タイトル:地下水路探検隊・秘密マスター:雨龍一

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 4 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/08/01 02:36

●オープニング本文


 地下水路が埋没して数ヶ月。その間に前回の探索チームによって持ち帰ったものは本部内の研究チームによって調査が行なわれていた。
 ロジックNO.66
 それが今回の地下水路で起きた事件に付けられた名前だった。
 持ち帰ってきたものの中に電子カードが存在していた。
 大きさは名刺大。
 どうもこちらの技術では使用されていない物が多数含まれており、中々判読するのに時間がかかったのは事実である。
 そして、それによって判ったことは
 やはりこれは鍵の一種であること。
 検出された指紋により持ち主を判定したところ指名手配になっている盗賊団のメンバーのものであることが判った。
「この事件、ちょっときな臭いですわね」
 この事件をファイリングすることとなった二コール・デュポンは胸元から取り出したタバコに火をつけた。
 事件のきっかけの少年が目撃した謎の男。
 その男は地下水路が崩落した際に瓦礫の山の下敷きとなった。
 そう、それによってこの事件は迷宮入りと化していたのだ。
「入り口から大体5キロ地点‥‥‥予定では更に5キロ進めるくらいの道があるはず」
 そう、入り口があるなら出口があるのだ。
 しかし、現在出口となっているはずのところはすでに壊され入ることが出来ないはずである。
「だけど‥‥あそこからだけ出入りしていたとは考えられないと‥‥」
 入り口となっていたところは大きく開けたところだった。
 それはここで起きた2件の事件によってわかったことである。
 そして2件の事件のきっかけの少年が秘密基地とし利用をし、頻繁に出入りしていたため、人とは会ったことがないと話していたことから出入りはないことが判っている。
「とすると‥‥やはり、他に出入り口があるはずなのよね‥‥」
 しかも、この地下水路はどうも建築時の青地図とは大きく異なっている。
「何しろ、あの部屋数‥‥どうもおかしいのよね。しかも、開かない扉まで存在していた‥‥」
 そう、その点がどうしても引っかかっていたのだ。
 それに、少年が利用していた部屋だって、地下水路にあるにはおかしいほど整っており、家具までもが揃っていたのだ。
 更に言えば、使われていない地下水路のはずなのに綺麗過ぎた‥‥
「この地区に残っている、盗賊の伝承‥‥そして、盗賊団の指紋、発生するキメラ‥‥ここには何があるって言うの?」
 頭を悩ませずにいられない。

 謎が多すぎる、ゆえのロジック。
 全ての謎掛けが解き明かされるように‥‥
 カードに書いてあるNo.66
 鍵が全て揃うとき、それはこの地下水路に隠された秘密が明らかになるときになるだろうか‥‥

 二コールは調査の終わったカードを片手に地下水路に潜る決意を固めたのだった。



「そうと決まれば、早速手伝いを頼まなければ」
 一度決めたら猪突猛進‥‥というわけには行かないのは判っている。
 ましてや、今回はキメラがいると思われる場所に潜るのだ。
 前回の崩落現場よりも先に行く予定なのだから尚更である。
「僕が行なうことは捜査依頼‥‥そんなところか」


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 関連している事件の概要

「あたしのお友達の救出」
 幼い少年・少女が秘密基地に選んだのは大人の知らない使用されていない地下水路だった。
 楽しいはずの秘密基地に突如現れた黒い影、それはネズミ型のキメラだった。
 逃げ行く中で落としてしまった少女の大切なお友達を救うため、救出部隊は地下水路へと潜る事となった。
 そこで繰り広げられた戦いの末、見事救われたお友達を少女に返し、一同はささやかな幸せを守ったのだった。

「地下水路探検隊・発足」
 再び使われ始めた秘密基地。少年達は前回の依頼より安全になった基地で平和に過ごしていた。
 しかし、それは突如暗転へと代わる。
 現れた謎の男・そして謎のカード。
 不安を覚えた少年は周辺捜査を依頼をし、再び助けを求めた。
 そして探索・深まる謎・崩壊による探索の中止。
 謎が謎を呼び、手元に残されたのは一枚のカードただひとつとなり、それは研究所へと回される事となった。

●参加者一覧

伊河 凛(ga3175
24歳・♂・FT
寿 源次(ga3427
30歳・♂・ST
百瀬 香澄(ga4089
20歳・♀・PN
カルマ・シュタット(ga6302
24歳・♂・AA

●リプレイ本文

「いらっしゃってくださり感謝してます」
 そうニコールはいうと、各自に用意した地図とカード、検査結果の一覧を渡した。
「皆様が集ってくださって、ありがたいです。残念ながら内部勤務の僕が前に出て調査とは行かないもので‥‥それに、前回の事件と関わり深い方もいらっしゃって心強いものですわ」
「なにやら子供の秘密基地ってレベルじゃなくなったようだな‥‥」
 百瀬 香澄(ga4089)は依頼書と地図を見つつ腰に手を当てて首をひねった。
「ニコールさん、2・3聞きたいことがあるんだが、いいだろうか」
 寿 源次(ga3427)が地図に印をつけながら聞いている。
「はい、もちろん皆様にお願いするのですから、僕でわかることは答えさせていただきます」
「それでは早速‥‥」
 その言葉とともに伊河 凛(ga3175)とカルマ・シュタット(ga6302)もまた身を乗り出して話へと加わっていった。


+++++++++++++++++


 地下水路の入り口に着くと崩落時と同じく封鎖されたままであった。
 丁寧に南京錠にて封じているあたり、どうやら彼の少年達を警戒してのことだろう想像がつく。そして、不可解なものの出入りも制限していることとなっている。
 ニコールから預かった鍵を使用し、一同は地下水路へと入っていった。
 行きの5キロは簡単なものであった。何せ前回時に探索していることもあり、何事も無くスムーズに来たのだから。

 そして‥‥一同は最初のポイント、崩落現場へと足を踏み入れたのだった。

 現場は話の通り崩れていた瓦礫は大方除けられており、足の踏み場等は確保されていた。
 ニコールからの調査結果によると、ここ崩落現場は今まで通ってきた地下水路とこれから先(仮に旧地域と呼ぼう)の区域とを繋げるために行なった工事の名残により地盤が悪かったとの報告があがっている。そのため、前回調査時に起きた突発的な地震、そして更なる衝撃が長年のバランスを崩していた壁面へとダメージを与えることとなり、崩落した‥‥そう推測されたとのことだった。
「崩落があったということですが、一応は足場がしっかりしてますね。また地震でもあったらひとたまりもないでしょうが」
 カルマが足場を固めた固定具の様子を見つつ、更なる崩落の心配を確かめた。
「人が通れるくらいなら‥‥少々除けるだけで出来そうだな」
 百瀬が少し開いた岩陰を確かめ、その周辺の岩石の状態を窺う。どうやら独立しているらしく、数個の大きな岩を除ければ人が通れるほどは確保できそうである。
「ちょっとここを照らしてくれ‥‥そう、ありがとう。では、取り掛かるとしよう」
 伊河が懐中電灯で穴の方角を照らし出す。百瀬の瞳が金色へと変わっていた。そして漲る力で岩を除けていった。数個除け終わると隙間に詰まっていた小さな岩が零れ落ち、ぽっかりと人が屈んでは入れるぐらいの穴が誕生した。
「これでいけるな‥‥第一段階はクリアだ」
 そして、一同は伊河を先頭に組み中の探索へと繰り出していったのだった。


「やれやれ。また地の底へ、か。」
 潜った先の空間で背を少々のばしつつ寿が呟く。
「今までに発見されたのは、ここだけなのか?」
 今回初の地下水路探索に参加した伊河が、すでに探索経験のある寿に尋ねる。
「あ? いや、自分はここしか知らないがニコールさんの話だとまだまだ存在するみたいだな。そういや百瀬さん、きみも気になったクチかい?」
「そうだな‥‥あの終わり方だ。気にならないことの方が不思議だろう」
「俺が気になるのはやはり前回あったという男のことですかね‥‥果たして生きているでしょうか?」
「あの穴‥‥僅かに空いていただろ? あそこに男が挟まれてたんだ‥‥」
 苦々しい口調で寿が話し出す。
「そうすると‥‥」
「あの男‥‥生きてる‥‥しかも内側に、こっち側に逃げ出したことは明らかだ」
「そういえば、デュポンさん、変な話もしてましたね」
 カルマの言葉に寿はうなずいた。
「ああ、カードのことだったよな」
「ええ、指紋が発見されたって。しかもなにやら盗賊団だとかって」
「前回も似たような話を耳にはしていたんだけど、今回のことでちょっと突っ込んで聞いてみたんだ。その盗賊団って奴を」
 百瀬が付け加えるように話す。
「あ、あのここに来る前に町で尋ねていた件ですか?」
「そしたら気になることが判ったよ。数年前に消息不明となった盗賊団の話がね」
 笑みを浮かばせ、面白そうに百瀬は聞いたことについて語りだしたのだった。



 少し前の話だった。
 自らをエル・ドラゴの末裔と謳う海賊がいた。そのものらをドラゴの末裔、「D an heir」と人々は呼んでいた。
 彼らは義賊と呼ばれるだけあり、人の殺生を嫌い、そして主に闇の取引船を襲っていた。その被害額は国庫レベルにまで匹敵するほどであろう。
 しかし彼らはある日を境に姿を見せなくなった。
 海から陸へと上がり、2つの領域をも牛耳る「D an heir」
 そんな彼らも現在では消息不明なのである。



「「D an heir」‥‥」
「ドラゴの末裔‥‥ね。一時期は10隻以上もの船隊を組んで徘徊していた海賊じゃないか」
「だけど、現在は海も陸をも凌駕する盗賊団へと成長してたってこと。しかもヨーロッパを中心になにやら秘密基地は各地方存在しているらしい」
「秘密基地ごっこがマジで秘密基地ったら、これぞ正しく嘘から出た真‥‥っていうやつかねぇ」
「あはは。ほんとだな」
 百瀬の言葉に寿は納得といった笑みを残した。

「さて、そろそろ地図から言ったら分かれ道なんだが‥‥」
 伊河は地図を見ながら行く先を照らしていた。
「鬼と出ますか蛇と出ますか。とりあえず最初の指針通り左曲がりでお願いしますか」
 寿の言葉に同意の返事が返された。


 最初の分かれ道は3方へと分かれていた。
 地図を渡されたときの打ち合わせ時に、分かれ道は左から探索していく‥‥そのように話が落ち着いていた。
 まず左の道へと入っていく‥‥
 進んでいく先に待ち受けているものは‥‥
 そんな緊張感が漂う中、足元の水を掻き分けつつ進んでいた。

「行き止まりか‥‥」
 最初の通路は数メートルほど曲りくねった道を進むと壁に突き当たっていた。
「いや、これは隠し扉ではないか?」
 ため息を吐きながら諦めかけたとき、隈なく調べていたカルマが微妙に異質な部分へと気づく。
「最初から当たり?」
「いや‥‥鍵の有無は見当たらないから別の場所だろう」
「んー。とりあえず、罠はないな」
「あけるぜ」

 その扉を開けると中は意外にも広い空間で山積みとなった木箱が大量に見受けられる。
「っと、人もキメラの気配もなし」
 寿は周囲の探索を終え、大きく声を張り上げた。
「この木箱なに入ってるんだ?」
 百瀬は足でつついていた。
「よいしょっと」
 何度か突き、それからアーミーナイフの柄部分を木箱の間に入れ、体重を掛けるようにして押し開いた。
「うわ‥‥埃が凄いや。ん? これは‥‥」
 辺りに舞う埃を手で払いつつ寿は食い入るように中を覗いていた。
「これ、胡椒じゃないか」
「こっちは茶葉が入ってます」
 同じく開けたカルマが手を振りつつ声を張り上げた。
「いったいいつの時代のものなんだか、湿気ててもう使えないですよ」
 伊河は覗き込むと簡単に品定めを始める。
「これは戦利品倉庫‥‥ってところか」
「‥‥みたいだな」
 そんな寿のつぶやきに百瀬はため息をつきながら同意を示したのだった。

 再び分かれ道に戻ると今度は真中の道へと突き進む。

 歩いていくとだんだんと水嵩が増していくのがわかった。最初は爪先を濡らす程度だったものの、今ではくるぶしを覆い隠すほどの量となっている。
「この先、どうやらさらに水嵩が増しそうだな」
 寿はそういうと、あらかじめ用意していたロープを各自に繋ぐよう促した。
「これは命綱代わりだ。先ほどの分岐路にあった程よい岩山に括り付けてあるから、これを辿ればあそこまで戻れる。溺れる心配はなくなるだろう」
「気をつけて進もう」

 進んでいくと、今度は二股に別れている。
「む、また分かれ道か」
「だいぶ時間がたってきた、頑張っていこう」
 そして、再び左側へと曲がっていく。
 突き進むこと十数分。水嵩はとうとう膝丈まで達し、一歩進むごとに抵抗力は強まる一方であった。

「こ、ここか?」
 目の前には大きく頑丈な、そしてこの水路には似合わないほど近代的なドアが鎮座していた。その扉は両開き仕様となっているらしく、真ん中の部分にはなにやらカードリーダのような作りと、暗証ナンバーを入力する機械があった。
「ふむ、ニコールさんの情報通りならカードをこの扉に‥‥」
 寿がカードを通すとなにやら機械音が鳴り響いた。

『アンショウバンゴウヲニュウリョクシテクダサイ』

「あ、暗証番号だって?」
「あの数字でいいのではないか? このカードにかかれている‘66’と」
「手がかりはこれしかないのだ、それを確かめてみるしかないだろ」
「よし、皆注意だけはしておいてくれよ」

 そして入力される。‘66’と。

 カチャッ

 自動的に扉が開いていった。
 素早く武器を手にし、警戒態勢へと入る。次第に開く扉。それに伴い辺りの水が扉の内側へと吸い込まれていく。不意に引かれていく水に脚を捕らわれるものの、倒れないようにと踏ん張りに力が入った。
 しだいに流れて行く水量が落ち着いてくる。それは入り口のところよりほんの少し多い程度、足音が鳴り響く程度のものへと変化していった。
 それとともに、目の前の扉も完全に開かれきっていた。

「俺が先頭になろう」
 そう言うと伊河は周囲を警戒しながら扉の中へと入る。それに後ろに百瀬、寿、最後にはカルマが続いた。
 どうやら怪しい気配の存在は感じられない。恐らくキメラはいないだろう。
 室内を一通り見回した後、少し気を緩め、今度は内部の探索へと移行した。
 そこは、最初に入った部屋とは違いなにやら近代的な作りとなっていた。壁にはどうやら電灯であろうスイッチがついている。つけてみると、部屋の全貌が明々と映し出されていた。
 巨大なスクリーンが一つの壁一面を多い、その前に並べられた机や椅子、そしてPCが並べられている。スクリーン横にははしごが掛かっており、どうやら上のほうへと続いているらしかった。机の上に広げられていた一つのファイルが目に付いた‥‥


  some other time to boys




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「そうですか、そのような状況でしたか‥‥」
「それと後もう一方の道は分岐点の方へと続いていた。どうやらループルートだったらしい」
「ありがとうございます。おかで僕では動かせなかった探索部隊のほうも動かせる資料が揃いました。これで盗賊団とバグア側との関係がある可能性があるとの見解が可能となりました」
「今回はここまで‥‥そういうことだな?」
「はい、ここから先は今回発見したものを調査してから‥‥そうなるでしょう」
「という事は‥‥」
「ですが、今回のような依頼形態にはできませんね。それとは別の話となってしまいますから」

「皆様、どうもありがとうございました。少年たちの区域だけでも使えるよう調整に入りたいと思います」
「そうしてやってくれ、子供の夢は奪いたくない」
「ええ、安全に考慮して出来るだけの形で実現させたいと思っています」



「水は嫌いじゃないが、ああいう場所は好きにはなれないな」
 ニコールへの報告が終わると伊河は短いため息をついた。
「早く帰ってシャワーを浴びたいってか?」
 そういうと、皆互いに顔を見合わせ、帰路へとついたのだった。