タイトル:海の家「榊権造」マスター:有天

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 7 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/08/01 16:48

●オープニング本文


「紅蓮羅漢?」
「そーなのよ。地元の若い子らが集まってねぇ‥‥うーん? カラーギャングや暴走族とは、ちょっと違うんだけど、まあ、若い力を持て余してちょっと悪さをするのよねぇ」
 休暇を利用して海にやって来た能力者達。
 海で遊んだ後、一休憩にやって来た海の家での事である。

 海の家「榊権造」の6代目女将 榊 今日子(推定46歳)は、その巨漢に相応しい二の腕と撓わな乳(自称Gカップ120cm)を揺らして豪快に言う。
 地元のアームレスリング女子部のチャンピオンで、男性相手にひけをとらないその腕があれば、地元の小僧等一捻りだろうが‥‥。
「あたしは元レスラーなのよ」
 20年程前の現役時代、海外ではベビーフェイス、国内ではヒールで結構鳴らした「ブラックジャガー・キョウコ」というレスラーだったと言う。
「紅蓮羅漢にはウチの馬鹿息子もいるんだけど‥‥息子はいいのよ、張り倒しても。でもねぇ‥‥余所様の子供を張り倒すと『元女子レスラー暴行』って3面記事になっちゃうから」と豪快に笑う。

「まあ、暇だし‥‥お仕置きするのはいいけどさ。そいつら、どんな事をするの?」
 今日子の話によると構成員は全員二十歳前後の青年が12名。全員素手だと言う。
 腹にさらしを巻き、赤褌に足袋、草履に法被、中にはひょっとこや天狗の面を被ったふざけた姿で商店街のシャッターに悪戯書きをしたり、カップルに絡んだり、スイカ割りのスイカを奪ったりと、はっきり言って「地元の恥じ」だと言う。

「まだバイクで暴走していてくれた方がマシよ」と、言うのは今日子の娘15歳の優子である。
「誠一兄ちゃんが混じっているなんて恥ずかしくって友達にも言えないよ」
「まあ、そうだよね‥‥でもなんで優子ちゃんは、スク水にエプロンでお手伝いしているの?」
 15歳にしては立派なつるぺたである。
 特に胸の辺は巨乳の今日子とは似ても似つかない。
「手伝いの後、泳ぐのにも便利だけどマニアのお客さんに受けるから」とドライである。
「ビーチボールとか、浮き輪とか本当はポンプで空気を入れるんだけど、私が膨らましたとかいうと『口で膨らました』とか変な妄想してチップとかくれようとするんだよ」
 キモいからそういうお金は募金箱に入れて貰うようにしているけど。
 非常にドライである。

「まあ、商工会議所の青年団で懲らしめても良いんだけど、5日後に地元の神社で13年ぶりに大祭があってね。皆、そっちにかかり切りなのよ」
「それにもう一つ気掛かりなのは、最近出来たレディースチームなの。元々は紅蓮羅漢にセクハラされた被害者が集まったグループだったんだけど、名前は『婆多利按』。紅蓮羅漢とは逆に全員が女の子で35人。一番下の子は13歳で一番上のお姉さんは22歳なのかな?」
 隈取りやヘビメタバンドを思わせるフェイスメークに暴走族の着るような特攻服を着て、木刀やメリケンサック等で武装しているのだという。
「優子ちゃん、詳しいね」
「だって、お友達が入っちゃったんだもん」
 ムスっとして言う。
 優子曰く、入団規程に乳サイズD以上、チカンやセクハラにあった回数10回以上。男に頼らないという誓約書を書くのだという。
「つまらない人生だと思うけど‥‥」
「まあ、男でもあるでしょうけど、異性がうっとうしいとか思う時期は女の子もあるのよ。あたしもハニー(旦那)と出会う迄は男なんていらなかったもの」
 今日子が奥で氷をかいている今日子の半分ぐらいの体重しかなさそうな小柄な主人に豪快にウィンクをすると、主人がヒラヒラと手を振る。

「誠一兄ちゃんが電話で話していた話によるとお神輿をジャックするみたいなの。ペンキとか用意しているみたい‥‥バチがあたっちゃえばいいんだけど、うっかり私、婆多利按に入っているお友達に学校で話しちゃったのよ」
「なんでウチ(商工会議所)としては、2つのチームが和解して解散してくれるのがベストだけど、兎も角大祭の邪魔をされたくない訳なのよ。だからって宵山と本宮当日に神社以外の別の場所で2チームを煽って乱闘とかは困るわよ? 警察も目が届かないからね」
「うーん‥‥1人じゃ手に余るから友達呼んで良いですか?」
「勿論、ちゃんとUTLに依頼として頼むから安心して良いわよ。くれぐれも注意して欲しいのは、相手は皆、能力者じゃないからね。あんた達が本気を出したら、死んじゃうから適当にするんだよ」
 成功したら1日無料で「榊権造」を貸してくれると言う今日子だった。

●参加者一覧

リディス(ga0022
28歳・♀・PN
銀野 すばる(ga0472
17歳・♀・GP
愛紗・ブランネル(ga1001
13歳・♀・GP
エレナ・クルック(ga4247
16歳・♀・ER
UNKNOWN(ga4276
35歳・♂・ER
アヤカ(ga4624
17歳・♀・BM
紫東 織(gb1607
20歳・♂・GP

●リプレイ本文

●作戦会議はいちごシロップ
『紅蓮羅漢と婆多利按を和解・解散させよ!』
 愛紗・ブランネル(ga1001)直筆の横断幕(メニューを書く半紙をノリで繋げたもの)の下に集まったの7名。
「紅蓮羅漢、ねぇ‥‥」
 ジュースをストーロで啜る銀野 すばる(ga0472)。
 大好きなドリルが一杯で出て来るアニメのタイトルを捩ったとした思えない怪しげなチーム名を聞き、なんでドリルがないのよー! と叫びたいのが心情ある。
「やっている事が子供ならギリギリ悪ふざけでも通る内容だよな」と紫東 織(gb1607)。
 紅蓮羅漢と婆多利按にバレると不味いと言う事で作戦会議は海の家「榊権造」で行われている。

「若者の暴走ですか‥‥本来ならみっちりと懲らしめてあげたいところなんですが。これでも以前は教師志望だったんですよ、私」とリディス(ga0022)が言う。
「白衣着てチョークをビシッとか似合いそうニャ〜っ☆」とアヤカ(ga4624)。
「――元気なのは結構。だが過ぎた悪戯といがみ合いは、と言う事だな」とUNKNOWN(ga4276)。
 気温35度の真夏日にいつもと変わらぬ黒のフロックコートにスリーピースのスーツ、帽子と皮靴、革手袋という姿で壁に凭れているが、顔は汗を掻かいていないのが凄い所である。

「ふと思ったんですけどアイドルのアヤカさんがいるってバレると別の意味で不味くないですか?」とエレナ・クルック(ga4247)が言う。
「大丈夫ニャ☆ ちゃんと対策は出来ているのニャ☆」
 ガサゴソと袋からファントムマスクを取り出すアヤカ。
「これで誰だか判らないのニャ♪」とVサインをする。

「で、優子さんはなんでいるのかな?」
「私は皆の監視役。皆やり過ぎると困るから」
 きっぱり言う優子。
「お母さんが紅蓮羅漢を簀巻きにして浜辺の松の木に吊しても多分逮捕されないと思うけど、皆がやったら捕まるかも知れないもん」
 紅蓮羅漢と婆多利按の中には町の顔役的存在の息子や娘もいるのだという。
「だから今迄、両方とも野放しなんだけど」
「でも紅蓮羅漢の方は素早い動きで素手で懲らしめればいいニャない?」
 ファン以外の野郎には愛が少ないアヤカ。
「素手だったらいいんじゃない?」
 セクハラ紅蓮羅漢に鉄拳制裁をー! とすばる。

 とりあえず様子を見て来るわ。とすばるが優子から紅蓮羅漢の溜り場を確認し出掛けて行く。

「でも問題はもう片方ニャね〜」
「婆多利按は元々紅蓮羅漢にセクハラされた人達が集まったチームだから紅蓮羅漢の人達が謝罪すれば解散の方向に向かってくれるんじゃないかな?」
「紅蓮羅漢を懲らしめて婆多利按に謝罪させるのは大事ですね」
「とりあえずあたいは聞き込みをして来るニャ。情報というのは一番重要ニャからね〜」とアヤカが席を立つ。

●熱い血潮が赤いのは‥‥
 ──バァーーーーン!
 激しい音を立てて紅蓮羅漢の溜り場のドアが開く。
「何者だ!」
 すばるである。
「あなた達に足りないもの! それは、熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ速さ! ‥‥そしてなによりも、『紅蓮羅漢』を名乗るにはドリルが足りないのよ!!」
「ドリルか‥‥」
 ふっ‥‥と男が笑う。
「おれたちの熱いドリルは『ココ』にあるのだ!!」
 腰を突き出す男達。
「それが下品なのよ!!!」
 得意のコークスクリュー技を「紅蓮羅漢」と書いてある幕の前に座る男に向かって繰り出すすばる。
 団長らしい男は避けもせず、いや、正確に言えば避けられずそのドリルのような鋭いパンチを顔面に受け吹っ飛ぶ。
(「ええ、ウソぉ!!」)
 かなり手加減してパンチを出したすばるが焦る。
(「何、こいつ?! リーダーじゃないの???」)
 だが、突き出したパンチは戻らない。
(「こうなったら一気に全員啖呵を切って打ちのめすのみ!」)
 そうすばるが覚悟を決めて覚醒しようとした瞬間──
「「「「団長の仇!」」」
 汗臭い男達がすばるに一斉に飛びかかっていった。
「何処、触ってンのよ!!」
「わ〜い、女の子だァ♪」
「役得役得♪」
「暴れると変な所触っちゃうよ〜?」
「イヤァアアアア!」
 コチョコチョと体中をくすぐられ、ぐったりするすばる。
「ふ‥‥女1人でこの『紅蓮羅漢』のアジトに乗り込んで来るとはいい度胸だな」
 さし歯を折られた団長は鼻血を滴らせて、こう言った。
「俺達に逆らった見せしめだ、やれ!」

「失敗しちゃったァ‥‥」
 額に紅と書かれたすばるが戻って来た。
 今日子にタオルを貸して貰い「榊権造」の洗面所を借りる。
「意外に団結力が強い様ですね」
「俺は紅蓮羅漢に入ってみるかな?」と織。
「私が‥‥婆多利按に潜入するには‥‥(胸が)足りないです‥‥」
 ハァ‥‥と深い溜息をつくエレナ。
「でも、それって無理なんじゃない? よそ者をほいほい入れてくれるのかしら?」
 顔を洗って戻って来たすばる。
「『極上の女の子を紹介します』ってのは、駄目?」
「婆多利按は兎も角、お兄ちゃん達、馬鹿だからありえなくないけど‥‥」と優子が言う。

 そして煽て拝み倒してなんとかなった織は、紅蓮羅漢に入り込んだのであった。

「これから織の入団式を始める」
 団長の隣に並んだ織は、ズラリと並んだ赤褌野郎をちらりと横目で見る。
(「俺もいよいよ、この恥ずかしい格好をするのか‥‥」)
 自分が言い出した事とは言え、若干早まったような気がする織。
「皆の者、掛れ!」
「「「「はっ!」」」」
「な、なに‥‥‥わ、わっ、ギャー、よせーっ!!!」
 全員が一斉に飛びかかり、あっという間に織を丸裸してしまう。
 あとは何があってもハズレないようにがっちり赤褌が男達によって締め込まれる。
「イテテテテ‥‥っつ、つぶーっ!!」
「大丈夫だ。すぐに慣れる。それに一度ハマると抜けられなくなるぞ」

「ただいまニャ、色々判ったニャ〜☆」
 聞き込みをして戻って来たアヤカ。
「まず‥‥ジャーン! 衝撃の事実、紅蓮羅漢の団長と婆多利按のリーダーは前付き合っていたニャ」
「「「「なにぃ?!」」」」
「2つ目ニャ、紅蓮羅漢の人達の80%は半年以内に彼女にフラればかりニャ。
 3つ目ニャ、婆多利按の女の子は、皆美人ニャ♪ 紅蓮羅漢にセクハラされる前からチカンに何度もあっている女の子ニャンだけど紅蓮羅漢の人達をフった元彼女に似ている人が多いのニャ!」
「‥‥それってつまり‥‥」
「そうニャ、紅蓮羅漢は『好きな女の子にイジワルしちゃう』小学生の男の子と同じニャ!」
 ビシっ! と決めポーズをするアヤカ。
「青春ですねぇ‥‥」
「若さ故なのだろうな」
 魂の抜けそうな一同。
 一方の婆多利按は、あくまでも「対紅蓮羅漢」のチームなのだという。
「メンバーの子にインタビューが取れたニャ☆ それによると『ヤンキーな格好をすると別人になったみたいで勇気が湧いて来るの。普段の私だったら男の人の側に近寄っただけで恐いし‥‥ましてや喧嘩なんてとんでないことだけど‥‥コスプレすると強くなれる気がするの』だってニャ。つまり彼女らは変身して紅蓮羅漢から町の平和を守る『ヤンキー美少女戦隊』なのニャ!」
 アヤカを除いた皆が一瞬、気の遠くなったのは言う迄もなかった。

「でもそれなら和解させるのは簡単かも知れませんね」
「幸いにも紅蓮羅漢は、神輿を狙っている‥‥それを頂こう。彼等とて余所者に大事な神輿を奪われるのを黙ってみているのは気持ちが良くない筈だ」
「スーツにファントムマスクで素顔を隠し、適当にヤンキー座りでもして不良っぽく‥‥‥格好だけで十分怪しいですか」
「こういう人は改心させればいいニャね〜♪」

 仲間から連絡を受けた織と言えば婆多利按と紅蓮羅漢和解の第一歩として紅蓮羅漢乗っ取りの為に団長に勝負を挑んだが──勝負内容は尽く「ちょっと笑える恥ずかしい話」やら「ちょっと笑えない恥ずかしい話」とか「ちょっと涙を誘う恥ずかしい話」等、「恥ずかしい話」自慢であった。
 精神的ダメージ大の織がよろめき乍ら言う。
「ひょっとして紅蓮羅漢の団長って言うのは‥‥」
「そうだ。一番恥ずかしい思いをした男が選ばれる。何故ならそんな男こそ誰よりも優しくなれるからだ! そして皆、『ちょっと恥ずかしい』人には誇れない体験をして貰い平等になる為に、『ラブ&ピース』の為に結成されたのが紅蓮羅漢だ!!!」
「「「「団長ぅう!!」」」
 欠っ歯の団長の周りで男泣きをする男達を見乍ら本気で帰りたいと思う織だった。

●お宝強奪! 第三勢力「怪盗LEON」
 ドォオオオオオン!
 さしずめその場に相応しいBGMは重々しい大和太鼓の音かもしれない。
 神輿を右手に隈取り武装美女軍団「婆多利按」、左手には恥ずかしい過去を持つ恥ずかしい男軍団「紅蓮羅漢」そして中央に手書きの可愛らしい(UNKNOWN製)「らいおんさん」仮面を着けた男女5人「怪盗LEON」。+(プラス)遠巻きで見ている住民達。
 爆竹に関しては、万が一火花が散って御神体が燃えたら‥‥と神社側から許可が出なかったが、ペンキに関しては洗えば落ちるという事で水性ペンキを使用するように指示が出た。
「怪盗LEON参上‥‥コレクションに頂こう」
「あたしらの町であんた達みたいなふざけた奴らをのさばらしておけないわ!」
「お前たちがやろうとしていることを私たちがしてやろうとしただけだ、感謝するべきだろう?」
「ふっふっふ、大祭なんて前時代的な物はわたし達が壊してあげますよ」
「小賢しい! 紅蓮羅漢の野望を乱すお前らこそ許しておけぬ。第一、お前らには俺達のような愛がない!」

 戦陣を切ったのは誰だかは不明である。
 素手の紅蓮羅漢達は面白いくらい怪盗LEON達に手玉に取られ転がされて行く。
 木刀等で武装しているとは言え婆多利按のメンバーは一般人であるが、能力者の敵ではない。
「くっ‥‥こいつら強いぞ!」
「一時休戦だ。地元の力を見せてやれ!」
 何時の間にかギャラリー達が紅蓮羅漢と婆多利按の応援をしている。
 能力者達の思惑通り紅蓮羅漢と婆多利按が協力し始めたので適当にやられる振りをして撤退のタイミングを測っているたが──。
(「ぬ、いかん」)
「きゃーっ! いやあぁぁあ!」
 UNKNOWNの指先が婆多利按リーダーの特攻服とさらしを引き裂く。
 胸を庇ってぺたんと地面に座ってしまうリーダー。
「おっさん! 俺の女に何しやがるんだ!」
「なんだと?」
「猛、何時、あたしがあんたの女になったのよ!」
「うるせぇー、茜は俺のもんだ! 肌をみていいのは俺だけだァ! Hな事させてくれなくても、好きなもんは好きなんだー!」と吠える前団長。
 何処から現れた仮面を着けたナイスバディの美少女2人がさっとブルーシートを神輿にかけると同時に、上から大量のペンキが降って来る。

 ペンキだらけになってしまった怪盗LEON達。
 元より恥ずかしい事になれている紅蓮羅漢とフェイスペイントをしている婆多利按にはペンキの雨は、効果がなかった。
「ふっ‥‥協力されては堪らん、撤退だ!」
「こんなはずじゃなかったのに〜」
「お前たちがまた何かやろうとしたら呪って出てきてやる‥‥覚えてろー!」
 癇癪玉が炸裂し、二組が怯んだ隙に怪盗LEON達が一瞬に消え失せる。
「逃がしたか‥‥だが、何度お前らが来ようと俺達『紅蓮羅漢』!」
「『婆多利按』! 私達が町の未来を守ってみせる!」
 おおーっ! と町の人達から歓声と拍手が起る。

 こうして紅蓮羅漢と婆多利按によるお神輿襲撃事件は未然に防げられたのであったのだが、新団長である織がいなくなった為に紅蓮羅漢は解散‥‥‥といきたかったが、元々1、2日の新参者であった為元々の団長 猛が元の座に返り咲き、紅蓮羅漢と婆多利按は手打ちとなった──。

●大円団
 ──13年ぶり出された神輿が境内に祭られている。
 境内を繋ぐ山門までの道筋に露店が立ち並びカップルや家族連れが出掛けてにぎわいを見せている。
 その山門から少し離れた小さな社。
「ねぇ‥‥こんなところで?」
「たまにはいいだろう? どうせ、こんな寂れた場所(社)なんで誰もこな‥‥」
 男の頭に水風船が当る。
「誰だ!」
「ふぁ〜はははっ!! そこのカップル待たれよ!」
「愛の秘め事は、秘めた場所でやるのがお作法よ。こんな所でされたら神様だって困っちゃう」
「それに例えお天道様やお月様が許しても、この‥‥」
『紅蓮羅漢!』
『婆多利按!』
「「「「「町の愛と平和を守る我らが公道でのいちゃつき許さん!」」」」
 ポーズを決める47名。

 ──ワンワンワンワン!
 怯えた犬が吠える。
「五月蝿いよ、あんた達!」と露店のにーちゃんに怒られる。
「すみません〜。すぐに終わらせますんで‥‥」
 ペコペコと謝る紅蓮羅漢の団長。
「あ! Wリーダー、カップルが逃げます!」
「おおっ、大変だ! 行くぞ、リーダー茜。奴らを白昼の元に晒し、何れだけ恥ずかしい事しているのか思い知らせるのだ!」
「ええ、猛団長!」
 今日も何処かではた迷惑な正義を振り回し町の安全を守っていた。

 そして報酬として海の家「榊権造」を半分借り切った能力者達は思い思いに海を楽しんでいた。

 白い肌に映える黒いフロントオープンのハイレグ水着を着たリディスは浜辺に椅子とパラソルを出してもらい、その下でフローズンカクテルを楽しむ。

 コートを脱ぎ、裾をまくったスーツ姿でザブザブと水辺を楽しんでいるUNKNOWNに声をかけるエレナ。
「あんのんお兄様‥‥良かったら一緒に泳ぎませんか?」
 榊権造を手伝っていた時の白衣を脱いで、スク水姿のエレナ。
「ふ‥‥残念だが水着は持って来なかったな」
 下着の褌で泳いでも良いのだろう、帰りが困るだろう。
「泳ぐ事は一緒に出来ないが‥‥」
 ザバッ! とエレナに水をかける。
「一緒に水遊びぐらいならできる」
「はい♪」
 スーツ姿のUNKNOWNに容赦なく水をかけるエレナであった。

「ぷぁあ〜っ、幸せニャ♪」
 イカ焼きを頬張り、冷たいビールを飲むアヤカ。
「俺もビール貰おうかな?」
 一泳ぎして榊権造に休憩に戻って来た。
 隣に座ってジョッキを頼む。
「‥‥そういえば柴東さんってアノ、団長就任式やったのニャ?」
 酔いが回って、ちょっとトロンとした目つきのアヤカが織に尋ねる。
 アヤカの聞き込みで得た紅蓮羅漢団長就任式は、団員全員の前で尻に日の丸扇子を挟んで踊るという恥の上塗り行為であった。
「流石にアレを聞いた時には、耳を疑ったのニャ」
 織をジーっと見るアヤカ。
「‥‥‥あー‥‥‥海はいいなぁ、雄大で全て嫌な事を忘れさせてくれるよ!」
「怪しいニャ‥‥」
 こうして夏の一日は過ぎていった──。