タイトル:船団護衛作戦マスター:対馬正治

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/01/26 15:53

●オープニング本文


 2008年1月X日。
 新年を祝う本土を尻目に、九州地方では依然としてバグア・人類両軍の激しい戦闘が続いている。
「プライウェン」作戦における航空決戦の結果、福岡のバグア基地に大打撃を与えたとはいえ、地上においては旧陸自を主力とするUPC陸軍が、キメラや地上型ワームを相手に一進一退の攻防を繰り広げていた。

「もっとKV部隊を投入できればいいんだがな‥‥」
 UPC日本本部の司令所で、九州地区の反抗作戦を担当する将校の一人がグチをこぼした。
 名古屋防衛戦において改めてその威力を示した空陸万能戦闘機・ナイトフォーゲルであるが、残念ながら操縦できるパイロット――すなわち能力者の数は限られている。また次なる大規模作戦に備えるため、軍上層部からは正規軍KV部隊を極力温存するようにとの通達が下されていた。
「申し訳ないが、九州にはしばらく手持ちの戦力で踏ん張って貰うしかないか」
「上層部からは、KV以外の弾薬や軍需物資については補充を惜しまない、とのことですが‥‥」
 同じ作戦卓を囲む参謀の一人が発言した。
「問題は、このところ佐世保への補給船団に少なからぬ被害が出ておりまして」
「あの海蛇野郎か‥‥」
 将校が忌々しげに舌打ちした。
 コードネーム「シーサーペント」――伝説の大海蛇そのままに、深海を自在に泳ぎ次々と補給船やタンカーを餌食にする大型水中キメラ。
 名古屋防衛を巡る大規模航空戦で多数の飛行ワームを失ったバグア軍は、その穴埋めとして相当数のシーサーペントを日本近海に放ち、特に佐世保港に近づく補給船団に対し執拗な攻撃を繰り返していた。
 KVの本格配備により空と陸においては辛うじてバグアに対抗しうる手段を手にした人類であるが、未だにこれら水中型キメラに対しては決定的な対策を持ち得ないでいる。
 対キメラ戦専用の軍艦や潜水艦の建造も各国で急ピッチで進められているものの、建造中にバグア軍の妨害を受けるケースも多く、その配備は遅々として進んでいない。
 UPC東アジア海軍にしても、旧海上自衛隊やASEAN諸国の在来型艦艇の武装を強化し、何とかやりくりしているというのが現状であった。
「そういえば‥‥ラスト・ホープに空母が1隻あったな」
「『サラスワティ』ですか? どこかの国の王女が艦長を務めているとかいう」
「そうそう。あれはSES兵器搭載の最新鋭艦というじゃないか。次の補給船団護送に出して貰うわけにいかんかね?」
「ULTに依頼すれば可能と思いますが‥‥実はあの空母、一つ問題がありまして」
「と、いうと?」
「どういうわけか、自前の艦載機を持ってないんですよ。つまり、パイロットは傭兵として別口で募集することになります」

 ◆◆◆

 同時刻。東シナ海、空母「サラスワティ」艦上。
「そろそろ、来る頃ですな」
 副長のシンハ中佐が腕時計を見やり、傍らに立つ艦長にしてプリネア王国王女、ラクスミ・ファラームに告げた。
「うむ。やはり偵察機くらいは、自前のがないと体裁が悪いからのう」
 艦尾上空から接近する2つの機影を眺め、民族服をまとった若き王女は満足げに頷いた。
 先だって中国の奉天北方工業公司に発注しておいた電子戦偵察機「岩龍」2機が、本日ようやく納品されるのだ。ヘリを別にすれば、同空母で初の専属搭載機ということになる。
「ところで、パイロットも能力者なのじゃろう?」
「はっ。何でも奉天の方で訓練した、双子の能力者だとか」
「ほう? それは珍しい」
 やがて誘導灯の指示に従い、2機の岩龍が相次いで着艦した。
 デッキクルーが素早く駆け寄り、パイロットが降りるのを手伝おうとするが――。
 その前に風防が開き、小さな人影がピョンと甲板に飛び降りた。
「ワ〜イ。空母だ空母だ♪ いっちばん乗りアル〜」
「あーっ海花ってばズルい! 待ってよー!」
(「な、何じゃ? この子らは‥‥?」)
 ラクスミは呆気にとられて、子鼠のごとく甲板上を駆け回るパイロットスーツの子供たちを見守った。
「ところで王女様はどこアル?」
「あの人がそうじゃないかな?」
 2人はヘルメットを脱ぎ、テテテっ、と駆け寄ってきた。
 ラクスミは未だに呆れて声が出ない。
 確かに能力者に年齢は関係ない。
 事実、今まで搭乗した傭兵の中には11歳のサイエンティストもいた。
 だが、この2人は――。
「李・海花(リー・ハイファ)、本日付で着任したアル♪」
「李・海狼(リー・ハイラン)です。よろしく!」
 黒髪を左右にお団子状に結った少女と、おかっぱ頭の少年。
 元気よく敬礼する双子と思しき2人は、どう見ても6、7歳の幼児である。
 冗談のようだが、たった今「岩龍」を見事に着艦させた腕前は、明らかに訓練された軍用パイロットのものだった。

●参加者一覧

鋼 蒼志(ga0165
27歳・♂・GD
エミール・ゲイジ(ga0181
20歳・♂・SN
雪ノ下正和(ga0219
16歳・♂・AA
綾峰・透華(ga0469
16歳・♀・SN
麓みゆり(ga2049
22歳・♀・FT
リヒト・グラオベン(ga2826
21歳・♂・PN
明星 那由他(ga4081
11歳・♂・ER
佐伯 純(ga5022
26歳・♀・SN

●リプレイ本文

「これが噂に名高い『サラスワティ』‥‥名前に違わぬ壮観さですね」
 空母の甲板上で愛機から降りたリヒト・グラオベン(ga2826)は感慨深げに呟き、初顔合わせとなる艦長ラクスミ・ファラーム(gz0031)、副長シンハ中佐以下出迎えのクルー達に挨拶と自己紹介を済ませた。
 その傍らでは、
「あ〜、かわいい〜! 話には聞いていたけど、本当に子供なんだー」
 同艦への搭乗は既に4度目となる綾峰・透華(ga0469)が、新任の「岩龍」パイロットである李・海狼(リー・ハイラン)と李・海花(リー・ハイファ)の双子を見てギューっと抱き締めていた。
「まだちっちゃいのに、パイロットやっているなんて凄いねっ!」
「子供じゃないアル。プリネア海軍の伍長アル!」
 と不満そうに頬を膨らます妹の海花に比べ、兄の海狼は赤くなって照れている。
 一方その様子を見ながら、
「UPCが‥‥児童福祉団体に‥‥訴えられたらどうしよう‥‥? い、一応、自分の意志で、やってるんだから大丈夫‥‥だよね?」
 と狼狽しているのは明星 那由他(ga4081)。
 それをいったら彼もまだ11歳のれっきとした「児童」なのだが、自分より年下の能力者に会うのはおそらく初めてだから無理もない。
「案ずるな。念のためUPC中国支部に確認を取ったが、間違いなく承認を受けた能力者ということじゃ‥‥」
 やや複雑な面持ちでラクスミが説明した。
 現在、その中国は広大な国土の2/3を戦火に見舞われ、各地に難民や戦災孤児が溢れ返っている。李兄妹の場合は山東省の難民キャンプで保護された際に能力者適性が判明し、その後同国のメガコーポレーション「奉天北方工業公司」に引き取られてエミタ移植と初期訓練を受けたのだという。
 正規の能力者とはいえわずか七つの双子を戦場に出すのは王女としても本意でないようだったが、殆ど無政府状態に近い中国の現状を思えば、まだ自艦の搭乗員に迎えた方が安全だと判断したのだろう。
「今回の任務を共にする雪ノ下正和(ga0219)です。よろしく!」
 やはり着艦を済ませた正和から礼儀正しく挨拶され、透華の抱擁から解放された李兄妹は慌てて背筋を伸ばして敬礼を返した。
「よろしくね、海花、海狼」
 初の実戦に緊張を隠せない双子に、麓みゆり(ga2049)がにっこり笑いかける。
「あ、そうだ。王女様、これ‥‥」
 今回の依頼にあたってサイエンティストである那由他は、事前にシーサーペントの大きさや生態のデータを研究所から貰い、航路付近に出る同じ位の大きさの海洋生物との航跡や行動、体温分布での見分け方の参考資料を作成しメモリーカードに記録していた。
「急ごしらえだし、データも完璧じゃないから‥‥参考くらいですけど‥‥よければ使ってください」
「おお、これは助かる。艦のCDC(戦闘指揮センター)へ回しておこう」
 カードを受け取ると、提督服の王女はシンハ中佐を従え艦橋へと戻っていった。

 その場に残った傭兵達は、李兄妹も交えて今回の任務について打ち合わせた。
 間もなく「サラスワティ」は大阪港を出港した輸送船5隻と合流、空母が先頭になった単縦陣を敷き足かけ2日で佐世保港を目指す。
 艦隊の基準速力は一戦速18ノット。九州までは黒潮の中央、水深の深い海域を南西に進む。
 これは佐伯 純(ga5022)の進言によるものである。
 この海域は微生物や魚類が非常に少なく、キメラの餌が少ないために生息に適さない事、かつ一般商船等の航路から外れており、バグア軍が該当海域に戦力を配置する可能性が少ない――というのが彼女の見解だった。
 とはいえ、それで百%の安全が保証されるとは限らない。そのため、空母本艦のソナー範囲から外れる後尾2隻の輸送船の上空には常時2機の哨戒ヘリを張り付け、KV8機と岩龍2機、計10機が2機ずつペアを組み4時間交替のローテーションで船団の上空警戒にあたるプランとなっていた。
 また対キメラ班を鋼 蒼志(ga0165)、正和、みゆり、リヒト、純、海花、対ワーム班をエミール・ゲイジ(ga0181)、透華、那由他、海狼が担当し、それぞれ海と空からの脅威に備える手筈である。
 第1ローテはエミールと海狼。輸送船との合流に先立っての哨戒である。
「無いとは思うけど、合流前にやられたら話にならないしな」
「よろしくお願いしまーす!」
 ペコリと頭を下げた海狼が、体格に合わせて専用シートを備え付けた岩龍に小さな体でよじ登っていく。ちなみに李兄姉の岩龍は電子戦・偵察等の支援任務が主体なので、搭載している武装もバルカン砲と煙幕弾のみだ。
(「腕は問題無いらしいけど、機体のこともあるしちゃんとフォローしてやらないとな」)
 そう思いつつ、エミールもS−01に乗り組んだ。
『海狼、おまえはともかく無理するなよ。岩龍が墜とされるのは困るし‥‥子供が墜とされるのは、もっと困る』
『は、はいっ』
 そういって幼い相棒に釘を刺した後、エミールは飛行型ワームの襲来、特に哨戒ヘリが狙われないように注意した。
『こちらアルバトロス3、Magi。異常はないか?』
『アルバトロス10、ウルフ。レーダーにも異常ありません』
 果たして空母と輸送船団は無事合流を果たし、4時間後2人は帰投した。
 第2ローテはみゆり&海花。
「気をつけて、無茶しないでね」
 初出撃となる海花の緊張をほぐすよう声をかけ、みゆりもR−01で艦から飛び立つ。
「期間は短いけれど、ちょっぴり長い海と空の旅になりそうね」
 岩龍との連携を保ちつつ、護衛の優先順位を輸送船・哨戒ヘリ・空母として周辺の空と海を警戒。彼女らのレーダーやヘリのソナーが得た情報は全てリアルタイムで空母のCDCとデータリンクし、艦隊として情報を共有できるようになっている。
 むろん目視警戒も怠らない。みゆりはマフラーで首が擦れないよう工夫し、長時間の哨戒任務を務めた。
 みゆりたちが帰投した頃には、既に合流後8時間が経過していた。
「これから四時間は身動き取れないかぁ‥‥空を飛ぶのは気持ちいいけど、身動き取れないのは息苦しいや‥‥」
 那由他と組んで第3ローテとなる透華が嘆息した。
 かつて博多湾沖や名古屋で体験したワーム相手の空戦に比べると、船団護衛は危険度こそ低いものの地道で耐久力を要する任務だ。
 発艦後、那由他は事前に確認しておいた最新の競合区域やバグア勢力圏の地図を参考に、ワームが飛来する可能性の高い方角を特に警戒した。
 だが、10分ほど後――。
 船団後方で哨戒にあたっていたヘリが投下したソノブイの一つが、右舷後方数キロから接近する怪しい影を捕らえた。全長約5m、鯨にしては妙に細長く、それは那由他が収集したシーサーペントのデータとほぼ一致していた。
「アルバトロス5、stone wing。海中にキメラらしき物体確認。迎撃願います!」
 直ちに待機中の対キメラ班6機が相次いで出撃した。
 普段はKVの手の届かない深海に潜む水中キメラも、体当たりで船舶を攻撃するには自ら浅海まで浮上する必要がある。
 海面上に、最後尾の輸送船を目指して一直線に進む魚雷のような白い航跡が浮かんだ。
「アルバトロス6、白狼。俺の招待に応じた時は、盛大に歓迎してあげて下さい」
 リヒト機が自ら囮となり、海面ギリギリを低空飛行して敵を誘う。
 案の定、シーサーペントが海面から鎌首をもたげて冷気ブレスを吐くが、急上昇したKVには届かない。
 初めの「歓迎役」を務めたのは、リヒトの後方から飛来した蒼志機だった。
「ミサイルの雨――いや、むしろ暴風雨だな! どこまで耐えられるかね!」
 まんまと誘き出されたキメラ目がけて、バイパーのミサイルを発射する。
 続いて急降下したみゆり機が84mmロケット8発を叩き込み、文字通りミサイルとロケット弾の嵐を浴びたキメラは苦しげにのたうちながら海底深く沈んでいった。
 時を同じくして、今度は「サラスワティ」のソナーが左舷から接近してくる新たなシーサーペントを捕らえた。
 空母のVLSから発射されたアスロックが上空で大きく弧を描いて海面に落下、弾頭部がそのまま魚雷となって水面下の標的を追尾する。
 直撃こそしなかったものの、水中爆発の煽りをくった大海蛇が一瞬その姿を海上に表した。
 その機を逃さず、低空飛行で迫った正和機がG型放電装置の電撃を浴びせる。攻撃力自体は低いものの、水属性のキメラに放電の効果は大きかった。悲鳴のような咆吼を上げて海面を跳ね回るシーサーペントに、後続の純機がロケット弾を浴びせてとどめを刺した。
 その後空母から待機中の哨戒ヘリも飛び立って周辺を警戒したが、この海域に他のキメラは確認されず、上空警戒の透華&那由他機を残しKV隊は帰投した。

 九州南端、大隈半島の南方を通過した輸送船団は、黒潮から外れる際、シーサーペントを攪乱するため進行方向とは別の方角へVLSを使用した囮弾を射出した。
 目指す佐世保まではここから約半日というところ。
 九州近海は好漁場で、付近は一般商船の航路でもある。キメラとの遭遇を鑑み、視界を確保できる日没までの間に黒島南東海域を目指して北上する。
 それまでの間、3回ほどシーサーペントの襲撃を受けたが、いずれも最初と同様、空母との連携で撃退した。キメラとしては知能も低く、動きも鈍い大海蛇は、先に位置さえつかんでしまえばさほど怖ろしい相手ではなかった。
 日没後、第4ローテとなるリヒト&蒼志のペアが上空警戒に上がった。
 そのまま2時間ほどは異常なく飛び続け、
「空も海も静かなものですね‥‥。このようにフライトだけなら楽なのですが」
 そう蒼志が呟いたとき。
 KVのレーダーが、九州方面から超音速で接近する2つの機影をとらえた。
 友軍機ではない。
「アルバトロス2、Bicorn。アンノウン2機を確認。敵ワームと思われる」
 通信を受けた空母から立て続けに照明弾が打ち上げられ、対ワーム班の4機がスキージャンプ甲板を蹴って急上昇してくる。
 照明弾の光に浮かび上がった小型ワーム2機を、リヒト機はギリギリまで引きつけ、ガトリング砲で牽制。慣性制御でよけきった敵機が輸送船団を襲うため方向転換したところで、
「そのスキ、逃すわけにはいきません!」
 ブレス・ノウを乗せた115mm滑腔砲を発射、1機に命中させた。
 ただし彼の練力も残り少ない。対ワーム班4機が上がってきた所で、蒼志と共に補給のため空母へ帰還した。

「名古屋以来、久々の空戦だな。いっちょ気合入れていきますかね!」
 エミールはECCMを担当する海狼機を後方にさがらせ、透華・那由他と共に突撃した。
 ワーム側も輸送船団を狙いプロトン砲を放とうとするが、空母から打ち上げられるレーザーやミサイルの対空砲火を避けるのに精一杯で、攻撃のタイミングをつかみそこねているようだ。
 まずリヒト機が命中弾を与えたワームを狙い遠距離からスナイパーライフル、さらに間合いを詰めてミサイルを発射。
 ついで透華機・那由他機が発射したミサイルがワームに殺到。まず1機を撃墜した。
 残る1機を3機で包囲し、必死に逃げ回るワームをレーザーとガトリング砲で集中攻撃し、少しずつ敵の防御力を削っていく。
 もはやここまでと観念したか、いったん慣性制御で3機から離れたワームがそのまま体当たりを狙うかのように輸送船めがけて急降下していく。まるで特攻だが、ワームの殆どはAIのオートパイロットといわれているので、これもプログラムされた戦術に過ぎないのだろう。
 1隻でも道連れにしようと図るワームにエミール機がブーストで追いすがり、後方からロックオン――レーザー発射。光の矢に射抜かれた異星人の円盤は、輸送船の手前で海面に激突、そのまま天草灘の藻屑と化した。
 エミールのヘルメットに無線を通して透華、那由他、それに海狼の歓声が響いた。
 その後、しばらく対ワーム班は上空警戒を続けたが、再び飛行ワームが襲来する気配はなかった。バグア側も九州本土でUPC軍との攻防を続けている都合上、大規模な航空攻撃を仕掛ける余裕はないのだろう。
 燃料と武装の補給を終えて再び上がってきたリヒト&蒼志に哨戒任務を引き継ぎ、3機のKVと岩龍は空母へと引き返した。

 翌朝――いよいよ佐世保に近づいた「サラスワティ」から、全てのKVと岩龍、そして哨戒ヘリ6機が飛び立った。4時間おきの休憩はあったといえ、その間にシーサーペントや飛行ワームとの戦闘もあり、殆ど徹夜で護衛任務を続けてきた傭兵達の疲労も限界に達していたが、敵の最後の攻撃に備え、ここから佐世保港までは行動可能な全機による警戒に切替えたのだ。
 だが、間もなくその必要は無いことが判った。
 レーダーに30機近い光点が映ると同時に、友軍からの無線が飛び込む。
『こちら佐世保基地航空隊。諸君らの船団を歓迎する』
 佐世保港に停泊するUPC海軍の大型空母を基地とする正規軍KV部隊が、貴重な戦力を割いて制空権を確保してくれたのだ。
 無傷のまま入港する久々の補給船団を、港に集まったUPC軍の将兵達が帽子を振り歓呼の声で迎え入れる。
 その上空を、リヒトは応援と鼓舞の思いを込めてR−01で旋回する。
「今回は人型形態を全く使わなかったのが残念ですね‥‥KVはそちらの方がかっこいいと思うのですがね」
 と、少々物足りなさそうに呟く蒼志。
『あー疲れちゃった。空母に帰ったら、みんなでアイス食べようね?』
 安堵の笑みを浮かべつつ、透華は海狼・海花の兄姉に通信を送るのであった。

<了>