●リプレイ本文
●ビバ・ボリウッド!
「ふ‥‥今回はなかなかuniqueな依頼だね。良い退屈凌ぎになればいいけど‥‥」
「本当ですね。UPCにも変わった依頼が舞い込むものですね」
「本当に、馬鹿な企画ですわねぇ。無論、その馬鹿さが楽しいのですけれど」
ごたつく撮影現場を見てポツリと潤が言った言葉に同意するセラフィエルと小雛。
「あたし的には大歓迎ですよ。こう言うお仕事だと、本業を生かせられるので‥‥とは言え、本業は『おとなの』ビデオ女優ですから‥‥セクシーな部分は押さえないとね」
そう笑う澪。
「ほんとー、なんだか一日女優体験みたいー♪」
『おとなの』意味が良くわかっていない愛紗は、全身からわくわく波を出す。
「‥‥自分は受けたはいいですが、若干『お父様』役が上手くできるか年齢的に心配ですね。設定を見る限り、父親は、落ち着いた感じの男でしょうか?」
唯一の男性参加者の紫翠が溜息を吐く。
「大変ですわね」とお嬢様役の元お嬢様の小雛が言う。
「あたしはいつも通りの事をするだけですから、気合いは入っていますが、気は楽です」とメイドのモエギが言う。
「それを言ったら私の執事もだろう」と潤。
「メイクとか、CGとかでなんとかなるんじゃありませんか?」
『お母様』役が回って来たセラフィエルが覚悟を決めたように言う。
「それを言ったら駄目ですよ〜。うふふ♪」
見た目は可愛い小学生だが、実年齢が成人しているシェリルが闇笑いを浮かべ、楽しそうに言う。
監督を捕まえた出演者達が質問をする。
「『お母様』はバグアに憑かれた人という事ですが、頭に見慣れない装飾品とかが着いているんでしょうか?」
「バグアは、CGを使うんですかしら?」と小雛。
「バグアは本物でやったらいいと思うんですよね〜。これから戦って勝ち残っていくなら尚のことリアリティを追求しないとっ♪」とシェリルが言う。
やはり関心は『本物の敵(バグア)』と戦うのか? という点に集中する。
なにしろ企画を持ち込んだのが『あの』シャルベーシャなのだ。
撮影だけと言われても、ハイそうですか。と素直に信じられなかったのだ。
だが監督の話を聞くと、本当に撮影だけのようである。
「なんだ〜、残念。まあ楽しければそれでいいんですけどね〜☆」
シェリルの言葉に苦笑する監督。
「バグアが憑く人間は『死者』だっていう話だから、俺達はお母様の全身『青く塗る』ってなんとかしようって思っているんだよ」
「‥‥低予算ですね」
青色はインドで死を示す色である。それ故、ヒンドゥの神で青い肌を持つ神は、死を司る神である。
「バグアを離す事は出来ないんですか? あたしの武器は、人を傷つけるものではありませんので‥‥」
困った顔をするモエギ。
「残念乍ら事例は無いな。バグア憑きを生きたまま捕獲する事が出来ていないのもあるが、今の所『一度憑かれた人間は、死者』と考えるのが一般的だな」
現場見学に来たS・シャルベーシャ(gz0003)が、代りに答える。
「一昔前のホラー映画と同じで、憑かれた人間への対処法は『殺す』しか無いようだ。まあ死人を『殺す』と言うのも変だが」
いかにもオフといった姿のシャルベーシャが、天気の話をするかのように軽く言う。
「全くないんですか?」
「ああ。なのでラストシーンは、メイドーン達がバグアを退治。お母様の冥福を祈りつつ、皆に祝福されてハッピーエンドだな」とシャルベーシャが言う。
「あのね。愛紗、サルヴァおじちゃんにもう一つ聞きたい事があるの」
はっちーを抱きかかえ、上目遣いでシャルベーシャを見る愛紗。
「なんだ?」
「サルヴァおじちゃん、メイドが好きなの?」
思わず耳が大きくなってしまうメンバー達。
「? メイドは嫌いでは無いな。尤も他にも好きな物があるが‥‥」
真面目な顔をして答えるシャルベーシャ。
「あの、私も質問です。アクションシーンは、覚醒してもいいのでしょうか? 大仰に見える分には良いですよね?」
覚醒すると羽根の用な物が生えたように見えるセラフィエル。
「あたしは、覚醒するとかなりセクシーになっちゃうから押さえないと駄目ですよね」と澪が言う。
「君は聞いた話では、血流量が増え、体温が上がる。それに伴い発汗量が増えるとあるが‥‥脱ぎ癖があるのかな? 身体のラインを見せるのはOKなんだが『チラ』は困るんだよ。それに『しっとり』もね」
監督が、チラリと愛紗を見て言う。
「‥‥チラ? しっとり? なーにそれ?」と愛紗。
困った監督がシャルベーシャを振り返る。
「チラと言うのは『パンツ』だな」
真顔できっぱり答えるシャルベーシャ。
「下着が見えても平気な顔をしているのは困ると言う事だ。転んで下着が見せてしまったらスカートを押さえて恥じらうのが、女性らしくて良いという事だな」
「‥‥暑いですが、わたしはレギンスを履くことにしますね」
やはり真面目な顔をしてモエギが言う。
「ところで役名が台本に書いて無いんだけど、どうするんだ?」
「そうですわね。名前は、インド人の命名法則が良く分からないのでスタッフ様にお任せしますわね」
と潤と小雛。
「名前がいるかね?」と監督が言う。
「やっぱり名前があった方が、感情移入しやすいし」
「ね〜」
「名前は〜まぁメイドーンの人はインド人じゃなくても良さそうですよね〜♪ さてさて〜どうしましょ♪」とシェリル。
「じゃあ、あたしは本名にしようかしら? インドの方には日本名は神秘的に聞こえるかもしれませんから」
小雛はシャルマ、潤はシン、澪はミオ・アイノ、シェリルはシェリ、愛紗はユノという役名を使用する事になる。
「さぁ〜♪ 細かい打ち合わせが終わりましたら、メインディッシュのメイクと着付けの時間ですよ〜♪」
インド風なメイクの勉強をして来た。と言うシェリルがウキウキと言う。
「メイド服は着慣れていますので、ほかの方のメイドの着付けなどもお手伝いしますね」とモエギが言う。
「綺麗な人は、より美しく♪ 可愛い人は、更に可愛く♪ 愛紗ちゃんはきっと萌々で可愛いです〜☆」と目をキラキラさせるシェリル。
「愛紗も可愛くなりますか〜?」
「勿論☆」
びしっ! と親指を立てるシェリル。
「能力者の皆さん、準備は良いですか?」
ADが声を掛ける。
「Is the preparation good? さぁ皆で頑張ろう!」
シークレットブーツとスーツで身を固めた潤が、皆に掛け声を掛ける。
「気合いだな」とサルヴァ。
「ま、力入れすぎずに頑張るよ」とにやりと笑う潤。
●CAST
お嬢様 ‥‥‥鷹司 小雛(
ga1008)
セクシー・メイドーン‥‥藍乃 澪(
ga0653)
ロリっ娘・メイドーン‥‥シェリル・シンクレア(
ga0749)
パンダ・メイドーン‥‥‥愛紗・ブランネル(
ga1001)
ドジっ娘・メイドーン‥‥モエギ・マーブル(
ga3445)
執事 ‥‥‥‥‥潤・アレクサンドル(
ga0177)
お父様 ‥‥‥‥‥神無月 紫翠(
ga0243)
お母様(バグア)‥‥‥‥霞澄 セラフィエル(
ga0495)
●美少女戦隊メイドーン
<<平和な日常と奪われた日常>>
「紅茶をお持ち致しました、御主人様」
お父様に紅茶を煎れる執事。
ふと庭を眺めるお父様の目に広い庭を二人仲良く散歩を楽しむお嬢様とお母様が見える。
急に空が暗くなり、二人の前に現れる怪しいバグアの姿。
お嬢様を庇い、捕まり、何処かへと連れ去れてしまうお母様。
屋敷に逃げ戻ったお嬢様は、事の次第をお父様に話す。
慌てるお父様だったが、そこへ何事も無かったかのようなお母様が帰って来る。
それまで優しかったお母様は、事ある毎にお嬢様を虐め、続ける。
不信に思ったお嬢様は、ある日こっそりとお母様の後をつける。
小さな物置き小屋に入って行くお母様。
お嬢様が覗くと──全身が青く変色したお母様が、見た事もない怪しい機械を操作している。
びっくりしたお嬢様は側においてあった植木鉢を落してしまう。
逃げるお嬢様を鎌を持って追い掛けるお母様。
「何の騒ぎだ?」
騒ぎを聞き付けたお父様が家の奥から現れる。
鎌でお嬢様を斬り付けるお母様。顔を抑え、倒れ込むお嬢様。
再び鎌を振おうとうするお母様を羽交い締めにするお父様。
「一体何をしているんだ!! やめるんだ」
揉み合うお父様とお母様。
「シャルマ、早く、逃げなさい。ここは、私が抑えておくから」
「でも、お母様が!」
「いいから早く!」
家を飛び出して行くお嬢様。
<<出会い>>
人気のない公園の奥で倒れているお嬢様を見つけるミオ。
「酷い傷‥‥急いで手当てしないと」
お嬢様を家に連れて帰るミオ。
ミオの手厚い看病で一命を止めるお嬢様。だが、傷付いた瞳に光は戻らない。
傷付いた心はミオに対して心を閉ざす。
語らないお嬢様に「何時迄もここにいても良いのよ。でも、ここにいるのならメイドの仕事を覚えてね」
お嬢様であるシャルマにメイドの仕事を手取り足取り丁寧に教えるミオ。
心を少しずつ開くシャルマ。
<シャルマを励ますミオの歌>
「ミオ、貴女は一体‥‥」
正体を明かすミオ。
「あたしはメイド戦士、 美少女戦隊メイドーンのリーダー『セクシー・メイドーン』のミオ。シャルマ、貴女にはメイドーンの素質があります。一緒に人類の敵『バグア』と戦いましょう」
<武器を取ったミオとシャルマが共にバグアと戦う事を誓う歌>
メイド仕事と武器の練習シーンが続く。
ついに秘技を身に着けたシャルマ。
「あなたに教える事は、終わりました‥‥あなたの成すべき事を行いなさい」
そう言ってミオはシャルマに刀を手渡す。
──一方、病魔に倒れ伏したお父様の面倒を見る執事だが、決意したように立ち上がる。
「シン様、何処に行くの?」
庭を掃いていたシェリが執事を見つけ声を掛ける。
「お嬢様を探しに行きます」
「え! アディ姉どうしよう?」
シンの言葉に困惑するユノ。それに対し、義姉であるシェリは──。
「‥‥では私も御一緒しましょう。奥様の御様子は余りにも異常‥‥御主人様のお加減は増々悪くなるばかり、このままではこの屋敷はどうなるか心配していた所です」
「アディ姉はシン様に着いて行くの? じゃあユノも一緒に行くの!」
シェリの言葉に反応するユノ。
「ちょっと、待ってユノちゃん」
慌てて庭の端にユノの連れて行くシェリ。
「ユノちゃん、これがどんなに危ない事だか判っているの?」
「うん♪ でも、シェリ姉が守ってくれるよね?」
真剣な眼差しで義姉を見つめるユノ。
「‥‥しょうがないですね。ユノは一度言い出したら聞きませんから、そこが可愛いんですけど☆」
うふふふっ☆ と笑い、シェリは、ぷにっとしたユノの柔らかい頬にキスをする。
「危なくなったら、逃げて下さいね」
こうしてシン、シェリ、ユノの3人はシャルマを探す度に出る。
ミオの元を離れ、親友のモエギの所に身を寄せ乍ら助け手を探していたシャルマとほどなく再開をする。
「探しましたよ、お嬢様。共に戦い、あなたの父上と母上を救いましょう」
執事がお嬢様の手を取ってポーズをする。
<<バグア>>
仲間と友に屋敷に戻って来たシャルマは、母親の姿をしたバグアと対峙する。
「お母様を開放して、今すぐここから立ち去りなさい」
だがバグアの口からすでに母親は死亡し、あくまでその姿を写し取ったと知らされるシャルマ。
「お母様がお亡くなりになっていた‥‥」
自分を逃がし、バグアに捕まった時に死亡していた。
『お前のして来た事は全て無駄だ』
希望を失ったシャルマが愕然とし、膝を着く。
バグアが剣を持ち、目の前に立った事にも気が着かない。
「シャルマ、諦めちゃダメだ。皆で力を合わせて平和な毎日を取り戻そう!」
<シンが勇気を出せと歌う歌>
『無駄だ!』
振り下ろされる剣が、飛んで来たモップに弾き飛ばされる。
「彼の言う通りですよ。まだ貴女には守るべきお父様がいるでしょう?」
モップを持ったミオが立っていた。
「今こそ皆の力を、メイドーンの力を併せる時です!」
ミオの振うモップから光が溢れる。
変身するメイドーン達。
力を併せ、バグアを退治するメイドーン達。
<<大円団>>
お父様のベットの脇に立つシャルマとシン、そしてメイドーン達。
ゆっくりと目を開くお父様。
「お父様‥‥」
「‥‥お帰り、シャルマ」
お母様にバグアが取り憑いていた事を話すシャルマ。
「そうか‥‥だが、気にするな。お前達がバグアを立派に倒した事でアレの魂も安らかに過ごす事が出来るだろう」
「これからは、シンや友とお父様を守って行きますわ」
「‥‥いいや、私の事は良い。若い二人。好きなように生きなさい」
お父様の言葉を受け、庭に出るシャルマとシン。
二人見つめあい、熱い抱擁を交す。
──クレジットが流れ、激しいダンスミュージックがスタートする。
画面は反転し、映像が終了した。
●クランクアップ
「お疲れ様」
先にアップをしていた紫翠が、モエギが先に用意していたお茶やお菓子をメイドーン役のメンバー達に配って歩く。
「今まで受けた依頼の中で一番疲れました」
そういって紅茶を受け取るセラフィエル。
「役者のお仕事は終わっても、メイドのお仕事はまだまだ終わりません」
疲れも見せず撮影器材を片付けているスタッフ達にもお茶を配るモエギ。
「でも、これってこんなに凝っているのに映画と映画の間に流れるCMフィルムなんですよね?」とシェリルが言う。
「どうせなら映画にしてしまうのはどうでしょうか? ダルダ財団ならそれくらいのお金はありますよね?」とシェリルが言う。
「まあ、うちの会社には無いけど、大御所に行けばあると思うよ」と監督が、クッキーを食べ乍ら言う。
「ストーリーの要所要所のイメージをいくつか抜擢して、CMを作り、メイド戦隊モノとして売り込みましょう! アクションありドラマありミュージカルに笑いあり! ボリウッド・ムービー、完璧です!」
シェリルの言葉に心動かされた監督。
ちらりとシャルベーシャを見る。
「俺は企画を出しただけだ」とあっさりしている。
「うーん‥‥そうだな。シェリルの言うように、クリップを作って御大の御機嫌を伺うか‥‥」
撮影が終わってラスト・ホープに戻った一行の元に暫くして小さな映画の広告チラシが入ったヒンディ語の手紙が届いたという。