タイトル:水中攻撃兵器開発プランマスター:対馬正治

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/02/04 18:14

●オープニング本文


●銀河重工本社ビル
 UPCが提唱した次期主力戦闘機コンペに備え、社内でも多くのプロジェクトチームが立ち上げられ、次世代の戦闘機開発に沸き返っている頃。
 同じ兵器開発部門の一角で、地味に目立たない中堅技術者たちのグループが、未来科学研究所の蜂ノ瀬教授と助手のナタリア・アルテミエフ(gz0012)、そしてUPC海軍将校を交えてテーブルを囲んでいた。
「問題はですね。現在のKVには、水中型キメラに対する有効な武装が存在しない。要するに決定的な対潜能力が欠けているということです」
 テーブルの上にグラフを広げ、UPC将校が説明した。
「ご覧下さい。ここ1年の、我が国周辺海域における輸送船やタンカーの被害です。これまでもむろんキメラによる船舶被害はありましたが、特に名古屋防衛戦の後くらいから喪失数が鰻登りに上がっているでしょう?」
「要するに、バグアも戦術を変えてきたということだな」
 以前のKV新型機コンペのツテで、再び銀河重工に招聘された蜂ノ瀬がコメントした。
「これまで連中は地上の資源地帯や、労働力を確保できる大都市圏の占領にしか興味がなかった。『制海権を握る』だの『通商破壊』だのといった発想もなかったのだろうね」
「ですが、これからは違う――先の大規模戦闘で人類側に陸と空で敗北を喫した彼らは、今や広大な海に目を向けつつあります」
 ここで将校は声を落とし、
「確かに我々はユニバースナイトという大きな戦力を手にしました。しかし、仮に今回の大規模作戦で北米の工業地帯を奪回しても、大陸間の補給線を寸断されては今後の拠点奪回のプランにも大きな支障が出ます」
「これはあくまで未確認の情報なんだが――どうやら敵のワームには水中戦に特化したタイプが存在しているらしい。幸い、今のところ本格的に実戦配備されている様子はないが」
 蜂ノ瀬が口を挟んだ。
「体当たりと冷気ブレスくらいしか能のない、あのシーサーペントでさえ扱いかねている現状だ。もし敵が高い機動性と強力な武装を備えた水中型ワームや水中キメラを投入してきたら‥‥いったいどうなると思うかね?」
「しかしそれでしたら、弊社も含め、各国メガコーポレーションで既に水中戦用KVの開発が進んでいると聞いておりますが?」
 技術者の一人が、訝しげに尋ねた。何故自分達がこうして集められたのか、よく判らない――といった風情だ。
「空陸万能のKVといえども、水中となるとまた話は別だ。克服すべき技術的課題は多いし、実戦配備はまだ先の事になるだろう。といって、能力者専用の対潜ヘリや対潜哨戒機を開発したところで、スピードの遅さから飛行ワームの餌食になるのは目に見えておる。――そこでだ」
 蜂ノ瀬はぐっと身を乗り出し、
「現用のKVにそのまま搭載できる、水中攻撃用のSES兵器を開発して欲しい。傭兵個人が購入できるくらい低コストで、しかも威力抜群のやつをな。それに今の内に開発しておけば、将来水中戦用KVが実用化された時もそのまま流用できるだろう? ビジネスとしても悪い話じゃないと思うが」

●本社ビル〜ラウンジ
「先ほどお会いした技術者の皆さんは、いったいどういう方々なんですか?」
 愛用の葉巻をくゆらす蜂ノ瀬に、ナタリアが尋ねた。
「彼らはバグアが襲来するまで、専ら魚雷や機雷といった水中兵器の開発に当たっていた連中だよ。この戦争ではこれまで空と陸の戦いがメインだったから、社内ではワリを食ってすっかり自信をなくしているようだが‥‥餅は餅屋というだろう?」
「でも、相手は潜水艦じゃなくてキメラやワームですよ?」
「まあその辺は‥‥例によって、現場の傭兵達の意見を聞くことだな」
(「水中型ワーム‥‥確かに本格的に投入されたら、厄介な相手だわ」)
 UK進水式の際に襲撃してきたゴーレムやタートルワームの事も思い合わせ、ナタリアはバグアとの戦争が新しい局面を迎えた事を感じつつ、ULTへ依頼を出すべく席を立った。

●参加者一覧

綿貫 衛司(ga0056
30歳・♂・AA
井上・セレスタ(ga0186
20歳・♀・ST
雪ノ下正和(ga0219
16歳・♂・AA
グラットン・S・彩(ga1321
16歳・♀・FT
オルランド・イブラヒム(ga2438
34歳・♂・JG
櫻小路・なでしこ(ga3607
18歳・♀・SN
ミオ・リトマイネン(ga4310
14歳・♀・SN
時雨・奏(ga4779
25歳・♂・PN
佐伯 純(ga5022
26歳・♀・SN
瓜生 巴(ga5119
20歳・♀・DG

●リプレイ本文

(「この前の新型機プロジェクトとは、えらい違いね‥‥」)
 場所は同じ銀河重工本社ビル内といえ、倉庫の片隅を借りたような薄汚れた臨時の会議室、そしてテーブルを挟んで向かい合う年配の技術者たちをそれとなく見回し、ナタリア・アルテミエフ(gz0012)は思った。
 今日、彼女はUPC海軍の要請により、上司の蜂ノ瀬教授と共にKV用の水中攻撃兵器開発プランを練るため、渉外役として銀河重工を訪れている。
 しかし、今回のプロジェクトを共にする銀河側のメンバーは、以前に会った戦闘機開発の若手エンジニアと違い、海千山千のベテラン技術者達だ。
 ただしここ20年近く続いた対バグア戦争はその大半が空と陸の戦いであり、そんな情勢下で長年の間対潜兵器の開発に携わってきた彼ら「水雷屋」は社内でも冷遇され、UPCに対して強い不満を抱いているという。
 またUPCの上層部でも未だに「水中型ワーム」の実在に疑問を抱く者は多く、今回のプロジェクトも危機感を抱く有志の海軍将校達が銀河重工とパイプを持つ蜂ノ瀬教授に強く働きかけ、ようやく実現したものだと聞いている。
 そんな微妙な空気を、今回参加する若い能力者たちが上手く読みとってくれるかどうか――同席する10人の傭兵達をちらりと見やり、ナタリアは気が気でなかった。

 最初に発言を求めたのは、佐伯 純(ga5022)だった。
「えーと、何時ぞや『効かない』って研究所のお墨付きを貰ったのは、高出力の低周波ソナーだったんだけど、つまり、海水中の分子の振動を一切遮るって意味よね。キメラの発する力場で」
 元米軍パイロットの彼女は、例によって自信たっぷりの態度で切り出した。
「回析すら起こらないってことはキメラの全周を被っているって事を意味するワケよ。究極の話、力場を発生している間はキメラは泳げないって事じゃない?」
「‥‥あんた、いったい何いってんの?」
 還暦も近そうな初老の技術者が、禁煙パイプを爪楊枝のようにくわえたまま、ぶっきらぼうに口を挟んだ。
「究極も何も、現にあの海蛇キメラは堂々と泳いでタンカーや軍艦をボカスカ沈めてるじゃない。だからその対策に俺たちが呼び出されたんじゃないの?」
「そ、それはともかく‥‥電気は効くわけでしょ? 電流は音波と比べて速いとかそういうのは置いといて、水中じゃ電流は拡散するから単純にダメっと。熱も無理よね。それこそ――」
「G放電管があのキメラに効いたのは、ただ高圧電流を流したわけじゃなくて、雷属性のSES兵器だったからだろ?」
 別の技術者が、苦笑しながら純の言葉を遮った。50代半ば過ぎの、気むずかしそうな初老のエンジニアである。
 一見さえない老技師達から容赦のない指摘を受けしどろもどろになる純だが、それでも元米軍人のプライドで気を取り直し、自らの提案を得意げに披露する。
「‥‥結局、水中生物を殺傷できる音響兵器ってのが一番現実的だと思うけどね。どうすれば気取られないか、気取られて力場を形成されたら意味が‥‥」
「キメラは攻撃を受けた瞬間に本能的にフィールドを展開するんだが? 不意打ち程度で退治できる相手なら、正規軍もここまで苦労してないって。そのフィールドを破れるからこそ、SES兵器やおたくら能力者に価値があるんじゃないのか?」
 技術者の冷ややかな視線が、眼鏡越しに純を見上げた。
「‥‥佐伯君」
 黙って両者の会話を聞いていた蜂ノ瀬が、穏やかな声で割って入った。
「君はもういいよ。ご苦労だったね‥‥報酬は、規定通り口座に振り込んでおくから」
 純は顔を赤くして蜂ノ瀬と技術者達を睨み付けたが、やがて荷物をまとめると、乱暴に足音を立てて会議室から立ち去った。

「水中兵器の開発が立ち遅れている現状であるので、現場からの意見としては出来るだけ早い段階である程度高性能な武装を安価に、且つ大量に量産して普及して欲しい」
 室内に流れる気まずい空気を破るように、オルランド・イブラヒム(ga2438)が立ち上がって発言した。
「この条件を満たしていただければ暫くはそれで戦い続けられるので、可及的速やかにお願いする」
「もちろん、俺達もそのつもりよ? だからこそおたくら傭兵さんから、現場のニーズを聞いておきたいの。ただし知ったかぶりのウンチクは勘弁して欲しいけどね」
 禁煙パイプの技術者が、皮肉を込めた口調で笑う。
「この現状に合わせて、人型形態・戦闘機形態の両方で使える大型の対潜ミサイルランチャーを提案する」
 それでもオルランドは、ひるむことなく自案を提示した。
「技術に関しては使いまわしで良く、新しい試みは無くてよい。これで開発費は抑えられると思う」
「残念だけど、ミサイルは遠距離兵器になるから、今のKVだと空戦形態でしか使えないよ?」
「ならば、人型の方は切り捨てても構わない。いま必要なのは、安価で且つ命中率と火力を維持した量産兵器である。重量は普及しているS−01型、R−01型への搭載を考え100〜150まであっても構わない」
「ふむ‥‥まあ空中発射式のアスロックみたいなものか‥‥」
 そう呟きながら、真顔に戻って技術者達がメモを取る。
「兎にも角にも戦う為に武器が必要だ。細かい事は言わないから。そこそこ使えるものを急いでお願いしたい」
「その言葉を、俺達は待ってたんだよ。‥‥この18年間、ずっとね」
 席に戻ったオルランドに対し、技術者の一人がいった。

「20世紀後半の冷戦期において、世界トップクラスの対潜能力を支えた皆さんの奮起を願いたいですね」
 元陸自出身の綿貫 衛司(ga0056)は、まず技術者たちのプライドを鼓舞する事から始めた。
「話が脇に逸れましたが、私の提案は『高速長射程の魚雷』です。ワームが水中でどれ程の速度と機動性を有するか分かりませんが、仮に既存の空中型並の機動を行えるとすれば短射程では追尾できません、低速でも然り。ですのでSESの出力をほぼ速度に割振る等して速度と射程の長大化を狙います。威力は炸薬量を増やしてフィールドを貫けない事もないかと」
「それじゃ本末転倒だよ。敵のフィールドを貫くのがSESの役目だろう? そりゃ並のキメラのフィールドなら大質量兵器や高性能炸薬で貫けないこともないけど、最近バグアが繰り出してきた新型ワームの強化されたフィールドは、それさえ受け付けないと聞いてるよ? それにどんなに射程を伸ばしたところで、2kmを超えると移動物への命中は殆ど期待できないねえ。現在の彼我の技術差じゃ」
 技術者側が切り返してくる。彼らも兵器開発者として、対バグア戦に関する最新の情報を入手しているらしい。
「とはいえ‥‥高速魚雷じたいは不可能じゃないな。現にロシアはロケット推進で200ノットの魚雷を開発してるし」
 ただしそれだけの高速になると肝心の音響ホーミングが使えず、有効射程もごく限られたものになるだろうと断った上で、一応開発リストに加えて検討するとの返答だった。

「本来、私達サイエンティストはこのような開発依頼で力を発揮するタイプだと思いますので、お力になる事が出来ればと思います。精一杯やらせていただきますね」
 とにかくこの場の刺々しい雰囲気を和らげようと、井上・セレスタ(ga0186)は務めて謙虚な態度で挨拶した。
「私が提案するのは『アンカーガン(射出錨)』です。高強度のワイヤーに取り付けたアンカーを射出する機構。カテゴリーは中距離武器」
「つまり、陸戦形態のまま海岸や船上から攻撃したいって事だね?」
「はい。水中キメラは普段深海に潜んでいるようですが、船舶などに体当たりを仕掛ける際は浅海まで浮上してくるという特性を利用し、浮上してきたところにこれを発射、拘束します。水中への逃亡を防ぎ、その間に通常兵器で止めを刺す、という具合です。射出部を銛のようなものに変更しても良いかもしれませんね。電流を流す機構を取り付けることも想定しています。体内に直接電流を流されればひとたまりも無いはずです」
「まあ敵が水中型キメラなら、陸に上げちまえば何とでもなる。汎用性には欠けるが‥‥今の所はそれも一つの手かな」
 ちなみに陸戦形態のKVにもある程度の防水仕様は施してあるので、水中は無理でも浅い川くらいなら渡河戦闘できるという事だった。

「シーサーペントと戦った実感ですが、放電装置のような雷属性のある武器が効いたと思いました」
 雪ノ下正和(ga0219)は船団護衛の際に水中キメラと戦った体験を元に、積極的にディスカッションしていった。
「個人的には、戦闘機よりロボット形態での近接格闘が得意なので、白兵戦ができる武器が欲しいです」
 そういう彼が提案したのは、やはり中距離武器の銛打ち銃と電磁ネットの投網だった。
 いずれも、漁師が使う道具からの発想である。
「深海の目標は無理だろうが‥‥例えば水陸両用のキメラを水際で迎撃するには有効かもしれないな。KVで投網はさすがに難しいから、射出式の電磁ネットということになるだろうけど」
 ここへ来て、ようやく銀河の技術陣も前向きにプロジェクトを進めようという気分になったらしい。

「確かに空戦と陸戦は、今のKVの装備で何とかなりますが、今後を考えると水中に特化したものも必要になりますね」
 櫻小路・なでしこ(ga3607)が率直にいった。
 彼女の提案は、直接攻撃用の多目的ロケットランチャーと、間接/支援攻撃用の爆装ポッド。
「ランチャー自体は汎用的な物で、装填する小型弾頭を水中戦用に用意すると言うものです。弾頭には、通常火力の延長線上の対潜型のミサイル弾や命中時に放電する雷撃弾、命中時の爆発衝撃を着弾点で一方向に集約し放出する衝撃貫通のダメージを与えるものを考えます」
「ああ、成形炸薬弾ね。で、爆装ポッドの方は?」
「対潜用の爆雷等をコンパクトに収めたポッドを機体にマウントするものです。マウント用のフレームも汎用的なものを考えて、ポッドの積載内容を複数種類を用意する事で対処します。積載内容は、通常型にマイクロ爆雷と特殊型に音響爆雷や衝撃波爆雷を考えます。特殊型は、敵へ感覚器等にダメージ等を与え、あぶり出す事を考えたものです。高威力を狙うよりも支援攻撃の一環での使用を考えます」
「普通、航空爆雷は低速のヘリや対潜哨戒機から投下するモノだけど‥‥まあ米国のS−3ヴァイキングの例もあるし、技術的には可能だろう」

 グラットン・S・彩(ga1321)が提案したのは、「炸裂式ドリル弾頭を発射するランチャー」と「ジェットパック内蔵アイアンネイル」だった。
「ドリル弾頭が敵の装甲を貫き、内部に仕込んだ火薬が内部から破壊します。大型の敵に特に効果があるのは確定的に明らかです。さきほど櫻小路が提案した多目的のランチャーと同じ規格にできれば‥‥とは思いますが、ドリルだしあまり小さくしても装甲を貫けるかが微妙なので、その辺りは銀河さんにお任せします」
 アイアンネイルについては、
「銃や重火器ばかりだと距離詰められた時に一気に蹂躙されてしまうので、格闘でそういう輩をカットできる機体も必須です。片方に2個づつ両方で4個のジェットパックを内蔵して、攻撃を繰り出す瞬間に速度と威力を高めて破壊力バツグン!」
 彼女はこの兵器を「スウィフトクロー」と命名していた。
「何だかグラップラーのファングみたいだね」
「いや、面白いじゃないの? 将来水中戦用KVが出た時の近接武器に使えそうだし」
 技術者達が額を寄せ合い、互いに意見を交わした。

「現場の人間からの提案ですし実現可能かどうかは私には分かりませんから、多分に過度の希望が入っている事は予め了承下さい」
 ミオ・リトマイネン(ga4310)は「爆雷投下ポッド」と「ニードルガン」を提案した。
 前者の内容はなでしこが提案した爆装ポッドとほぼ同じ。
 ただ彼女の場合は起爆方法の別案として、
「接触時だけではなく、遠隔操作で起爆できる様にして貰えれば多数の機で協力して飽和攻撃も可能になると思います」
 ニードルガンについては、
「簡単に言えば銃弾の代わりに針と言うか矢を打ち出す物です。一般船舶は魚雷の爆発で浸水・沈没しますがキメラの場合はそれがありませんから、むしろ直接当てる方が有効と思います。その場合は誘導装置を付けず小型化し、その分直進性と速度があった方が狙いやすいですし、結果的に低コストになると思いますので」

「わしが提案するのは、装填する弾を交換する事で多目的に使えるバズーカやグレネードランチャーやな」
 時雨・奏(ga4779)がいった。
「魚雷、放電管なんかもおもろいな‥‥日本伝統の捕鯨に乗っ取って、射出式の水の抵抗の少ない銛や放電ネットを飛ばすのもええな」
 他の傭兵のプランと一部重複するが、奏が提案したのは陸戦も視野に入れた汎用兵器としてのランチャーだった。
「通常弾や魚雷は基本セットで売って、その他はオプションとして別売りにするのはどや? ユーザーには作戦毎に必要な弾だけを買ってもらう事で本体の販売価格を下げる。あとは水中投下用の魚雷やけど、水中におる敵の索敵や行動を妨害できるもんもええな。例えば、ソナーを妨害したり、電流を走らせたりやの」
 なお捕捉として、奏はSES抜きの、一般船舶がキメラから逃走するための水中用煙幕弾をも提案した。

 最後の発言者である瓜生 巴(ga5119)からは、「多弾頭水中ミサイル」と非物理攻
撃兵器の「フォノンメーザー(超音波砲)」が提案された。
 後者はひらたくいえば「超音波メス」であるが、これは既に民生用の溶接技術として実現しているという。
 ミサイルより遅いが魚雷よりは速い。レーザーや荷電粒子砲は水中では減衰が激しいが、音波砲は水中では、ほとんど減衰しない。
 課題は、空中発射の場合、音速に制限されるため水面に到達するまでがきわめて遅いこと。ある程度の照射時間を必要とすること等。
「大気密度を上げるとか、パワーを上げて照射時間を短くするとか、そのへんで克服できないかな?」
 また彼女からは、戦闘機と連動して使用できる高性能な対潜レーダーの要望も出された。

 一通り提案が出尽くした所で、内容が重複するもの、武装のカテゴリが曖昧なものについては銀河サイドで調整し、後日正式な開発案としてUPC側に提出、という事でその日の会合は終了となった。
「色々きつい事もいったが、あんたがたが現場で命を預けるシロモノだ。こっちも、引き受けた以上はその覚悟で作らせてもらうよ」
 技術者達はそういうと、9人の傭兵達と各々固く握手を交わし、会議室から退場していった。

<了>