●リプレイ本文
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沖縄上空を8機のKVが飛ぶ。
目標はバグアの開発している装置。
バグアの誇るエース、ゼオン・ジハイド。その1人である風祭・鈴音の能力を利用する強化妨害装置の破壊任務を成功に導くため、その制空権を確保するのが目的になる。
『そちらでも捕捉してる?』
「ああ。各機に伝達。後ろのデカい2機に気を付けて。多分指揮官だから」
管制を担当しているフォルテ・レーン(
gb7364)は、カグヤ(
gc4333)からの通信に答えつつ全機に捉えた情報を伝達する。
彼らの乗機は最新型のピュアホワイト。複合ESM「ロータス・クイーン」により敵の姿はかなり鮮明に捕捉している。早期予兆警戒機の名は伊達ではない。
装置上空にはすでにHWが展開していることがフォルテ、カグヤによって判明している。
その中で、特に注意すべきHWの存在に彼らは気づいていた。
「なるほど、敵戦力は後方に2機配置、か‥‥」
通信を受けて、緑川 安則(
ga0157)はフェイルノートのコクピットで思考を巡らせる。
制空戦闘に爆撃機を使うことは無いだろう。では、電子支援機か砲撃機だろか。重装甲型という選択肢は頭から除外。そういうHWなら後方ではなく前衛に置いて突破戦力に回すはずだ。
「そして、電子支援機ならジャミングをされる可能性がある。支援砲撃機の可能性が高いな」
『なるほど。確かにその可能性は高そうですね』
安則にこたえるように通信を開いたのはドゥ・ヤフーリヴァ(
gc4751)だ。
彼らの様に、能力者たちはそれぞれその2機のHWについて予測を巡らせる。が、確証があるわけではない。
とにもかくにも、あたってみてからだ。
『それにしても、強化妨害装置か‥‥今でさえバグア側からのジャミングに苦しめられているというのに‥‥』
「その為に、下の人たちが頑張ってくれてるんだから、負けてられないね」
榊 兵衛(
ga0388)の通信に答えるリズィー・ヴェクサー(
gc6599)。
「そして、ボク達も、全員無事に帰るのさね」
そう続けたリズィの言葉をコクピットから聞いていた鹿島 綾(
gb4549)は、言葉を交わすことは無いが、同様の思いを抱く。
それは、彼女たちの心に共通する『護る』という意思から来るものなのかもしれない。
『さて、そろそろ接敵しますよ』
アルヴァイム(
ga5051) の声に気を引き締める面々。すでに全機が、敵影を視認できる距離にまで近づいている。
能力者たちの作戦はこうだ。まずK−02小型ホーミングミサイルを中心とした飽和攻撃で敵の出鼻を挫く。
その後左右両翼から挟み込むように敵を十字砲火の中心に追い込む。シンプルだがよい作戦だ。
だが‥‥
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前衛の小型HWは、二機一組で左右に分散する動きを見せる。こちらを十字砲火に誘い込もうという事だろうか。
だが、その動きはアルヴァイムを始めとした能力者に読まれていた。
能力者たちもまた、左右に分散していく。
右翼側は安則、アルヴァイム、リズィー、カグヤの4名。
『地上部隊にも情報は伝えてあるの。派手によろしくなの』
「了解。K−02装填よし! ブースト点火!」
安則のフェイルノートがブーストで加速して前に出る。それに合わせるように、左翼側も前進。
『目標補足‥‥盛大にいくわよ!』
『こちらも目標射程内。撃ちます!』
「ツインブースト・クー・ドロア、アタッケ起動! 一斉射!」
作戦に従い、各機がK−02ミサイルを始めとしたマルチロックミサイルを一斉発射。一気に前衛のHW8機に襲い掛かる。
HW達はフェザー砲を乱射。数発のミサイルはそれによって迎撃されていく。さらにHW達は急速に移動。急上昇、あるいは急下降。ミサイルのロックオン範囲外に逃げだして可能な限り被弾率を減らそうという腹積もりだろうか。だが、能力者たちのミサイルは正確なうえに強力だ。一発当たれば態勢を崩され、それによって一気に被弾が嵩んでいく。
『狙い通りですね。このまま数的優勢を確保しましょう』
「了解‥‥え? 攻撃、来るの!」
アルヴァイムの通信に対しカグヤが返答したのと、異変発生はほぼ同時。
ロータス・クイーンで後方のHWを捕捉していたカグヤ、フォルテはそのHWが何かを撃ってきたのを確認し、瞬時に味方に伝達した。そしてその正体は、すぐに全員が知ることになった。
「これは‥‥なんて数だ、避けきれるか!?」
それはミサイル。但し、無数の。
10数秒のうちに何発ものミサイルを撃ち込んでくるという事はバグア側の精鋭機、機動性の高い機体であれば不可能ではないだろうが、後方の小型HWが撃ち込んできた量は明らかに異常であった。
能力者たちが初撃に使用したミサイル、その総数は少なくとも2000は超えているはずだ。
対し、後方のHW2機が撃ち込んできたミサイルはその数すら圧倒的に超えていた。
直ちに能力者たちは回避行動を取る。
「‥‥これは当たったらダメかな」
リズィはミサイルの打ち合いの中も臆せず前に出る。爆風を出た敵へミサイルを撃ち込むつもりだ。が、それよりも自身へ向かってくるミサイルを迎撃しなければ撃墜は必至だ。
リズィはブーストを使用。通常の戦闘機では避けきれないようなミサイル弾幕を、疑似慣性制御の機動性で強引に回避。マシンガンでの弾幕による迎撃も功を奏し、かなりの数のミサイルを捌くことが出来ている。が、それでも避けきれず数発が命中していく。
その後方にもミサイル攻撃は影響を及ぼしている。カグヤはテーバイによる自動迎撃に加え自身の回避行動も合わせ何とか回避していくが、数が多い。テーバイの弾丸はすぐに尽き、リロードする間もない。
アルヴァイムは自身への被弾は厚い装甲でカバー。カグヤを援護するために弾幕を張るが、バルカンではいかんせん役不足、いや弾不足である。機体そのものを盾にすることも試みるが、超音速下での戦闘において、それはほぼ不可能と言っていい。
「‥‥ちっ! こっちは装甲が薄めなのが問題か?」
このミサイルにより最も被害を受けたのはブースト能力を使うことで他よりも早く射程に入っていた安則だろう。ブーストの使用によって回避性能は若干向上していたが、それ以上の回避行動はとれず被弾。装甲の薄さも相まって、瞬く間にダメージが嵩む。
『人類側の武装を模倣し使う。いい戦術だ‥‥おそらく原型機はフェイルノートか、ロングボウ‥‥』
そこで通信が切れる。同時に安則のフェイルノートが爆発。残骸が地上へと落ちていった。
安則の予想はほぼ当たっていた。HWの持つ能力はロングボウ由来の物。
ミサイル兵器に限りその射程を延ばし、連続攻撃を可能にする。加えてバグア製の武器は人類のそれよりも高性能だ。
右翼はこの時点で1機を欠き、数的不利を余儀なくされた。
とはいえ敵もダメージを負っている。
カグヤはラバグルートで損傷率の高い敵を狙い撃ち。アルヴァイムも敵の数を減らすために同目標を狙いライフルで狙撃する。
「よ〜し、落ちちゃえ☆」
一方、アクティブスラスターを起動させたリズィはHWへ突っ込みつつミサイルを連射。
HWも負けじとフェザー砲を撃ってくるが、損傷を受けている為か狙いが甘く、リズィは易々回避。
HWとすれ違ったリズィは、そのまま左翼の方へ飛ぶ。それをHWは追撃‥‥は、しなかった。
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一方左翼側。兵衛、稜、ドゥ、そしてフォルテの4機。
こちらもやはりミサイルの圧倒的弾幕に晒されていた。
「くっ、自動迎撃も間に合わないか‥‥ブースト起動!」
兵衛は超伝導アクチュエータに加えブーストを起動。圧倒的機動性で攻撃を回避していく。それでも弾幕のようなミサイル全てを回避することはできず被弾。といっても、アルヴァイム機同様兵衛の機体も重装甲である。多少の被弾は物ともしない。
「ターン機動とかは苦手だからな。これで、なんとか‥‥避けてくれよ、Rostrum!」
後方、フォルテはブーストを利用した緩急をつけた機動で回避していく。といっても、エンジンカットは少しストップしすぎか。多弾頭の攻撃である。止まって数発をやり過ごしても、それ以外の多数が喰らい付いていく。
それ以上に被弾するのはドゥ。若干回避機動が甘いのか、ミサイルを回避しきれず被弾する。そこに襲い掛かるHW。敵も相当被弾しているが、それはドゥも同様。このままでは撃墜は必至。
「っ! 一斉攻撃は御免こうむりたいんだけど‥‥」
しかし、こちらの事情は敵には関係ない。ペアで接近したHWがフェザー砲を‥‥
「落ちなさい!」
そこに割って入ってきた、煌めく光条。これは、稜の帯電粒子加速砲。直上から撃ち放たれたそれは、まさに雷の如くHWを貫き、一撃の下粉砕した。
上空から俯瞰する位置で戦況を把握していた稜は、管制機であるフォルテの指示もあり、即座にドゥを援護することが出来た。
『ドゥ、後ろからも来てるぞ!』
「了解! 力を借りるよ、鈴羽さん‥‥!」
フォルテから通信を受けたドゥはブーストを使用して急速回頭。アサルトフォーミュラを起動しつつマシンガンで弾幕を張る。これでHWの態勢が崩される。
チャンスと見たドゥは空中変形を敢行。
「これで、叩き斬る!」
真ツインブレードを構えたドゥはブレードを回転させつつ3連撃。損傷個所から火花が飛び、HWは墜落して行った。
「こっち任せてくれていいわ。後ろの奴をお願い!」
『了解した、そちらは頼む』
一方、兵衛は後方のHWに狙いを定め進撃、その間に稜は敵HWを引き付ける。
2対1の若干不利な状況だが、稜の操縦技術は巧みだ。HW2機に挟まれるも機体を左右に揺さぶり、攻撃がきつくなってきたら高度を取りつつ急旋回。所謂シャンデル機動が近いか。それにより後方のHWの上を取りつつすれ違い、再び急旋回。逆に後ろを取ってライフルで弾幕を張る。
たまらず射線から外れたHWだったが‥‥
「来た来た、いらっしゃい♪」
右翼から飛んできたリズィのシステムテンペスタによる、さらに厚い弾幕に飛び込む結果となった。
この動きは稜によって誘導されたものだと、気づいたときにはもう遅い。
「よし、ここは確実に落としていくわ!」
ミサイルでもう一機のHWを牽制した後、急旋回。リズィの弾幕によって動きの鈍ったHWに対し再びライフル攻撃。
2重の弾幕に晒されたHWは耐えきれず撃破された。
見事な連携、といって良いだろう。だが、この時右翼では問題が発生していた。
「っ‥‥これは、まずいかもしれないの‥‥」
カグヤを襲うHWのフェザー砲。反撃のラバグルートがHWを貫き、破壊する。が、その間に逆方向からHWが接近。
そこはアルヴァイムがカバー。バルカン砲で牽制する。
しかし、さらにもう一方から接近するHW。2人は4機、今1機落としたから今は3機のHWに包囲されていた‥‥だけではなく、後方の改造HWからのミサイル攻撃の目標にもされていた。
すでにミサイルでかなりの被害を追っていたカグヤ。地上戦なら、それでも鉄壁の装甲を持つアルヴァイム機に庇われ事なきを得たであろうが、ここは空。超音速で飛ぶ空戦において完全に機体を庇うことが出来るはずもない。それでもカグヤとアルヴァイムは善戦したといっていいだろう。アルヴァイムが最後のHWをブリュ―ナクで落とす。が、その撃墜されたHWが最後に撃ったフェザー砲がカグヤ機に直撃。そのままカグヤ機は緩々と力なく墜落して行った。
「よくも‥‥これ以上好きにはさせん!」
兵衛が接近してHWを抑えようとしたが、後方のHWは再びミサイルを発射。その数500発ほど。マルチロックオンミサイルだ。
ロングボウ由来の能力による恩恵だろうか。攻撃は至近の兵衛も含め、左翼にいた全員を射程に収めていた。
兵衛がHW正面で被弾しつつも牽制してくれているおかげか、その精度はそこまで高くはなかったがそれでも弾が多ければ当たることもある。
「しまった‥‥せめて安全な場所に」
すでにかなりのダメージが蓄積していたドゥ機は数発のミサイルを受けてエンジンが小爆発を起こし、そのまま墜落して行った。
この間に、稜とリズィが攻撃していたHW。これが後方のフォルテを狙う。カグヤ撃墜によりジャミング機能が薄れたことから、ピュアホワイトを電子戦機とあたりをつけての攻撃だろうか。
「行かせないよ!」
稜とリズィがミサイルを連射。回避行動を取りつつも正確さを失わない攻撃はHWに直撃、撃墜する。
辛うじてHWは制することはできたが、改造HWから撃たれたミサイルはそうはいかなかった。
フォルテの機体はミサイルを大量に受け、墜落した。
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この時点で、残存するHWは。
小型HWは全滅したものの、後方に位置していたHWは兵衛から攻撃を数度受けた程度でまだ余力を残しているように見える。
対し能力者側はすでに4機が撃墜。しかし、残された4機はいずれも精鋭というにふさわしい戦闘力を持っている。現状ではまだどちらに勝利が転ぶか分からない状況であった。が‥‥
「‥‥敵が後退していく?」
残された改造HWは踵を返し飛び去っていこうとする。よくよく考えれば、HWの性能がいかに高くとも、ミサイルの数には限りがあるはずだ。それをあれだけ盛大に使っていれば弾切れになってもおかしくはない。それ故の後退だと考えられる。
「どうする。追撃するか?」
HWに接近していたため被弾が嵩んだ兵衛だが、まだ戦闘は十分可能な範囲。加えて、稜の帯電粒子加速砲も再発射が可能になっている。戦力としては十分だ。
『‥‥いや、やめておいた方が無難でしょう』
しかし、アルヴァイムはそれを止める。その理由はHWの逃走方向にあった。
「赤い機体? ティターンかしら‥‥」
HWの逃走する方向には稜の言葉通り、飛行形態のティターンが滞空していた。だが、こちらに攻撃する様子は見せない。HWの迎えと言ったところだろうか。そのまま飛び去って行ってしまった。
『あれが本当の指揮官機か‥‥今戦うことになったら厄介だったな』
兵衛の言う通り、損傷を受けた状態で戦うには少々面倒な相手だろう。戦わず去って行ってくれる分にはありがたかった。
こうして、装置上空の制空権は能力者たちの手によって確保された。
「地上、上手くいっていればいいんだけど‥‥」
リズィは呟き、地上の様子に目を落とす。といって、実際に高空からその様子が確認できるわけではないが。
そう。制空権を確保したといっても、本命は地上の作戦である。
「とにかく、敵は追い払ったわけだし、後は後詰に任せて私達は落ちた人たちを救助しましょう」
気づくと、後方からUPCのKV数機が接近してきていた。後を彼らに任せた能力者たちは、地上に落ちた仲間を救助するために地上へと向かった。