●オープニング本文
前回のリプレイを見る「そういう訳でな、来てくれよ。待ってるぜ」
少年の元に再びかかってきた不明の電話。
とる前から相手の察しはついていた。
ついに来た。
「明後日の夜だ。場所はその時に指定する」
丸二日の猶予だ。当然彼は怪しむ。
「軍に知らせたりはするなよ? こっちはいつでも逃げる事が出来るんだ」
それはわかっている。
少年のプライドと、それ以上に強い執着からそれをする気など毛頭ない。
だが、それならば何故二日後を指定するのか。
場所の都合? 下準備?
それならば明後日にこの電話をかければいい。
『軍には知らせるな』と彼は言った。
つまりそれは――、
「そういう訳でな、来てくれよ。待ってるぜ」
電話を切り男は深く息を吐く。
もうすぐだ。
「決闘の予告か。やる事が随分と古風だねえ、アンタも」
男の隠れ家には来客が二名。
一人は二刀を腰に帯び、一人は小銃を肩から下げている。
「サムライって奴か? 日本人でもねえのによ。死ぬ事とみつけたり、ってな、どっちにしろ――」
小銃を下げた男は軽口を叩きながらもライオネルには近付かず、
「――アンタ、明後日死ぬのにな」
男二人がライオネルに向ける目線は仲間へのそれではない。
二人はバグアの手術を受けた強化人間である。
ライオネルだけが違っていた。
二人はライオネルの決闘を助けにきた。
しかし目的はそこではない。
二人の目的は、
ライオネル・ハーパーの始末。
「強化処理も受けていないアンタはこっち側の人間とは見なされない。せめて最後の願いだけは協力してやるよ。ガキ共をブッ殺せばいいんだろ?」
恩着せがましく言うが、所詮金で雇われての依頼である。
バグアの手先である彼らは金を積まれた所でライオネルを見逃す気はない。
だが、金を積まれて関係のない依頼を受けるのなら話は別だ。
「その後でアンタを殺す」
「好きにしな」
念を押してしまうのは不安から。
ライオネルの考えが男には読めない。
傭兵達と戦い弱った自分達から活路を見出す?
無理だろう。ライオネルには最前線で戦って貰う。
彼よりも自分達が弱る事態はまずありえない。
「そう怯えるな」
「―――ッ!!」
格下とみなした男に嘲られ頭に血が上る。
この男の実力はわかっているが、二対一なら確実に自分達が勝てる。
「ああ、そうだ。俺の死は動かない。だからいきり立ってくれるな。俺は心残りにケジメってやつをつけたいだけだ。
お前さんらを騙して生き延びようなんざカケラも思っちゃいねえよ」
「ケジメ‥‥だと?」
沈黙を守っていた二刀の男が口を開く。
「勘弁してくれ。依頼主には詮索しないのはこっちもあっちも同様のルールだろ?」
おどける男に二刀の男はそれ以上の追及をやめる。
彼の言うとおりだ。自分達を出し抜く事は不可能。
仮に、万一、傭兵が想像以上に強かったとしても、
その時は自分達は逃げればいい。
どの道、この男が向こうに受け入れられる筈もないのだ。
(「――さて」)
決闘――そう、間違いなくこれは決闘だ。
自分はあの少年を殺す。殺す気で戦う。
だが、少年に仲間がいる事を自分は知っている。
だから――そうならない事を信じている。
これはお節介。ライオネルの勝手な、独り善がりな偽善。
(「さあ――ラスボスのお出ましだぜ。霧条カイナ」)
●リプレイ本文
●四つの戦い
一人の手には一振りの日本刀・月詠。
もう一人の方は西洋剣。但し左右に一対。
二刀使いは眼前の剣士・白鐘剣一郎(
ga0184)を興味深げに見ている。
「サムライか‥‥何度か相手をした事はあるが、貴様程の腕は初めてだ」
剣一郎の実力を認める男の目に怖れの色はない。
『初めての強敵だ。しかし倒せない相手ではない』
そう物語っている。
「天都神影流・白鐘剣一郎」
「――なるほど、サムライとは名を名乗るものだったかな。
エドワード・レクサスだ――!」
西洋剣の男、エドワードが白刃を振るう。
その斬撃を斜め後ろに身を逸らして回避する剣一郎。
「――推して参る!」
「くっ!」
キメラの攻撃を盾でいなす藤宮紅緒(
ga5157)。
猫型キメラの体高は1m程。
通常の肉食獣レベルで、キメラとしてはさほど大きいサイズではないが、その分敏捷性に優れている。極端に。
地を蹴るスピードは異常。速過ぎて飛んでいる様でもあった。
なにより、
「二匹も‥‥!」
驚異的な速度で死角に回りこみ襲い掛かる獣が二体。
そして倒し易い獲物を狙うのが獣の本能。キメラは紅緒を『二体がかり』で襲う。
片方を盾で受けるもガラ空きの背後を襲うもう一体。
それを――電磁波が撃ち落す。
「美影さん‥‥!」
「どんまいです! 次に備えて!」
紅緒の背後を超機械でフォローする篠崎 美影(
ga2512)。
「激しい戦闘は得意じゃないんですけど‥‥」
紅緒と美影、二人がかりでキメラを請け負う。それ以上の人数は割けない。
なぜなら――、
篠崎 公司(
ga2413)のアサルトライフルが火を吹く。
「ハリネズミにされる前に退散したらどう?」
そして愛用の洋弓ダンデライオンで公司と敵を狙う戌亥 ユキ(
ga3014)。
熟練スナイパー二人の攻撃に、しかし、
「――テメエらがな――!!」
遮蔽物を利用しながらも移動と狙撃を繰り返すのは敵スナイパー、マルコ・ヴェレッティ。
公司達の狙撃に晒されながらも攻撃を休める様子はない。
鍛え抜かれた槍を構える九条院つばめ(
ga6530)。
愛機AU‐KVバハムートを纏う美空(
gb1906)。
大剣を構えて見据える霧条 カイナ(gz0045)の視線の先は――、
「三人か――」
ライオネル・ハーパー。
カイナを呼び出した男であり、傭兵達の標的。
「ひょろい方の兄ちゃんはどうした? アイツくらいはいないと厳しいと思うがな」
見下されてる。
男の挑発に乗りかけるカイナを白い細腕が力強く制した。
「三人相手で不服ですか? 思い上がりも大概にして貰います」
言葉とは裏腹に油断なく槍を構えるつばめ。
その槍にライオネルは見覚えがあった。
「――そうか、奴は途中退場か。槍置いて尻尾巻いたか?」
「忙しくて貴方なんか相手にしてる暇ないようですよ」
挑発にも威圧にも一歩も怯まないつばめ。
「ライオネル・ハーパー!」
片手に機械剣を構え、もう片手の親指を下に向ける美空。
「ドラグーンの美空であります! 本日はおまえをぶっちしてやるのであります。覚悟するのでありますよ!」
敵は三人。それぞれに仲間達が当たっている。
彼らに余分を受け持つ余裕はない。
だからこそこのキメラ二体は紅緒と美影が引き付けなければ。
「美影さん! 後ろです‥‥!」
紅緒の声に反応し、避けたキメラに電磁波を叩き込む。
引き付けるだけでは駄目だ。
キメラ二体を撃破し、仲間達の支援に向かわなければならない。迅速に。
「大丈夫‥‥出来ます、紅緒さん。自分の力を信じて‥‥」
●伏兵
廃工場の一角。
中の機材は稼動中止と共に撤去されたらしく、開けた空間は多勢の戦闘にも適している。
高い天井には薄く灯りがついていた。本来電気は通っていない筈なのだが、ライオネル達が用意したのだろう。
(「それにしても――」)
宗太郎=シルエイト(
ga4261)は考える。不審だ。
(「この場所を指定したのは彼ら。広い空間は確かに戦い易い。ですがそれは相手にとっても同じ事。
事前に戦闘区域を決められるのなら、むしろ障害物は多い方が良い」)
自分達も動き辛いが、その数倍のハンデを相手側に強いることが出来る。
戦闘の基本は自分が全力を出す事より相手に全力を出させない事。
(「素早いキメラや強力なスナイパーがいるのなら尚更です。わざわざこちらに戦い易い場所を選ぶという事は――」)
自分と同じか。
きっかけは偶然だった。不測の事態といってもいい。
前の仕事で大きな負傷を抱えた宗太郎は充分に回復することのないままこの戦いに身を投じた。
無茶だと止める者もいたが、この役目だけは退く事も譲る事も出来なかった。
(『最後まで見届けたいんです。――友達として』)
前に出てやり合う事は流石に反対された。
彼自身それは望んでいない。足手纏いになる為に無理してるのではないのだから。
(『なら宗太郎さんには伏兵となって貰いましょうか』)
つばめに愛槍を託す宗太郎に公司が提案する。
宗太郎の顔は相手には割れている。
だが、つばめに槍を渡せばなんとか欺けるかもしれない。
たとえ欺けなかったとしても宗太郎の負傷についてまでは見抜けるところではない。
『どこかに伏兵がいる』そう思わせるだけで相手の注意を引くことが出来る。
伏せたカードは存在そのものが武器なのだ。
(「――相手も‥‥それを狙っているのか」)
それも前者。
戦い易い場所に誘導すれば自然と注意は目の前の相手に向く。強敵ならば尚更。
全力で戦えば背後ががら空きになる。伏兵が潜んでいれば――。
(「――いや」)
根拠はない。だが宗太郎はそうではないと判断した。
(「ライオネル寄りの考えと批難されるでしょうか? しかし、そうまでして私達を仕留める意味がそもそもわからない」)
腑に落ちない。これは勘だ。傭兵としての宗太郎の勘が伏兵の存在を否定する。
(「無茶苦茶な理屈だな」)
わかっている。この考えに願望が全くないとは言い切れない。ライオネルが只の戦闘狂で自分を追う邪魔な駒を趣味と実益でいたぶるつもりという考え方だって出来る。
それでも、
(「甘くて何が悪い」)
そんな彼を少年は頼ってくれた。
そんな彼を仲間達は信頼してくれた。
だから彼は自分の出来るカタチでそれに応えるだけだ。どの道、宗太郎=シルエイトにはそれしか出来ない。
希望を夢見ることしか。
老朽化したコンクリートが軋み、砕け、弾け散る。
休む間もない乱射。
「――ッ! 数撃ちゃいいってもんじゃないってっ!」
走りながら矢を番えるユキ。
「ハッ、そいつは違うな、嬢ちゃん――」
その間にも――、
「数撃ちゃいいんだよ!!」
マルコの小銃が火花を散らす。激しい弾幕はユキに体勢を整える暇すら与えない。
弓使いのユキにはそれが致命的な劣勢となる。
「くう〜、美しくないっ!」
「どうした? ハリネズミにするんじゃなかったのか!?」
「そのとおりです」
「――!?」
アサルトライフルの弾幕がマルコを襲う。
普段の弓スタイルとは異なる手数重視の公司の攻撃はマルコに回避行動をやむなくし、攻撃の手を途絶えさせる。
「意外と気が合うようですね、自分らは」
「――テメエ‥‥!!」
紅緒、美影はキメラの相手に手こずっている。強力な前衛が居ないことが苦しそうだ。
キメラの相手は剣一郎がするつもりだった。
止めたのは当の本人達。
(『白鐘さんは剣士の相手をしてください。敵は強化人間の可能性が高い。カイナさん達の戦いに割り込まれると厄介です』)
(『だ、大丈夫です‥‥! キメラは私達でなんとかします! してみせます‥‥!』)
そう言って、女二人は馴れない前衛で歯を食いしばっている。
(「――ならば俺だけ頑張らない訳にはいかないな」)
腰に差したままの蛍火を抜く剣一郎。
「二刀‥‥?」
「ああ、これで手数は互角だ」
「付け焼き刃の二刀など‥‥」
「では試してみるか?」
前に出る。悠長に構える暇はない。
この男を倒し、仲間達の支援に向かわなければならない。迅速に。
「天都神影流――双翔閃!!」
襲い来る二振りの剣を回避するライオネル。
美空の機械剣とカイナの大剣を巨体に似合わぬ俊敏性で避ける。
(「――チッ‥‥!」)
正面から相対する一条の槍。
つばめの攻撃にライオネルは気を、そして斧を割かざるを得ない。
技量もさることながらそれだけの気迫があった。
「‥‥やるじゃねえか、お嬢ちゃん」
「目は覚めましたか? ライオネルさん」
「調子に乗るなよ。それはお前の実力じゃ――」
言葉を続ける余裕もない。
カイナの大剣がライオネルの僅かな隙を狙う。
「ええ、カイナさんと美空さん、三人力を合わせればこそです。だから――」
二回り以上の体格差のライオネルに鋭い一閃。宗太郎の想いを乗せた爆槍はライオネルを封じ込める。
「――貴方にも勝てます――!」
「戯言を――!」
●刹那
「天都神影流・流風――」
「甘い!」
右の剣を右に避けて回り込む剣一郎。
だがエドワードの右脇から左の剣が伸びる。
「――ッ!!」
刹那の判断で身を躱すも一度入った動作は容易に変えられず、結果手傷を負う。
「悪くない動きだ。だが死角に対応してこその二刀流」
致命傷は避けているものの剣一郎の手傷は少なくない。
戦況は少しずつ、だが確実にエドワードに傾いている。
「予想以上の強さだ。おそらく戦闘力は互角。人数では少しだけ貴様達の勝ちだ。
だが結果は貴様達の敗北だ。何故だと思う?」
「――――」
剣一郎は答えず、ただ相手を見据えている。
「地の利だ。確かにこの場所は開けていて戦い易い。だがそれでも足元にはガラクタが、照明は暗く、戦いには不十分だ。
我々はここに戦場を定めていた。貴様達は今、この場を知った。わかるか? 貴様達はここに来た時点で負けていたのだ。恥じる必要なないぞ。悔やむなら――」
弱った相手にとどめを刺すべく、エドワードが構える。
「このような茶番に付き合った己を恨め――!」
激しい雷雨のような銃撃。
残弾など微塵も気にしていないマルコの乱射には当然ワケがある。
銃弾に晒されて思うように動けない公司達の隙をついて、隠している銃弾を装填。
「ずっ、ずるいっ! さっきからっ!」
マルコは戦闘区域の数箇所に弾薬を隠していた。被弾のないよう、箱入りで。
暗さと散らかりようからユキ達にそれを見つけることは不可能。
「数撃ちゃいいんだろ? オッサン。撃ちっこしようぜ!!」
勝てるわけがない。マルコは既に四度目の弾薬交換をしている。当然まだ余力があるのだろう。
「やっぱりハリネズミはテメエらだったみてえだな!!」
再びフルオート射撃。単純な物量作戦はだからこそ覆せない。
それは体格をはじめとした身体能力の差か、それとも場数の差か。
三対一でなおも戦況はライオネルが少しずつ押している。
(「カイナさんは充分頑張ってくれている――のに――!」)
三人の中で尤も荒削りなのはカイナだ。
だがそれでも、合宿前と比べれば格段の進歩だった。
「お前達に落ち度はねえ。俺の方が強かった。ただそれだけだ」
美空の剣を躱し、カイナの剣を斧でいなす。それがつばめの槍を受け止める形となり――。
ライオネルは斧を返し、隙だらけのつばめを狙う。
刹那、
ライオネルを殺気が射抜いた。
ライオネルを狙ったのは一条の矢。
ユキのものではない。
伏兵・宗太郎の逆転の一矢。
それを躱した。
「なっ―――!?」
カイナが絶句するのも無理はない。タイミングは完璧だった。
僅かながらも宗太郎の存在を疑った推察と殺気に反応した直感。それをもってしても奇跡に近かった。
「――やっぱりいやがったか。逃げるわけねえと思ってたぜ」
必殺の一撃をかわした。
これでもう宗太郎達に勝機は――、
「――やっぱり気付いたか。きっと躱すと思ってたぜ」
宗太郎がぼそりと呟き、
『GO!!』
●地を翔ける
(『切り札は最後まで取っておくもの。むしろ使わずに倒すくらいで丁度いい』)
美影の閃光手榴弾。
たとえいきなり使用したとしても僅かな隙すら怪しかったろう。
だが、宗太郎の伏兵を見破った敵は油断した。ほんの一瞬。少しだけ気を緩めた。
キメラに至ってはその比ではない。
目が眩んだ一体を紅緒のシエルクラインが火を放つ。
ありったけの練力を注ぎ込んだ必殺の一撃はキメラ一体の外皮を突き破り、
「――−くあっ!!」
通常の獣なら光に目をやられれば回復までは攻撃には移らない。
だがキメラは別だ。人間への敵意が強過ぎる。
一体にとどめを刺す間にもう一体が紅緒の肩口に牙を立てた。
「紅緒さん!」
美影は躊躇する。今、キメラに攻撃を加えては紅緒も電磁波を食らうだろう。
「だい‥‥じょうぶ‥‥です‥‥!」
キメラの牙を食い込ませたまま、銃口を向ける。
「負けないって‥‥決めた‥‥!」
光と共に目を閉じた剣一郎が駆けた。
「おのれ卑怯な――」
「教えてやる、勝負はな――」
懐の死角に飛び込み、剣を振るう。
しかし、エドワードは見えない目でその死角を受けた。
剣一郎の月詠を。
そして敵の対応を潰すのが二刀流。反対側から蛍火が襲う。
「最後まで諦めない者が勝つんだ――!!」
天都神影流奥義・螺旋陣。
乱射とはいえスナイパーは目で狙うもの。
それを奪ったアドバンテージが最も大きいのはユキ達だった。
「いっけえ!!」
練力を込めた弾頭矢でマルコを狙撃する。
遮蔽物ごと吹き飛ばされるマルコ。だが致命傷には至らず。
「ぐっ‥‥のやろ――!!」
立ち上がろうとするマルコに銃口が向けられた。
「やはり――ハリネズミは貴方だったようですね」
そして――、
「はあぁぁぁっ!!」
つばめの爆槍がライオネルの斧を薙ぎ払う。
強力無比な一閃がライオネルの懐を空けた。
「カイナッ!!」
友の叫びを受け
「ぶっ放せ!」
ライオネルの右側に回り込み、
「ああああああああ!!!」
一撃、更にその大剣の反動を利用して半回転――。
「鳳凰衝を!!」
二度の流し斬り。
瞬発力を活かした二連の死角攻撃を、
――ライオネルは躱した。
「――な‥‥!」
化け物じみた反応速度。
三人の攻撃を受け、
宗太郎の矢を躱し、
見えない目でつばめの槍を受け、
そしてカイナの鳳凰衝まで凌いだ。
――三人?
「ライオネル」
いつからこの少女は視界から消えていたのか。
美空の腕にはAU−KV用アームガトリングが。
つばめに目を引き付けさせたのはこの為に。
「約束どおりにぶっちしてやるのであります」
銃声が響く。
至近距離でのガトリング連射を躱せる余力はいかなライオネルにも残ってはいなかった。
こうして、廃工場での決闘はカイナ達の完勝に終わった。
残るは、
「ライオネル」
公司が倒れた男に歩み寄る。
「貴方は――カイナさんの仇ではありませんね?」
残されるのは――言葉の真実のみ。