●リプレイ本文
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カンパネラ学園、会議室。
先日この場所ではプチロフ製KV、グロームに関する意見調査が行われていた。
今日行われるのも同様の意見調査。ただし、企業と機体は別のものだ。
「本日はお集まりいただきありがとうございます。斉天大聖、骸龍とも長らくVUが行われてこなかった機体です。だ
からこそ、今日この場の意見を参考にし、より良いVUを行いたいと考えています。よろしくお願いいたします」
そういうと、担当者は参加者である5人の能力者を見渡した。
「骸龍もようやく改良計画がでるのか」
偵察機としてずいぶん世話になった、というのはAnbar(
ga9009)だ。
「ええ、他の機体と比べかなり遅くなってしまったことはお詫びいたします」
「いや、いいんだ。まぁとにかくこの改造でより使いやすくなってくれるとありがたいんだがな」
陳謝する担当者に、Anbarはそう言った。
「猿には猿らしく、かな?」
黒ずくめの恰好がどこか怪しげで、それでいて深い知性を感じさせる物腰の男性は、UNKNOWN(
ga4276)だ。
その肩にはなぜか猿。エテ吉さんというらしい。どこかミスマッチングだ。だが、この猿は自作AIプログラムのモデルとなっている猿らしい。そういうことであれば、この場に猿がいることも納得がいくといえばいく。
「こーほー、こーほー」
と、これまた不可思議な恰好をしてきたのは美黒・骸(
gc7794)だ。だが、その参加動機は極めて複雑だ。
骸の身内は、骸龍を乗機としていたが、その際対空砲火に晒され戦死してしまったらしい。もちろん、そんなことは担当者は知らないのだが、骸から骸龍に対する強い思い入れが感じられたのは確かだった。
「それでは、そろそろ始めませんか?」
こうして、秋月 祐介(
ga6378)に促される形で意見聴取ははじめられた。
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「それでは、まずは斉天大聖の基本性能に関して、意見を伺いたい」
そう担当者が促すと、まずは今回の依頼が初依頼となる、ヴィナヤ・スートラ(
gc7749)が発言した。
「生存性を重視すべきと考えます」
多少緊張しながらも、ヴィナヤは、しっかりとした言葉で意見を述べていく。ヴィナヤは斉天大聖に対して威力偵察時に多少反撃を受けても持ちこたえられる生存性を求めた。しかし、斉天大聖はスロット数的に人型形態時も盾を持ちにくい。故に、防御・抵抗・生命の3点の強化を推す、ということだ。
これは担当者も元々想定していた部分であったため「やはりそこですか」と、メモを取っていく。が、UNKNOWNはそれに対案を示す。
「ここまで敵味方の戦力が来ると、多少の防御アップより、動きやすさの向上があると、私は嬉しいかな」
斉天大聖の移動性能は既存機と比べると、平均程度は保っているはずだ。だが確かに、移動力が高くなると敵の射程からすぐさま離れる、偵察が終わったらすぐに撤退する、といったこともしやすくなる。
「後は、応用性を広げる、という方向性も悪くないんじゃないかな?」
加えてUNKNOWNはスロット数の上昇を提案した。
続けて、骸龍の基本性能に関して。これにはまず、骸龍開発に初期から関わってきた祐介が意見する。
「上げるとするならば、現状でも一線級である回避。航続時間が少ないという偵察機としては致命的な欠点を補うための練力向上ですな」
「いざという時にブーストで逃げられませんでしたでは元も子もないからな。底上げするのに越したことはないぜ」
「自分も、練力と回避の強化は急務かと」
祐介の意見に賛同するように、Anbarとヴィナヤが続く。
Anbarは加えて、副兵装スロットの増加についても言及する。
「斉天大聖もだが、骸龍を使ってみて機体性能云々よりまず気になるのは副兵装スロットの少なさだ」
骸龍は正面切って戦う機体ではない。だが、偵察機としてきちんと帰還する必要があるなら、例えばラージフレアのような防御兵装を余分に詰めるよ言うになるだけで生存率がだいぶ変わってくるはずだ、ということらしい。
そんな中、多少思い切った案を出したのは骸だ。
「いらない能力はすべて外してしまえなのである」
骸が提案するのは装備、回避、練力の強化。これ自体は他の参加者も述べていることであるが、彼女はその対価として、それ以外のすべての能力を0にしてでも、と提案したのだ。
「全て0、ですか‥‥さすがにそれは‥‥」
「実際問題、あたることを問題としない性能ならば、これ以外の能力は必要無いのではないか?」
確かに、回避が高ければ攻撃は当たらない。装備が高ければ回避補助用のアクセサリも積める。練力があればブーストも使い放題、と‥‥確かに理屈は分からなくもない。
「‥‥ですが、さすがにちょっと極端すぎるかと思います。とりあえず社の方には持ち帰ってみますが、難しいと思います」
「確かに、斉天大聖などは正規軍も使うことになるわけだしな」
骸龍はその特徴の一つとして、斉天大聖との互換性があげられることになる。そして、斉天大聖はUNKNOWNが触れたように正規軍も使用する機体だ。骸龍にそこまで極端な改造を施してしまうと、メインフレームにも相当手を加えることになり、結果的に斉天大聖にも影響を与えることになってしまうだろう。
それゆえ、これに関しては難しいと言わざるを得なかった。
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次に意見を聞いたのは、電子波長装置についてだ。
「全てにおいて完璧な強化、というわけにはいきませんが‥‥北斗などの技術蓄積により、多少の強化が可能となりました」
咥え煙草の煙を燻らせながら、UNKNOWNがそれを聞いて意見を述べる。
「特殊電子波長は素晴らしい‥‥特に逆探知が大したものだ。この距離が延びればそれで十分だと思うが?」
「俺は精度かな。偵察機としての任務を果たすうえでの一番のアドバンテージが逆探知能力だが、まだ精度が甘い気がする」
「自分は出力向上、でしょうか。宇宙には無数のキメラがいるようですし、出力の大幅アップは必須だと思います」
続いて意見したのはAnbar、ヴィナヤ。出力向上と精度、それに範囲。範囲に関しては、逆探知に限定すれば多少向上が可能か。そのうえで、精度向上。出力に関しては、もとより大幅に、とはいかないだろうが‥‥
担当者がそんなことを考えながらペンを走らせているとき、骸が一つの質問をした。
「宇宙換装というのは可能であるか?」
ヴィナヤの意見にもあったように、昨今宇宙への対応が急務となっている。奉天でも宇宙対応を視野にいれた天の開発などを行った。こういう意見が出るのは当然だろう。だが、可能かといわれると‥‥
「不可能ですね。それを行うとVUじゃすみません。相当な費用をかけて再設計することになるでしょう」
「そうであるか‥‥」
もし可能であるなら、今までの提案全てを犠牲にしても希望しようと考えていた骸だったが、こうまできっぱりと言われてしまえば引き下がらざるを得ないだろう。
話は電子波長装置に戻る。
「自分も電子波長装置の精度向上は必須だと考えます」
「‥‥高感度カメラを改良、利用することで索敵範囲と精度をアップさせる、というのはどうでしょう?」
祐介が精度向上を推すのに合わせ、ヴィナヤはカメラを利用した案を提示する。が、これは結果として却下される。
「カメラは、確かに偵察用としては優秀ですが、電子波長装置とは特に関係のない部分です。利用するにしても、即座に効果が得られるということはないでしょう」
この時点で電子波長装置に関する意見をまとめる。やはり精度、範囲、出力。とくに精度の面は皆が推していた。
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「さて、あとは特殊能力に関してですが‥‥何か意見がありますか?」
「そうですね‥‥煙幕弾の中身を翔幻の幻霧に変更することは可能ですか?」
ヴィナヤがそう提案した。幻霧は確かに便利な能力だ。味方の命中に影響を与えず回避力を向上できるという点で。
「しかし、それは骸龍の性能を考えるとむしろデメリットになるのでは?」
骸龍をよく知る祐介が言った。煙幕弾のメリットとは、視界を塞ぐことでこちらの回避性能上げるだけでなく、敵の命中精度を低下させることにある。もちろん、重力波レーダーなどを使っていた場合、効果は薄いかもしれないが。
「‥‥そういうことですね。まぁ、煙幕弾はいじらない方が無難でしょう‥‥あとはそうですね。斉天大聖の如意金箍棒システムには何か意見がありますか?」
ここで挙手したのはUNKNOWNだ。彼が求めたのは、伸びる腕を利用した陸戦形態での三次元的攻撃。
「演武ならぬ猿武といったところかな」
人の形ということは、人の動きを活かすこともできるだろう。また、KVは人ではない。人ではない動きもできるのではないだろうか、ということだ。
「なるほど‥‥それは宇宙でも利用できそうな気がしますね。敵機や敵施設をつかんで、腕を縮めて機体本体を移動させる、みたいな感じで」
ヴィナヤもそれに賛同した。加えてヴィナヤはそれを可能とするために関節強度の向上も案として挙げている。それならば可能だろうか。どこかにしわ寄せは来るかもしれないが、上には提案してみようと、担当者は考えた。
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「さて、こんなところですかね。皆さんどうもありがとうございました」
ある程度意見も集まったところで、担当者は意見聴取を終了した。
参加者が帰り支度を始める中、祐介が担当者に意見した。
「骸龍は低予算という制約の中で、初期設計から徹底した切り詰めを行っているが故に、既に完成形と言っても良いかと思います」
そう述べたうえで、しかし最近のKVの技術進歩を考えると、個人的には骸龍の改修よりも、得られたデータを基礎に後継機開発をする方が効率的に思える。との意見も合わせる。
「改修するとなれば爾後を見据えたものにすべきかと‥‥」
「‥‥ご意見は、ごもっともであると思います。肝に銘じておきます」
この改良で、何か後継機開発に得るものがあるか‥‥それはまだわからないが。
あるいは改良機でとったデータが今後活かされることもあるだろう。だが、今はとにかく改良を急ぐことにしよう。
そう考える担当者であった。