●リプレイ本文
●突撃、隣のバグアさん
謎の突撃戦場レポーター‥‥辰巳 空(
ga4698)
「はい、皆さんこんにちは」
すっとんきょうに明るい声の黒髪の青年。
大人しくしていれば美形で通る顔立ち。
というか、明らかにキャラ作ってるだろう。逆の意味で。
「今日はですね、我々人類の迷惑な隣人‥‥バグアを良く知る為にも突撃取材を敢行します。
題して、
『突撃、隣のバグアさん』」
能天気なBGMがこだまする。
「‥‥これ、いいんでしょうか?」
ぶっ飛び過ぎるOPに顔をしかめる企画協力・天爪 竜斗(gz0059)。
「ヨーロッパでガシガシ戦争中のこの時勢に『バグアさん』て‥‥」
「改めましてこんにちは。謎の突撃戦場レポーターです」
風景のみのカメラ映像。
どうやら一人でカメラを回しているようだ。
恐るべし低予算。
「まずは‥‥バグアの拠点に突撃して日常を取材という事になります。
見えますでしょうか? K地区廃棄ビル。
あそこに我らが憎き仇敵、バグアの一群がたむろしているという情報です」
あまり憎そうには聞こえないが。
「では、私、ビルの様子を伺ってみたいと思います‥‥!」
●そういう問題じゃねえ
「こ、これはぁっ!!?」
カメラの覗く窓の向こうは――なんとシャワー室。
そこに、一人の美麗なバグア兵が、まさに、生まれたままの姿で――。
魅惑的な四肢を伝う暖かいものは、
まだ若い肌にはじかれるように表面を滑る。
足はカモシカのようにすらりと伸び、
腰は魅惑的な曲線を描き、
胸は豊満に富み、性を強調する。
はらりと落ちるその金の髪は一筋の光を挿すよう――。
「ぶぇっくしょい! あ゛ー、毛は剃るもんじゃねぇんだぜ」
冷えた身体を湯で温める馬ヅラ。
馬ヅラとは名の通り馬の顔である。
馬の頭と言ってもいいだろう。比喩ではない。
濡れた金の鬣が首筋を伝う。
ああ、一つだけ誤解を招く表現があった。
彼はバグアではなく馬型キメラだそうだ。
紛らわしくてゴメンね。
馬型キメラ‥‥雷(
ga7298)
●もっかいサービス
「――大変失礼を致しました」
沈痛な声音のレポーター。
なんかバグアの話をしてたときより声暗い。
「気を取り直してもう一つのシャワー室に――!
え? もう騙されない?
信じてくださいよ。ね? ね?」
必死に視聴者に訴えるレポーター。
バグアとキメラを間違えたのがそんなに不服だったのか‥‥やれやれ、わからないものだ。
カメラに映る全裸の金髪の女。
白磁のような肌を滴が撫でる。
華奢な腰と豊かな胸からは彼女が『戦うもの』であることは想像もつかない。
天使のような美女は、しかし悪魔のような笑みを貼り付けて――、
「もう少し‥‥もう少しでここら一帯の勢力図が逆転する‥‥くっくっく‥‥」
それは紛れもない『人類に敵対するモノ』の顔だった。
バグア幹部‥‥キョーコ・クルック(
ga4770)
●バグアの日常?
シャワーが済めば朝食の時間。
「続いて、バグアの食事風景です。
『突撃、隣のバングァ飯』」
く、苦しい‥‥。
※ここからはレポーターの視点から放映させていただきます。
サムライ・バグア‥‥雪ノ下正和(
ga0219)
「皆さんおはようございます、今日も地球侵略を頑張りましょう♪」
バグアというにはあまりに爽やかな笑顔で、サムライ少年、正和君が朝の食卓に着きます。
「メシだメシ。いやー最近人間食ってねえから腹減って仕方ねえな」
聞き捨てならぬ台詞と共に正和の向かいに座る馬キメラ。
‥‥嫌なものを思い出しました。
「アニキは? まだシャワーか」
アニキ? よく見れば鬣の色が違いますね。
馬型キメラ・弟‥‥リュウセイ(
ga8181)
「ふいー、さっぱりしたぜ。剃った毛が気持ち悪くてなー」
兄の雷もふんどし一丁での登場。こっちが気持ち悪いです‥‥。
「ルフトは?」
「――自分の部屋だ。メシはいらないってさ」
どうやらもう一人いるようです。
「慣れ合わねえってか。奴らしい」
くはっと豪快に笑う馬兄弟。
あー、なんか強敵フラグ立ってますね、ルフトさん。
食卓に最後に姿を見せたのは金髪の美女バグア、キョーコ。
「集まったな。
そのままでいい。食事をしながら聞いて貰おう」
クールな女幹部、貫録を見せながら会議を始める模様です。
「――以上だ。作戦の決行は近い。諸君らのいっそうの努力を期待する。
この頃うるさい蝿が飛び回っているようだ。諸君らに限って後れを取ることはないと思うが注意するように」
――その『うるさい蝿』がもう傍まで迫ってきている事を、
部下達も、
キョーコも、
そして――私も知る由はなく――。
●頭文字A
※一旦、カメラ替わります。
響くユーロビート。
峠を下るロードローラーには黒髪の美少女が。
真っ赤なオーラを身に纏い、画面にはタイトルが――、
『頭文字A』
僕らの頼れるヨウヘイダー・ウルトラスーパでんじゃらす大車輪山嵐能力者‥‥阿野次 のもじ(
ga5480)
いや‥‥ツッコミどころはキリないものの、一つだけ。
イニ○ャルDって確か名前じゃないと思うんだがA野次さん‥‥。
※カメラ再びレポーターに。
突然ですが緊急事態。
車両が迫ってきて、
あれは――!
「ロードローラーよッ!!」
こっちに来ます!
ブレーキ踏んでません!
よいこもわるいこも絶対に真似しないように!!
「右か左の道を選べといわれたら迷わず真ん中の壁をぶち抜いて気に入った第3の道を作る!
それが私の――ジャスティス!!」
ポーズ決めても駄目です! 私はバグアじゃありません!!
スピードを全く緩めずビルに直撃、コンクリートの壁が脆くも崩れ去ります。
壁の向こうにはバグア支部一階を守る馬兄弟。
「おぉぉ! キメラはロードローラーにゃまけねぇぜー!!」
兄・雷、大剣を手に吠えます。
そして轢かれます。ぷちっと。
「私の愛馬は、KYOUMOフリーダムよ☆」
壁にストライクしながらも広範囲攻撃はお手のもの。
弟・リュウセイの方は、
「‥‥な‥‥」
自らの血を手で拭い、
「なんじゃこりゃぁあああ!!!」
私? 紙一重で避けました。
9秒の時点で。
やれやれです。
※カメラ一時切り替え
「ここの所在が人間どもに知れただと!」
最上階にて気色ばむキョーコ。
だがすぐに落ち着きを取り戻す。
「‥‥まあいい飛んで火にいる何とやら。やつらを片付けたのち撤収するだけだ」
●この攻撃力はフィクションです
最高にハイって感じでヨウヘイダーは二階へ。
待ちうけていたのは身の丈2mを超す体躯。
人の頭蓋を器に酒を喰らう禍々しきバグア。
「我が名はルフト、偉大なるキョーコ様の忠実な僕にして、バグア1の槍の使い手!」
武人バグア‥‥ルフト・サンドマン(
ga7712)
頭蓋の中身を一気にあおると、かはぁと酒臭い息を吐き、
「こうしてわしの前に現れた以上、貴様らの死はもはや決まったも同然。
じゃが、わしは慈悲深い‥‥、
跪き許しを乞えば命だけは助けてやってもよい」
「――ゲロを吐くほど怖がる自分自身にゾッとするわ」
そう言って、一歩前へ。
もちろん一歩下がっている事もなければもっと恐ろしいものの片鱗を味わう筈もありません。
「ふん、わしの慈悲が理解できぬとはな‥‥。
ならば死あるのみ!」
頭蓋を投げつけ、槍を突くルフト。
雷光のような切っ先がのもじさんを貫きます。
――しかし、残像のみを残し、のもじさんは壁に飛び、
その両手には真紅の爪が。
「ルベウス二つで攻撃力104!」
壁を蹴り、
「三角飛びで跳躍力二倍の208!」
さらには身体を捻り、
「そしていつもの三倍の回転で攻撃力は624よ!!!」
そんな無茶な。
攻撃力はともかく、のもじさんは光の矢となってルフトの脳天を狙います。
翻るスカート。
「おおっ! ラッキー、パンチラゲット!」
一階から上がってくる血まみれの弟馬。
あんた生きてたんですか。
それはともかく、
のもじさんは致命的なミスを犯しました。
この戦法は負けフラグだという事です。
真紅の爪が脳天をかすめるも、致命傷には至らず、
「――褒めてやろう。
わしをここまで追い詰めたのは貴様が二人目よ」
返す槍が飛翔するのもじさんを撃ち落とします。
「きゃあっ!!」
ヨウヘイダー・のもじのピンチ!
とどめの切っ先が放たれます。
が、そこに――。
「ぐぁっ!!」
ルフトの槍持つ手に突き刺さる‥‥名刺。
皆が振り向くその先には――、
「バグアども やっつけちゃうぜ 俺ダンボー!」
●主役は遅れてやってくる
――古今東西、能力者は様々な者がいる。
性別は勿論、国種、そしてその生い立ちも様々‥‥。
そして、種々の理由からその姿を隠して活動せねばならない傭兵もいるのだ。
段ボール仮面も、その一人‥‥!
普段は企業戦士千影として禿げたオッチャン相手に頭を下げるも、
乙女のピンチあらば何処へでも駆けつける、謎めいたヒーローなのである。
スーツにネクタイ、黒のマントを華麗に翻し、乙女のピンチに駆けつける仮面紳士。
その素顔を覆うのはトレードマークの段ボール。
段ボール仮面‥‥蓮沼千影(
ga4090)
ちょ、ちか‥‥段ボール仮面さん! マイク返して下さいよ!
「キター、ダンボール仮面様☆」
うっとりとした声音でときめくのもじさん。
ちょっとヘンな感性してますね。
「のもこ‥‥」
誰!?
見つめ合う二人。
周囲にはいつの間にか花が。
「ダンボール仮面様‥‥私‥‥」
「のもこ‥‥今は敵を倒す事だけを‥‥私達の未来の為にも」
一人称まで変わって、段ボール仮面。ノリ良過ぎ。
「わしを倒すとな?」
突き刺さった『会社員・蓮沼千影』の名刺を破り捨て、ルフト。
「ここ散らばる骨は我らに逆らった愚か者の末路よ! 貴様らもその一部となるのだ!」
「のもこの仇 討たせて貰う 俺ダンボー」
死んでません。
「我が力から繰り出す神速の槍! 避けられるものか!」
「段ボールバリアー!!」
段ボールの障壁をかざす段ボール仮面。
「な! ダンボ‥‥!?」
さくっと。
槍は止まりません。0.1秒たりとも。
しかし、
「ぬ、消えた!?」
段ボールを目眩ましにルフトの背後に立つ段ボール仮面。
暗がりで見えないが、素顔を露わに双剣を抜き放つ。
「――紅蓮」
「しまっ――!」
「衝撃ッ!」
「ぐぎゃああぁぁぁ!!」
二刀同時の紫紅の斬撃が巨躯を斬り裂きます!
「ダンボール仮面様!」
「のもこ‥‥愛の勝利だ」
愛はあまり関係ないでしょう。
「クッ、クハハハハ!」
流れる血を拭いもせずに哂うルフト。
「わしを倒せてもこの程度の実力では、この上にいる者には勝てぬ!
一足先に地獄で待ってい‥‥る‥‥ぞ」
●馬・リベンジ
「待てい! そこのバカップル!」
兄馬も生きていたようです。‥‥しぶといですねえ。
「くっくっく、長い戦闘は嫌いでな、お互い一撃で決めようじゃないか」
主に文字数的に。
なんて空気の読めるキメラ。
「――下がっていろ のもこ 俺ダンボー」
新しい段ボールを被り直す段ボール仮面。
俺ダンボーいりません。
兄馬・雷は炎のようなオーラを迸らせ、
「喰らえ、乾坤一擲!
バグア流奥義、兜蟲割ぃぃ!!」
大剣と双剣が交差し、
そして、
「ぎゃあああ! キョーーコ様ぁぁぁぁ!! もうしわけございませんーーーー!」
なにしに出てきたあんた。
●正義の熱血バクア
三階、雪ノ下正和。
古流剣術を極め、心身共に清廉潔白な正統派バグア。
‥‥なんか私おかしなこといいました?
「よくも俺の仲間を、あいつらは良い奴だったっ!!」
ほらね、いいバグア。
「フ、
お前は今まで強化したアイテムの数を覚えているか?」
見下すようにヨウヘイダー。
‥‥あっれ〜〜?
「――たとえ、三対一でも負けはしない」
ちょっ、三対一って‥‥私もっ!?
「三対一だが手加減しない 俺ダンボー」
いや、ダンボーじゃなくって。
刀を左八相に構える正和。
まずいですって。洒落が通じる感じがしません。
「――はぁっ!!」
正和の刃が狙うのは――ヨウヘイダーのもじさん。
ああ、よかった。
とっさに防御の姿勢をとるのもじさんをすり抜け、正和は一瞬で背後に。
――秘剣、回り道――
「きゃああっ!!?」
のもじさんの無防備な背後を斬り裂く凶刃。
ええ!? ちょっと、普通に強いんですけどっ!?
「――のもこ、ここは俺達に任せ先に行け 俺ダンボー」
『達』って!?
●ラストダンスは鮮やかに?
――ふう、死ぬとこでした。
段ボール仮面に後を任せ、ヨウヘイダーの後を追います。
最上階にて玉座に座り、ヨウヘイダーを待ち構えていたバグア幹部キョーコ。
顔の右半分だけを覆う仮面が妖しさを増しています。段ボールとは違う。
「まさかここまで脆弱な人間風情の進入を許すとは‥‥。
しかしここがお前達の墓場となるのだ」
仮面の奥の瞳が赤く揺らめきます。
「はッ!!」
息をつかせぬナイフ投擲。
接近主体ののもじさんは近づくことすらままなりません。
一か八かで踏み込んでも、
「甘いッ!!」
仔猫の爪を寄せ付けない鞭の洗礼が。
私、間違った事言ってます?
「人間にしてはやるようだがまだまだ――」
「くっ‥‥、
この人を倒す為には、
こちらも必殺紅蓮衝音斬を使わざるをえない!」
なんですかその説明セリフ。
ヨウヘイダーの真っ赤なオーラが極大な波動となり、
「紅蓮衝音ざーん!!!」
「な――きゃああああっ!!!」
キョーコの鞭をも押し返して紅蓮の衝撃が戦いに終止符を。
●爆発オチ
「こっちも片付いたぜ 俺ダンボー」
「くっ‥‥強い‥‥」
段ボールに負けた事に納得いかなそうなバグア少年。そりゃそうでしょう。
そして追い詰められた女王様、いやキョーコ。
「この基地を落とさせるわけには‥‥!」
「キョーコ様っ!」
兄馬・雷。しぶとすぎ。
キョーコに手渡すものは――スイッチ。
「よもや人間相手にこうも後れを取るとは‥‥だが部下達の仇くらいは討たせてもらうぞ‥‥」
なんという死亡フラグ!
駄目ーーー!!
豪音のさなか、
異世界で獣人として遺跡を探索する夢をみました――。
●ウマウマ
崩れた廃ビル。
背を向け佇むヨウヘイダーはまるでボスキャラ。
「ちっきしょう! 完敗だぜ!
さあ、EDといこうぜブラザー!」
瓦礫から這い上がる弟馬・リュウセイ。
「おうよ、弟よ!」
本当にしぶといですね、こいつら。
馬兄弟、BGMの中、並んで腰振りダンス。
『みだらなニートがトレンド♪』
いや、そんな歌詞じゃないですから、多分。
でもおかげで大人の事情にはひっかからない狡猾な罠。
そこにヨウヘイダーや段ボール仮面、
いや、ルフトに正和、死んだ筈のキョーコまで立ち上がって――。
ああもう、
やってられないんだぜ!!