●リプレイ本文
魔法の世界は信じてる?
それとも、貴方は信じていない?
不思議の世界は、おとぎの国。
素敵なひととき、一緒に味わおうよ。
◇◆◇
「ノーラさん、お手伝いに来ましたっ」
パタパタと扉を開けて駆け寄ってきたのはクラウだった。後ろから、ソラが真彼の手を引っ張って入ってくる。
「はわ、エレンさんもこんにちは」
ノーラの入れた紅茶を飲みながらエレンはまったりとカウンターへと座っていた。
すでに数人の人々が集まっていた。
一番意外な人物は‥‥。
「あれ? お兄ちゃん‥‥どうして?」
かくーりとアンドレアスを見たクラウは首を傾げる。確かに、この人物がこの依頼を受けるなどとは‥‥。
「‥‥うるせっ」
コツンと弾かれた額を痛そうに擦りつつ、不満な様子でクラウはアンドレアスを見つめていた。
◇◆◇
<はじまり、はじまり>
どうもー。
みなさんの天ぐるみがやってまいりました。
ぇ、みなさんのじゃないって?
い、いいんだってう゛ぁー。
今回は、魔法も飛び交うお菓子の話。
ぇ、ちまっ子達の話? お菓子じゃないの?
‥‥ごほんっ。
さぁ、君も一緒に行こうか。
おいで? 手を繋いであげるから。
<100年かぼちゃ>
――ねぇ、ミトリア。
――君が大好きなハロウィーンが始まるよ?
それは100年に一度育つというかぼちゃが眠る屋敷だった。
虎の桂木とその娘のコーギーの美雲。
巨体な虎さんはドスドスと娘を乗っけて屋敷に向っていた。
『今年、立派なかぼちゃが育つんだ』
屋敷の主ぱんだうさぎのルアムとは茶飲み友達で。以前そんな話をしていたことを思い出す。今日はその収穫の約束の日。
そして、明日は待ちに待ったハロウィーンの日だった。
『いらっしゃい』
ホワイトボードに書かれた言葉で、ルアムの友達の一人、ミトリアが庭へと桂木を案内し、お好きなだけどうぞ? と、庭に成るかぼちゃたちを見せながら。
「おお、本当に立派だなぁ」
ぐびっと脇に抱えていた酒瓶を口に含みつつ、桂木は満足そうにかぼちゃを眺めた。
「パパさん、そんなに飲んじゃダメですよ?」
肩に乗っていた美雲はぺしぺしと叩くも、にへへと笑って相手にはしてくれない。
ぷぅーっとふくれてみたものの、そっと庭へと視線を移すと、そこには見事な黄金色のかぼちゃが一つなっていたのだった。
「‥‥パパさん、あそこに大きなかぼちゃがありますよ? あれでお化けかぼちゃ作りましょう!」
思わず声が弾む。そのことに目を細くし、桂木はよしよしと頭を撫でながらミトリアに告げた。
「うん、アレを貰っていこう。それと、これをルアムに渡してくれな? きっと、来るんだぞって」
それは、パーティの招待状。
みんなが楽しめる、そんなひと時を。一緒に味わってもらおうと、桂木が作った手作りの招待状であった。
巨大かぼちゃを持って、桂木はとことこと歩き出す。美雲を今度はかぼちゃの上に乗せて。
「パパさん、どこに行くの?」
「んー、今度は美味しいケーキ屋さんに行くんだよ」
時々かぼちゃを下ろしてぐびっと一杯。
目的地は町のケーキ屋さん。そこは、不思議な力を持つケーキ屋さんだった。
<魔女の森>
「ふふ、今年もハロウィーンの季節が来ましたねっ」
嬉しそうにぱやぱやと、魔女のレグははしゃいでいた。ひよこの姿にとんがり帽子と黒ケープに身を包み。レグは大好きな魔女の白豹ロジーと一緒にお菓子の家を作る予定なのだ。
「れぐっ! 今年は気合入れましてよ?」
ふふっと、企みの笑みを浮かべるロジー。そんな彼女の使い魔は、黒猫の夢姫である。
「はいっ! 材料のお菓子の調達は任せてくださいなのですっ!」
お料理得意のレグは腕をふるって建材を作ろうと奮闘する気である。それはスポンジだったりクッキーだったり。甘い甘い、お菓子の家の建材だ。そんなレグの使い魔は、窓辺でふんぞり返って煙草を吸っているハスキーのアンドレアスであった。
「さぁ皆さんで素敵なお菓子の家、建ててみせましょうv」
白豹ロジーは黒のゴスロリ服を身に纏い、チラッと見せる翼と尻尾をパタつかせる。足りない材料は街で買ってきてねと。もちろん、顎で使われるのは使い魔たち。アンドレアスは咥え煙草で「へいへい」と文句を言いつつ、材料を集めに夢姫を連れて村へと降りていったのだった。
<不思議なケーキ屋さん>
桂木によって運ばれた巨大かぼちゃは、この雪狼ユーリのケーキ屋さんで形を変えていた。
中身を綺麗にくりぬいて。中身はお菓子の材料に、そして器は桂木の手によって何かに変えられようとしている。
そしてたくさんのお菓子作りが、ユーリのほか、ポメラニアンのソラとウサギのクラウ、そしてラッコのエレンによって朝から始まっていた。
ぽんぽんと卵を割るエレンにパタパタと運ぶソラ。ケーキの指示はユーリが取って。クラウはキャッキャと飾り付けをするのだった。
「あれれ? なんか少なくなってませんか?」
ぱやぱやとみんなでお菓子を作っていたソラは、どうしてだろうか、作っていたはずのお菓子が足りなくなっていることに気付いた。
「はわわっ、そういわれてみればマカロンとか水饅頭とかが足りないですっ」
まだあたしは味見してなかったのに、とクラウは困惑して厨房内を探し回る。
このお店では、思いを込めて作ったものが魂を持つという。そして、お食事戦士と化して無限製造をしてくれるのだが‥‥。
「‥‥ほんとだ、たりない‥‥」
ユーリも流石に首を傾げる。
「‥‥‥とりっくおあとりぃぃーとぉ‥‥」
入り口で、何やら声がした。
「はわわ、もう始まっちゃいました?」
そう、今宵はハロウィーン。お菓子を求め、色々な子達が彷徨うそんな不思議な夜。
もちろん、今日のお菓子はその夜のため。でも、まだまだ日が暮れていないことに驚きつつ、クラウは来客を告げる声に玄関へと出て行った。
「‥‥どなたですか?」
そろっと開けたドアから見えたのはシュークリームの塊で。
「はわっ!? シュークリーム?」
「いぇーす‥‥シュークリームのベルです‥‥」
目が無い、いや‥‥細い目がついた顔と、シュークリームの胴体。そして手足はどこぞのチョコクッキーで。思わずまじまじとクラウは見てしまった。
「‥‥とりっくおあとりぃぃーとぉ‥‥」
「はわっ、実はまだ出来てないんです。時間も早いしっ」
「ぇー‥‥」
不服そうに声を上げるベルシューにクラウも困った顔をするしかなかった。
「あれ? 何かあったの?」
ふわりと降り立ったのは黒い子犬のトリシアとそれを乗せていたあひるのサンディだった。2人は旅の途中で、なにやら様子がおかしいからと立ち寄ってくれたのだった。
「じ、じつは‥‥」
「く、クラウさん! こんなものが!」
パタパタと店の奥から走ってきたソラの手には、一枚のカードが。
そこには、どうやら犯人の手がかりが書かれているようであった。
<魔女の呪い>
「れーぐっ、材料集めてきたぜ!」
土台が完成し、いよいよロジーによる飾り付けに取り掛かっていたときだ。アンドレアスと夢姫が大量の袋を抱えて帰ってきた。
「‥‥アス、何だいコレは」
袋の中身を見たレグはたちまちジャガーへと変身してしまった。実は、過去に変身魔法に失敗をしてしまったレグは感情が高ぶると変身してしまう、そんな呪いを受けているのだ。
「あ? いや、材料集めろっていってたからよ」
既に仕事は終わったと、一服を始めていたアスは心外だとばかりにいやぁな視線をレグへと投げつける。
「‥‥これ、生きてるが?」
「ん? あぁ、レアもんだろ」
袋からは、可愛らしく『みずまーんじゅー』とか『マカロンろん♪』、『ういりょー』等と言う声が聞こえてくる。
得意気に話すアスに、レグは思わずヒールの踵を尻尾へと落とした。
「うがっ! な、何すんだ! このババア!」
「誰がババアだって? 何を浚ってきてんだい! あぁ、あんたに頼むんじゃなかった!」
「な、なんだよっ。せっかく使い魔らしくしてやったじゃねーか。いいじゃんか、ちゃんとカードも配ってきたし‥‥」
「おだまりっ! そのカードに書いてる内容がっ!」
そのカードに書いている内容は、まさしくレグからの招待状。それはハロウィーンの茶目っ気たっぷりの内容である。しかし‥‥。
今となってはそれは、まさしく自分が犯人ですよと言わんばかりのメッセージにしかならなかったのだった。
<残されたカード>
『お菓子、いただきました☆』
そこに書かれていた文字は、まさしく犯人の犯行を示す手がかりであった。カードにつけられていたのはヒヨコのマーク。それは、魔女の森に居る魔女・レグの証だった。
「お菓子が盗まれたって? むぅ‥‥みんなが一生懸命作ったものを」
それを聞いた桂木は思わず力を入れて愛用の酒瓶を割ってしまう。わたわたと慌てる美雲。そして、浚われたのは意識を持つお菓子戦士と聞いてちょっと不機嫌になるベルシュー。
「‥‥お食事戦士、始動です‥‥」
その言葉に、ユーリの店からポテポテと出てくるものがあった。
意思を持ったお食事たち、それこそお食事戦士どもだ!
「美味しく召し上がれー」
葛餅戦士・絣が爪楊枝を刺しながらぽてぽてと。
「野を越え、山を越え。お菓子を取り返しに突貫よーっ」
コロコロ転がりつつ、暴走化しようとしている桃戦士・百地。
「探して! 追いかけて! 未完成の品を渡すなんてプライドが許さない!」
ドタドタと続いて出てきたのは店主のユーリで。何事かとみんなが目を見張る中、ユーリは悔しそうに告げた。
「あのケーキ、まだクリーム入れ終わってないのにー!!」
どうやら作りたての特性シフォンケーキまでもが持っていかれたらしい。
集う者達に桂木はこっちに来いと、店の裏に連れて行った。
サンディはトリシアと共に一足先に魔女の家を探しに空へ。
そして‥‥残った者達は桂木がつくった巨大黄金かぼちゃのちま力車に乗って、魔女の森へと目指すことになったのだった。
<お菓子からちまへ>
「ねぇ、ノーラならこっちでもお似合いになりましてよ?」
キャッキャしながらロジーはマカロンノーラにふわっとレグのステッキを掲げた。
するとどうだろう。
そこには一匹の白猫が登場していた。
「‥‥にゃぁ?」
「ふふ、ヤッパリお似合いですわv」
はぐりっと抱きつくロジーにふんわりと笑みを返し。ノーラもまた、白豹のロジーに抱きついていた。
<魔女を探して>
「みつからないねぇ」
空の上から探すトリシアは、サンディの背に乗ってぴろぴろぴろと森の上を巡る。途中 サンディはアクロバティックな行動をしつつも、上に乗ったトリシアには気を使い。
中々見つからない森の上を行ったり来たりと飛び回っていた。
それに追いつこうとするかのように、桂木が運転するちま力車は猛スピードで森の中へと突撃していた。
何故かおめかししたソラとクラウも乗せて。ボーっとしているラッコのエレンとクリームの入った絞り袋片手のユーリ、キャッキャ騒ぐお食事戦士たちも乗せて。
途中まで行くと、なにやら甘い匂いに美雲が気付く。
「パパさん、あっちから美味しい匂いがするよ?」
娘の指し示す方向へと桂木は足を進めたのだった。
「おおっと、こっから先は通行止めだぜ。どうしても見たきゃ夜になってから来るんだな」
着いた先にいたのは目つきの悪いアンドレアスだった。どうやら先ほどレグに怒られたのがよっぽど気に触ったらしい。
「お前か? お菓子たちを浚ったのは!」
「はーんっ、しらねぇぜ。なんのことかねぇ」
ふふーんとばかりに尻尾をもふり。
「なに! もふもふはこっちだって負けてないんだぞっ!」
‥‥一体何の対戦なのか、いきなりアンドレアスに負けないぞとばかりにユーリはちま力車から降りて尻尾をもふもふと振り出す。そうするとアンドレアスもついつい負けないとばかりに振り出して。
そんな対戦模様を他の者達は唖然と見守っていた。
<パーティタイム>
「わふ、時間だ!」
いつの間にか時間が経っていたのだろうか、すっかり夕陽が森を照らす時間になっていた。
空から探していたサンディたちもようやく見つけたのか、かぼちゃのちま力車の横へと降りてくる。
「いいかっ! ここで待ってなよ!」
そういうとアンドレアスは、魔女の家へと走り出す。
呆然と見送るちま達を置き去りに。
とっておきのタキシードに着替え、BGMはお得意のギターで再び登場。
アンドレアスはにやりと笑みを煌めかせながらパーティ会場への道を開ける。
白い柵の向こうに見えた、甘い香りの場所へ。
「It’s a show time! Trick or Treat!」
案内されたのは昼間追い返されたちま達で。夢姫がふわふわっとお菓子たちもご案内。
そこに繰り広げられているのは、素敵な素敵なお菓子の家。
100年かぼちゃのちまカ車も乗り付けて。
夜は雰囲気をズットそれらしくしてくれた。
かぼちゃランタンは魔女達の力で空を舞い。壁もテーブルも、何もかもがお菓子だらけ。そんな夢のひと時が、目の前に広がっているのだ。
「皆さん、ハッピーハロウィーン!」
浚われたはずのお菓子たちも、わらわらと他のお菓子たちと再会の時間。
さぁ、みんな席に着いたら今度はお茶とお菓子が舞い降りてくる。
特別な時間、そんなパーティの夜が始まった。
「おお、これだこれ!」
高々と積み上げられたまるで何処かの斜塔のようなお菓子のデコレーションの天辺にユーリの探していたシフォンケーキはあった。
ちょっとサンディにお願いしてその背中へと乗せてもらう。
クルクルと、回転しながらデコレーション。
そして、出来上がったことにようやく満足気な微笑を浮かべていた。
お菓子の家は全てが食べられるようで、みんなの視覚も味覚も満足させていた。
とっても摩訶不思議な飾りつけはロジーのセンスそのもので。
あちこちから飛び交う花火に、驚きながらもとても楽しく。アンドレアスが奏でるギターの音でみんながみんな踊りだす。そこには、既に誤解が解けた魔女とちま・お食事戦士たちの姿が見られていた。
「お前は何しに来たかと、刺しちゃうよっ!」
一人他のお菓子たちと違って脱出を試みていたために隔離されていたういろう戦士・ういりょうはお食事戦士たちのリーダー格(?)であるベルを見つけストローを一刺し。
「ぎゃぁぁぁぁぁ‥‥‥‥」
サクッといい音がして、シュークリームの身体に刺さりこむ。
そんなことに満足を覚え、ういりょうは他のちまやお食事戦士たちと共に魔女の用意したハロウィーンパーティを楽しんだのだった。
「‥‥あれ‥‥、僕だけ、やられ役‥‥?」
ストローが刺さったベルシューは飛べもせずに置いてけぼり。そこに何故かお食事戦士からふくろうへと変身した絣が。
「ふーくーろーー」
ぱくっと頂きましたとさ。
「‥‥おいしそうねぇ」
ラッコのエレンはパーティの会場近くに浮かんでいた。
見つけたのは一匹の大きなカニ。
それはちょうど甘いものばかりに飽きていた彼女には素晴らしいご馳走にみえて。
「いただきまーすっ」
カツカツっと、お得意の石割で食べごろサイズへと変形、そして美味しくいただいたのだった。
「はわわっ、エレンさん。ゴミはゴミ箱にですよ?」
すっかり満足して散らかされた食べかすは、クラウによってゴミ箱へ。
‥‥ん? ゴミ箱?
そんなゴミ箱を見つけて、ソラは大切そうにお店へと持ち帰って行った。
ズルズルと、それは重そうに。それをぱやぱやとクラウも手伝って。
ユーリと一緒に後かたずけのゴミもキチンと入れて。
パーティー会場を後にしたのだった。
<楽しい時間の後>
「たのしかったね?」
アヒルのサンディの上に乗って、再び旅を続けるトリシア。
その手元には夢姫やユーリから貰ったお菓子が一杯で。
「さぁ、旅を続けようか」
ぴろぴろぴろーっと羽ばたく音が木霊する。
彼女達の目的は『伝説の小麦粉』。それを目指して今日も、明日も。
「トリシア、大丈夫? 寒くない?」
「うん、平気だよ」
目指すのはどこまでも続く空の向こう。
「‥‥大好きだよ、トリシア」
「うん、あたしも大好きだよっ」
交わされる言葉が、2人をやさしく包む風と共に穏やかに通り過ぎていった。
「ねぇ、どうでして?」
すっかりみんなが居なくなった魔女の家。そこにはヒヨコに戻ったレグがぽわわんと幸せそうに微笑んでいた。
「ん、悪くなかったろ?」
自分が犯したことが、一番の原因の発端だったことも忘れ、アンドレアスは得意そうに煙草を咥えて暖炉の前で寛いでいる。
「来年もその次も、パーティできるといいな」
すっかり丸まってしまった夢姫とノーラ。
そういえば、この子は帰らなくて良かったのだろうか‥‥。
そんな二匹に挟まれ、レグはふわふわと嬉しそうに微笑むだけだった。
「ちょっとー! あたしはクイーン・オブ・フルーツよ! なんで、なんであたしの活躍が無いのよぉ!」
一人暴走化していたももちは厨房の上でぽつーんと転がっていた。
既に料理は終っていて、切り刻まれたいと思っても誰もいなくって。
そんなももちを、白猫ノーラはぱくりといただいたのだった。
<おわりのおわり>
これでおしまい。
ねぇ、どうだった?
さいごはみんなで、ハッピー・ハロウィーン♪
うん、やっぱ仲良くみんなでが楽しいよねー。
また、一緒に物語が出来るといいねぇー。
それでは、またね。
ばいばーい。
◇◆◇
「マスター、こっちにスコッチとトマトジュース」
イギリスで飲むのは初めてだからと桂木はわくわくとスコッチを頼んでいた。隣に座ってるルアム用にトマトジュースを忘れないあたり、彼の気配りが見受けられる。
「エレン君はシャムシエル君と仲良かったんだね」
ソラに勧められながら真彼はエレンの向かいに座り紅茶を口にしていた。そんなソラはクラウディアと一緒にユーリが拵えたパンプキンパイを食べている。
「ええ、でも真彼さんがくるとは思わなかったわ」
あの子の頼み事は一風変わってるから。そんな事を口にしながら嬉しそうに談笑を重ねる。今は、まだ彼女自身旅の目的も知らない時間。聞かれても答えられない、そんな時間だったからかもしれなかった。
「なんか、全然採用されなかったんですけどー」
剥れながら桃ジュースを飲む百地を隣でういろうを摘みながら綾が苦笑で宥めている。
そんな事を気にもせず、ユーリのパンプキンシフォンをサンディとトリシアが夢姫と共に切り分け、何故シュークリームが無いのだろうとベルは小首をかしげていた。
カウンターに座りながら、ボーっとしているのは澄野で。そんな澄野にジュースを運んでいた美雲はあわわといいながら躓きそうになっていた。
そんな様子をM2が水饅頭を片手に見ている。
「そーいや、飲めたよな? これ、どうだ?」
アンドレアスは飲んでいたビールの瓶をノーラの方に指し示した。
それをキラキラとうれしそうに見つめるノーラだったが‥‥。
「ふふ、ノーラにはこちらのほうが宜しくてよ?」
アンドレアスが勧めるお酒を横に遠のけ、ロジーはさっぱりとしたレモンケーキをノーラの前に差し出した。
「‥‥甘すぎるのはNGですものね。時期的に」
ウィンクをして見せているあたり、ばっちりと気付かれているらしく、ノーラは顔を真っ赤に染める。
そんな様子にまだアンドレアスは理解していないらしい。
「‥‥で、結局なんでこんな依頼を?」
訝しげな顔をしながらアンドレアスは尋ねてきた。
どう説明しようかと、困った様子でロジーに助けを求めるものの、にこやかに微笑んで助けは出してくれない。
――同姓相手なら、まだいい易いのに。
そんな事を思いつつ、唇が少し開く。
「ノーラ」
そこにやってきたのは飲み物を取ってきた天で。
アンドレアスとロジーに囲まれたノーラを見て、不思議そうな顔をしてノーラの横へと座った。
「あれ? どうかしたか?」
「あ、あのね‥‥」
「いや、なんだってこんな依頼が出たんだか、気になってな。だってノーラ、探偵だろ?」
依頼でしか逢ったことのないアンドレアスにとっては当然の疑問であろう。そして、普段にしか会わない天にとっては今回の依頼は当たり前で。
そんな2人の様子を見て、ロジーは笑いを堪えていた。
「アンドレアス、この2人もうそろそろなんですって」
「‥‥は?」
「結婚、よ」
「‥‥なに?」
「あはは。実は子供も‥‥」
「‥‥俺、向こうで吸ってくるわ‥‥」
ロジーに促されるような形で出てきた答えに軽く頭を抱えつつ、アンドレアスは喫煙は悪いからなと席を離れて行った。
残された三人は、微妙に視線を交差させ何となく微笑を交わしていた。
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<出演>
●魔女
ロジー・ビィ(
ga1031)
レーゲン・シュナイダー(
ga4458)
●使い魔
アンドレアス・ラーセン(
ga6523)
夢姫(
gb5094)
●お食事戦士
ベル(
ga0924)
M2(
ga8024)
百地・悠季(
ga8270)
澄野・絣(
gb3855)
鹿島 綾(
gb4549)
ノーラ・シャムシエル(gz0122)
●ちま
柚井 ソラ(
ga0187)
クラウディア・マリウス(
ga6559)
ルアム フロンティア(
ga4347)
ユーリ・ヴェルトライゼン(
ga8751)
サンディ(
gb4343)
トリシア・トールズソン(
gb4346)
桂木穣治(
gb5595)
冴木美雲(
gb5758)
エレーナ・シュミッツ(gz0053)
●特別出演
国谷 真彼(
ga2331)
UNKNOWN(
ga4276)
●ナレーター
天(
ga9852)