タイトル:【ODNK】野望の果てマスター:対馬正治

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/11/16 16:23

●オープニング本文


●2009年9月×日〜北九州・UPC九州方面隊司令部
『自分はUPC佐賀守備隊副隊長、天勝・清秀(あまかつ・きよひで)少佐であります! 司令部、応答願います!』
 無線機を通し、懇願するような若い男の声が響く。
『今まで部下の兵と一般市民を人質に取られ、やむを得ずバグア軍の指揮を取らされてきました! 投降いたします! 繰り返します、このHWは非武装です!』

「‥‥何て男だ。恥というものを知らんのか?」
 通信を聞いた参謀の1人が、呆れたように呟いた。
 つい先刻まで佐賀バグア軍指揮官を務めていた男。「人質に取られて云々」などと弁解しているが、彼自身がバグアに寝返って上官の守備隊長を射殺した事実は、佐賀方面から脱出してきたUPC軍兵士達の証言からも明らかだ。
 にも拘わらず、陥落寸前の佐賀補給所(旧陸自・目達原駐屯地)から単身本星型HWで逃走した天勝は、こともあろうにぬけぬけとUPC側への投降、及び亡命を打診してきたのだ。
 引き続き無線機から天勝の言葉が続く。
『自分が犯した罪は自覚しております! 軍法会議でいかなる罰も甘んじてお受けしましょう! ‥‥ですが、せめてもの罪滅ぼしに、この本星型HWと自分を見聞したバグア機密情報を全て提供いたします!』
「‥‥よろしい。投降を認めよう」
「司令官!?」
「すぐに迎えのKV部隊を出す。彼らの指示に従い、司令部近くの基地へと着陸するがいい」
『感謝いたします!!』

「正気ですか!? あの男のために、これまでどれだけの兵と一般市民が犠牲になったか――」
「投降なぞ狂言です! 敵は単機とはいえ、本星型の中型HWですぞ!?」
 通信を切った司令官に、参謀達がいきりたって詰め寄る。
「判っておる! むろんあのHWは撃墜する」
 司令官は重々しく答えた。
「とはいえ今の通信はオープン回線で一般メディアにも流されたようだ。仮にも投降を申し出た相手を一方的に撃墜したとあっては、今後バグア側や親バグア組織に格好の宣伝材料を与えてしまう」
「と、申しますと‥‥?」
「待機中の傭兵部隊に伝えろ。天勝に関する情報、並びにHWの撃墜命令。ただしその前に奴の虚言を暴き出し、社会的にも制裁を加えた上で殲滅せよと」

●本星型HW・コクピット内
「くくく‥‥バカどもが。まんまと引っ掛かったな」
 司令官からの通信を聞き終えた天勝は口を歪めて嗤った。
『‥‥さて、これからどうするつもりだ? 天勝よ』
 重力波通信の機密回線を通し、春日バグア基地司令官、ダム・ダル(gz0119)の声が響く。
「お任せ下さい。このHWにはフレア弾が1発搭載してあります。投降と見せかけ、九州方面隊の司令部に投下しUPCに一矢報いてご覧に入れます」
『なかなか面白い座興だな。それが成功したなら、貴様にももう一度チャンスをくれてやろう』
 すなわち、春日基地への帰還を許すということだ。
「ははっ。有り難きお言葉」
(「見てろよ‥‥何とかこの場を切り抜け、俺はいずれ九州の盟主となるのだ!」)
 バグア式フレア弾投下スイッチを見つめ、天勝は汗ばんだ顔に陰気な笑いを浮かべた。

●参加者一覧

時任 絃也(ga0983
27歳・♂・FC
流 星之丞(ga1928
17歳・♂・GP
緑川安則(ga4773
27歳・♂・BM
守原クリア(ga4864
20歳・♀・JG
飯島 修司(ga7951
36歳・♂・PN
山崎 健二(ga8182
26歳・♂・AA
龍深城・我斬(ga8283
21歳・♂・AA
澄野・絣(gb3855
20歳・♀・JG

●リプレイ本文

「ほう、コレはまたとびっきりの下衆だな」
 北熊本基地から飛び立った雷電の機上、コンソール板のモニターに表示された資料画面を眺めつつ、龍深城・我斬(ga8283)は苦笑した。
「こんな奴なら、良心の呵責無くやれるというものだ」
 彼を含め、司令部からの緊急依頼でスクランブルをかけたKV8機を操縦する傭兵全員の心境を代弁するかのような言葉である。
 だがその「下衆」――元UPC軍少佐、そして友軍を裏切って佐賀バグア軍指揮官となり、佐賀拠点が陥落するや再び掌を返すように投降してきた強化人間・天勝清秀と彼の搭乗する本星型HWを撃墜する前に、やるべきことがある。
 現在、オープン回線で哀れっぽく亡命を訴える天勝の本性を暴き、後々バグア側のプロパガンダ材料にされる憂いを断つこと。
 しかも相手のHWがどんな兵器を搭載しているかも判らない以上、熊本の市街地に到達される前にミッションをクリアせねばならない。
「冷静にー、えがおーえがおー‥‥」
 編隊を組むフェニックスの機内では、クリア・サーレク(ga4864)が手鏡を覗きつつ平常心を保とうと深呼吸していた。
「うん、ボクは今なら、明鏡止水の境地に目覚められるかもしれないっ」
 九州は親しい友人の出身地でもあり、クリア自身、八郎川河口におけるバグア軍上陸阻止の戦闘に参加している。北九州を無茶苦茶にした裏切り者に対しては怒り心頭に発する思いであるが、それを相手に気取られないよう笑顔で自己暗示をかけていた。
(「女の子は役者なんだよっ‥‥さあはじめよう、渾身の三文芝居を、ね」)
「やれやれ‥‥掛ける言葉が見当たりませんな」
 ディアブロ改の操縦桿を操りながら、飯島 修司(ga7951)もため息をもらす。
「志、とまでは申しませんが、筋を貫けぬ者は大成しないという見本のような方ですな」
 20代の若さで正規軍少佐まで出世したのだから、それなりに優秀な人物ではあったのだろう。だが、少なくとも多くの部下や一般市民の命を預かり、場合によっては我が身を危険に晒さねばならぬ「軍人」という職業に向かなかった事だけは確かだ。
「‥‥不愉快ですね」
 イビルアイズに搭乗の澄野・絣(gb3855)は思わず本音を口にした。
「自分の責任を放棄して、その事に負い目を感じないなんて‥‥最低です」
 骸龍を駆る流 星之丞(ga1928)は、佐賀奪還の「烈一号」作戦を通し度々戦場を共にした「睦中隊」の面々を思い出していた。
 熊本士官学校での教育途中に特務兵として動員された少年少女達。そのうちの少なからぬ人数が、天勝指揮の佐賀バグア軍がとった「一般人の歩兵を優先的に狙う」消耗戦術により死傷している。
「本当は誰であれ、信じられたら良かったのですが‥‥この男からは、危険な野心の香りしかしないから」

 傭兵達は編隊を二手に分け、大牟田の市街地を過ぎた山岳地帯上空で天勝機とランデブーすべく体制を整えた。

A班:星之丞、クリア、修司、我斬
B班:時任 絃也(ga0983)、緑川安則(ga4773)、山崎 健二(ga8182)、絣

 大牟田〜熊本間など、超音速のKVならば僅かな距離だ。
 先行したA班の4機は、間もなく大牟田方面から飛来する異形の戦闘機を視認した。
「ご苦労様です少佐殿、コレより我らがエスコートします」
 まず我斬がオープン回線でHWに通信を送った。
『貴官らは‥‥?』
 正規軍にしては機種もバラバラの編隊に違和感を覚えたのか、訝しむような天勝の応答が入る。
「ご安心ください。我々はULT所属の傭兵部隊です」
『そうか、出迎えご苦労。では、司令部への誘導を頼む』
 相手が傭兵と知るや、天勝の言葉は急に居丈高に変わった。
(「この野郎‥‥っ!」)
 怒りにこめかみをひくひくさせながらも、我漸は愛想よく言葉を続ける。
「バグアの情報のみならずあの本星型HWまで鹵獲して来るとは素晴らしい、よくあの連中を欺けたものですね?」
 褒めそやしながらも横付けした機体の速度を徐々に落し、巧みに時間を稼ぐ。
『ふっ、まあな。我々人類にとって貴重な鹵獲機だ、くれぐれも丁重に扱ってくれよ?』
 我斬の言葉に気を良くしたのか、さも得意げに答える天勝。
「人質を取られて大変だったんだね、バグアはなんて酷い連中なんだろう」
「仲間を人質に取られ、あの様な非道を行わねばならなかった心中、お察しします‥‥少佐も重い十字架を背負っているんですね。だからこそ、僕達が責任を持ってお連れします」
 クリアや星之丞も口々に労りの言葉をかける。その一方で、星之丞は骸龍の高性能カメラを使い本星型HWの記録撮影を怠らなかったが。
『うむ、判って貰えて嬉しいよ‥‥全くバグアの野蛮さは筆舌に尽くしがたい。ことにあのダム・ダル(gz0119)の傲慢さときたら――あんな輩は一刻も早く殲滅せねばならん』
 さらに図に乗った天勝が春日バグア軍や司令官ダム・ダルの悪口をベラベラと喋る。もはやどこまで演技でどこまでが本音か判らず、傭兵達は腹を抱えて笑い出しそうになるのを必死で堪えた。
「ちょっとお時間宜しいですか? 少々、個人的にお聞きしたいことが」
 ふと思い出したように、修司が口を挟んだ。
『何かね?』
「少佐は部下と一般市民を人質に取られる形で、一時的とは言えバグア軍に所属されておられますが、UPC軍とバグア軍では組織風土に何か違いはありましたかね?」
『まあ、同じ軍でも連中は軍隊アリに近いな。上官の命令は絶対、逆らえばその場で粛清も覚悟せねばならん。UPCの様に自由な空気は皆無といって良い』
「なるほど。それではさぞご不自由したことでしょう」
『全くだ‥‥司令部に戻ったら、まずゆっくりシャワーでも浴びてくつろぎたいよ』
「そのバグア軍に所属されていたご経験を踏まえて、ですが。少佐のこの投降によって、人質にされております少佐の部下と一般市民に対して、バグア軍はどういった処分を下すとお考えですか?」
『それは‥‥』
 一瞬、通信機の向こうで口ごもる気配。
「どうかされましたか? よもや、何も考えず逃げ出してきたとでも?」
『――いや! 私は騙されていたのだ! 奴らの言うとおりにすれば部下と市民の安全は保障するといわれて嫌々ながら指揮をとらされていたが‥‥その実、部下は全て洗脳され、市民達は福岡へと連行されていた! だから私も、奴らに従う理由はなくなったと判断して‥‥』
(「やれやれ。人間、保身のためとなると大した雄弁家になれるものですな」)
 修司はすっかり鼻白んだが、あえてそれ以上の追及は控えた。
 全ては、後続のB班と合流してからだ。

 間もなくB班4機も合流。A班に代ってHWを先導し、見かけの上は「8機で天勝を護衛」という形となった。
 ただし実際には「包囲」だが。
『いささか大袈裟ではないか? ともあれ、早く司令部へ案内してくれ』
 不安に駆られたのか、HWの速度を上げようとする天勝。だがB班4機に頭を抑えられ前に出られない。
「こちらはUPC九州方面隊司令部防空隊。天勝清秀少佐。残念ながら、こちら側の情報では貴官は上官を殺害、佐賀バグア軍指揮官となったと報告を受けており、戦況が不利となったがゆえに目達原駐屯地から逃走したと見ております」
「悪いが着陸場所を変更させて貰う」
 B班所属の安則と絃也が、雷電とR−01改からそれぞれ通信を送った。
『何だと? それでは約束が違う!』
「理由としては一度裏切った人間が更に裏切る、この時点で人として信用が出来んのが一つ」
 絃也が淡々と言葉を継ぐ。
『あ、ああ‥‥むろん今すぐ信じてくれとはいわん。だから、このHWには一切――』
「それに非武装だと言われても、其れを全面的には信用できんのでな」
『見れば判るだろう!? プロトン砲はセーフティをかけた状態でスイッチを壊してあるから、こちらの意志では発射できん!』
「また、この事は基地司令より我々に一任されている故、確認を取ること自体は無意味だ」
『‥‥』
「次に、バグアの機体には自爆装置があるらしいと聴いている、其れがどの程度の威力かは知らんが、基地に被害を出すのは避けたい。また着陸後は車両により基地に賓客として送らせてもう、ただ機体については技術者により安全を確認させて貰うので、了承されたい」
『そんな悠長なことはしてられん! 今この瞬間にも春日からバグアの追っ手がかかるかもしれんのだぞ!?』
「その心配はないよ。そっち方面には既に足止めの別働隊を回してある」
 焦れる天勝に対し、健二が冷ややかに声をかけた。
 絣は通信こそしなかったが、いつでも交戦できる態勢をとって無言の圧力を加える。
『貴様ら‥‥俺を誰だと思っている? 正規軍将校だぞ!?』
 もはやオープン回線である事も忘れ、男は逆上して口汚く喚き始めた。
「まあまあみんな、少佐殿の立場も察してあげようよ。裏切り者の汚名を覚悟で投降してきてくれたんだしさ」
 表向き天勝を庇うように、クリアが仲間達を宥める。
『そ、そうだ‥‥そこのおまえ、物わかりが良いではないか』
「ときに‥‥大川航空戦では大兵力を殲滅されて、その後の地上戦でも一般歩兵を狙えなんて人非人な手段の挙句、軽視したKVにボコボコにされたんだよね?」
『なん‥‥だと?』
「この指示をした指揮官は、よっぽど三流策士なんだねー。いったい誰なんだろ? 顔が見たいよ」
 己のプライドに斬り込むクリアの一撃に、天勝はしばし押し黙った。
『‥‥と、とにかく本機に自爆装置など存在しない! それは自分が保障する。余計なことは考えずに、早く司令部に連れて行け‥‥これは上官命令だぞ!』
「其の機体は盗んだもの同じ、お前さんが大丈夫といっても、気づいたバグア側が自爆させないといった確証もあるまい」
「念のために申し上げますが、誘導に従わない場合は司令部より撃墜命令が出ております。お願いですので誘導に従ってください。それとも何か従えない理由でもあるのでしょうか?」
 絃也の冷ややかな指摘に加え、さらに追い打ちをかける安則の宣告。
『だから――』
「今連絡が入りました‥‥天勝少佐」
 そのタイミングを狙い、すかさず星之丞が会話に加わった。
「諜報部の無線傍受により、その機体自体に何らかの細工が施された可能性があります。折角脱出してこられた貴方をそんな事で失うわけにはいきません、こちらの誘導に従って、この地点に着陸して貰えないでしょうか?」
 いかにも天勝の身を案じるような声音。だがそれは、彼の言い逃れを完全に封じる最後の一手でもあった。
 数秒の沈黙の後――。
『こ、このっ‥‥傭兵風情がぁぁっ!!』
 吠えるような叫びと共に、前方のB班に向けてHWがプロトン砲を発射した。
 ついに羊の皮を被った狼が本性を現わしたのだ。
 予め警戒していた4機のKVは散開してこの攻撃を回避。
 同時にA班4機も戦闘態勢に入った。
「残念です、貴方の才能をどうして人々の為に役立てて貰えなかったのか。そして、もう終わりです‥‥今の一部始終は、メディアに乗せて通信させて貰いました」
 その言葉通り、天勝の暴言とプロトン砲発射シーンはいまこの瞬間、骸龍の無線と高性能カメラを通して一般メディアにも中継されたはずだ。
 しかし、もはや怒りに我を忘れた天勝の耳に星之丞の言葉など入っていなかった。
 獣のごとく罵詈雑言を喚きつつ、なりふり構わず熊本方面へと加速しようと図る。
 だがその前に、ブーストをかけた傭兵側KV部隊が立ちはだかった。
「やれやれ、俺に敬語なんぞ使わせやがってこの恥知らずが」
 天勝をおだてている最中、絶えず背中に虫酸が走るのを堪えていた我斬は、機体を大きく上下に動かす空戦機動でプロトン砲をかわしながら接近、ファランクス・アテナイを交え重機関砲、レーザーカノンで様子見の攻撃を加えた。
 この時点で、まだ強化FFは発動しない。
「ついに馬脚を現わしたな」
 絃也は僚機と連携しつつ、Aファング併用の短距離AAMを叩き込んだ。
 そこで初めてHWの機体が強化FFの強い赤光を放った。
 しかも命中と共にHWの外装甲が僅かに削がれた所から見て、ある程度のダメージは与えたらしい。
 天勝も機体の左右からバグア式ソードウィングを展開し、プロトン砲を乱射して死にものぐるいの突破を図るが、その操縦の腕前はエースと呼ぶにはほど遠い。
 それでも相手は腐っても本星型HW。
「そうは、させないわよ!」
 絣がBRキャンセラーを発動し敵HWに重力波ジャミングを仕掛けると共に、SライフルD−02の狙撃で出鼻を挫く。
 他の傭兵達も天勝機を包囲し、波状攻撃を開始した。
「なんだかんだと誤魔化そうとしやがって、大物気取ってるわりにゃ、やる事は姑息じゃねぇか?」
 健二のディアブロ改から迸るM−12強化型粒子砲の光条がKVより一回り大きな中型HWの巨体を揺さぶる。
「いい加減、潔く諦めたらどうですかねえ?」
 修司は敵の強化FF発動時には長距離バルカンを、通常FF時にはより威力の高いSライフルD−02を使い分け、より効率的な練力消耗を狙った。
「陸自の恥さらしが! 貴様のような佐官がいたというだけでも同じ陸自出身として恥ずかしい!」
 HWの進路を阻むように回り込んだ安則は、超伝導アクチュエータを起動させ高初速滑空砲、各種ロケット弾を叩き込む。
「だから‥‥三流策士なんだよっ!」
 クリアがフェニックスの空中変形スタビライザーを発動。機盾レグルスで敵の翼刃を受け止め、練剣「白雪」で反撃を加えた時、それまで強い赤光を放っていた強化FFの輝きが不意に衰えた。
 練力切れと見た傭兵達は一気にたたみ込む。
「俺はなあ、てめえみたいに人類を端から見放して賢い素振りをとる腐れ外道が一番我慢ならねえ!!」
 俄斬の翼刃がHWの装甲を深々と切り裂いた直後。
 再チャージを終えた健二の粒子砲が、Pフォースで増幅された光の槍となってHWの機体を貫いた。
「流石、対シェイド用の武器だな‥‥大した威力だ」

「うわぁああああっ!?」
 機体の制御を失い、錐もみ状態で回転するHWの機内で男は悲鳴を上げていた。
『残念だったな、天勝。もう少し使える男かと思っていたが』
「だ、ダム・ダル様!? お慈悲を! せめていま一度――」
『‥‥ところで、誰が野蛮で傲慢だと?』
 バグア側の遠隔操作によりHWに搭載されたフレア弾が作動。天勝の肉体はHWもろとも融解した。

「ま、裏切り者の末路ってのは、総じて惨めな最後を遂げるもんだよな」
 山地の上空で巨大な火球と化した天勝機の最期を眺め、健二は肩を竦めた。


●UPC九州方面隊司令部より通達
 強化人間・天勝清秀無力化の功績により、本依頼参加者8名には通常報酬に加え、懸賞金80万Cを均等分配するものである。

<了>