●リプレイ本文
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「目標の接近を確認。例の爆撃部隊です」
『こちらでも確認できました。キメラが中心のようですが‥‥確かに数は多いようです』
レイミア(
gb4209)に続いて、アルヴァイム(
ga5051)からの通信。
2機の電子戦機は他機に先駆け目標を捕捉。
情報によると敵はキメラが中心の構成。通信がクリアなことからCWなどは存在していないようだ。
これらの情報はすぐさま各機に伝達される。
「数が多いね。でも、駆逐型‥‥『D』の称号は伊達じゃないよ」
『‥‥此処だけは、通すわけにはいかないね』
ソーニャ(
gb5824)、リズィー・ヴェクサー(
gc6599)は共にその様子を見てそのように述べた。
囚われた多くの人の幸せの為。
人を一人でも多く護る為。
2人の言葉は別々の、しかしどちらも自分以外の誰かの為に。そんな意志を宿していた。
『今回はすまんな。よろしく頼むぞ』
「了解。美具の頼みとあれば一肌脱ぐしかないのであります」
美具・ザム・ツバイ(
gc0857)からの通信に美空(
gb1906)はそう答えた。
美空は美具から急遽増援として呼び寄せられた形でこの作戦に参加していた。
2人は姉妹であるが、普段は戦域が違うためこうして共に飛ぶということはあまりない。にも関わらず急な呼び出しにすぐさま応じるあたり、姉妹仲は良好ということなのだろう。
「コールサイン『Dame Angel』、作戦を開始するわよ」
アンジェラ・D.S.(
gb3967)の声に合わせるように各機がそれぞれ空域に展開していく。
「駄目じゃないか‥‥僕の友の国を滅茶苦茶にしちゃあ‥‥」
ドゥ・ヤフーリヴァ(
gc4751)もといヴァガーレ・ゴーストも彼らに倣うように飛ぶ。
(呪ってやる‥‥僕の友が恋した狂える六華で)
亡霊の視線。その先には夜の闇で確認できないが、間違いなく敵群が存在していた。
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4機のHWとともに広く展開したキメラ群は、能力者たちの手薄な方向から接近してくる。
能力者たちは基地上空に部隊を配しこれを内円とし、その外縁を4方のうち3方にさらにKVを配置。これによって開いた一方向に敵を誘導したというわけだ。
夜戦ゆえに、その正確な位置等はつかめない。だがこちらには心強い電子戦機がついている。
レイミアの主任務はどちらかといえば管制にあると言える。
基地を中心に飛行し、ピュアホワイトの能力である複合ESMを活用。同時に、逆探知機能を持つ幻龍を駆るアルヴァイム。そちらから情報の供与を受け、統合。
これにより、視界の悪いこの状況下でも、可能な限り正確な敵位置を味方に伝達していく。
その中でも重要視されたのは、敵HWの位置情報だろうか。
伝達情報に基づき外縁担当のアルヴァイム、アンジェラ、美具が迎撃の為に飛ぶ。
(今回の作戦‥‥指揮を執っているのは恐らくゲイン・クロウ。これ以上貴様の思い通りにはさせんぞ!)
美具は機関砲で弾幕を張り、キメラを掃討しつつHWをミサイル射程内に捉える。
同時に美具は全ミサイルを開放。
夜間故に視界は悪いが、ピュアホワイトの能力によりレーダー機能は常以上に働いている。
無数のマイクロミサイルが補足した4機のHWに過たず襲い掛かる。
HWは機銃で弾幕を張り、ミサイルを迎撃しつつ回避していくものの、多数のマルチロックミサイルに紛れて、飛来した高速ミサイルを躱すことが出来ず直撃を受ける。
さらに、ミサイル弾幕で態勢を崩したところをアルヴァイムが、アンジェラが畳み掛ける。
両者はともにライフル射撃。基地に近い目標を優先して、火線を集中。
夜戦ゆえにその照準は普段より難しい。だが、敵の侵入方向が一定だったのが幸いしたか、火線の集中は容易。十字砲火にて攻撃を継続する。
しかし、外縁で対応している味方部隊の数に対し、キメラの数は圧倒的だ。
当然何匹かは抜けてくる。いや、元の数が多い分何匹ではすまない。尤も、それをカバーするために内円の部隊が存在しているわけだが。
リズィ―は空戦スタビライザーとSESエンハンサーを起動。
「最大で‥‥」
同時に、全てのミサイルポッドの照準を固定‥‥開放!
「‥‥ぶっ放すよぉっ!」
美具に劣らない、大量のプラズマミサイルがキメラたちに襲い掛かる。
本来は美具に合わせて仕掛ける予定だったが、射程と位置の都合で我慢したのが功を奏した。
爆発とともにあふれるエネルギーの奔流がキメラ、そしてそれらの持つ爆弾を破壊していく。
「皆の力が一つに結集しようとしているのであります。ここで負けたら仲間達に顔向けできないであります!」
美空は気合十分にガトリング砲を掃射。キメラを掃討していく。
また、美空はロングボウの高い照準能力を活かして索敵のフォローも同時にこなす。
その効果は決して大きいものではない。
だが、敵の数が膨大な分レイミアの処理能力にも負担がかかる。その負担を軽減するのに無意味な行動ではなかった。
同じく内円。ソーニャはアリスシステムを起動。
集中攻撃を受けないように高速移動。これにより敵の狙いをそらすのが目的だ。だが、キメラは爆弾を抱えている為攻撃を仕掛けてくることは無い。攻撃手段がないのか、あるいは‥‥
(あくまで爆撃優先、ってことか‥‥)
尤も、攻撃してこないなら回避に気を使う必要もない。射程内に入ってきたキメラに対しソーニャはバルカンを掃射。確実に撃墜していく。
ヴァガーレは接近するキメラに対しレーザーガンを連射。
しかし夜の闇にまぎれたキメラには命中を取れない。
ならばとドゥはアサルトフォーミュラーを起動。命中力を引き上げながらマシンガンで追撃。
撃破後は急速離脱。所謂一撃離脱戦法で確実に撃破する。
ここまでは能力者たちの思惑通り作戦は進行したといっていい。
だが、各機のレーダーには無数の反応が浮かんでいる。
ミサイルの爆発、それに伴う熱反応やら、爆発に反応して発生したFF反応。
すでにレーダーは飽和状態だ。敵もまた、この状況を狙っていた。
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『‥‥高度約60m、新たな敵機が確認されました!』
『かなりの移動速度ですね‥‥敵はおそらくランサーと呼ばれる個体と思われます、注意を』
レイミア、ついでアルヴァイムからの通信が各機に届く。
その侵入位置はキメラ群が向かってきた方向と同様。但し、その高度は違う。数は4機、縦一列に並んで飛行している。
2人がこれに気づけたのはひとえに電子戦機故。他機であれば無数の反応で見逃していただろう。
そして、この敵機の狙いは十中八九基地爆撃だ。
『やはりこの数は目くらまし‥‥あれが本命じゃ!』
「了解! 基地に接近させるわけにはいかないのであります!」
最後の高速ミサイル。その直撃によってHWを撃破しつつ‥‥これが本命だと、そう確信を持った美具だが、今ここを抜けると今度は高空からHWが基地上空に接近、爆撃を行う。だからこそ、通信を開いた。
そして、その通信を聞いた美空はすぐさまブーストを使用して急降下。
敵集団前方、やや上方からマルチロックミサイルを連射。
全能力を使用して放たれたミサイルは凄まじい威力と命中力を持つ。
だが、敵も何の対策をしていなかったわけではなかった。
先頭を飛ぶランサーから、プロトン砲が発射。射線上にあるミサイルが全弾とはいかないまでも迎撃される。
そのまま敵集団と美空は空中で交差。敵はその美空を無視して加速していく。
「接近させるわけにはいかないと言っているであります!!」
美空は疑似慣性制御により即座に反転。長射程の巡航ミサイルを連射してその後背を突く。
これは予想していなかったと見えるランサー。その最後尾のランサーに全弾が直撃。
アルヴァイム、アンジェラも同様。ブーストをかけて低空まで一気に降下。ランサーの動きを押し留めるために攻撃。特にアンジェラは、リンクス・スナイプを使用。固定兵装であるライフルを連射し、その最後尾のランサーを撃墜する。
その間アルヴァイムは最前のランサーに攻撃。他のランサーが持っていない兵器、プロトン砲の存在によってそれが指揮官機であると判断したためだ。
だが、ここで一つ問題が発生していた。アルヴァイム、アンジェラが低空へ向かったため高空の外縁部隊の手が薄くなったのだ。
一気になだれ込んでくるキメラ。内円部隊は正念場だ。
「できれば一度休憩したいんだけど‥‥ダメよね‥‥」
管制を行いながら、レイミアも必死でバルカンを掃射。キメラを迎撃していく。
「いけー、エルシアン! キメラを消しまくるよ!」
ソーニャはGP−7ミサイルポッドを放出。マルチロックオンミサイルにより、接近するキメラを同時に迎撃していく。
内円のヴァガーレは、キメラをマシンガンで迎撃しつつ、アルヴァイムらによってダメージを与えられたランサーを逃さず視界にとらえる。
撃墜には、まだ少し足りないか。仲間も追ってきてはいるが、速度差が違い距離が少しできている‥‥このまま通せば確実に爆撃される。
「踊り咲こうか僕の友が恋した華よ‥‥!」
ヴァガーレはブーストを使用しながら一気に低空へ。加えてアサルトフォーミュラーとアグレッシブトルネードを起動。
「狂い廻りて、襲い、呪えぇ!」
ツインブレイドによる乱舞、蘭六花双柳の間合いまで飛び込む。
‥‥しかし、これは悪手。
ツインブレイドによる1撃を入れると同時に、ヴァガーレのスカイセイバーが大きく弾き飛ばされる。
そう、相手はランサー。その能力は高速移動と、速度を活かしたFFを纏う体当たり。ヴァガーレはそれを計算に入れていなかった。
すぐさま機体の態勢を立て直すが、その間にランサーは基地上空に侵入。それぞれ3つ、計9つの爆弾を投下してそのまま駆け抜けていく。
『着弾前に、破壊するであります!』
美空がそう声を荒げるまでもなく、低空にいた各機は弾幕を張って爆弾の破壊を試みる。
だが、着弾までの高さが低すぎる。
9発中2発の破壊にとどまり、残りは基地に着弾を許してしまう。
尤も、不幸中の幸いというべきか高速移動しながらの爆撃は精密を欠き、主要施設への爆撃は皆無だった。これには能力者たちが事前に重要施設の位置情報を共有しており、そこに向かわないように誘導した結果でもあったが。
だが、ピンチは続く。
この時点で高空の敵は未だキメラが10数匹、HWが2機。増援も確認されている。
特に高空の状況は芳しくない。
美具はHW1機の突破を許しており、それがすでに爆撃態勢に入っている。
「此処だけは通さないって‥‥言ったよね」
リズィはレーザーを乱射しながらも、その攻撃がHWの撃破に届かないことを悟っていた。
だから、機体からの緊急脱出を準備した。
(一人でも多くを‥‥!)
護る。その為の犠牲に自身もカウントしていたのだ。
HWから爆弾が投下される。そして‥‥同時に強い光が基地から発せられた。
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「‥‥これは、投光器?」
結果から言うと、リズィは愛機を投げ捨てることにはならなかった。
基地から発した複数の光が夜空を強く照らし、敵の位置をすべてあらわにする。
同時に対空砲が起動。すんでのところで爆弾を迎撃する。
『基地の掌握が完了したみたいね‥‥』
アンジェラがホッと胸をなで下ろしたような声色で通信を送ってくる。
その通りだった。基地からはすでにバグア勢力が一掃され、いるのは味方のみとなっていた。
慌てたのはバグア側だろう。光に晒されたHWは次の爆弾を投下する間もなく、撃墜。
美具が相手にしていたHWは急速後退しつつ煙幕を展開する。
この煙幕、本来は能力者たちが光源を確保するために打ち上げるなどする照明弾の光を遮る目的で搭載していたものだったのだが、今となっては逃げるために‥‥いや、光に晒された現状では煙の範囲がHWのいる場所を教えている。
煙に対し十字砲火が放たれ、ばらばらとなった残骸が煙の中から落ちていく。
残されたキメラは最早これまでとばかりに、散り散りに撤退していった。
「‥‥予想外だな。こうも早く基地内部を掌握されるとは‥‥」
地上からの投光器。および対空砲類の稼働を確認したゲインはコクピット内で小さく舌打ちをする。
低空からの奇襲には成功しており、あと3、4発。それだけ落とせれば基地を完全破壊とまでは行かなくとも修復までにかなりの時間を要する段階までは持って行けたはずだったのだが‥‥
「完敗、とまでは行かないが‥‥」
今回は負けだな、と。その言葉を飲み込み、ゲインは彼方へと飛び去って行った。
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爆煙と、キメラと、HW。それらが去った基地に朝日が射し始める。
「‥‥ねぇ、順平‥‥僕は後‥‥どれだけ惑ろうだろう‥‥?」
ヴァガーレは仲間たちとともに降り立った基地からそれを見つつ呟いた。それを聞くものは誰もいない。
今回の戦闘で、機体に損傷を負ったもの。多少のけがを負ったもの等が多数出た。
だが、それらの治療に関して苦慮する必要はなかった。なぜならば、足元の基地はもはや人類側の物となったからだ。
傷はそこでゆっくり治せばいい。
ここに、沖縄軍におけるオペレーション「ノクターン」は幕を閉じた。
人類側の勝利を以て。