タイトル:【FC】孤独の空にてマスター:植田真

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/11/22 12:25

●オープニング本文



「‥‥周辺に敵影なし。とりあえず大丈夫そうです」
「了解。やれやれ、やっと落ち着けるな‥‥」
 宇宙。数度の戦闘において形成されたデブリ帯。
 そこに一隻のBFが身を潜めていた。四国を脱出した、カケル旗下の部隊だ。今現在その部隊の指揮は地上に残ったカケルからゲイン・クロウに引き継がれている。
「まぁ方針はおいおい考えよう。それよりも‥‥連絡は?」
「‥‥何もありません」
「そうか‥‥」
 ゲインの質問に、暗い顔をして返答する兵士。
 連絡をよこしてくるであろう主は、当然カケルだ。だが、今この時点で何の音沙汰もないという事は、彼女の生死はおそらくは‥‥
「‥‥まぁ、とにかく打てる手は打とう」
 そう言うとゲインは補給物資を手配。
 地上でまだ三姉妹が頑張っているのであれば、最終的には集合ポイントに集まることになる。その時の為に、補給物資を地上への落下物に紛れて投下しておこうというのだ。
 だが、この手はもろ刃の剣と言える。これによって落下ポイントは間違いなく察知される。そして、補給物資を全て一人で使い切ることは出来ない。そこにいる味方の数が少なければ少ないほど物資には余剰が発生する。
「後は、ポイントに出来るだけ多くの味方がいることを祈るばかり、か‥‥」
 生きてさえいれば、きっとカケルの長女も、三女もそこにはいるはずだ。
 ふと、ゲインは苦笑した。
(名ばかりの姉妹だと思っていたんだがな‥‥)
 あの3人の繋がりはそういう表層的なものじゃない。いつの間にかそれを疑わなくなった自分がいることが、ゲインにとって意外だった。
 だからこそゲインは祈った。
 カケルが今、一人ではないことを。


 木々の生い茂る島。誰もいないはずのその島で、ガチャガチャと機械をいじる音が響く。
 そこには1機のKVと、1機のHW。そしてそれを整備する人間‥‥いや、バグアが一人。
「ふぅ‥‥」
 つなぎ姿の山城カケルは息を吐きながら額の汗をぬぐう。
 元々このヨリシロは整備兵だった。だから、今まで機体の整備も自分で行うことが多かった。だが、それはBFの設備があったればこそだ。いかに凄腕とはいえ、設備と資材が無ければ満足な整備を行うことはできない。
 その資材に関しては、宇宙から投下された補給物資でどうにか賄えそうだが‥‥
「弾薬はどうにか‥‥でも装甲はこれ以上どうにもならないわね」
 現在ここにある機体は2機。カケルの乗ってきたS-01。そしてそれに付き従ってきた、AI操作の改造HWガーダー2。
 それだけだ。
 弾薬があっても肝心の機体、人員がいなければ宝の持ち腐れだ。
 そう、本当ならここには少なくともあと2人、いるはずだった。
「ミウミ‥‥アサキ‥‥」
 カケルは無意識のうちに、どれだけ待っても来なかったその2人の名を呟いていた。
 哀しいのか、寂しいのか、それとも‥‥
 その胸中に沸いた感情は説明がつかない。
 カケルは、少しの間その場に座り込み、ただ顔を伏せじっとしていた。


 四国UPC基地。そこには数人の傭兵が集められていた。
「これは昨日宇宙から地上に落下してきた物体の写真だ。無人の地域に落ちるのがわかっていたので放置されていたのだが‥‥良く見てほしい」
 説明を行っていた士官に言われるまま見ると、それは隕石や、なんらかの破片などではない。言うなればそう、コンテナのように見える。
「この未確認物体の落下地点は、先日取り逃がした山城カケルの逃走方向に位置している」
 さらに、その周辺からジャミングの反応も出ている。このことから、軍はこの落下地点である島にバグア、高確率で山城カケルが潜伏しているとあたりを付けた。
 つまり、傭兵たちの任務はこの地点へ急行し敵がいた場合はそれを撃破する、ということになる。
 この場所にいるのが山城カケルであればその戦力は脅威的だ。だがBFは宇宙に逃げ出し、照屋ミウミ、榊原アサキは倒れた
「つまり、奴はもはや一人。孤立無援ということだ。恐れることは無い。存分に実力を発揮してくれ」


 ガーダー2が発したアラームで、カケルは顔を上げた。
 敵が、近づいてきているのだ。
 カケルは空を仰ぐ。
 空は、どこまでも広く青く‥‥カケルはそれを見て少しだけ気が晴れた。
 きっともう、誰もこの場には来ないのだろう。敵以外は。
 その敵と戦うために、カケルはS-01に乗り込む。 
 だが、敵を倒してどうしようというのか。どこに飛ぼうというのか。
「‥‥そうね、どうせなら‥‥」
 ふと思い立ったのは、アサキが最後に拠点としていた四国の工業区域。あそこは警戒レベルが低い割に今後の人類復興においては重要な場所だ。そこを破壊して最後に人類を悔しがらせるのも一興だろう。
(それに、もしかしたらそこにはまだ‥‥)
 そこまで考えて、カケルは自嘲気味に笑みを浮かべる。
 それもすべては目の前の敵を倒してからだ。
 バグアとして。
 3姉妹最後の1人として。
 そして‥‥自他ともに認める空を駆けるエースとして。
 この空で簡単に負けるわけにはいかない。
「‥‥例え独りでも‥‥!」
 かくしてカケルは孤独の空を飛ぶ。
 最後の戦いに臨むために。

●参加者一覧

榊 兵衛(ga0388
31歳・♂・PN
赤崎羽矢子(gb2140
28歳・♀・PN
ソーニャ(gb5824
13歳・♀・HD
美具・ザム・ツバイ(gc0857
18歳・♀・GD
ヨハン・クルーゲ(gc3635
22歳・♂・ER
ドゥ・ヤフーリヴァ(gc4751
18歳・♂・DF

●リプレイ本文


 6機のKVは、それぞれ2機ずつのロッテを組みS−01へ向かう。
 そこへ突撃してくるS−01。そして、同時に発射されるマルチロックミサイルが能力者たちに迫る。
「来たか、狙い通りじゃ!」
 それに合わせるように、美具・ザム・ツバイ(gc0857)は煙幕を展開。味方に対する攻撃命中率を下げる算段だ。
 その間、赤崎羽矢子(gb2140)はシュテルンの特殊能力である垂直離着陸能力を使用。フル稼働した4連バーニアが機体を一段上へと押し上げ、急速にミサイルの間合いを外す。
(本星攻略が片付いたからって‥‥腑抜けてたね)
 前回の戦闘をそう述懐する羽矢子。だからこそ、今回は負けていられない。
 煙幕に突っ込んでくるミサイル。
 美具は乱波を展開し、さらなる回避能力向上を図る。これと同様、ヨハン・クルーゲ(gc3635)もまた乱波、加えてファランクスを起動する。 
 榊 兵衛(ga0388)はファランクスでミサイルを迎撃しつつもブーストを起動。機体の機動力だけではない。その巧みな操縦でミサイルのいくつかを回避していく。
 同様にミサイルを回避するドゥ・ヤフーリヴァ(gc4751)、ソーニャ(gb5824)。
 だが、他の4人と比べ対策が甘いか、被弾が嵩む。
 そんな中、S−01も煙幕の中に飛び込み、ライフルとバルカンで攻撃を行う。
 が、煙幕のお陰で正確に狙いを付けられなかったのか、その攻撃はどちらも効果を上げることはは無く、S−01はそのまま後方へと駆け抜ける。
 同時にレーダーの、というよりそのジャミングの濃さからガーダー2も煙幕の中に入り込んできたのが分かった。
 そして、S−01は後方‥‥チャンスだ。
「PRM―P―Fモード‥‥これならっ!」
 羽矢子はPRMで非物理性能を強化、G放電装置と共にレーザーライフルを連射。羽矢子とロッテを組むソーニャは、それに合わせスラスターライフルを放つ。
「罠の心配は‥‥なさそうかな」
「こちらも‥‥今回は最初から全力全開でいかせていただきます! ラヴィーネ、ファイエル!!」
 敵の罠を心配しつつもライフルでガーダーを狙撃するドゥ。対し、今回その相方であるヨハンは罠があっても噛み砕かん勢いでミサイルを発射する。
「ここで汚名返上を果たすためにも‥‥」
「‥‥まずは目障りなあ奴を空の藻屑としてくれるのじゃ!」
 兵衛は敵HWの自爆も考慮してやや離れた位置からバルカンを使用。同時に美具は、高威力の連装電磁加速砲を発射する。
 6機のKVから放たれた一斉攻撃は、ガーダー2の防御能力を意に介さずその装甲を吹き飛ばし、内部機関を破壊しつくす。
 やがて煙幕からバラバラとHWの残骸が崩れ落ちるとともにジャミングが消え、機器類がクリアに作動する。
「これで一つの関門はクリアといったところかの」
 しかし、まだ本命は健在だ。
「これで、文字通りあの御嬢さんにとって孤独の空か‥‥」
 たった一機となったS−01。しかし、その戦闘力は以前の戦闘でも証明されている。
 だからこそ、気を抜くわけにはいかない。
 各機はS−01からの攻撃に備えた。


 S−01は煙幕に対しミサイルを連射。大仰な爆発が起こるが、特に誰かを目標にした攻撃、というわけではない。
 その目的は‥‥
「煙幕、ですかね‥‥」
『バグアと言えど視界が遮られるのは嫌という事かな』
 ヨハンやドゥが言う通り、ミサイルによる爆発は幾分か煙幕をかき消すことに成功していた。
 そのままS−01は先ほどと同様に突撃。マルチロックミサイルを発射する。
 各ロッテ間は多少の距離があるのだが、バグア製のマルチロックミサイルはその程度の間合いは問題にしないと見える。
 先程と違うのは、煙幕が無いという事と、ジャミングが消えているという事。
 各機はそれぞれ回避行動を取る。特に、垂直離着陸能力を活かした回避を行う羽矢子は無傷の状態でその攻撃をやり過ごすことが出来た。
 そのまま飛び去ろうとするS−01だったが、その前にソーニャのエルシアンが立ち塞がる。アリスシステムと通常、マイクロ両ブーストを併用し、S−01の軌道に回り込んだのだ。
「今回は前みたいにはいかないよ?」
 ミサイルポッドを発射するソーニャ。それに合わせロッテを組む羽矢子が上方から牽制のプラズマライフルを放つ。
 それらの攻撃をS−01は機体を傾かせながら回避しつつ、バルカンを打ち込む。
 ソーニャはバレルロールを使用して回避する。だが、S−01はそのロール軌道を読みライフルを発射。
 直撃‥‥するはずだった。
「言ったでしょ、前みたいにはいかないって」
 ソーニャは以前の回避行動に加え、推力偏向とスリップ技術を利用して機体をぶれさせることでその照準を躱していた。
 これは想定外だったのだろうか。わずかに動きの鈍ったS−01に対し、ソーニャのレーザーが直撃。
 追い打ちをかけるように兵衛がミサイルを発射する。美具やドゥが弾幕を張ってS−01の動きをけん制していたため、このミサイルは直撃コースを辿る。
 だが、咄嗟に展開されたジャミンググレネードがミサイルをそらしていく。
「駄目か‥‥まぁいいさ」
 二の矢、三の矢と攻撃を続ければ、いずれジャミンググレネードは尽きる。その為にも今はミサイルでの攻撃を継続する。それが兵衛の方針だった。
 激しい撃ちあいで煙幕はすでに無く、その機首からS−01の狙いが見て取れた。
 狙いは‥‥ドゥだ。ミサイルによる損傷が最も激しいと判断されたようだ。
 無論それとわかっていて攻撃させる能力者たちではないが、彼らの動きをけん制するようにS−01は単発のミサイルを撃ち込んで牽制を行う。
 2つのロッテがミサイルを回避、ないし迎撃する間にS−01は急速にドゥへ接近。
「S−01来ます! 迎撃態勢を取ってください!」
 ヨハンはそう叫びながらドゥを援護するためラヴィーネを発射。HBフォルムのお陰で機体性能は上昇し、加えてEBシステムによる恩恵がラヴィーネを強化している。当たればダメージはあるはずだ。
 しかし、ここでもS−01はジャミンググレネードを放出してミサイルをそらし、そのままドゥへ向かう。
『あなたが‥‥』
 突撃してくるS−01と交錯する刹那、ライフルの照準を合わせながらドゥは通信に呼びかける。
『あなたが仕掛けた戦いでは、毎回空の広さを教えられました』
 同時に起こる爆発は、機体のエンジンが貫かれた音。
(流石というか、なんというか‥‥)
 コクピットの中で血を流しながらも、静かに笑うドゥ。操縦の利かなくなった機体はそのまま落下していく。しかしS−01にも同様装甲の焼かれた後。FETマニューバによって強化されたライフルは、FFを貫き、確かな一撃をS−01に与えていた。
 ドゥを撃墜し離れていくS−01の背に向かい、各機が攻撃を仕掛ける。その移動力から、攻撃は間合いを外され、ミサイルやライフルによる狙撃ぐらいしか装甲を掠めることは無かったが。
 そのまま反転して来るときにはまた、誰かが狙われるだろう。そしてその目標となるのはおそらく‥‥
「美具、じゃろうな‥‥」
 美具の機体もまたドゥ同様装甲が限界に達しようとしていた。それ故に、そう考えた美具は、しかし落ち着きながら、電磁加速砲をリロードした。


 突撃してくるS−01。しかし、今度はミサイルによる牽制も、マルチロックミサイルも打ってこない。一機で搭載できる兵装にはやはり限りがあるということか。
 向かってくるS−01に美具はパンテオンを放ちその行く手を妨害。同様にヨハンも、仲間を護るために最後のラヴィーネを放つ。
 だが、その攻撃もジャミンググレネードを放出して逸らす。問答無用である。
「そう簡単にやれると思うな!」
 ミサイルを突っ切ってくるS−01に対し、ソーニャと同様にブーストを利用してその前に出る兵衛。加工された剣翼での斬撃を狙う。
 しかし、その攻撃をS−01は機体をロールさせて回避。そのままライフルで美具を狙う。
 ‥‥この時、S−01のパイロットであるカケルは、一つのミスをした。美具と数度の戦闘経験を持つカケルは、彼女の機体がミサイルを中心とした装備をしており、今回も同様であろうと考えたことだ。
「この空を、そなたの墓標としてくれるわ!」
 しかし、カケルの考えとは裏腹に美具の機体から放たれたのは連装電磁加速砲。ガーダー2にも使用したこの武器だが、あの時は煙幕で見えなかった。そして、その威力は非常に高い。
 二本の光がS−01のFFを貫くのと、美具の機体がライフルで貫かれたのはほぼ同時だった。この攻撃で美具の機体は爆発。対しS−01は‥‥かなりのダメージを負ったと見える。その飛行軌道が安定していない。
 この機を逃すまいと羽矢子、ソーニャ、ヨハンからレーザーが雨の如く浴びせられる。
 S−01は数発被弾しながらも機体のブーストを吹かして何とかその射程から抜ける。
 ここまで何度となく攻撃を受けているS−01。やはり攻撃しに行くより待ち構えて迎撃する方が一撃離脱してくる敵には相性がいいということだろうか。
 それでもS−01は戦法を変えない。今度の狙いはヨハンだ。
 すでに相方を失っているヨハンは乱波を展開。HBフォルムで機動性を高めつつ、少しでも生き延びようとする。
(私に攻撃が向かってくるのはわかっていました‥‥)
 S−01は損傷の激しい機体を優先して攻撃している。美具の次は自分だった。
 そして、それは仲間たちもわかっているはずだ。ならばこの一合も無駄にはならない。
 そのヨハンに対し、S−01はバルカンで弾幕を張ることでダメージを刻みつつ、その回避行動をブレスノウで予測。回避直後の隙を狙ったライフルの一撃が機体に直撃し、ヨハン機はフラフラと地上へ落ちていく。
 駆け抜けるS−01の後を追うように攻撃する羽矢子、ソーニャに合わせ兵衛はミサイルを発射。
「‥‥ん?」
 このミサイルはS−01の背後に直撃した。回避機動を取ってはいたが、2機のレーザーで回避する隙間が無くなっていたのか。 そして、そう言う状況にも関わらずジャミンググレネードを使おうとはしていない。
「チャンス到来、ってとこだね」
 羽矢子の呟きは正しい。
 彼我の戦力比は1:3。
 だが、S−01はその兵装のほとんどを使い切っていた。


 ヨハン機の撃墜から、戦闘はある種の膠着状態に陥った。
 S−01が突っ込み、それを3機が迎撃する。この流れが繰り返されていた。
 S−01の狙いはこの中では被弾率の高いソーニャの機体であるが、彼女の機体は機動性が高く、S−01といえど必中とはいかない。
 対し、3機はソーニャを狙ってくると分かっているから狙いもつけやすく、S−01はみるみるうちにその装甲を削り取られていく。
 S−01が戦闘不能になるのも近い。
『‥‥その機体なら、宇宙に脱出できたんじゃないの?』
 S−01が、もう何度目かの反転を行った時。ふと、羽矢子がそんな質問をぶつける。
 一瞬、機体の動きが止まったような気がした。だが、すぐさまS−01は突撃してくる。
「返答は無し、か‥‥」
 理由がなんであれ、こちらにも長い間戦い抜いた意地とプライドがある。それに賭けて‥‥
「ここで止めてみせる! 行くよ!」
 突撃してくるS−01に対し、羽矢子はG放電装置を発射。その動きを制したところにエルシアンからレーザーが連射され、S−01の装甲が焼ける。
 S−01はバルカンで弾幕を張り反撃するが、ソーニャはそれをバレルロールで大きく回避。その回避方向をブレスノウで予測したS−01。ライフルでそこを狙い撃つ。
 カケルの目には、その位置にいる蒼い機体の姿が、確かに捉えられていた。
 ‥‥だが、必中を持って放たれたライフルは、空を切る。
 カケルの見たのはエルシアンの幻だけ。
 この時、ソーニャは戦闘により発生した気流に機体をぶつけていた。これにより発生した不規則な機動が、攻撃を回避させたのだ。
 反射的に、カケルは機体をロールさせ攻撃に備えようとするが、すでにエルシアンは至近にあった。
 このエルシアンの機動もまた、反射によるもの。ソーニャが思考するよりも速く、機体が反応する。そして、機体の姿を確認せずとも、その気配を感じトリガーが引かれる。
 S−01はショットガン、エルシアンはレーザー。至近での瞬間的な撃ちあい。
 どちらも、その装甲は焼け跡と穴が散見される。撃墜寸前。
 そこに、羽矢子と兵衛が飛び込む。
「ソーニャがロビンなら、こっちはハミングバードだ!」
「この因縁‥‥ここで精算させてもらう!」
 剣翼が一閃、二閃。
 S−01の翼を斬り飛ばし、胴体を両断する。
『――――』
 堕ち行くS−01に、ソーニャが通信で何かを告げた。それは羽矢子や兵衛の耳には届かなかったが。
 そして、同時に放った最後のレーザーが、S−01のコクピットを撃ちぬいた。


 目の前に光が迫る。
 これで終わりなのだという実感が沸いてくる。
 脳裏に浮かんだのは姉妹の顔。
 彼女らと最期に顔を合わせられないのは少し残念に思う。
 死んだ先には何があるのだろうか。
 あるいは、皆そこにいるのかもしれない。
 誰かがそう言っていた気がする。

 ――だから、安らかに眠れ――

 ‥‥悔いのようなものは不思議と無い。
 バグアとして生きて、ヨリシロを得て、そして空に生き‥‥
「空に死ぬ‥‥‥‥」
 それも悪くない。

 ――そのうち、ボクもいく――

 最期に、そんな声が聞こえた気がした。


「‥‥まだ、先になりそうだけどね」
『どうかしたか?』
「ううん、何でも。それより速く皆を救助しないと」
『それもそうだね。二人とも行こう』
 そう言って高度を下げていく羽矢子に、兵衛、ソーニャが続いていく。
 こうして、沖縄から転戦し続けた3姉妹。その全てがこの戦闘で打倒されたことになる。
 この一事でも勲章に値する功績であるだろう。
 加えて、これにより四国に関わる有力なバグアは一掃されたことになる。
 四国もようやく、何の憂いもなく復興への道どりを歩くことができることだろう。