タイトル:【協奏】爆槍、吶喊マスター:植田真

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/02/29 06:49

●オープニング本文



「陽動作戦?」
「そう。私下に降りないといけないから‥‥できるだけ早くよろしく」
 何時ものように短い命令のみを告げると山城カケルは自室に引きこもってしまった。
 去っていく後姿を沈黙し見守っていたのはゲイン・クロウ。先日グリーンランドから沖縄に移ってきた強化人間だ。
 未だグリーンランドに残る上司のガウルから託された手紙は、何のことは無い。カケルに対する紹介状だった。先日の戦闘にも多少関わった縁でゲインはそのままカケル旗下に配属されることになったのだ。
 ‥‥ゲインとしては、空戦は苦手なので遠慮したいところだったのだが、まぁ長いものには巻かれろという言葉もあるわけで。
「それじゃ、作戦練らないとな‥‥タートルワームの整備はどんな具合だ?」
「あ‥‥その‥‥それなんですが‥‥これを」
 整備担当の兵士が、歯切れ悪く言いながら渡してきたのは一枚の紙切れ。そこにはこう書いてあった。

『タートルワームはしばらく預かります カケル』

 聞くと、これだけの改造が施されたTWは見たことない。加えてHWを利用した運用法も面白いと特に興味を持ったらしく。修理ついでに色々いじりたいと言ってBF内の専用ラボに移動させてしまったらしいのだ。
 開いた口がふさがらないゲイン。が、上司のやることに口出してもしょうがない。それに当面の問題はそこではなく‥‥
「おい‥‥じゃあ俺は何で出ればいいんだ?」
 と、いう事だ。整備兵曰く、一応BF内のHWは好きに使っていいと言われているとのことだ。
 深いため息。
 また面倒な上司に当たってしまったという嘆きと、しかし自分では現状をどうすることも出来ないという諦めとがないまぜになって吐き出される。
「‥‥とりあえず、機体リスト見せてくれ」 
 この時点ではHW2、3機でちょっと人類側の基地周辺まで飛ぶ。そんなもんでよかろうと思っていたゲイン。だが、そこに書かれた各機体の仕様を見て考えを改める。
「面白いな‥‥うん、面白い。HWばっかだと思ってたが色々あるんだな」
 そう言うとゲインは頭の中でざっと作戦を構築。それに合わせ機体をピックアップしていく。
「それじゃ、このアーチャーを2機と‥‥それとランサーだったか? これにな‥‥」
「はい‥‥はい‥‥了解しました。これだけでよろしいですか?」
「ああ。それと小型HWの何機かには水中戦装備を‥‥魚雷ぐらいはあるんだよな?」


 沖縄海上。UPC軍の戦艦に接近する機影があった。
 その数は4。うち2機は例の改造HW、アーチャーだと判明した。
「だが、たかだか4機だ‥‥護衛もついてるわけだしなんとか‥‥」
 スクランブルがかかる中、戦艦の艦長は余裕、とまではいかないもののそこまで心配はしていない表情を浮かべていた。
 が、次いで告げられた報告は艦長を慌てさせるには十分だった。
「‥‥! 水中から接近するものあり!」
「高度80m、高速移動する機影を確認!」
 3方からの同時攻撃。
 空中から飛来するアーチャーはミサイル攻撃に特化していた敵機だったか。
 水中から来るのは‥‥映像は来ていないが、移動速度などから水中用のマンタやらメガロやらとは違う。一般的なHWのようだ。それを水中戦が可能なように調整したといったところか。
 そして低空。
「あれは‥‥確かランサー、だったか」
 先日哨戒中のKV部隊が遭遇したという改造HW。バグア側のコードネームはランサーとか言うらしい。
 特徴は後部に増設されたブースターで、その戦闘速度はワイバーンに匹敵。加速した状態からのフォースフィールドをまとった体当たりはかなりの攻撃力を持っていたらしい。反面速度と、その体当たり以外の攻撃力は大したことが無く、哨戒部隊も被害を負ったものの撃退には成功していた。
 これら3部隊。どれも艦を撃沈するぐらいの能力は有してそうだ。
(こうなると、この間の被害が痛いな‥‥)
 先日、同海上にて発生した戦闘でUPCは制空権を押し返すことに成功しているが、その代償として戦力が大幅に減少していた。
 尤も、その分を埋めるためにラストホープの傭兵に来てもらっているのだ。彼らが守り切ってくれることを願うしかないだろう。
「魚雷! 対空機銃攻撃態勢に! 直衛部隊も全機発進、敵を近づけさせるな!」
 防衛部隊が出撃していく。こうして沖縄海上、UPC戦艦防衛戦が開始された。

●参加者一覧

終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
アルヴァイム(ga5051
28歳・♂・ER
風閂(ga8357
30歳・♂・AA
リュドレイク(ga8720
29歳・♂・GP
アンジェラ・D.S.(gb3967
39歳・♀・JG
九頭龍 剛蔵(gb6650
14歳・♂・GD
美具・ザム・ツバイ(gc0857
18歳・♀・GD
ジリオン・L・C(gc1321
24歳・♂・CA

●リプレイ本文


「多方面からの攻撃‥‥ですか。時間をかけていると厄介なことになりそうですね」
 リュドレイク(ga8720)の言う通り、今回の敵は3方から接近してくる。それらに対応するために能力者はこちらも3方に分かれて迎撃に向かう。
「敵がアーチャーとランサーなら、白皇はセイバーかな‥‥」
 終夜・無月(ga3084)の駆る機体はミカガミ。内蔵練剣が特徴となる近接型KVだ。なるほどセイバーという名にも納得がいかなくもない。
「アーチャー‥‥象の檻解放作戦時に現れたアレか」
 風閂(ga8357)は以前象の檻解放作戦に参加していた。その時空中で能力者と戦闘を繰り広げていたのも例のアーチャーであった。
「敵指揮官、乗機はランサーと見たが‥‥手柄は譲ってやる。うまくやるのじゃぞ」
 美具・ザム・ツバイ(gc0857)は低空班にそうエールを送る。以上3名は高空班として高空の敵に対応するため、飛び上がっていった。
「混戦からの伏撃の可能性もあります。注意を怠らないように」
「ふくげき‥‥? アルヴァイムが言うなら気を付けた方がよさそうだなっ! この未来の勇者に任せておけ!」
 続いて、リュドレイクとともに出撃するアルヴァイム(ga5051)は軽くジリオン・L・C(gc1321)に指示を出す。アルヴァイムはジリオンにとって所属する小隊のトップなのだ。とりあえずいう事は聞かないといけないといけない。そんな彼は水中担当。
「久しぶりの水中戦やで、楽しまんとな」
 九頭龍 剛蔵(gb6650)もやはり水中戦担当。2人は先に海中に飛び込み、水中から迫る敵の迎撃に向かう。
「準備OK‥‥コールサイン『Dame Angel』、沖縄付近におけるUPC戦艦の防衛を担い、迫り来る複雑に構成された敵勢力を撃退し‥‥出来うる限りの損害を過少にせしめるわよ」
 最後に出撃するのは、兵装の換装を行っていたアンジェラ・D.S.(gb3967)。彼女の出撃を以て、全機が戦場に降り立った。


 最速で1分足らずのうちに戦艦と同位置まで移動してくると思われていた高空の敵機。だが、空に上がってきた能力者たちを見てか、その速度が緩む。
「まずは上がってきた戦力を迎撃してから、といったところでしょうか‥‥」
 とはいえ、隙をついて突破されてもかなわない。無月はブーストを起動。プラズマライフルでの攻撃を中心として敵に接近する。但し、突出は避ける。あくまで仲間が援護できる範囲だ。
「敵前衛はミサイル対応のガンシップと思われるのじゃ。まずはあれから始末するのじゃ」
『了解した。いざ‥‥参る!』
 その仲間、美具と風閂はまず前衛の小型HWから攻撃。
 美具はトゥオネラ、K−02の両マルチロックミサイルを発射。それに合わせ風閂はストライク・アクセラレータを発動したうえで、パンテオンを発射する。
 空域を瞬時に埋め尽くすようなミサイル群を、小型HWは弾幕をはって撃ち落としていく。美具の予想通り、この小型HWはアーチャーの防衛役のようだ。
「予想通りじゃな、喰らうがいい!」
 迎撃されるミサイル。勿論、そのすべてを撃ち落とすことが出来るはずもなく、数発が命中。この間に美具はブーストを使用して突撃。小型HWがミサイル迎撃で忙殺されている間に横合いから機関砲で撃墜を図るつもりだ。
 だが、敵も黙ってはいない。アーチャーから空対空ミサイルが発射され、その行動を妨害しようとする。
 無論この妨害も予想の範囲内。今回美具は天の装甲をすでに1段階パージした状態。加えてラージフレア、乱波を展開。全弾回避とはいかないまでも、かなりの数のミサイルを躱す。
「‥‥狙い撃ちます」
 その間に無月は強力無比な帯電粒子加速砲を、やはり前衛の小型HWに発射。エネルギーの奔流がHWに直撃。撃墜寸前となるほどのダメージを受け、さらにエネルギー系に問題が発生したのか、ミサイル迎撃に使用していたフェザー砲も起動していない。
「好機! 直撃させる!」
 その隙を見逃さず、風閂はドリルミサイルを発射。貫通力の高い弾頭がHWの装甲を貫くと、内部から爆発を巻き起こし、撃墜した。
「良し‥‥くっ!」
 ミサイル発射直後の風閂を狙って、アーチャーが再度ミサイル攻撃。迎撃しようにもその為の兵装を持たない風閂は自力で回避するしかない。が、やはりミサイル運用特化HW。数発が直撃する。
 だが、この間に美具の機関砲と無月のプラズマライフルにより2機目の小型HWが蜂の巣にされる。
 残すところはアーチャー2機。状況はやはり能力者たちに有利である。だが‥‥
(なぜ、撃ってこないのじゃ‥‥?)
 ここまで、アーチャーは所謂マルチロックミサイルを使用していない。空対空高速ミサイルを中心とした攻撃ばかりだ。
 あるいは、戦艦を撃沈するために残しているという可能性も無くはないが‥‥
 その時だった。アーチャーが妙な行動を取ったのは。
 アーチャー2機は、なぜか機首を下に下げた。無論こんな隙だらけの状態を見逃す能力者たちではない。
「隙だらけだぞ!」
『冷却完了‥‥こちらも撃ちます』
 風閂と無月は互いに種子島、粒子加速砲でアーチャーを撃ちぬく。
 直撃、アーチャーが大きく揺らぐ。だが、能力者たちはその後アーチャーが取る行動は予想できなかった。
 この時、戦闘開始から約1分。高空の部隊は本命ではなかった。


 一方、こちらは水中戦。
 水中戦機体であるジリオン、剛蔵が先行する。
「うおお! 勇者パーティー出撃だー!」
 意気の割には手堅く後衛からのガウスガン。命中は取りづらいが、牽制としては悪くなさそうだ。
「さーて、魚雷発射するでー」
 剛蔵もやはり遠距離からの攻撃。大型魚雷を連射し先制をかける。
 それに対し、敵小型HWは3機を前衛として、フェザー砲を乱射。隠密性が高いとはいえ、大型の魚雷だ。警戒を怠らなければ、接近に応じて否応なくその位置が知れる。迎撃すること自体はそう難しくない。
 だが、ここでジリオンの攻撃が活きる。
「俺様の一撃を躱しただと‥‥などというと思ったか、馬鹿め!」
 攻撃の回避と魚雷の迎撃、双方を行っていればいずれ動きに無理が来る。
「よっしゃ、いったれやー!」
 剛蔵は、続けて魚雷を発射。3、4と迎撃されるものの、5発目、次いで6発目も命中する。
 ここで、装備換装の為に遅れた、後発のアンジェラ機がブーストを連続使用して追いつく。
 突出してきた敵に対しセドナを撃ち込む算段だったアンジェラだが、敵前衛は3機ともやや後退しつつ距離を保つ。仕方なしにアンジェラは中央に位置するHWにセドナを2連射。
 1発目は迎撃されるものの、2発目は直撃を取る。
 ここまでで数度の攻撃に晒されていたHWは、目に見えてその動きが鈍る。
「チャンスね‥‥接近して叩く!」
 これを好機とアンジェラは突進、バンシーを突きこみ撃破せんとする。
 だがこの時、後衛の1機から魚雷が戦艦方面へ向けて発射。剛蔵はその迎撃の為に動く。
 その為一時的にアンジェラ機への援護が薄くなり、突出した形となってしまう。前衛の3機はフェザー砲で集中攻撃。それにより装甲に無数の穴が開く。
「くっ‥‥少し不味いわね」
 アンジェラは一時進行を止めると盾で攻撃を防ぐ。その間にジリオンがガウスガンを連射。アンジェラへの攻撃に気を取られたか、数発がHWに命中。1機が動きを止め、海底深くに沈んでいった。
 アンジェラは態勢を立て直し、ジリオンの援護を受けながら再び攻撃を仕掛けんとする。
 しかし、2機の小型HWは距離を取りつつ砲火をアンジェラ機に集中。接近できないままダメージが嵩んでいく。
 尤も、小型HW群も、後衛の1機が魚雷で戦艦を撃つのみであり、戦艦に近づくことは出来ない。そしてその魚雷も剛蔵がキッチリと水波で迎撃している。
 どちらも決定打を与えられないまま、時が過ぎていく。
 そんな中、水面で大きな、次いで複数の爆発音が轟いた。
「‥‥? 今のは何?」
『俺様にもわからん‥‥何か上から撃ち込まれたような感じが‥‥』
 この直後、水中の部隊は本命ではなかったが能力者たちに知れることになる。


 先行する軍KV3機とリュドレイク。後ろからは戦艦両側面にソナーを投下したことで若干遅れたアルヴァイム。
 目標のHW、ランサーは3機。縦列編成で飛行。その高度は水面からおよそ10m程度、かなり低い高度と言えるか。
「射程内‥‥K−02発射!」
 リュドレイクが先制のK−02ミサイルを発射。しかし、射程に入ったとはいえ低空戦闘では距離による命中精度の低下が大きい。一時的に散開したランサーに、全弾回避されてしまう。
 ならばと、軍KVはより距離を詰め、ミサイルで攻撃をしかける。リュドレイクはそれを援護するように再度K−02ミサイルを、今度はある程度接近して発射。立ち位置は軍KVの後ろ、ランサーに後方へ抜かれないようにするための保険的位置取り。
 情報通り、ランサーは機体性能そのものはあまり高くないようで。距離を詰めた攻撃は数発が直撃、かなりのダメージを与えたようだ。
 だが、敵も黙ってはいない。
 ランサー後部の‥‥ブースターだろうか。そこに火が入り一気に加速。正面のFFが強く輝かせ、ランサーは突進してくる。情報にあった体当たりというやつだろう。
 回避するために散開しつつ、先頭を飛ぶランサーに攻撃をしかける軍KV。
「くそ‥‥ここを突破させるわけにはいきません!」
 さらに、逃がしはしないとリュドレイクが斜め上方から打ち下ろし気味にツングースカで弾幕を張る。水面を壁に見立て挟み込むような攻撃は悪くない。回避を制限された為に、ランサーは次々被弾。特に先頭のランサーは撃墜寸前までダメージを受けているように思えた。が、この場合は戦艦への道を開ける結果になってしまった。
 こうなると非常に不味い。敵の速度はこちらより上だ。
 リュドレイクと軍KVはどちらもブーストを起動。しかし、そう簡単には追いつけない。
 尤も、その先にいるのは‥‥アルヴァイム。ソナーを設置するために遅れたのが功を奏したか。
 突撃してくるランサーに対し、バルカンで弾幕を張りつつ対空砲で迎撃。若干敵の進行速度が落ちたか。ダメージがすでに嵩んでいた先頭機は直撃を受けるとフラフラと速度を落とす。
「ギリギリか‥‥当たれ!」
 ブーストを使用して追いかけたリュドレイクはその隙を見逃さない。アハトアハトによる最大射程からの狙撃。距離が離れているとはいえ、撃墜寸前のHWに当てるのは容易い。直撃を取る。そして‥‥爆発。
「くっ、これは‥‥自爆レベルの爆発じゃない?」
 爆発、というより大爆発というのが正しい。その余波が若干近くにいたアルヴァイムの機体を揺らす。これが戦艦の至近で爆発したら‥‥
 そしてその爆風を突っ切って、後続の2機がアルヴァイムの横を掠めるように突破していく。
 この時点でアルヴァイムは悟った。3方からの攻撃。その本命がどこにあったのかを。
 とはいえ、このまま通すわけにはいかない。ブーストを起動したアルヴァイムはすぐさま追いかける。
 速度は‥‥若干ランサーの方が早いか。しかし、まだ射程内に入っている。撃墜は可能‥‥
『アルヴァイムさん、上! ミサイルが!』
「なっ‥‥!」
 だが、それを妨げたのは頭上から撃ってきたミサイルの雨だった。


「今のは‥‥まさか低空への攻撃?」
 そう呟いた無月。その高度はおよそ1000m以上。ロングボウ由来の能力があるのなら、確かに撃てなくはないだろう。
 もちろん、こんな高度から攻撃を行ったところで直撃など取れるはずは無い。だが、打ち下ろされたミサイルはあるものは水面に到達する前に爆発、あるものは水面に飛び込み水しぶきをあげる。妨害としての役割は十分果たせる。
『攻撃、来るのじゃ!』
 すぐさま慣性制御でこちらに向き直ったアーチャーは、今度は能力者たちに向かってK−02ミサイルを放つ。回避する3機。その精度はあまり高くないように思われた‥‥が、その理由はすぐに分かった。
「‥‥撤退しているのか?」
 風閂の言葉通り、残されたアーチャー2機はすでに全力移動を行って大きく距離を開けていた。先ほどの攻撃は目くらましのようなものか。
「こんなもので‥‥!」
 一方低空、数発の直撃を受けたものの、アルヴァイム機の装甲にさしたる損傷はない。が、足止めされたのは事実。
 それでも諦めず、アルヴァイムは追いかけながら砲撃。最初こそ命中したものの、すぐに距離が離され命中が取れなくなる。
『迎撃しろ! HWを近づけるな!』
 接近してくるランサーに戦艦は弾幕を張って応戦。だが、ここまで来たらそれは最早なすすべはない。被弾しながらもランサーはそのまま戦艦に突撃、装甲を突き破る。そして次の瞬間爆発が起こり、戦艦中央部が大きく抉れるように吹き飛ばされる。
 その様子はまさに、突き刺した後、先端部に含まれた液体火薬を放出し内部から爆発させる兵器。機槍ロンゴミニアトによる攻撃と酷似していた。
「艦が‥‥」
 水中でもその状況、艦の沈みゆく様子は確認できた。
『敵が後退していくみたいだな。俺様たちも救援に戻るぞ!』
 ジリオンの言葉通り、水中の小型HWはかなりの損傷を受けながらも後退していった。追撃しようと思えばできなくはないが、今はそれより優先することがある。
 剛蔵もすでに艦から脱出する兵士の救助に当たっている。アンジェラ、ジリオンもそれに倣った。

「ま、今回はこんなところだな‥‥カケル様の方は上手くいったのかね」
『BFに先程確認を取りましたが、少し前にHWで出発したとのこと。なんでも地上のアサキ様に届け物があるとか』
「なるほど、陽動しろというのはそういうことだったか‥‥」
 ゲイン・クロウは撤退中にそういった報告を部下から受けた。
(とりあえず、戦果の方も上々。これならまぁ叱責は受けんだろう)
 この戦闘でバグア側が投入した有人機はアーチャー2機。そしてゲイン・クロウが登場した、水中用に臨時カスタマイズされた小型HWのみ。
 指揮官である自身が最後まで健在であったこと。迎撃に出たKVに本命を見破られなかったこと。これらが、バグア側の勝利イコール人類側の敗北につながったのだろう。
 そう、ゲインは考えた。


 
 今回の被害は無視できないレベルだ。
 KVの撃墜こそなかったものの、艦は撃沈。ランサーの自爆に巻き込まれた戦死者多数。
 沈没する際に発生した渦に巻き込まれ、行方不明になった兵員多数。
 人類側は、これ以上ない大敗を喫することになった。