‥‥仲良くなれれば‥‥いいな‥‥）
　スーパーバストの持ち主、エレシア・ハートネス（gc3040）は‥‥
　乙女隊の人達とは初めて会うので軽く自己紹介。
「ん‥‥初めまして‥‥。私はエレシア‥‥よろしくね‥‥」
　乙女隊の面々から「よろしくー」との返答。皆フレンドリーに接してくれた。

　紫がかった銀髪の少女、秋姫・フローズン（gc5849）。
「今回は調査チームの護衛が任務‥‥ですね‥‥」
（でも‥‥バカンスも‥‥少し楽しみ‥‥です）
　両手を合わせ、微かに笑みを浮かべる。

　そんなことをしていると、出発時刻となった。一同は輸送機へと移動する。

●調査チーム護衛
　基地を出発して約１日後――
　傭兵達と乙女隊（＋片瀬少佐）はモルディブ沖の海上に居た。
　現在は調査船の前後の甲板で警戒中。
　班分けは以下の通り。

　壱班（前部甲板担当）：
　ノエル
　香澄
　リョウ
　エレシア
　秋姫

　早乙女・美咲
　九条・冴
　神楽坂・有栖
　犬飼・歴
　舞浜・ちずる
　坂城・慧子
　三門・香苗
　三門・早苗

　弐班（後部甲板担当）：
　猛流
　夕姫
　米本
　ティリア
　籐子

　森ノ宮・柚葉
　森ノ宮・瑞葉
　森ノ宮・紅葉
　森ノ宮・双葉
　横山・利瀬
　岩崎・智里
　工藤・麗美
　山口・麻奈
　片瀬・歩美

　前部甲板――。
「傭兵だけでなく乙女隊の方々とも声を出して連携すれば、難なく乗り越えて行けるような‥‥気がします。
　これだけの護衛人数だと僕自身も心強いですよ」
　仲間を見回し、ノエルが言った。確かにこれだけの人数が居れば心強いが‥‥油断は禁物である。

　香澄と冴は澄んだ海を眺めている‥‥。
「綺麗な海‥‥こんなところにもバグアはいるのかねぇ。厄介なこった」
「仕方ありません。徐々に占領地域を解放しているとは言え、地上はまだまだバグアで溢れていますから」
　近頃は宇宙も見えてきたが――まだまだ地上も気が抜けない。

　リョウは美咲と一緒に調査チームの護衛に付いている。
「‥‥」
　船上から海を眺める美咲‥‥彼女の美しい青色の髪が風になびく。
　リョウは思わず見惚れた。

　エレシアは常に調査チームの護衛を意識して行動。
「海風が心地良い‥‥。でも‥‥いつ敵が来るか分からない‥‥注意しないと‥‥」
「そうですね‥‥任務を‥‥忘れないようにしないと‥‥いけません」
　秋姫がこくりと頷く。

　今日の波は、穏やかだった‥‥。

　＊＊＊

　後部甲板――。
「澄んだ海に青い空、白い雲‥‥こうも綺麗だと気分がいいな」
　夕姫は乙女隊のメンバーと話をしたり、後部甲板で煙草吸ったりして時間を潰す。

　米本は‥‥
　生身戦はＫＶ戦より自信はあるが驕らず堅実に任務に就いていた。
　どの位置から襲撃されても対処出来るよう警戒、いざとなったら自身を盾にしてでも調査隊を護る構え。
（任務は確実に遂行せねば‥‥調査チームの皆さんは必ず守り通す。ガーディアンの名に懸けて）

　ティリアは片瀬少佐、森ノ宮姉妹、α−０２部隊と後部甲板の防衛を担う。
（ＫＶ戦では何度も連携したことのある乙女隊の後部甲板組の面々だけど‥‥生身での共闘はこれが初めてですね‥‥）
「折角の機会ですし、即席ですが‥‥連携を組んでみませんか？」
　乙女隊（と上官）の９名に対して提案。１０名は今の内に連携について軽く打ち合わせを行った。

　籐子は主に後衛からの援護、並びに回復役を担う。
「インド洋沖のタワーって、まさか軌道エレベーター？
　そこまでの技術力は無いはずだし、電波状態の調査も何の意味かしらねー」
（とりあえず不審がられない程度に見聞きして、概要を明らかにしてみせるわよー）
　平穏時の今は甲板で適当に歩哨を務めつつ、調査様相を見聞。
　機械操作や人員内容などでそれとなく内容を想定してみる‥‥
　が、何が目的なのはよく分からなかった。
「まあ、調査が上手くいけば良いだけとねー」

　猛流はまず、高いところに場所取り。
　海と後部甲板が一通り見渡せるところへ陣取る。
　そして‥‥敵が見えるまでは、景色の良いところでのんびりと昼寝に興じる。
（この身体でしゃしゃり出たら足手まといにになっちまうからな‥‥）
　負傷中の身‥‥休めるときに休んでおくのは悪いことではあるまい。

　＊＊＊

　前部甲板――。
　数時間ほど調査が続いていた‥‥すると。女性研究員から悲鳴が上がる。
　‥‥半漁人キメラ（ギルマン）の群れが出現。
　どうやら船体をよじ登って来たらしい。

　まずエレシアが動いた。調査チームの人を船の中に退避させる。
「ん‥‥敵が来た‥‥調査の人たちは退避して‥‥」
　そののち、船内へ続く入口に陣取り、防衛行動。キメラを船内に入らさせないように務める。
　群がるギルマンを１体１体、雷槍『ターミガン』で貫く。
　【シールドスラム】を併用。相手に隙を作りつつ攻撃。
「数が‥‥多い‥‥！」
　中に入ろうとするギルマンは【仁王咆哮】でこちらに注意を向かせて足止め。
「援護‥‥お願い‥‥！」

「了解っと」
「わかりました」
　エレシアの要請により、香澄は冴と組んで前衛を張る。
　香澄の武器は星槍『スコーピオ』と脚甲『インカローズ』。
　冴の武器はコンバットナイフとＳＭＧ。‥‥どちらも前衛向きの装備。
「生身で組むのは久しぶりだけど‥‥問題ない、だろ？」
「はい、香澄さんの癖はわかっていますから」
　前に出る２人。船に上ってくるギルマンを優先して撃破。、
　香澄は要所でスキル３種【瞬天速】【急所突き】【先手必勝】を使用し、確実に仕留めて行く。

　ノエルは前衛として近接格闘主体で戦闘を行う。
（‥‥僕も、負けていられないっ）
　得物は『尊い思い出』の花言葉を持つ『エーデルワイス』の名を冠する美しい純白の爪。
　連続で爪を振るい、斬撃。ギルマン数体がばたりと倒れた。

　リョウは敵の出現と同時にＡＵ−ＫＶ『ＬＬ−０１１「アスタロト」』を装着。
「調査妨害は校則違反だ。この美しき海と空のためにも、俺達の邪魔はさせない！」
　バサァ！　とマントをなびかせる。
　リーダー格と思われる大柄のギルマンを機械剣αによる【竜の咆哮】で船上より弾き飛ばし、
　【猛火の赤龍】を発動したエネルギーガンを連射。
「スーパーカンパリオン！　ファイナルクラッシュ！」
　‥‥光線がギルマンリーダーを貫く。それは断末魔を上げながら海へ落ちて行った。
「すごいね、リョウくん！」
　雑魚ギルマンを１体ずつ知覚銃で仕留めている美咲。
「まあ、こんなもんさ。でも敵はまだまだ居る！　美咲、行けるな？」
「了解！」
　２人は連携して防衛行動に当たる。

　秋姫は敵襲を知ると、覚醒。
　まずは遠方の敵に対して【急所突き】を使用した知覚弓・雷上動を射る。
　‥‥知覚の矢に貫かれたギルマンは絶命。
　だがギルマンは数が多い。接近を許してしまう。
　魔刀『鵺』を２本、両手に装備し、二刀流の構えを取る秋姫。
　【迅雷】を使用し相手の死角から肉薄。
「やあああっ！」　
　【急所突き】を使用して連続の斬撃。滅多切りにされたギルマンは倒れ伏す。

　＊＊＊

　後部甲板――。
　こちらも前部甲板と同様にギルマンの群れが出現していた。

　夕姫は付近の船員に中へ避難するように指示、それと同時にブリッジへ連絡を入れてもらう。
　そののちに前衛となって敵を迎撃。
　真デヴァステイターで射撃し、牽制しつつ接近。
　ツインブレイドで斬り付け、次々とギルマンを撃破。
「魚は魚でも‥‥あの魚は煮ても焼いても食えなさそうだな。
　食ったら確実に腹を壊しそうだ」

　米本は【仁王咆哮】で敵を可能な限り引き付け、退避する調査チームを守る。
　そして――【四肢挫き】を使用。敵の動きを封じる。
「やらせませんよ。調査チームの皆さんには指一本触れさせません」
　だがやはりギルマンは数が多い。
　尚も調査チームを追うギルマンに対し、試作銃『グロリア改』で牽制射撃。注意をこちらに向ける。
「やらせないと言った！」

　ティリアは打ち合わせ通り森ノ宮姉妹と共に、機動力を生かして切り込み役となっていた。
「やあああっ！　そっちには行かせない！」
　ティリアの声と共に、二刀小太刀『永劫回帰』による斬撃音。
　船内にキメラを侵入しようとする敵を優先して撃破。

　籐子はＳＭＧ『ターミネーター』の弾幕を展開し、前衛への圧力を軽減。
　また、注意をこちらに引いて、隙を生じさせる。
　合間に各員の消耗度を把握。
　‥‥α−０２部隊の岩崎・智里がギルマンの槍を受けて少し傷を負った模様。
　抱きつい乙女の柔肌の感触を味わいつつ【蘇生術】を使用し回復させる。
「んー、セクハラぽくてごめんねー」
「ふわあああ〜！？」

　猛流は洋弓『レルネ』で攻撃を行う。しかし‥‥負傷しているため、手数がどうしても少ない。
「くっ‥‥」
　敵への直接攻撃ではなく、前衛の援護に切り替え。
（高みの見物‥‥だけしてればいいという状況でもなさそうだな）
　敵がこちらにも迫って来ていた。瞬天速で移動し、距離を取る。
「手負いの身体じゃ接近戦は挑みたくないんでね。さっさと逃げさせてもらう」

　＊＊＊

　‥‥ギルマンは、数は多かったが個々の戦闘能力は大したことはなかった。
　傭兵達と乙女隊の奮戦により、無事殲滅を完了。
　死骸を片付けたのち、調査チームは調査を再開した。

●バカンス・昼
　無事調査の護衛を終え、一夜明けた次の日の昼間――。

　武流は１人、ヤシの木の林の中で弓の訓練を行っていた。
（バカンスか‥‥ま、この体じゃ何もできないからな。
　折角弓を持ってきているわけだし‥‥弓でも射って集中力の訓練でも）
　ヤシの木に的を取り付けて弓を射る。
　‥‥やはり負傷中の身ゆえ、成果は芳しくない。

　その後は新技の特訓。
　内容はジャンプして空中で反転し、そのまま空中で地上の標的、空中の動く標的目掛けて弓を撃つ。
　というもの。しかし‥‥傷ついた身体でそのようなアクロバティックな技は無理だった‥‥。
（くそ、やはりこの状態では上手く行かないか‥‥だが、そうも言ってられん。
　このくらいは出来るようにならなけりゃ‥‥）
　身体は汗だく。武流は傍に置いてあったミネラルウォーターを一気飲みした。

　＊＊＊

　他のメンバーは全員、海へ繰り出していた。
　せっかくの海。綺麗な砂浜と海。絵に描いたような南の島。
　楽しまなければ損である。

　夕姫は宿泊施設に荷物を置き、水着（ビキニ）に着替えてビーチへ。
　彼女の豊満なバスト、見事なボディラインは‥‥実に素晴らしい。
「この辺はまだバグアの被害を受けてないのか」
　などと言いながら海へ入っていく。
「流石はモルディブ、この透明度は凄いな‥‥時間が有ればダイビングもやっておきたいところだ」
「‥‥そうだね。泳ぎだけじゃ‥‥勿体ない」
　α−０１部隊（乙女中隊）の坂城・慧子が答える。
　彼女は長身、そして趣味は水泳。ゆえにスタイルの良い、引き締まった肉体をしている。
　ちなみに水着はハイレグの競泳水着。
「本当なら彼氏も連れて来たかったんだが、仕事とカチあってしまってな‥‥」
　海水に浮かびながら、夕姫は少し寂しそうな表情を浮かべる。
「ふーん‥‥残念だったね‥‥」
「本当にすまないって何度も謝られてしまったよ」
　苦笑する夕姫。
「今度は‥‥一緒に来られるといいね」
「ああ‥‥」
　その後、２人は必要な道具を借りて、ダイビングスポットへと移動した。

　＊＊＊

（何だか、僕まで良いのかな‥‥）
　などと思いつつ、ノエルは恋人のティリアとの約束通り、遠泳をしていた。
　２人だけで久しぶりの海水浴を満喫する‥‥。
　‥‥大分沖まで泳いできた。少し、疲れた。
「ノエルさん」
「うん」
　伸ばされたティリアの手をぎゅっと握る。
　２人は手を繋ぎながら海水に身体をぷかぷかと浮かべて、
　ゆったりと青空を眺めたり、波の感触で海を感じたり。
　のんびりとした心が癒されるような時間が流れる‥‥。
（‥‥ティリアさんと恋人同士になってから１年。僕も、少しは恋人らしくなれたかな‥‥？）
（ノエルさんと、こうやって泳ぐのは１年ぶり‥‥。
　あの時は、自分の気持ちを言おうか言うまいかずっと迷ってた時だったっけ‥‥）
　海に浮かびながら、そんな風に２人は考える。思考が似ているらしい。

　＊＊＊

「海が綺麗なところだし、ここはやっぱり泳いで潜るか」
「そうですね。早く行きましょう」
　香澄は冴と一緒に、手を繋いで海へ走る。
　海へ到着――
「こりゃすごいな‥‥『楽園』なんて呼ばれるわけだよ」
「ええ‥‥本当に‥‥」
　思わず息を飲む香澄と冴。そこはまさに『楽園』と呼ぶに相応しい美しさだった‥‥。
「せ、せっかくだから写真を撮りましょう！　写真！」
　あまりの絶景にちょっとパニクった様子の冴。防水仕様のデジカメを取り出す。
「あはは、焦らなくても良いさ。ゆっくり楽しもう。どれ‥‥とりあえず一枚」
　香澄は冴に身体を密着させて腰に手を回し、カメラを借りてセルフで海をバックにパシャリ。

　＊＊＊

　米本は‥‥泳ぐのは嫌いではないが、ゆったり過ごしたいので
　パラソルを差してビーチチェアに横になり、読書と昼寝。
　時々皆が楽しんでいる姿を観賞して、表情を緩ませる。
（ふう‥‥実に有意義な時間ですな‥‥）
　そこへ――
「おや、歩美さん？」
　白いワンピース水着姿（露出多め）の歩美が現れた。身体は水に濡れていて、髪もしっとりとしている。
　これまで乙女隊の年少組と海で遊んでいたのだ。
　歩美の水着姿は‥‥楽しみであると同時に何か気の利いた事でも言えれば幸い。と、思っていた米本。
「うん、似合っていると言いますか‥‥とても素敵です」
「そう？　ありがとう」
　にこりと笑う歩美。その姿も相まって‥‥すごく綺麗だ。米本はそう思った。
「剛さんもごろごろばかりしていないで、一緒に遊びましょ？」
「ご、ごろごろとは‥‥自分はただまったりと‥‥」
「い・い・から！」
　強引に歩美に手を引かれて、米本も海へ。

　＊＊＊

　リョウは美咲と一緒に思いっきりバカンスを楽しむ。
　今は海に入って水のかけっこ。
「そぉれ！」
「きゃ！　お返しー！」
　などと、恋人同士のスーパーキャッキャウフフタイム。
　しばらくそうしていると‥‥さすがに疲れて一旦休憩。
　２人で並んで浜辺に座る。
「美咲、その水着よく似合ってる」
「ほんと？　良かった。リョウくんに喜んでもらえるように、選んだんだ。えへへ」
　ころころと笑う彼女を見て、「可愛いなあ」と思うリョウ。
　美咲の水着は髪と同じ色のビキニ。胸は‥‥前に見たときよりもまた成長しているように思える。
「‥‥」
　ごくりと生唾を飲み込むリョウ。
「ちょっと？　どこ見てるの、リョウくん？」
「‥‥あ、え？　ご、ごめん！」
　無意識のうちに美咲の胸の谷間をガン見していたようだ。これはいけない。
「あはは。やっぱり男の子だねー」
　美咲はまたころころと笑った。

　＊＊＊

　籐子は、ドット柄のビキニ姿。
　小さな少女、α−０１部隊（乙女中隊）の舞浜・ちずるを捕まえて背中にオイルを塗り塗り。
「うふふー。ちずるちゃんっていうのねー。苗字は舞浜‥‥ビーチに相応しいわねー。
　さてー、お姉ちゃんがオイルを塗り塗りしてあげるからねー」
「ええと、じゃあ、お願いしますっ」
　濃紺のスク水姿のちずるはビーチマットの上にうつ伏せになる。
「‥‥じゅるり」
　スク水の、背中の空いた部分がまた‥‥。水着をずらして少し下す。
　おお、肩甲骨とかも‥‥素晴らしい。
　そして籐子はオイルでぬるぬるになった手をちずるの肌に這わせる。
「ひゃあ！？」
「どうしたのー？　冷たかったー？」
「い、いえっ、そうじゃなくて‥‥ひゃああっ！？」
　オイルを丹念にぴちぴちの肌へ塗り込む。
　そして、水着の中にも指を――
「ちょ、変なところに入ってるんですけど‥‥！　そこは塗らなくていいですっ！」
「え？　なにー？　聞こえないわねー」
「ひゃあああ！！」
　乙女の嬌声が響いた。

　＊＊＊

　エレシアは持参したマリンブルーのビキニに着替えて、浜辺へやって来た。
「ん‥‥一緒にビーチバレーやらない‥‥？」
　乙女隊で年齢が近い人と仲良くなりたいと思っていたエレシアは一緒にビーチバレーをしないかと誘って回る。
　‥‥エレシアと年齢が近い、α−０１部隊（乙女中隊）の三門・香苗と三門・早苗の双子の姉妹と、
　α−０２部隊（乙女小隊）の４名、横山・利瀬、岩崎・智里、工藤・麗美、山口・麻奈が参加。
「ん‥‥負けないよ‥‥」
　爆乳と双子（エレシア・香苗・早苗）チームＶＳα−０２（利瀬・智里・麗美・麻奈）チーム！
　試合開始！　スパイクやブロックをするたびにエレシアの胸がすごいことになる！！
　‥‥勝利したのは数の不利を覆した『爆乳と双子チーム』だった。

　ビーチバレーが終わると、エレシアは次にビーチフラッグを提案。
　‥‥カップル以外、ほとんどが参加。トーナメント戦を行うこととなった。
　激戦の末‥‥優勝したのは夕姫。エレシアから『【雅】浴衣「鯉」』が進呈される。
「ん‥‥おめでとう‥‥」
「ありがとう。今度、着てみるかね」
　喜ぶかな？　と、彼氏の顔を思い浮かべる夕姫。

　遊びが終わったら、エレシアは女性陣と一緒にシャワーを浴びて親交を深めた。
　水着の束縛から解放された、真のスーパーバストに皆が驚愕したのは言うまでもない。

　秋姫は他の傭兵達や乙女隊の面々の身の回りのお世話。
　海で遊ぶ皆の荷物の番などを行っていた。
「お飲み物を‥‥どうぞ‥‥」
　シャワー上がりの皆に冷えたスポーツドリンクを渡す。
　皆は「ありがとー」と礼を言った。

　その後は、リョウや美咲と一緒にバーベキューの準備。
「皆様‥‥お食事の準備が‥‥整いました‥‥」
　夕陽を眺めながら、わいわいと皆で食事。

　食事を終えたのち、リョウと美咲は花火をして遊ぶ。
　後始末はきちんと。

●バカンス・夜
　夕食を済ませた一同は解散し、各自の宿泊所であるコテージへ移動。
　辺りはすっかり暗くなっていた。

　香澄は冴と同じ部屋で２人きり。
「ふああ〜今日はたくさん遊んだなー。寝る前に、星と月を見にちょっと出かけないか？」
「良いですね。行きましょう」
　というわけでコテージを後にして、砂浜を散歩する香澄と冴。
　ぴったりとくっ付いて、並んで歩く。
「噂には聞いてたけど、何もかも綺麗なところだな」
「こんな場所があるなんて‥‥知りませんでした‥‥」
　今までは戦いに明け暮れる毎日で‥‥。高ノ宮中佐には心から感謝せねば。
　うっとりと夜空を見つめる冴。香澄はその肩に手を回している。
「一番綺麗なのは隣にいるけど‥‥なんてね」
「‥‥香澄さんったら。でも嬉しいです」
　２人は立ち止まり、見つめ合う。
「冴‥‥」
「香澄さん‥‥」
　夜の浜辺で２人は、抱き締め合い、濃厚なキスを交わした――。

　＊＊＊

　米本は歩美と同室。
　ベランダの椅子に腰掛け、杯を交わしながら、
　夜空を眺めつつ今日あったことなどを楽しく話す。
「乙女隊の皆さん、楽しそうでしたな」
「ええ、連れてきた甲斐があったわ」
「歩美さんも、かなり楽しまれていましたな？」
「もちろん。こんな綺麗なところへ来たんですもの。楽しまなきゃね」
「ははは、そうですな」
「剛さんも若いんだから、もっとアグレッシヴに、ね？」
「それは‥‥耳が痛いですね‥‥」
　米本は苦笑する。
「今夜は２人きりよ‥‥？　さて、健康的な男性ならどうするでしょうか‥‥？」
　妖艶な笑みを浮かべる歩美。米本の目をじっと見つめてくる。
「そ、それは‥‥」
（積極的に！　積極的に！）
　などと心の中で叫ぶ米本であったが、身体が硬直してしまっている。
「‥‥ふ、うふふ。まあ、そんな剛さんが好きよ」
　歩美はにこりと笑って、米本の頬に口づけをした。

　＊＊＊

　リョウと美咲はベランダから星空を眺めながら、南国の熱い夜を過ごしていた。
「あの星にやっと手が届き始めたんだよな‥‥あっ、流れ星‥‥」
　祈った後に、リョウは美咲の顔をじっと見つめる。
「出会った頃と比べて、髪も随分伸びたよな‥‥凄く綺麗になったと思うよ」
　美咲を優しく抱き寄せる。そして美咲のあごに親指と人差し指を置き、引き寄せ、口づけを――
「ふぎゅっ」
　――しようとして美咲に止められた。目を開けたら、指で鼻を押されていた。
「まったく、リョウくんは‥‥。髪は伸びたんじゃなくて伸ばしたの！
　髪型を変えたの！　ほら、見て！　癖毛じゃなくなってるでしょ？」
　確かに‥‥。美咲の言葉にリョウはこくこくと首肯する。
　聞けばストレートパーマをかけたのだそうな。
「士官になったからちゃんとしなきゃ、ってのもあるけど。
　リョウくんに喜んで欲しくてイメチェンしたのに‥‥。
　まったく、本当にまったくリョウくんは！」
　ぷんすか怒る美咲。ひたすらぺこぺこ謝るリョウ。
「‥‥‥‥まあ、綺麗って言ってくれたから許すっ」
　不機嫌な表情から一転、美咲は悪戯っぽい笑みを浮かべた。

　＊＊＊

　夕姫は秋姫と相部屋。微かな絹擦れの音に、微睡みの中に居た夕姫の意識が覚醒。
「‥‥？」
　隣で秋姫が水着に着替えていた。
「‥‥」
　夕姫は寝たふりをして、秋姫が出ていくのを見送る。

　＊＊＊

　紫のワンピースタイプ水着を着た秋姫は『こっそり』部屋を抜け出して砂浜を散歩する。
「綺麗な‥‥月‥‥ですね‥‥」
　ぽつりと、呟く。
　水着を捲り、胸に貼り付けていた、『肌と同じ色のテープ』を剥がす。
「泳ぐ前に‥‥テープ‥‥張り替えないとですね」
　テープの下には『何かが突き刺さったような酷い傷跡』があった。
　そこへ――砂を踏みしめる音。
「‥‥！？」
　偶然、籐子が通りかかった。
　青白縦縞シャツにホットパンツ姿で砂浜を散歩中に、本当に偶然の遭遇。
　籐子は――秋姫の傷跡を見てしまう。
　秋姫は慌てて隠すが遅かった‥‥。
「その傷‥‥だから昼間は海に入らなかったのねー。‥‥一体どうしたの？
　言いたくないなら無理には聞かないけどー」
　傷の理由を聞かれた秋姫は、ぼそぼそと答える。
　‥‥両親と死別した際に付けられた傷跡‥‥。
「出来れば‥‥見られたく‥‥ありませんでした‥‥」
　事情を話し終えた秋姫はかすれた声で言う。
「‥‥」
　籐子は無言で秋姫に近づき、彼女の露わになった胸元‥‥傷跡に優しくキスをする。
「んっ‥‥あぁ‥‥」
　くすぐったそうに艶っぽい声を上げる秋姫。
　唇を離した籐子はにやりと笑みを浮かべ、
「やっぱり傷跡は敏感なのねー。
　‥‥見られたくないなら隠していて良いと思う。でもそれって過去に蓋をするってことよねー？
　お姉ちゃんは別に隠さなくて良いと思うなー。せっかくの海なんだし、遊ばなきゃ損よー」
　――しばしの沈黙。
「‥‥あ、ごめんねー。人の心にずかずかと踏み込むようなこと言っちゃってー。
　お姉ちゃんこういう能天気な性格だからー」
　ぺろりと舌を出す籐子。
「‥‥でもいつか、本当に過去を受け入れられるといいわね」
　一瞬だけ真剣な表情をする。
「‥‥ありがとう‥‥ございます‥‥」
　秋姫は少しだけ微笑んだ。その瞳には光るものが――。

「‥‥」
　その様子をヤシの木陰から見守っていた夕姫。口元に笑みを浮かべる。
　煙草に火をつけて咥え、夜空を見上げた‥‥。

　＊＊＊

　ノエルはティリアと一緒に２人部屋。
　夜遅く――２人は並んで浜辺を歩いていた。
　昼とはまた違った風景を楽しみつつ、満天の星空を眺めながらゆっくりと歩を進める。
（広大な星空も綺麗だし‥‥その光を吸って煌めく海もまた幻想的‥‥）
　しばらく歩いたのち。
「そろそろ、遅い時間ですね。ティリアさんも疲れたでしょうし‥‥僕が、連れて行ってあげますね」
　ノエルはティリアをお姫様抱っこする。急に抱き上げられたティリアはしどろもどろとなる。
「あの、そのっ、ボク、重いですよ‥‥っ？！」
　ノエルは「あはは‥‥そんなことないですよ」とティリアの耳元で囁く。
「それに、自分の足で歩けますし‥‥っ！？」
　少しばたばたと動いて抵抗するが、せっかくのノエルの心遣いに申し訳ないので、観念。
　仕方なく、されるがままとなる。
「‥‥」
　ティリアは恥ずかしすぎて赤面し、何も言えずにいた。
「大丈夫、きっと僕達２人だけ‥‥だから」
　ノエルも頬を染めつつも、くすっと笑って‥‥愛する恋人の額へキス。
「はうっ！？　‥‥意地悪」
　ぼぼぼっとティリアの顔が真っ赤になる。
　ノエルの顔も真っ赤。とても他人には見せられない。
「こ、今夜は寝かせませんからね！」
　上ずった声のノエル。
「の、望むところですっ！」
　同じくティリア。
　若いカップルの、熱い夜はまだまだ続く――。