●リプレイ本文
●いざ、戦場へ
「審査員は男性4名に女性が3名。一般審査票あり。得点制の他に特別推薦枠が‥‥」
事前の下調べは欠かさない鯨井昼寝(
ga0488)。
「主催のハロルド中尉は噂通りの女好きだけど趣味はノーマル、
‥‥つまらない人ね、ロリコンとかツインテール萌えとかニーソフェチとかもっとわかりやすい趣向はないのかしら?」
えらい言われようだ。
まさかこんなお気楽イベントをガチでぶつかってくる輩がいようとはおじさんも夢にも思わなかったに違いない。
が、昼寝は本気だった。やるからには全力が彼女のポリシー。
「各自対策を練るのよ! 部門賞もあるらしいからね、狙いを絞るのも作戦よ。無駄弾は撃たず、的確に!」
「は、はい‥‥頑張ります! 部門賞なら私も狙えるかな‥‥」
小さくやる気を燃やしているのはリゼット・ランドルフ(
ga5171)。
『やるからには全力』は彼女のポリシーでもあったのだが――正直彼女には負ける。
「ふう、昼寝クンが女性で良かったよ。ボクの美しさが霞まずに済むからね」
薔薇を手入れする七瀬 帝(
ga0719)。
「なぜこんなことに‥‥」
うっかり参加登録して困惑の朧 幸乃(
ga3078)は帝の親友。
彼の応援でもしようと思ったのか。
「出てしまったものは仕方あるまい。
幸乃クン。精一杯応援させていただくよ」
薔薇を差し出す帝。
まさか彼女が男装系で彼を脅かす事になろうとは、この時は露ほども想像せず。
更にこちらにも手違いの参加者が。
「誰だよぉ‥‥」
美少年傭兵・金城 エンタ(
ga4154)。
過去、勘違いで女性兵士の服を支給された逸話があるとかないとか。それ程の美少年。
「金城クンは非常に可愛い男子だからね。
僕も負けてはいられない。
正統派美形男子として勝負させてもらうよ」
だが、彼は知らない。
別の意味で彼は帝の敵にはなり得なかったことを。
「準備は良い? 私達で全ての賞を総ナメにするわよ!」
昼寝が締めくくる。
団体戦ではないのだが‥‥
それを言うのは野暮というものだろう。
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「銀野すばるで〜っす。今日はよろしくお願いしま〜す!」
トップバッターは健康的な魅力の銀野 すばる(
ga0472)。
タンクトップ&短パン姿、ローラーシューズを装着しての登場だ。
本格的なエアートリックと人懐っこい美貌は正統派に観客と審査員の心を掴む。
そして決めには覚醒。
覚醒?
すばるの両手が銀の光に包まれた。
螺旋を描く光はまるで――、
「あたしのドリルで天を突けー!!」
ふつーにやればいいだろうに。
どうも彼女の気が済まないらしい。
「エッチなのはいけないと思いますっ!」
メイド服のコスプレで現れたのは篠崎 美影(
ga2512)。
スタートからメイドの決め台詞(?)での乱入だ。
いや、しかし、
『エッチなのはお前だろう』
このタイミングでそう突っ込まれると彼女の想像力を疑わざるを得ない。
「お替りは如何ですか? ご主人様♪」
当然メイドだから御奉仕する。審査員に。
実に合法的な媚び方。
なんという知略・奇策と昼寝あたりは舞台裏で感心しているかもしれない。
「家事は得意ですよ。料理の腕前は妹に負けますが、それ以外は互角以上と自負しています」
妹て。
美影に妹はいる。が、この格好で言われると違う妹を想像してしまう。金髪だったり。
「アニメや特撮では色んな武器やアイテムが出てきますよね。そんなモノを開発するのが私の目下の夢です」
ほら、アニメて言ってるし。
昼寝は得意の演舞を披露。
中国武術なのに振袖なのは時期故か。それともミスマッチの妙か。
華麗に舞う袖は達人にしか見せられない美しさを醸し出す。
演舞は相手がいる事で美しさは跳ね上がる。
昼寝の相手はラフなスタイルでアップテンポ系のダンスを踊る『少年』幸乃。
踊りながら『倒す』為ではない『魅せる』為の蹴りを突き出す。
舞の最中、昼寝はおもむろに振袖を脱ぎ捨てた。
その下からは真紅のチャイナドレス。
舞うような動作は跳ねるような動きへと変わっていき、
幸乃とのテンポが合ってきて、
昼寝がチャイナ服をも脱ぎ捨て、
紅の水着に包まれた肢体は大空を翔ける鳥を幻想させる。
それは地を駆ける獣と空を翔ける鳥の苛烈にして美しい舞だった。
続いてリゼット。
ふわりとした金髪に白のコート。
花束を抱える姿は英国貴族の子女そのものだ。
昼寝と幸乃の『動』の後の『静』は観ている者達を自然、和ませる。
そこで終わらせてもよかったのだが、お転婆リゼットはそれを許さない。
コートを脱ぎ去るとその下からは黒のハイネック、ショートパンツの勇ましい王子様が。
むしろこちらが本命。
大人しいだけのお姫様ではとても終われない。
「どうぞ」
審査員に花束を渡し、にこりと微笑む。
その姿は彼女の理想の王子様になれていたろうか。
響く銃声。
砕け散るキメラ。
いや、キメラ型の射的だが、とにかくそれをクイックドロウで撃破する。
銃をクルクルと回しホルスターに収めるセーラー服の少女。
「スナイパーのミオ・リトマイネン‥‥アジア方面で活動中です」
一連の動作をクールにこなすミオ・リトマイネン(
ga4310)。
颯爽と舞台を去ろうとするその時、
再び響く銃声。
ミオではない。
空き缶を曲撃ちでお手玉するのは緋霧 絢(
ga3668)。
肩越しに一発、脇を通して一発、振り返り様に一発。
まるで空き缶とダンスを踊るよう。
7発撃ったところで弾丸を再装填。
続く息つく暇ない7連発は空き缶を粉々に始末した。
「いつもはコインでやるんですけど、コインでは見えないと思いますので、本日は空き缶でやらせて頂きました」
――それはいいんですけど、今、覚醒してませんでした?
するとミオが、
「では私はコインで。見えませんけれど、音でわかっていただけるかと思います」
セーラー服と相まって涼やかなコインの音が鳴り響く。
衣装のせいか、同じ曲撃ちでは彼女の方が若干見栄えがいい。
「見事です」
絢が讃えるも、
「それでは私はコイン2枚で」
当然それだけで済むわけもなく、
衣装の分、絢は技量でカバーする。
というか、二人ともやや性格が変わっている気が。
得意分野のせいか、両者妙に張り合ってる。
「いい展開ね。
スナイパーが二人いて良かったわ」
昼寝がほくそえむ。
二人を焚きつけた張本人が。
そして、もう一人のスナイパー。
「はーっはっはっは!!
『キメラさえも僕の美しさにで裸足で逃げ出す!』と評判の僕。
今日は存分にご堪能いただこうじゃないか!
チャームポイントは‥‥そうだね。
艶やかな黒髪。知性と温かみを同居させた瞳。
整った鼻、輪郭、唇‥‥そして抜群のスタイル!
僕自身の全て!! ‥‥と答えるのは野暮だからね。
『オーラ』とでもしようかな。
僕を撮った写真ですらも輝いて見えるこの僕の美しさっ!
‥‥罪だ。罪だね。ふふ、ふふふふふふふ」
ここまで息継ぎなし。
審査員も質問せずに済んでさぞ楽だろう。
「ビューティフル、オーン!!」
そして覚醒する帝。
だからどうしておまえらそうコンテストでポンポン覚醒するのか。
早死しても知らんぞ。
「どうだい? 神をも超える美しさだろう?」
まあ、言うだけの事はあった。
神より美しかったかは知らないが。
そしてへんた‥‥いやいや、美しさでなら負けていない女性がここに一人。
「アタシに虐められたいのは、どいつだい?」
やはりへんた‥‥いやいや、妖艶なる美しさ、夜叉姫・シェリー・ローズ(
ga3501)。
ピンクと黒のエナメル製ボンデージスーツ、同じくエナメルのブーツに手袋。
派手なピンクの口紅で彩ったその姿は正に『桃薔薇の夜叉姫』。
スタッフを一人、赤いロープで縛り上げ、ピンヒールで踏みつける。
「さあ、夜叉姫様とお呼び!」
夜叉姫様、鞭で床を打ちながらひたすら満足そう。
いや、これしきで満足などしよう筈もない夜叉姫様。
「夜叉姫様、会場の皆さんに一言」
「お前ら‥‥もっとアタシに虐められたいだろ?」
夜叉姫様の御乱心はもうしばらく続く。
●お待ちかね・水着審査
水着審査。
まさか本当にやるとは思わなかったとはハロルドのおじさんも内緒だ。
観客・参加者両方の強い要望により実現。
この寒いのに。
先陣を切るのは、
「仕方ないねえ、そんなに見たいのなら見せてあげるよ。
うふふ、どうだい綺麗だろう?」
『まだあたしのバトルフェイズは終了してないZE』と言わんばかりの夜叉姫様。ああもうシェリーじゃなくて夜叉姫様でいいや。
ピンクのエナメル製ハイレグ水着にピンクのハイヒール。
黒系が抜けた分、少しだけ毒は和らいでるかも。
そもそもエナメルってところに多分に問題はありそうだが。
客席からは歓声が。
妖しい魅力は本物か、会場は夜叉姫様の肢体に釘付け。
「いやらしい目で見てるんじゃ無いよ!」
夜叉姫様理不尽。
続けて絢。
歓声再び。
やはり真冬でも水着審査は『アリ』なのか。
絢の水着は黒のワンピース。
腹部にメッシュ使用で首輪と手枷等のメタル系アクセサリはそのまま。
なかなか扇情的。
が、観客が本当に盛り上がったのはそこではない。
純粋な彼女のプロポーション。
折れそうな手足は相変わらずなのだが、その、出るところが非常に出ているというか‥‥。
「‥‥このような場所での水着は少々恥ずかしいものがありますね」
とどめの照れ顔。
これは優勝候補といっても過言ではない。
だが、
観客席が不自然な熱狂。
やられたらやり返すのは彼女のポリシーか。
ミオ・リトマイネン、スクール水着での登場だ。
絢に負けじと盛り上がった胸には、白いネームプレートで、
『みお』
と。
(「お約束らしいけれど‥‥」)
提案は昼寝。
どこまで徹底しているのか、彼女は。
(「流石に少し恥ずかしい気はするけど仕方ないし、注目されるのはこう‥‥悪い気はしないかも」)
「―――ッ」
知れず絢は唇を噛む。
(「何故でしょう――負けたくないです――」)
己の気持ちに戸惑う絢。
女の戦いは既に佳境に入っているのだ。
審査も後半、美女三人が並んで登場。
銀野すばるは相変わらずの健康美。
真っ向勝負な白のビキニが眩しい。
まさしく正統派美少女。
そして、
(‥‥誰?)
会場中の誰もがそう思った。
一人は銀髪銀眼、透き通るような白い肌に人懐っこい笑顔。
「篠崎美影です。改めてよろしくお願いしますね」
わからんわ。
キミら覚醒し過ぎ。
もう一人は黒の水着に身を包んだ少女。
すばるや美影と比べ、露出は少なく派手な色気はないものの、
その引き締められた細い肉体にはどこか息を呑む美しさが漂っていた。
「朧幸乃です‥‥よろしく‥‥」
『ええーーーっ!!?』
「フルート‥‥聞いてくれると‥‥嬉しいです」
男性参加者がまた一人減った。
その中で帝は輝きを捨てない。
華麗に、気高く。
「さぁ、僕のパーフェクトボディを見たまえ!」
パーフェクトなボディだった。
引き締まった筋肉。
すらりと伸びた手足。
金色の光に包まれたその裸体は純白の繭を脱ぎ捨てた蝶のよう。
繭は蛾だが。
そして股間にフィットする清楚たるふんどし。赤い薔薇のワンポイント!
‥‥いや‥‥まあ‥‥似合っては‥‥いるのだが‥‥。
が、笑いをとりながらも黄色い声援。
結構ウケてるらしい。
美形は何をやっても許されるという事か。
トリにはリゼット・ランドルフと金城エンタ。
『美少女二人』の御目見えだ。
リゼットは淡い水色のセパレート水着。
流石に水着は少女らしく。
そしてもう一人の美少女。
ボーイッシュな魅力の『美少女』金城。
一般審査では可愛らしいジーンズ姿だったが、打って変わって色っぽいビキニ姿に。
胸こそそれほどないものの、小麦色の素肌の魅力は隣のリゼットと遜色ない。
(「が、頑張りますっ!!」)
ファウルカップとパレオで美しい下半身のラインを保ちながら、内心冷や汗もののエンタはリゼットとデュエットを歌う。
●運命の結果発表
「オッケー♪ 十分以上の盛り上がりだったわね。流石流石」
激励を贈る昼寝。
演舞でいち早く水着を晒してしまった彼女だったが、逆を言えば機先を制したということ。作戦に支障はない。
「狙ってくわよ、ミス・ラストホープ――!」
――そして、結果発表の時が来る。
『お待たせいたしました!
第一回、ラスト・ホープ・コンテストの発表です!
まずは部門賞――』
「ミスター・チルドレン、ミスター・チルドレン‥‥!」
エンタ君、ハロルド悪かった、そんなのないから。
『ミス・ヨーロピアン、リゼット・ランドルフ』
「えっ!? 私ですか!?」
柔らかな金髪の人形のような少女。
覚醒して黒髪になっても王子様のような外見はミス・西欧に相応しい。
『続けて、ミス・ストリート、朧幸乃』
「‥‥光栄です‥‥」
ミスター受賞も確実だったが、水着審査のギャップが効いたようだ。
『ミス・ヒトヅマ、篠崎美影』
「夫も能力者です! よろしくお願いしますね!」
結局、夫がいる事を打ち明けた美影は一部の熱狂的な支持で票を獲得。
『ミス‥‥、
ミス・夜叉姫様、夜叉姫様です!』
なんだそれ。
だが他に言いようがない。
夜叉姫様は夜叉姫様だ。
「お前達、これからも精々この夜叉姫を讃えなさい」
『ハイ夜叉姫様ぁ』
『そして――これは二名受賞です、ダブルで入賞!
ミス・ミステリアス――』
なんか内容に反比例してすっごい語感悪い。
『緋霧絢、ミオ・リトマイネン』
「―――」
「―――」
なんか似たもの同士、妙なライバル意識が芽生えたのか。
クールな二人にはお互い初めての感情だったかもしれない。
『ミス・ドリル、銀野すばる』
「やったあ!」
素直に喜ぶすばる。
実は総合優勝に引っかかっていたのだが。
彼女を抑えたのが、
『ミス・ラスト・ホープ、準優勝、鯨井昼寝』
「準優勝――惜しかったわね」
やるだけやった。悔いはない。
が、気になる事は一つ。
優勝は誰なのか。
『それでは総合優勝の発表です。
ミスター・ラスト・ホープは、
――七瀬帝――!!』
「はーーーっはっはっはっはっは!
みんな、応援ありがとう!!」
男性陣からのブーイングにも堪えない。
このくらい突き抜けているとわかっていても許せてしまう。
――いや、やはり男は顔という事だろう。
『最後に、ミス・ラスト・ホープは、
――金城選手――!!』
「ええええええええ!!?」
『可愛らしいと男女両方の得票を集めました! 優勝おめでとうございます!!』
「あ‥‥あうあうあう〜〜〜!!」
さあ、今更誤魔化せない。
第一回ラスト・ホープの名を受け取ってしまった『彼女』の運命は?
――それはまた、別のお話。