タイトル:【AS】マラソンマッチマスター:植田真

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 5 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/11/28 21:31

●オープニング本文



 宇宙に上がったカンパネラ学園。大規模作戦の最中ということもあり、その周囲は未だ落ち着いてはいなかった。
 小競り合いはちょこちょこ起きている。
 もっとも、強力な敵などは近づいてきてはいない。精々キメラがフラフラと近寄ってくる程度だ。
 今日も今日とて敵接近の報が入る。だが‥‥
「10‥‥20‥‥まだ増えます! 大部隊ですよ、これ!!」
 オペレーターの声が響く。今日の敵襲はただ事ではないらしい。


「よく集まってくれた、諸君」
 カンパネラ学園に常駐する士官が、依頼の説明を受けるために集まった面々の顔を見回す。
 緊急の招集という事もあってか、皆の顔には緊張の色が浮かんでいる。
「‥‥諸君も今の状況を理解してくれてるようだな。実は、敵の大部隊が接近してきている。まぁ、そのほとんどはキメラなのだが‥‥」
 そういうと、士官はモニターを見るように促す。そこにはいくつもの光点が浮かんでいる。
「こちらの大きな光点はバグアの小型衛星だ」
 士官によると、どうも光学迷彩を使用して近づいてきてたらしいとのこと。キメラの向かってくる方角から考えると、この衛星が敵キメラの拠点になっているらしい。
 では、この衛星を破壊すればいいだけのことだ。能力者が呼ばれたのは、つまりこの衛星を破壊しろ‥‥
「‥‥と、いう事ではない。諸君には別の、しかしより難度の高いことをやってもらう」
 能力者たちの思考を先読みするかのように言った士官は、モニターの画面を変える。そこにはカンパネラ学園の全体像が映っていた。
「敵の大部隊が接近してきているのはすでに言ったな。少なく見積もっても100は超えているだろう。しかし、攻撃のことを考えると防御にあまり人数を回せない。少ない人数で広い範囲をカバーする必要がある」
 そう言って士官が指差した宙域。能力者たちにはそこの防衛を任せる、とのことだ。
 問題なのは時間だ。
 衛星破壊までどれぐらいの時間がかかるか分からない。かといって、交代要員を準備するほど人員に余裕がない。
「恐らく、かなりの持久戦になるだろう。カンパネラまで戻ればすぐに補給ができる用意はしておくから、適宜補給しつつ、該当宙域を死守してくれ‥‥すまんが、よろしく頼む」
 そういうと、士官は静かに頭を下げた。

●参加者一覧

ドクター・ウェスト(ga0241
40歳・♂・ER
須佐 武流(ga1461
20歳・♂・PN
番場論子(gb4628
28歳・♀・HD
ヘイル(gc4085
24歳・♂・HD
クローカ・ルイシコフ(gc7747
16歳・♂・ER

●リプレイ本文


 暗黒の宇宙に浮かぶ要塞、カンパネラ。そこから十数機のKVが飛び立っていく。
 敵キメラの大群がこちらに向かってきており、それの迎撃を行うためだ。
 その中の一団。五機のKVはLHの能力者の物だった。
 彼らは今、カンパネラ周辺宙域防衛の為に出撃したところだ。向かってくる敵は無数のキメラ。
「あぁ、もう! ウジャウジャ来るの嫌いなんだってば!」
 クローカ・ルイシコフ(gc7747)はコクピット内で喚くように言った。元より嫌いな宇宙用キメラ。それが無数に来るとあっては、その気持ちもわからないではない。
「防衛といわず、全滅させてしまえばいいではないか〜」
 自身のKV、天のコクピットの中でドクター・ウェスト(ga0241)は「けっひゃっひゃ」と笑いながらそう言った。確かに、ウェストの言うように全滅できることが出来れば理想なのだろう。だが、やはり敵の数が多いことがネックになる。
「相変わらず宇宙はまだアウェーだということだな‥‥」
 それも飛びきりひどいな‥‥と、須佐 武流(ga1461)は独り言のようにつぶやく。彼の機体は唯一宇宙用KVではない。が、その性能は今回参加した能力者の中でもぴか一だ。
(先の見えない戦い、か)
 ヘイル(gc4085)は軽く笑みを浮かべながら、元来『傭兵』の戦場とはこういうものなのだろうなと考える。
「‥‥ここは守り抜かないとな。やっと人類が手に入れた宇宙への入り口だ」
「ええ。ある意味根競べですが、学園防衛を背水として負けない様にしますね」
 番場論子(gb4628)はヘイルに対しそう応える。
 彼らが担当する宙域は、予測においては最も敵襲来の頻度が高いと目されている。そこには、すでに敵の姿があった。


「けっひゃっひゃっ、敵キメラ発見したね〜」
 眼前に展開しているキメラの総数は4体。
 終わりの見えないマラソンは、それらに対するミサイルを始めとした一斉射撃で幕を開ける。
「目標マルチロック、照準最適化‥‥発射!」
 ヘイルの小型ミサイルが荘厳な軌跡を描きながら4機のキメラに喰らい付く。と、同時にウェスト、論子、クローカもミサイルを使用。キメラたちに連続して攻撃が命中していく。さらに、弾幕の隙を縫うように、武流がライフル射撃。
 これらの濃密な弾幕により、キメラ4体はあっさりと片づけられた。
「ふむ、最低でも一体仕留められればいいと考えてたんだが‥‥予想以上に上手くいったな」
 練力残量を気にしつつ呟く武流。初戦は上々といったところか。
「では、俺は一度補給に戻る」
 そういうとヘイルはブーストを使用して、補給の為にカンパネラ方面へ離脱。
 それとほぼタイミングを同じくしてキメラの接近を確認。
「来たね〜、実験サンプルにしてくれようではないか〜」
 キメラに対し、ウェストはミサイルポッドを撃ち込むと共に変形。
「援護するよ!」
 クローカは変形を行う際のウェストを援護するようにガトリング砲を放ちキメラに牽制。
 その間に接近したウェストはディフェンダーでキメラに切りつける。フォースフィールドを切り裂く斬撃は確実にキメラにダメージを与える。
「確実に、仕留めさせてもらいます!」
 斬撃でふらつくキメラに、間髪入れず論子がライフルで狙撃。この一射でキメラは完全に動きを止めた。
 さらに接近してきたキメラが二体。これは武流が迎撃。宇宙機でないために、戦闘時は常時ブーストを必要とする武流のシラヌイだが、簡易ブーストと違い戦闘速度が上がるというメリットもある。キメラたちに射程内まで近づき、同時にライフルとレーザーを斉射。
「無駄な弾は受けられない、修復には時間がかかるからな」
 回避するまでもない。キメラが攻撃する前に確実に攻撃を命中させ、撃破する。
 宇宙用キメラは地上のキメラと違い高性能ではある。が、所詮キメラであるということか。強化された武流のシラヌイの相手ではない。
 さらにキメラの増援。今度は3体。
「よし、このまま突っ込む。援護頼むぞ」
 武流はブーストを使用して突撃。エナジーウィングで敵を叩き切りにかかる。
「了解しました、射撃支援を!」
 論子の声に従い、他の能力者も飛び込んでいく武流に支援射撃を行う。
 今のところ、能力者たち有利で戦況は推移していた。


「む〜、ミサイルは弾切れだね〜」
「こっちもだよ。数が多いとほんとむかつく!」
 ウェストは浮上回避、クローカは受防最適化機能を利用して敵のフェザー砲に対処しつつ口をそろえる。
 現在戦闘時間は約10分を経過したところだろうか。敵は散発的に接近してくるため、対処自体は問題なく行えている。
 だが、ミサイルのような兵器は弾数が少なく、弾切れが目立つ。かといって、それらを補給するには相応の時間が必要であり、味方機数自体が少ない分それ程の時間的余裕はない。
「また増援‥‥これで4体ですね」
 ライフルで狙撃を続ける論子。その表情は若干厳しくなってきた。
 ここまで、ヘイルが事前にカンパネラに対し敵の増援タイミングやその方位を伝えてくれるように要請していたおかげで、増援に対し適切な対応を取ることが出来ていた。が、敵の数はほぼ間断なく増えており、現在戦力比は4対4。味方は武流が補給の為に戻っているため一機少ない。この辺りは、やはり地上機である弊害は免れえないようだ。
「仕方ない‥‥もう一度K−02を使う。追撃頼むぞ」
 ライフルで敵に対し間断なく射撃を行っていたヘイルは、武器を補充しておいた小型ホーミングミサイルに変更。
 開戦時の再現のようにミサイルは飛ぶ‥‥が、味方の攻撃手段が限られている以上、効果は若干落ちるか。敵すべてを撃破するというわけにはいかなかった。
 だが、それでも十分なダメージは与えている。
「よ〜し、畳み掛けるとしよう〜」
 ウェストはそういうとライフルを乱射してキメラを牽制。それによりキメラが怯んだ隙に変形し、ディフェンダーで攻撃。これにクローカもガトリング砲で合わせる。
 この間一体のキメラが抜け出し、論子の方に向かう‥‥が、これに対し論子は冷静に、人型へ機体を変形させて対応。
「銀の銃弾、その身に受けてみますか?」
 機関砲で弾幕を張り牽制で動きが止まったキメラに対し、銀色の拳が突き刺さり、そのまま破壊する。
 ここで更なる増援が一体。
「‥‥待たせてすまないな。一撃で仕留める!」
 しかし、ブーストを飛ばして武流が戻ってきた。そのまま加速しつつエナジーウィングを起動。増援を一撃の下で切り裂くと、ダメージを負っているキメラに、持ち前の機動性を活かし連続攻撃。
 増援が一体来たものの、すぐに撃破に成功。
「‥‥そろそろ練力がやばいかな。一度後退するよ」
 そういうとクローカはカンパネラ方面に補給のため撤退する。宇宙用KVとはいえ、これだけの長時間戦闘になると頻繁に補給が必要になるが、事前に補給タイミングを打ち合わせていたおかげで、戦場にとどまるのが3機〜4機を維持することが出来ている。
 敵の総数事態は多いはずなのだが、局所的には数的優位を確保することが出来ていた。
「それにしても、敵はいつまで向かってくるのでしょうか‥‥」
「‥‥戦力を逐次投入してくれている、と前向きに考えよう。ここで削れるだけ削れば他が楽になるのだからな」
 論子がやや不安げに漏らしたが、ヘイルはそう言って励ました。
 眼前には、また新たな敵が接近してきている。


 戦闘開始から20分が過ぎたとき、カンパネラから通信が入る。
「‥‥衛星の破壊に成功したそうです!」
 ライフルで狙撃しつつその内容を聞いた論子は少しほっとしたような口調でみんなに伝える。これで、これ以上敵が増える事はないだろう。
「マラソンもようやく終わりが見えてきた、か‥‥これで仕留める!」
「ついでにこれも、持って行ってもらおうか」
 武流の攻撃に合わせるようにヘイルもライフルを使用し、さらに一匹。
 最後の一匹に対し、ウェストは急接近。
「これで最期‥‥バ〜ニシング、ナッコォー!」
 ウェストの声に反応し、必殺の拳が機体を離れ最後のキメラに突き刺さる。この攻撃でキメラは爆散。
 少しの間を置いて、カンパネラからキメラの反応がすべて消失したとの通信が入った。
「‥‥意外と、あっけなかったね。まぁキメラなんてこんなものか」
 クローカは、そういうと軽く息をつきながら、叩かれることの無かったコンソールをさすった。
 各機、まったくの無傷というわけにはいかなかったが、そのほとんどはかすり傷程度に収まっている。
 そのうえで、撃破した宇宙用キメラの総数は実に144体。
 戦闘時間20分以上の激戦であった。