●リプレイ本文
●4人の家庭教師
「と、いう訳で私達は家庭教師をするのです」
家庭教師1・智久 百合歌(
ga4980)、ビーストマン。
得意科目は語学と音楽。
何故か眼鏡をかけているのはご愛嬌。
「教師と言えば、やっぱり眼鏡でしょ!」
いや‥‥そうなのかな‥‥?
それとさっきから玩んでる手錠はなんなんだい?
「家庭教師のアルバイトとは、売れない脚本家時代を思い出すね」
家庭教師2・ミハイル・チーグルスキ(
ga4629)。
脚本家のビーストマン。
得意科目は語学や歴史。雑学も少々。流石脚本家。
しかも口調から家庭教師の経験あり。
「なるほど、最近はこういうものを学んでいるのだね」
事前に参考書に目を通すミハイル。
期待が出来そうだ。
家庭教師3・辰巳 空(
ga4698)。
ミハイルと同じくビーストマン。医者だ。
医大を出ているのだとしたら理系科目はお手の物だろう。
「一応、私の場合、「元居た世界」と「この世界」の差があるので‥‥あまり教えられる事はないんですがね」
ビーストマンの中にはたまにこういう事を言う者がいる。
いわゆる『前世の記憶』というやつだろうか。
妙に確信じみているのが謎である。
家庭教師4・クラリッサ・メディスン(
ga0853)。
「まだ研究者としての道を諦めた訳ではありません。
これまで学んできたことが少しでも皆さんのお役に立てるのなら」
家庭教師役唯一のサイエンティストで知力もダントツ。
まあ、学ぶのと教えるのはまたコツが違う。
上手く教える事が出来るかが問題ではあるが。
ともあれ、募集で集まった教師役はこの4人。
「思ったよりまともな人達集まっちゃったな‥‥約一名を除いて‥‥」
これ、そこの受付係。あらゆる意味でこれ。
●みんなでおべんきょう
「私は特には苦手な科目は無いつもりなので、3年分の総復習といった所でしょうか‥‥
あ、文系を専攻しておりますのでよろしくお願いします」
優等生の霞澄 セラフィエル(
ga0495)はミハイル先生と真面目にお勉強。
手がかからないのは物足りないか?
いやいや、そんな事は全くないらしく、不必要なまでに熱心なミハイル先生。
「歴史上の出来事などは語呂合わせが一番だね。ヤーパン人は得意なようだが」
「ヤーパン?」
日本の事である。
「ここの学生はヤーパンの者が多いと聞いたが‥‥と、失礼。君は――」
「私、ヤーパン育ちですから、為になります」
銀髪の少女は答える。
「本当なら私は今年受験生だったんですよね」
確かに今はもう受験の時期ではない。
「卒業前の試験を受ければ高等部は卒業させてもらえそうですが‥‥
どちらにしても浪人さん決定ですわね」
ちょっとだけ物悲しく語る霞澄。
学友達との別れが寂しいのだろう。
「今からでも遅くはない。大学なら一年違ってもさして問題ないさ」
「――ありがとうございます。そうですね、来年こそは――」
ミハイルの気遣いは霞澄にも通じたのか、仲良く勉強に勤しむ二人。
ハーフとはいえ、日本が長い霞澄に語学堪能なミハイルは心強かった。
「はーい、トト先生に質問! マーセナリーってなぁに?」
元気良く挙手するのは愛紗・ブランネル(
ga1001)。
眼鏡の百合歌先生に質問。
「はい、愛紗さん。マーセナリーっていうのはね、お姉さんみたいな格好いい能力者のコトよ」
ノリノリで答えるトト・百合歌先生。
いや、間違ってはいないんだけど。お互いね。
百合歌先生、たまに白い翼とか生えるし。
「はいはいはい、トト先生!」
だからトトじゃないって。
「うるう年生まれの人ってお誕生日はどうなるの?」
しかも勉強とあまり関係ない。
これは学校の成績を落とさないための勉強会だから。
それでも律儀に答える百合歌先生。
「うるう年生まれの人はね、4年に1回しかお誕生日こないでしょ?
だから4年に一度しか年取らないの。
先生、愛紗ちゃんより年下なのよ」
いたいけな少女に法螺を吹き込む百合歌先生。
第一、彼女はうるう年ではない。残念、約一ヶ月早い。
クリストフ・ミュンツァ(
ga2636)はレポートの作成。
ノートには彼がこれまでに出会った異形たちについて詳しく書き記されている。
「キメラのレポートですか」
関心を示す辰巳。
どうやらクリストフは試験勉強をしているのではないらしい。
「キメラの生態はまだ明らかにされていない部分が多いですからね。
僕の知識では大したところまでは書けませんが、一般の人達が知らないものを記すくらいは出来ます。
これが少しでも自己防衛の役に立つなら――」
キメラ災害に対しての警鐘というやつだろう。
なるほど立派なものだと辰巳はレポートに目を通す。
「――クリストフ君、コレハナンデスカ?」
「この間遭遇したキメラです。1M以上あるんですよ」
そこには人類の天敵、最凶の甲虫、黒光りした太古からの生命体が――。
――確かに、これは公表するべきかもしれない。
警鐘の為にも。
「理数系科目は基礎からの積み重ねが大切ですからね。
それを怠ると途中でどうしても理解出来ないところが出来て、それが躓く原因ですから」
根気よく教えようとするクラリッサ。
意外にも驚くほどものを教えるのに向いていたようだ。
「今は役に立ちそうもなくてもきっとこれから生きていく内に役に立つこともあるかもしれませんよ。
無駄な学問というのはありませんから」
その言葉に大きく頷く鯨井昼寝(
ga0488)。
「そうよね。どんな知識がどこで役に立つか分からないもの。
『フランス語とヤーパンのアキタ弁は似ている』っと」
教師の言葉を生真面目にノートに記載。
「『巨大なGはあらゆるイミで手強かった』‥‥と」
かきかき。
「『「元居た世界」にエミタはなかった』‥‥と」
かきかき。
「『算数が出来れば日常生活もキメラ数えるのにも問題ない』‥‥と」
かきかき。
‥‥ん、まあいいんだがね‥‥。
試験対策のお勉強会だった筈なのだが、なんだかやや香ばしい感じになってきているのであった。
●だんだんなんかずれてきた
「先生、先生、ここの問題なんだけど‥‥」
なんだかんだいいながらきちんとお勉強もしているらしい昼寝。
「どれかしら?」
伊達眼鏡をかけなおし、百合歌先生。
英語の問題のようだ。
問:A男とB子の会話から□に入る文を選びなさい
文章問題。
基本的に選択問題というのは自由問題より答えを選びやすいが難しいという傾向がある。
「ふ‥‥これは隠れた二人の事情を推察すれば簡単!」
は?
「A男(16)はお年頃で、同級生のB子に絶賛片想い中。
B子の一挙一動にドギマギなの」
誰が二人の心情を読めと? これは英語の問題です。
「最近はC男と仲が良いという噂も聞くし、不安もいっぱい」
C男て誰?
「そんなテンパったA男がB子に返した言葉は、
ずばり『Marry me』(結婚しよう)
B子の平凡な挨拶に、思わず想いがこぼれてプロポーズ
‥‥完璧ね!」
選択肢にない答えを作ってしまった百合歌先生。
ちなみに生真面目にノートをとっている昼寝はテストでこれを答えるとか。
わざとやっているのか、マジボケか。
愛紗の方は生徒の癖に問題出してる。
「さて問題。はっちーは男の子でしょうか? それとも女の子でしょうか? ファイナルアンサー?」
ちなみにはっちーとはパンダのぬいぐるみ。
お前らマジで勉強せえよ。
そしてそれに真面目に考え込むミハイル先生。
いや、純朴な少女の問題に優しく付き合っているのだろう。
傍から見ていて微笑ましいものではあるのだが、
「う〜ん‥‥わからないな、愛紗君、教えてはくれないかな?」
「‥‥愛紗も知らなーい。
空お兄ちゃん教えてー。ほけんたいいくー」
「‥‥参りましたね、ほら、私は『この世界』の事は専門外でして――」
そうきたか。だから『この世界』ってなんだよ。
●ソリッド・クリストフ
「そろそろ休憩にしませんかね」
初めに言い出したのは辰巳だった。
「人間の集中力はそんなに持ちませんからね」
「そうだな。私は紅茶を淹れてこよう」
とミハイル。
「いいですわね。是非お願い致します。
‥‥‥ちょうどホワイトチョコレート分が足りなかったところですので‥‥」
ごそごそカバンを漁る霞澄。
ホワイトチョコ持参?
皆が休憩に入ろうとする中、クラリッサが気付く。
「あら? クリストフ君は?」
辰巳が提案するほんの少し前、クリストフは脱走を決行。
買出しに向かっていた。
「息抜きもたまには必要ですからね」
息抜きに茶菓子を買ってこようとしているのか、
それとも脱走が息抜きなのか。
そんなクリストフを追う教師が一人。
「クリストフ君〜〜!!」
妙に楽しそうな口調でクリストフを探す百合歌。
楽しそうに手錠を弄っている。
(「脱走した生徒を捕まえるのも先生の醍醐味よね〜」)
なんか違うだろと突っ込む者もいない。
捕まってはマズい。
何故かクリストフはそう感じていた。
●コンバットアスリーテス
「え? 体育の実技もやるのですか?」
「いえ、希望者がいるならなのですが‥‥」
とスポーツ医学の専門家、辰巳。
ちなみに柔道黒帯。
「ほほう、女子も交えて柔道か。君もなかなか‥‥」
大真面目にミハイルが突っ込む。
「誰も柔道とは言ってません! 適度に身体を動かすのは脳にも――」
「わ、私、柔道着は持っていなくて‥‥体操着でもよろしいでしょうか?」
そんなものまで持ってきていた霞澄。
しかもブルマ。今時珍しい学校だ。
「きゃー! 霞澄お姉ちゃんマニアック〜!」
はしゃぐ愛紗。お前はいくつだ。
「では私も。運動着は近くに売っているかしら‥‥」
そそくさと部屋を出るクラリッサ。
「あ、暴れるの? それなら私の得意分野ね!」
水を得た魚と言わんばかりに立ち上がる昼寝。
「‥‥なんだか変な方向で決まってしまいましたね‥‥」
今更止めるとも言えない雰囲気。
「やるねえ、君も」
「いや、あのね、ミハイルさん‥‥」
確かに傭兵の彼らは身体を動かすのも本分。
適度な運動は勉学の集中にもいいのかもしれない。
が、
「はう‥‥恥ずかしいです‥‥」
絶滅種ともいえるブルマ姿の霞澄。
「ほほう、すそは出す派かね」
渋い顔でとてつもなくどうでもいい事を呟くミハイル。
「あ、すそは出すのでしたか」
と、同じくブルマ姿のクラリッサ。
どこで売ってたんだ、そんなもん。
着てしまうあたり、天然なのだろうか‥‥。
「早く始めるわよ! 机に向かった後の運動ってウズウズするわよね〜!」
やる気満々の昼寝はなんと水着姿。
先日ミスコンで用意したものがカバンにあったとか。
「タツミ君‥‥真面目に聞くのだが‥‥」
「‥‥はい」
「わざとではないのだね?」
「違いますって!」
『過度な運動は後の勉強に差し支えるから』と軽い柔軟やゲームに興じる事を提案した辰巳。
それが裏目に出たようだ。
「もう、どうしたんですか、三人とも。集中力ないですよ」
いぶかしむクラリッサ。
「ああ、すみません」
「‥‥うむ、まあ‥‥ね‥‥」
「‥‥‥‥」
とりわけ純情という訳でもない――というか程遠い――三人だったが、先程の体育は何かと刺激が強かったようだ。
「辰巳さん、ミハイルさん、ちょっと息抜きしませんか?」
「ん、そうですね、いいかもしれません」
「済まない。三十分休憩させてもらうよ。君達もどうぞ」
三人が席を外す。
彼らが勉強に集中出来るのはもう少し先になりそうだ。