●リプレイ本文
廃墟と化したラトラム郊外を、多種多様なKVが動き回っている。どの機体も注意深く市街地を探索していた。
「つまり卵を探してぶっ潰すだけの簡単なお仕事ですね、わかりません!」
自機、アメティストス・オリオンに乗る綾河 零音(
gb9784)はおもいっきりドヤ顔でそんな事を言った。
柳凪 蓮夢(
gb8883)のワイズマン、柊だけは低空を飛んでいる。
「それじゃぁ、私は空へと上がらせて頂くね。探索の方は、任せたよ」
そう言った柳凪は低空を飛行形態で飛行しつつ全体を見渡し、ハイコミュで連絡網を確立する。
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朽ちかけてはいるが、まだ形を残している倉庫の側を、慎重に索敵しながら、アンジェリカに乗る水無月 魔諭邏(
ga4928) と、サイファーを操る荒巻 美琴(
ga4863)が通過しようした。
二機が倉庫を通過するのを待ち構えていたかのように、倉庫の中からプロトン砲が二機へ放たれた。
だが、卵が倉庫の中や瓦礫に紛れていると考え、警戒していた荒巻は間一髪で砲撃を避けると、即座にレーザー砲とショルダーキャノンで応射する。
「さあ、いっくぞー!」
吹き飛んだ倉庫の中から敵が姿を見せる。それは既に孵化していたタートルワームだった。
「孵化後であろうと構いません。見敵必殺ですわ。その為の2機1組ですから」
魔諭邏も、合わせるようにレーザーで牽制射撃を行い、機刀月光を構え切り掛かる。甲羅のブレードでこれと切り結ぶTW。しかし、直後に魔諭邏とは異なる角度から斬り込んで来た荒巻のビームコーティングアックスが、隙を突いてTWの頭部を切り飛ばした。
その後、二人は探索を続行しつつ管制に状況を報告した。
「ガスタンクにでも偽装されていたら、見つけ難いと思っていましたが‥‥建物の中とは」
水無月はそう感想を述べた。
「さて、と‥‥情報小隊で磨いた腕の、見せ所、だね」
報告を受けた柳凪は、『卵は、主に廃屋の中を中心に隠匿されている』という情報を、荒巻、水無月の探索結果から割り出した。
この情報を元に、各区画でまだ形を留めている廃屋を重点チェックポイントとして設定した。柳凪の働きによって、探索はより効率化された。
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ルノア・アラバスター(
gb5133)は、熱源探査等と目視に加え、大型建造物の内部にも注意していた為に、柳凪からの情報提供以前に、卵を発見することが出来た。
「イースター‥‥中身は、やっぱり、お菓子の、方が、良いです」
ルノアは、機刀で卵を破損させ、そこにAF付与で槍撃を撃ち込む。ひとたまりも無く爆散する卵。
「イースターエッグですか‥‥やはり、あまりうれしくは無いですね。‥‥目標‥‥ポイント11にて発見しました‥‥」
ルノアと同様、探索開始直後に卵を発見したBEATRICE(
gc6758)が呟く。
やはり機刀で卵に切りつけるBEATRICE。しかし、こちらは弾かれてしまう。それが引き金になったのか卵が孵化の兆候か、振動を始める。
「一人一殺‥‥やはり、不慣れな私には、叶わないのでしょうか‥‥」
思わず唇を噛む。何度も機刀を振り下ろすが、ヒビこそはいるものの中々決定打には至らない。
「BEATRICEさん、援護、します」
BEATRICEが最初に管制の柳凪に報告していたおかげで、管制からBEATRICEの苦戦を知ったルノアが、急行してきた。
BEATRICEは、咄嗟に機体をその場から飛び下がらせた。直後卵にルノア機の放ったスラスターライフルが着弾する。BEATRICEのつけたヒビが広がり、卵は爆散して粉々になった。
「‥‥残りの卵はどうなっているのでしょう‥‥?」
BEATRICEはそう言った。
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「ローラー作戦をとって正解だったな。まずは管制の蓮夢に情報連絡だ」
深紫と名付けた竜牙に乗る沙玖(
gc4538)は、そう言って機槍で発見した卵を壊しにかかる。だが、卵は固く、そ沙玖う簡単に壊れそうも無い。止むを得ず、彼はアクセラレータを使用する。今度は卵を貫くことができた。
その後も探索を続けた沙玖がゴーレムを補足した時、ワームは正に飛び上がる直前であった。
どうやら、まだ戦闘が続いている区画に援護にいくつもりであったらしい。勿論、黙って行かせては仲間が危ない。
「黒鷲の竜の牙から逃れられると思うなよ」
沙玖は、慌てて応戦しようとしたゴーレムを、まず嵐で足止めし、続いて竜牙の咬み付きで動きを封じて地面に引き倒し、機槍で刺し貫いた。
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鷹代 由稀(
ga1601)は乗機、ジェイナスのガンカメラで瓦礫の中に埋まった迷彩模様の卵を捕えた。
至近まで接近する由希。その眼前で卵が不気味に脈動を始める。
「1体発見‥‥と。イースターエッグは孵化なんかしないってのにねぇ‥‥悪趣味な作戦だわ。アンタ等も茹だってろってーのよ!」
プラズマライフルとアハトアハトを構え、叫ぶ。
「‥‥ジェイナス、障害を排除する!」
光が装甲に突き刺さり、卵が爆散した。
「柳凪くーん、終わってない区域あったら教えてー」
撃破を確認した由希が、管制の柳凪に通信を送った。
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「んじゃー、さくっと終わらせるぜぃ! 行くよ、アイェッタ!」
綾河はそう言いながら捜索を続けているが、未だに卵は見つからない。
一方、綾河と同じ区域を反対方向から捜索しているカイト(
gc2342)は自機であるディアブロ、鋼鉄の夜狼に装備したクラッシュホーンでひたすら瓦礫を除去していた。
「‥‥障害物除去用に装備していた角が役に立ったな‥‥」
ちなみに何故か、彼の機体は前回の作戦で施した夜間迷彩塗装のままであった。
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「‥‥ふむ。面倒なことだ。だがやるしかないな」
アッシェンプッツェルに搭乗している赤木・総一郎(
gc0803)も、早々に当たりを引いていた。
「‥‥許せ。俺はこういう無粋な真似しかできん」
赤木は散弾をバラ撒いた後、FFの赤い光を確認したのだ。
「出てきたか。他が目覚める前に撃破する」
反撃が来ない事から考えて、まだ孵化はしていない。そう判断して赤木そこに近づいた。だが、煙の晴れるのを待って彼が接近した時、ブレードが一閃して、彼の機体に食い込んだ。たまらず赤木の機体が転倒した。完全に彼の油断であった。探索に重点を置き過ぎ、既に孵化している場合の想定が甘かったのだ。
赤木機に思い一撃を食らわせたゴーレムが瓦礫の中から身を起こす。
それでも赤木は機体を起こし、ギリギリ不利な体勢でゴーレムの刃を受け止めた。それでも徐々に押し込まれていく。
だが、そこに赤木のすぐ隣の区画を探索していた天空橋 雅(
gc0864)のソルダード、暴姫『アクヒメ』が、スラスターAモードとブリッツランスのスラスターを同時にふかし、高機動で駆け付けた。
「暴姫の舞、どうだ!?」
相手の死角へ回り込んだ攻撃は、ゴーレムが赤木機に集中していたこともあり、見事にワームを貫いた。
赤木もすかさず、クラッシュファングを繰り出し、ゴーレムは撃破された。
何とか赤木を救出した天空橋であったが、その間に赤木の担当であった68と、天空橋が無視せざるを得なかった。79の卵が孵化して、ゴーレムが出現した。
これに気付いた柳凪の連絡を受け、カイトが駆け付けた。
「その距離ならば‥‥援護する!」
鋼鉄の夜狼が、突撃仕様ガドリング砲を乱射しながらゴーレムの一体に突撃する。
「これがオレの勝負札だ!!」
機杭でゴーレムの胸元を貫く鋼鉄の夜狼。もう一体のゴーレムは、暴姫『アクヒメ』とアッシェンプッツェルの射撃で既に、動かなくなっていた。
「天空橋より管制へ、ワームの撃破終了‥‥、引き続き、担当区域の探索を行う」
雅は管制に報告した。
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須佐 武流(
ga1461)が発見した卵は、まだ孵化にまで時間があるようであった。
「サルヴァのおいちゃんは久しぶりだというのに‥‥人使いの荒さは相変わらずだ」
そう呟くと、武流は愛機であるシラヌイ改のソードウィングとエナジーウィングで卵に斬りこみ、小さい傷を開ける。その傷口から重機関砲を接射した。中で跳弾が発生し、何かがひしゃげる音がする。
が、跳弾を起こす為に威力の低い弾丸を選んだのが災いしたのか、傷ついたゴーレムが、卵から這い出てきた。
須佐は、装備したディノスケイルで蹴りつけて距離を開け、ブレードを躱すと再び機関砲を叩きこむ。程無くしてゴーレムは崩れ落ちた。
捜索を続けた須佐は、やがて二個目の卵を発見する。だが、この卵は既に孵化していた。ゴーレムがプロトン砲を撃つ。須佐は回避中心で移動する。
そのまま残りの区画をゴーレムとKVが並走する。その間も須佐は卵を探し続けた。彼の目的は、ゴーレムの攻撃に卵を巻き込むことである。
だが、彼の任された区画にもう卵は無かった。この事を察した須佐は、爪で急制動をかけ、改めてゴーレムを迎え撃つ。
重機関砲で牽制した後、SWとEWを交互に叩きこむ。程無くして、深い切り傷を受けたゴーレムは、地響きを立てて朽ちた道路に転がった。
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立花 零次(
gc6227)は、重症でありながら、既に孵化した二体のワームと対峙することになっていた。
「くっ‥‥! この状態では逃げるしかないか」
零次は夜桜に装備した機盾を構えて、亀の砲撃を防ぎつつラージフレアをばら撒きながら後退を開始した。さらに機体のスキルで更に回避率を高めようとしたが、背後から斬りつけて来たゴーレムがそれを許さなかった。
何とか刃を回避する夜桜。
このままでは零次が危ないと判断した柳凪は、通信でこの場所にいる傭兵全員に呼びかける。
「ポイント81と82にて、孵化したワームを発見した。現在立花さんが、交戦中。複数で動いている、或いは既に探索が終わったチームは対処を願う」
「皆からは、まだ少し遠いな‥‥私が抑えるしかないか」
柳凪は、自身も、真っ先に零次の元へと急行する。そして、低空からレーザーライフルの射撃で二体のワームの足止めを行った。
そして、綾河が柳凪の要請に応じて支援に駆けつけた。
「わかった、今行くじゃんよ! 走れオリオン! ここからはお前の真骨頂だぜいぇー!立花は無理すんなよーん? カバーはいくらでもしたげるじゃんよ!」
そう通信に叫びながら綾河は、零次のいる場所に向けて機体を走らせる。
到着した綾河は、立花機を砲撃しているTWの砲台に狙いをつけてレーザーカノンを連射する。
「市街地のど真ん中で、味方にプロトン砲なんぞぶっ放されて堪るもんですか‥‥」
由稀も、援護に駆けつけた。刃の間合いに入らない程度に接近すると、リボルバーをTWの頭部に連射する。
綾河は、この隙に、一度機体の銃器を全リロードさせると、EBシステム起動し、銃器を連射した。
「これがオリオン流射撃術の真髄‥‥ッ!『弓がしなり弾けた焔、夜空を凍らせて』撃ち!‥‥笑うなよ?」
実際、TWに笑う余裕は無かった。レーザーの光条を浴びたTWは、膝を折ると、爆発した。
由希も、ゴーレムに対してプラズマライフルで弾幕を張り、距離を取って戦っていた。なおも突っ込もうとするゴーレムの脚を彼女がアハトで脚を撃ち抜いた時、夜桜が機刀でゴーレムに切り掛かった。
「この身体では無茶は出来ませんか‥‥しかし、やれるだけはやらせていただきましょう。この状態のワームなら、なんとか‥‥」
PRMシステム・改を使用した、夜桜の斬撃は、由希の攻撃で半壊状態のゴーレムを何とか撃破した。ワームの撃破を確認した立花は、申し訳なさそうに言った。
「少しはお役に立てたでしょうか‥‥」
そんな彼に周囲は、口々に労りの言葉をかけ、立花への気遣いを態度で示した。
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スカイセイバー、ルーテシアに乗るルティシア(
gc7178)とスカイセイバー、空機明日に乗るカラキアス(
gc7175)の二名は隣り合った区画を共同歩調で探索していた。
「あれれなんで私こんな所にいるの〜の〜? なんで思いっきり近接格闘機体の載っているの〜の〜?」
ルティシアに、依頼に参加させられた事を思い出し、うろたえるカラキアス。そして、最初に接敵したのは彼女の方であった。それも、既に卵が割れゴーレムが立ちはだかっている。
「ひ〜、いきなり!? 初陣なのに〜!」
スカイセイバーにゴーレムが襲いかかった。
「泣き言はいわない! 支援まいりますわよ!」
ルティシアが、そう怒鳴り、重機関砲で隣を援護する。同時に彼女はカラスキアスに細かく指示を出し、相手を挟撃するよう命令した。
「そんなにガミガミ言わないで〜、あうあう、そんなミリ単位で指示出されても困ります〜‥‥はっ! い、今の支援射撃、私の方に弾道が近かっですけど。えっ下がったら敵ごと撃つですか? ひ〜」
しかし、なんだかんだで指示に対応しながら相手を追い詰めていくカラキアス。ゴーレムの損傷が徐々に増えていく。
「負けてられませんわね」
ルティシアが放った銃弾が、ゴーレムの装甲を貫く。怯んだゴーレムを空機明日が槍で貫く。
ここで管制の柳凪から、零次への支援を要請する通信が入った。
「がんばりましたね。さあ、今度は立花さんの支援ですわ」
ワームを撃破したルティシアがカラキアスに言う。だが彼女は、戦闘開始直後とは打って変わったクールな口調でルティシアを制した。
「目標発見・ポイント97・反応増加・孵化直前・判断請います」
彼女らは、最初のゴーレムを撃破した地点のすぐ隣で、新たな卵を発見したのだ。
ルティシアは零次の元へ向かいながらも、卵の方を優先するべきではないかと躊躇していた。だが、綾河が零次と合流したことを管制が告げた時、とうとう決断した。孵化を許せば、結果として全体が危険に晒されるかもしれないのだ。
「ツイントルネード、行きますわよ」
ルティシアが言う。廃墟の中で振動を始めた卵に二機が向かう。まずルーテシアがガトリング砲を連射すると、空機明日が即座に同じような動きでガトリングを放つ。
「正確に私の動きを追尾していますわね。まるで分身攻撃ですわ」
そのままコンビネーションで、二機は卵に機刀と機槍を突き立てた。卵が壊された。
安堵したルティシアは、カラキアスに声をかける。だが、空機明日のコクピットからかえって来る返信は、意味不明な声だけだ。
「どうなさいましたの?」
「ぽけぇ〜」
どうやら、彼女は半分意識が飛んだ状態で戦っていたようである。
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この戦闘を最後に、傭兵たちの担当した区画での作戦は終了した。
傭兵たちは、帰還した正規軍の基地で、休息していた。
荒巻が言う。
「散々なイースターだったね」
水無月が労いの言葉をかける
「皆様、お疲れ様でした」
一方、カイトは整備を受けるついでに、機体の色を赤に塗り直していた。
ルノアは、休憩スペースに置かれた菓子の盛られらた小皿の中に、包装紙に包まれた卵型のチョコを発見した。
「これも、イースターエッグ‥‥中身は、やっぱり、お菓子の、方が、良いですよね?」
ルノアはそう独り言を言うと、チョコレートを口に入れた。
(代筆 : 稲田和夫)