●リプレイ本文
「KV用ライフルって色々あるんですねぇ」とパナ・パストゥージャ(gz0072)が困ったように言う。
「理由は色々があるが、俺ならば他の武器だな」とS・シャルベーシャ(gz0003)。
この一言でボスとの対決シーンで使用する武器が決まった。
●CAST
バァン‥‥‥‥‥聖 武威(
ga8424)
コガ‥‥‥‥‥‥古河 甚五郎(
ga6412)
ケイ‥‥‥‥‥‥阿木 慧斗(
ga7542)
ラジェーシュ‥‥諫早 清見(
ga4915)
クミ‥‥‥‥‥‥飛田 久美(
ga9679)
アヤコ‥‥‥‥‥藤田あやこ(
ga0204)
チャンヤン‥‥‥張央(
ga8054)
挿入歌【走破GoGo】歌:藤田あやこ
●GOGOハイウェイ!
<OP>
モノトーンの画面:インド市街地をバァンが運転するLM−01のフロントガラスに街の灯が輝く。
インド駐留軍に掛け合うバァンに士官が帰れと手で示す。
それがサイレントで割り込む。
BGMはシタールの重い響きに暗い歌声。
○再会
ホテルに帰ってきたバァンに声を掛けたのは、嘗てのレース仲間ラジェーシュであった。
再会を喜び乍らもどこか様子の変な友に問うバァン。
「お前には隠せないな‥‥」
場所を変えようとバーに入る2人。
カウンターに並んで座るバァンとラジェーシュ。
「レースが行われれば禍が来る、だとさ」
「そいつは、穏便じゃないな」
カラ、リ──目の前に置かれたグラスの中の氷が揺らぐ。
「大丈夫なのか?」
「どうせつまらない悪戯だ、忘れてくれ。それよりお前はレースには戻って来ないのか?」
「そうだな‥‥‥」
♪〜
アスファルトを浸す雨は
お前を負かした涙のようだぜ
二人とも一寸だけ一寸だけ
生きる時代を間違えただけさ
<回想シーン>
サーキットを走る車がコーナーを曲がれ切れずに接触する。
バランスを崩した車に別の1台が突っ込む。
避けようとしたバァンの車に別の車が突っ込む。
8台を巻き込んだクラッシュにフラッグが翻る。
逆さまになった車体の中でシートベルトを外そうともがくバァン。
路面にオイルの黒いシミが広がり、何か火花が引火したのか火が走る。
小規模な爆発音と悲鳴とサイレンの音が重なる。
♪〜
流されるままに
しなやかに
風にハンドル預よう〜 〜♪
レースを見に行くと約束し、バーで別れる2人。
後ろで鈍い『ドン!』という音が響く。
道路に倒れているラジェーシュの脇をタイヤを軋ませ猛スピードで真っ黒な車が走り去って行く。
救急車に搬入されるラジェーシュ。
バァンの目の前で救急車のドアが閉まる。
○黒い影
「チャンヤンさん、どうして道路の工事に反対なんですか? ロードレースが開催されれば明るい話題になると思うんですが?」
農地を歩くチャンヤンにマイクを向けるクミ。
「そんな事、知った事か! 大体、誰が入って良いと言った。出て行け!」
そう言うとチャンヤンは、屋敷の奥に引っ込んでしまった。
「なによ、あれ‥‥こっちだってこんな取材よりサッカー選考会に行きたいわよ!」
ベーっ! とチャンヤンの後ろ姿に舌を出すクミ。
「『入るな』なんて、ヤバイ事でもやっているのかしら?」
社会部の仕事はつまらないと思いつつも取材拒否にメラメラと記者根性が燃え上がる。
屋敷の中に入り込むクミ。
ウロウロしている間に屋敷の奥に入り込んでしまったクミ。
廊下の奥に人の気配を感じて、近くの部屋に入る。
(「やだ‥‥来ないでよ」)
部屋にチャンヤンが入って来るのを見て、慌てて厚いカーテンと本棚の隙間に身を隠す。
キャビネットを開け、何かスイッチのようなものを押すチャンヤン。
(「なに、あれ?」)
大きなモニタが迫り出し、1人の人物が写し出される。
『どうだ、土地の買収については? 大会や政府から何か言ってきたか?』
「御安心下さい、バグア様」
バグアという言葉に、手に持っていたレコーダーをONにし、カメラのシャッターを切るクミ。
「土地買収は断固拒否。昨夜も1人、レーサーが『不幸な事故』にあったばかりです」
『それならいいが‥‥これ以上レースが盛り上がっては、我らの事がバレるのは時間の問題だ。なんとしてもレースを潰さねばならない。「不幸な事故」は続くのが望ましいだろう』
「ハハッ!」
○風雲
ラジェーシュのチームガレージを訪れるバァン。
「新しいドライバーは見つかったのか?」
バァンの言葉に昔同じチームにいたケイが首を振る。
「た、たいへーん!!」
ガレージに転がり込んで来るクミ。
置いてあった工具に足を取られて派手に転ぶ。
「早くレースをやめさせないと、大変なことになるよ!」
「こっちも止める、止めないの瀬戸際です。たった1人のドライバーが事故にあって大変なんですから」
「それって、何時?!」
「昨夜だ」
「ええ、うそーっ! ねぇ、バグアの奴らがこのレースを潰そうとしてるの!!」
「それはなんともキナ臭い話ですねぇ‥って、何を根拠に?」
コガの言葉に苛立つクミ。
「もう、信じてよ! これが証拠だよ」
クミが先程撮った写真と録音を皆に聞かせる。
「クソ、あいつら‥‥」
「どうします? 軍に連絡して出動してもらいますか?」
「レースはインドを縦断するレースですよ。どこから襲って来るか特定出来なきゃ防ぎようがないですよ」
「‥‥‥俺が出る」
バァンの言葉に皆が一斉に振り返る。
「市販車のレースだ。LM−01を偽装すればなんとかなるんじゃないか?」
バァンがケイを見る。
「外装それらしくは出来ますが兵装を外す事になりますよ?」
「勿論承知だ」
「それなら誤魔化せそうですね」
ケイの言葉にスタッフ達が一斉に動き出す。
「エントリー用紙を出す序でに大会本部に連絡します。クミさん、一緒に本部に来て下さい」
「OK!」
そんなガレージを怒りに満ちた目で見つめるチャンヤン。
「余計な真似を‥‥」
○インド縦断レース
スタート地点の空に花火が打ち上がっている。
ダンスや歌、ショーでサーキット場は大にぎわいである。
取材陣が詰め掛け、レースクイーンたちにもカメラが向けられる。
バァンたちのピットのレースクイーンは、ケイの知合いアヤコであった。
カメラににこやかに応じるアヤコを見乍らクミが言う。
「どう言う知合いなの?」
「ケイさんの同級生だったらしいですよ?」
スキップで卒業した大学の留学生だというアヤコ。
その天然な明るさでピット内を明るくしていた。
「朝方迄、皆ピリピリしていましたがねぇ。やっぱり女の子は良いです。ところでバグアの方は?」
「軍が急行した時には、もぬけの殻だって。このまま何もなければいいんだけど‥‥」
大会委員長のスピーチが終わり、先導車に従いサーキットをゆっくりとエントリーした車が走って行く。
先導車がコースアウトし、各車が各ポジションに停車する。
「バァンさんは12番目か‥‥」
「彼もレースは久しぶりだし。まあまあ、なんじゃない?」
バグア側を欺く為にラジェーシュの名前でドライバーエントリーしたバァン。
「ライセンスは返上したんじゃないんでしょう?」
そう問うケイに、これは能力者として走るんだからいいんだ。と笑ったバァンっだったが──。
シートを通してエンジンの振動が伝わって来る。
緊張感で口の中がゆっくりと乾き、心臓の静かな高鳴りが鼓膜に響く。
(「‥‥これだ、今の俺に足りなかったものは」)
ドクドクと言う心臓の音とは、逆に神経だけが静かに研ぎすまされていく──。
スタートランプが赤から黄色──
排気音の唸りをあげる車。
スタート時間が迫る。
黒い車でエントリーし、レースに乗り込んできたチャンヤン。
手に握った小さなスイッチを押す。
「足止めされているがいい」
バァンのチームの物置きが爆発する。
「はゎ! 物資が‥‥兵装が‥‥!」
慌てるスタッフを余所に──
──ランプが緑へと変わる。
同時に大きな花火が打上がる。
一斉に車がスタートする。
「いっけー!!」
アヤコがポンポンを握った右手を天に突き上げる。
会場を揺るがす激しい歓声と共にレースはスタートした。
○Heat of Fight
♪〜
GoGoGo DoDoDo WoWoWo(繰り返し)
まだ熱いエンジン、不満をもらす
まだやばいエキゾースト、不敵にわらう
『どうした? 花火の音に混じって爆発音がしただろう?』
「やられました。ストックタイヤや部品‥‥まさかこっちを狙って来るとは思っていませんでした」
消火器で火を消すコガを横目に無線でバァンと話すケイ。
♪〜
ビートでヒートで火をつけた
ハートはスピード、ひたすらに
『ケガ人はいるのか?』
「いえ、どうします? 中止しますか」
『どうせ、レインや替えだろ?』
♪〜
俺は俺はレェーサァー♪
走れ! 滾れ! ぶっちぎれ!
『そんなもの関係ねぇ! 俺はゴールを目指す!』
「‥‥分かりました」
無線を切り、スタッフを振り返るケイ。
♪〜
緯度と経度と国境と
赤道越えて! 回帰線を駆けろ!
スタート会場を4周した車達が市街地へと飛び出して行く。
「彼はレースを続行するそうです」
その言葉にピットが湧き上がる。
「レース続行‥‥了解。KVと兵装を手配します!」
コガが本部へ無線を借りに走って行く。
帽子を深く被り直すケイ。
「昔から‥‥そう。彼は走り出したら止まらないんです。なら、ゴールまでナビゲートするのがクルーの務めでしょう‥‥‥皆は使える部品を集めて各ポイントへ。僕は──」
♪〜
Where lies the heat of chase?
Its waiting there beat in the race! 〜♪
「諦めの悪い奴だが、ここまでだ」
ちらりと後方を走るバァンを見るチャンヤン。
疾走する車の列に何時の間にか黒い車体が数台混じっていた。
人目もはばからず、無差別に攻撃を開始するバグアの車。
前左右をがっちりと固め、逃げられなくした所を後ろから激しく体当りする。
突然、黒い車から長い足が生え、がっちりと車を掴むとボンネットが突然、顎のように変化して車を紙のように引き裂き、酸を浴びせる。
怪しげな黒い車は巨大な甲虫系キメラへと変身していた。
前を走るバァンのLM−01に迫るキメラ。
「来たか、ならコイツの本当の姿をみせてやる!」
偽装を解き、ロボット変形をするLM−01。
腕がキメラを叩き潰す。
「KVだと!? おのれ能力者め‥‥!」
チャンヤンの車からプロトン砲が迫り出して放たれる。
装備を持たないバァンのLM−01はその機動力で回避するのが精一杯である。
「何時迄も逃げられると思うなよ」
飛び出してきたチェーン付きクローがLM−01の足に絡み付き、ひっくり返る。
チャンヤンの車 タイヤ部分から大きく鋭いトゲが生え、ガリガリとLM−01を抉っていく。
「ハーハハハッ、これでお終いだ!」
<虫を模したスパイアイが上空から戦いを見守る>
HWの中らしき部屋の中で、2人の男が無表情にモニタを見つめる。
『アレはどうする?』
『どうせ地球人だ、替えはいる』
──ィイイイイーーーーーン!
甲高いエンジン音が聞こえた。
チャンヤンの高笑いを断ち切るように、飛来したケイのディアブロ。
KVから投下されたハイ・ディフェンダーが2体を繋ぐチェーンを断ち切り、メトロニウムシールドがアスファルトに突き刺さる。
『遅くなりました』
「待っていたぜ!」
アスファルトからハイ・ディフェンダーとメトロニウムシールドを抜くバァン。
「好き勝手な事を‥‥早く撃ち落せ!」
『全く、僕とした事が不用意ですが‥‥本日は空戦仕様でして。地上はあなた達に任せますよ』
新たに飛来したキメラに向かってディアブロが飛ぶ。
「これからが本気だ、能力者!」
チャンヤンの車がロボットに変形する。
ワームは赤熱した刃を持つ長柄の斧を振り回し、コックピット付近から嵐のように光弾を発射するが、シールドでそれを防ぎ、一気に間合いを詰めるバァン。
「これで終わりだ。マキシマムレベル、アタック!!」
すれ違い様にバァンのハイ・ディフェンダーが胴を薙ぐ。
バチバチと火花が飛び散る。
脱出スイッチを押すチャンヤン。
「な、何故脱出できん?!」
コックピットを炎が満たし──
「バグア様、お慈悲をー!」
ガクリと足を付くワームが大爆発をする。
○レースの行方
「レースの方はどうなった?」
『予定通り迂回ルートで継続しています。怪我人の方は間もなく救急車が到着します』
「そうか──」
実況『激しい追い上げを見せるのはエントリーナンバー18! コーナーで無理矢理車体を割り込ませた!』
交換のタイヤがないLM−01は、スピードを出せないでいた。
(「丁度良いハンデだぜ!」)
──ギャギャギャギャ!
ヘタったタイヤが悲鳴を上げ、テールが泳ぐ。
負荷を掛け過ぎればバーストしかねない。
ゴールはスポーツ競技場、周辺のO字路をサーキットに見立てた周回である。
「バァンは何位なの?」
アヤコがラップタイムのボードを覗き込む。
スタンド代わりに観客達は近くの街路樹にまで登ってレースの勝敗を見守っている。
「す、すごい! 歴史に残るデッドヒートだ!」
パチパチとシャッターを切るクミ。
周回を終え、競技場の中に迄もつれ込む。
皆の視線がゴールに集まる。
実況『ゴォオーーーーール!』
激しく振られるチェッカーフラッグと歓声、そして一斉に炊かれるフラッシュの嵐。
実況『もつれにもつれ込んだこのレース、結果は写真判定だ! トップを飾ったのは王者1番か、それとも激しい追い上げを見せた18番か!!』
クールダウンの為にラストランに入るLM−01。
ウィンドを下げ1番のドライバーと互いの健闘を讃える。
実況『‥‥‥おおっと、ここで判定が出た。トップは「18番」!』
わっ! と上がる歓声。
「やったな! お前は一番で帰ってくると思ってたんだ!」
ピットでバァンを迎える車椅子のラジェーシュ。
「いいのか、もう?」
「ああ、普段から鍛えているからな」
勝者を讃えようとピットにカメラマンが集まって来る。
「さぁ、バァン。表彰台に行って来い!」
実況『プライベートチーム「ラジェーシュ」、トップドライバー ラジェーシュの突然の事故を受け、急遽車輌とドライバー交代と言うアクシデントをものともせず‥‥』
ケイがバァンにチームキャップを被せる。
「チームのドライバー名はラジェーシュじゃなくって『バァン』で登録してある」
「お前ら‥‥‥」
「表彰台はお前が上がるんだよ、新たな英雄を皆お待ちかねだ」
表彰台に上がるバァン。
フラッシュとシャンパンを浴びる。
──エンドロールが流れ、エンディングテーマが流れる。
出演者総出によるダンスシーンが終わると画面は暗転。
フィルムは終了した。