タイトル:ロジック66−2<青>マスター:雨龍一

シナリオ形態: シリーズ
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/11/09 00:20

●オープニング本文


前回のリプレイを見る


「どうしたものか‥‥」
施設UNOの捜索からニコール・デュポンは頭を悩ましつづけていた。
あの時に傭兵達から貰ったファイルには実際DOSについての詳細が書かれていた。
実験体βの新たなる実験がそこには記載されていた。
「また‥‥なのか?」
ファイルを置く手が、細かく震えている。
「β、γ‥‥このように続いていくのか!?」
窓の外を見ると、すでに日が沈みかけている。ブラインドの隙間から、遠くを見るように‥‥デュポンは指で掻き分けた。
「この‥‥この国で何を行おうとしているんだ‥‥」
目の前には川が流れている。
それが少し、哀しかった。

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ファイルの内容

 施設DOSによる実験体βについて抜粋


UNOが実験を始めた。それに並行するようにこちらでもβをつかって実験することとなった。
βにγ投入。
その後水槽に一日漬けてみる事とする。

βを確認。
しかし、水槽いっぱいに満たされていた水が消えている。
そして、βを確認。
その姿は、最初の頃より明らかに大きくなっている。
水を‥‥吸い込んだろうか‥‥

食事を用意する。
上からの指示により生肉を用意した。
なにやら、だんだんと表面が干からびていき、生肉は繊維だけになっている。
水分が、好きなのだろうか。

全体的に、滑りを増したように感じる。
いつのまにか、与えられる食事は固形から、液体へと変わっていった。
どこから調達したのか、いつもただならぬ量の血液が与えられていた。

もうすぐ、この施設から私は去るであろう。
その前に、この書類を君に届けられれば本望である。

●参加者一覧

赤霧・連(ga0668
21歳・♀・SN
終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
寿 源次(ga3427
30歳・♂・ST
百瀬 香澄(ga4089
20歳・♀・PN
大上誠次(ga5181
24歳・♂・BM
榊原 紫峰(ga7665
27歳・♂・EL
ユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751
19歳・♂・ER
フェイス(gb2501
35歳・♂・SN

●リプレイ本文

「よ、お久しぶり。どうも気になって、な」
 少し気まずく笑う寿 源次(ga3427)は、前回の依頼においても一緒だった百瀬 香澄(ga4089)とユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751)を見つけ、声を掛けた。

 ニコール・デュポンからの依頼は前回と、大差のないものである。それは一施設で行われていると見られる実験の状況調査。それが大まかな依頼内容であった。施設自体は、先の地下水路時に見つけた青地図が存在しており、そこから先の施設『UNO』と同じ構造であることがわかる。つまり、同系統の施設なのだろう。時間の経過と共にわかってきている事も、またあった。この、施設達を建設した会社についてだった。先の依頼時には会社名しかわからなかったものの、その後の調べにより上の会社がペーパーカンパニーであった事。そして、そのペーパーカンパニーの代表者がイギリスの会社役員であることがわかっていた。それは、別の国‥‥この、イタリアとは一見関わりそうにない、不思議な繋がりであったのだった。
「この建築会社の件については、他へと依頼することになった」
 集まったものにそう告げると、次に依頼施設へのルートを説明し始めた。
 『DOS』それは『UNO』から10キロほど離れた場所に建てられている施設らしかった。建築登録内容も同じ、『薬物研究施設』とのこと。青地図にいたっては瓜二つといった具合だ。若干異なる部分があるのかもしれないものの、同じ‥‥
「前回と同様、内部調査を頼みたい。この、書類が役に立つだろう」
 そういって差し出したのは、前回の施設において見つけた一通の封筒。パッと目を通すと、以前と同様に施設内で研究しているものに対しての実験経過だろう。βが、また存在するようであった。
「すまないが‥‥この『君』とは誰を指しているのだろうか」
 資料を手にしていた榊原 紫峰(ga7665)がニコールへと尋ねる。
「うむ、君の懸念はわかる。僕が思うには‥‥このあて先に書いてある人物へだと思うんだ」
 そういうと、ニコールは書類の入っていた封筒を表側にする。そこには小さく走り書きの文字が。
――Mr.Crow
 その人物に当てたのではないかと、ニコールは言うのだ。
「あいにくこの走り書きしかないが、該当人物についてはこの施設に関わっていたもの含め調査中である」
「わかった。終了しだい教えて欲しい」
「了解した」
 もう1人、資料を見ていて深く考えるものがいた。百瀬だった。
――『この資料を君に‥‥』か
 その言葉がどうにも胸に引っかかった。もしかしたら、この人物に悪いことをしたかもしれない。しかし、もうどうにもならないことである。
――まぁ仕方ないか‥‥代わりに探して出してあげよう
 そう考えに至ると、出されたお茶を一気に飲み干したのだった。
「スマンが、今回は無人かどうかわかるかな」
 寿の質問にニコールがわからないと答えると、
「そうですね‥‥調査するにあたって、無人であるという概念は捨てましょう。この資料より実験体が危険であることが窺えますが、そのことも捨てちゃいます」
 そう、心構えは敵地に赴くつもりで‥‥そう続いた赤霧・連(ga0668)言葉に、同意の頷きが返ってきていた。


 準備に当たって、一同は様々なものを貸し出してくれるよう申請を出していた。白衣、盗聴器だったが‥‥
「残念ながら‥‥それらについては貸し出しを許可できない」
 そう告げられたのだった。
「そういや捕まってないんだよな‥‥どこに消えたのやら」 
 電子カードを落とした男について尋ねてみると、以下のような回答が得られた。
―― 通称名:JJ
   今にも落ちてきそうな眼球が特徴の男。
   スペイン沖でよく目撃されていたが、1年前に消息不明となる ――

 わからない、まだつながりとなるパーツが揃っていないのだろうか。
 


 調査へは『セキュリティの抜き打ち検査』を称しての潜入を試みることになった。
 白衣を着用し、武器を予め用意したケースへとしまう。前回では施設は無人だった。このたびもその可能性が高いと見受けられていたが、一応念のためである。
 白衣を持っていた榊原、百瀬の2名と、セルガード白衣の寿が先に様子を見ることとなった。
 施設からは、物音が聞こえない。周囲を確認しても、どうやら警備についているものはいないようである。予めニコールから借りていたカードキーを用い、施設の扉を開けることができた。そして、入り先で人の気配がないかどうかを確認、気配はない、どうやら無人のようだと感じられる。それがわかると、無線機で連絡を取り、他のメンバーもそのまま合流することとなった。玄関先から、少し入ったところで、武装を元に戻す。青地図から二手に分かれて捜査をすることを決めていた。メンバーは百瀬・赤霧・終夜・無月(ga3084)・榊原をA班、寿・大上誠次(ga5181)・ユーリ・フェイス(gb2501)をB班として動くことになっている。
 広いエントランスから左右に分かれ調査をすることに。
 左側をA班が、右側をB班が様子を窺い調査を始めた。

<A>
 A班では百瀬をリーダーに探索は始まった。並ぶ部屋を手前から順に調べていく。
 UNOでは、最初の部屋は管理部屋であったはずだ。そう記憶を掘り起こしつつ、警戒をする。赤霧はその様子をマッピングしながら進んでいた。
 あけると、そこはどうやら物置き場になっていたらしい。薄暗く、じめっとした空気が溢れてくる。
 様子を窺いつつ中に入るが、敵、もしくは生命体の気配を探るものの、どうやらその様子は見られない。
 部屋の隅々まで調べる。監視カメラが無いのか、それと盗聴器はないのか二点を重視していた。
 次の部屋に行くも、それは変わらない。テキパキと調べつつ、後にするのだった。

<B>

「この風景、UNOとそっくりだな。するとこの部屋は‥‥あ、違う?」
 A班とは反対に、最初の部屋は管理室だった。どうやら、構造自体UNOとは対称になっているのかもしれない。部屋が各々違うものの、それでも大差がない印象だった。
 ユーリを中心に――彼は前回の捜査も担当していたからなのだが――室内を探索していく。見つけた監視カメラには、フェイスがペイント弾で画面を潰していたりした。ユーリは、写真を撮りつつシステムの電源を落とす。監視カメラのデータを回収しようとしたものの、それらはすでに空で、どうやら監視カメラは見せ掛けだけで動いていたようだ。すかさずA班へと連絡をとる。警戒すべき点が、一つ消えた。
 何故だろうか、特に電子機器はなく全てが書物、若しくはノートといった具合である。そのノートですら、中身を確認するとおおよそ研究には関係ないものであり、意図的に隠されている‥‥そういう印象を否めなかった。




 各部屋を捜索した後、再びエントランスへと集合した。ここも同じ、電磁ロックが付いている扉によって阻まれていた。軽く検査をしてみると罠は無い様である。前回と同様とばかりに、百瀬は予めニコールから借りたカードキーを通した。

―― PASS→66

 入力と共に重く開かれる扉。その先には、再び通路が見える。再び二手へと分かれる。たしか‥‥この先にある部屋が更なる奥にある部屋への鍵となっていたはずだったと、思い浮かべながら。
 実際部屋は3つ、真ん中の扉は、頑丈で開こうともしない。再びスイッチがあるだろうということで、探索へと移る。部屋の中はどちらもブラインドがかかった窓があった。警戒を忘れずに入り、チェックをする。前回とは違い、今度はブラインドのそばにある装置が、直接データを送る方式となっているようだった。
 終夜は端末を調べてみると、最終ログインデータを弾き出す。
 それは、丁度4ヶ月前の日付であった。
「比較的‥‥新しいみたいですね」
 そういうと、今度は他のデータが入っていないかを調べだす。生憎、他のデータは存在していなかった。
 一方B班でも同様に探索を行っていた。部屋に入った途端、大上は少々変な臭いが気になる。
「臭うね。カビや埃じゃない‥‥嫌なにおいだ」
 どうもその匂いは、ブラインドの奥、別の部屋から漂ってきているようである。換気扇を見つけ、そこを調べてみると、案の定どうにも鉄くさい、しかし時間のたった腐敗を感じる臭いがした。
 また、こちらのほうの端末も同様にあったのだが‥‥フェイスがおもむろに工具セットを取り出していた。
「ちょっと待て、この扉を開けてからにしてくれないか?」
 その言葉に渋々了承をする。そして、無線で連絡を取り合っていたユーリが終夜の見つけた開け方にのっとり指示を出す。
 3種類のボタンを交互に押していくらしい。その伝言を受け取った彼らは同時ではなくていいのかと、聞き返す。それに対し、順番さえ合っていれば問題なさそうだとの解答。それは、先の扉の形状のことだった。
 真ん中の開かない扉は、前回は電磁ロックが一箇所だったのに対し、今回は2箇所。それを考えると、同時に開かなくても開錠できると踏んだのだろう。アクセス履歴より割り出した順番を伝える。
 そして、押し終えたとき、鈍い重低音が響いてきた。
 互いの班が部屋を出、そして実験室と見られる場に向かう中、こっそり端末を回収するものがいた。榊原とフェイスだった。それぞれ自分の班のものが消えると解体・回収をはじめる。そして‥‥自らの懐に忍ばせ、合流をした。




 扉がうっすらと開いている中、警戒しながら押し開けようと試みる。ちろちろと水音が聞こえてくる。それと同時に、何かがぬらりと動く雰囲気を感じ取った。
 扉の僅かな隙間から、先程と同様に嫌な匂いがする。そう‥‥まるで戦場に降り立ったときのような、不快感を現す匂いだ。あの、人肉が焼け付くように、焦げる血の‥‥
 
「取り残された実験体、ね。まさか手に負えないからなんて事はないだろうし‥‥」
 呟く大上に他の者たちも反応する。
 もう一つ懸念材料は、最終アクセス暦から時間が経っていること。そのことにより、この実験体はお腹を空かしているのかもしれない。そうなると、自分達を餌と見て突如襲い掛かってくる可能性が非常に高くなるのだ。その危険性は、捨てられなかった。

「くっ、また特大サイズのスライムか!」
 部屋に入った直後、寿は思わず叫んでいた。UNOでも対峙した特大スライム、今回は綺麗な青色をしていた。スライムの足元には大きな堀が出来ており、そこからは次から次へと水があふれ出てくる。そして‥‥その水はスライムの中へと吸収されいてくのであった。部屋のいたるところにはなにやら干からびた塊が見える‥‥
 恐らく、この施設の者だったのだろうか‥‥その姿はあまりに無残で、悲しかった。
「皆にいと高き月の恩寵があらんことを」
 終夜はまだ見えぬ月へと祈りを捧げると、静かに月詠を抜刀する。
 狙いは目の前の実験体βの成れの果て、物理攻撃がどこまで聞くかはわからない、ただこの月への祈りのように届いてくれることを望まずにはいられない。
 始めは、距離を開けながらの攻撃となった。何しろ前のキメラの攻撃が頭にある。そうなると、距離を保つ必要があると、来る前から話が通っていた。連携を‥‥それを心がけ滅する。目的は、そこへと到達していた。

「水を吸って表面すべすべ。人類の1/2が羨む体質だな」
 百瀬は溜め息を吐きながら与える攻撃がすべることを呪った。確かに、こんな体質だったら女性達には羨望されるだろう‥‥ある意味、乙女の敵なのかもしれない。
 そんな事を思いつつ百瀬はフロスティアを振るう。また同じようにユーリも牽制を促すようにデネブアックスで薙ぎ払っていた。その隙を狙ってフェイスの銃声が響き渡った。 寿による援護が飛び交う中、相手の出方を見ながらの攻撃は、長い時間にわたっていた。切りつけるたびに飛び散る液体が、何故か薄く赤づいていたのは、気のせいだったのだろうか‥‥

「生きるために食べる、キミは間違っていません」
 ほとほとスライムも小さくなってきた頃、赤霧は再び弓を構え告げる。
「ですが、脅威となりえます。静かに安らかに眠って下さい」
 次の瞬間放たれた矢は、大きな弧を描きスライムの体内へと吸い込まれるよう、突き刺さったのだった。




「彼らは一体何を創造したかったのでしょうネ?」
 赤霧は打ち倒された残骸を見、口にした。実験体β、これは一体何を作ろうとしている過程なのだろうか。その先に何が隠されているというのか、まだ、濃いベールに包まれたままである。
「実験体、ね。もうお役御免ですよ」
 フェイスは胸元から一本煙草を取り出すと、咥え、火をつけた。
 ユーリは前回との類似点が無いかと床を調べていた。ちょうど、スライムキメラの体液が広がったあたりに、ぼんやりとした模様が見て取れる。慌てて近づくと、鼻につく臭いがわずらわしかった。少し我慢し、覗き見る。そこにあったもの‥‥それは間違い無くUNOにも見受けられた模様そのものだった。




「ありがとう」
 戻った一同に向けられた一声はその一言であった。報告と一緒に軽い食事が出される。
「これが、今回DUOに関する写真と簡単にメモした内容です」
 そう言って差し出されたのは一通の封筒だった。
「それと、これも‥‥」
 そういってフェイスと榊原は互いに自らこっそり持ってきたものを出してきた。
「これは?」
 ニコールはそれを受け取ると、じっくりと眺める。どうやら、何かの部品らしいことはわかるのだが‥‥
「それ、端末の中身です」
「え?」
「念のため、持って来ました。調査の方お願いしますね」
「わかった‥‥そこのところ、注意して取り扱うことにしよう。ありがとう」

 地下水路から始まりしこの調査‥‥いったい先に何が待ち受けているのだろうか。
 実験体βこれが鍵になることは明らかであろう。しかし‥‥
 いまだ繋がらぬ線がここにある。わかっていること、それは最初のファイルと見つけられた青地図の存在だけ。

――some other time to boys

 この言葉が切っ掛けだったのだから‥‥