タイトル:ユリアの初めて物語2マスター:有天

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 4 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/11/27 03:06

●オープニング本文


 ──ピィイイイイイイ!
 笛付きヤカンが鳴る。
 ユリア・ブライアント(gz0180)は、慌てて茶葉をポットに入れようと茶筒の蓋を引っ張る。
「固い‥‥‥」
 むぅ──と指先力をいれて茶筒を引っ張るユリア。
 ポン!
 軽い音を立てて蓋が抜けるが力をいれ過ぎた分、バラバラと大量の茶葉を床にまき散らす。
「‥‥‥‥‥あ」
 箒とちり取りをもってキッチンに戻る途中。
 箒の柄がカップに当る。
 ──ガッチャン!
「あ‥‥」
 床に落ちて砕けたアンティークのカップを眺めて溜息を着いた。
「‥‥いけない‥‥火‥‥」
 ヤカンの蓋の隙間から湯が吹き出しているのを見て慌ててコンロの火を止め、どこかに移動させようとしてミトンでヤカンを掴むユリア。
 だが、足元をちゃんと見ていなかった為に茶筒の蓋を踏み転びそうになる。
 熱湯を浴びる─思わず目を瞑ってしまったユリアはそう思ったが熱い湯は何時迄待っても掛かって来なかった。
 恐る恐る目を開けるとS・シャルベーシャ(gz0003)の呆れたような金と黒の目とユリアの目が会った。
「料理が出来ない女や手間が掛かる女はいたが、別な意味でこんなに手間が掛かる女は初めてだな」
 シャルベーシャはユリアの体を支えていた手を放すと床に転がったヤカンを拾い上げて元の位置に戻す。
 ユリアに怪我が無い事を確認すると「床の掃除をしておけ。俺は冷却の為にシャワーを浴びて来る」と熱湯が掛かったシャツのまま風呂場に行ってしまった。

 ガラガラとゴミ箱にカップの成れの果てを放り込んだユリアは大きな溜息を着く。
 ユリアがシャルベーシャのセーフハウスに来てから約1週間。
 部屋に備え付けられた備品を壊さない日は無い。
 今日のように大事になりかけたのは初めてだが、何かしらある。
 自分でもここまで何も出来ないのか。と、がっくりくるユリア。

 そうこうしているうちにシャワールームからシャルベーシャが戻って来た。
 ソファーにどっかり座り、救急箱から軟膏を取り出しガーゼに塗ると、包帯でぐるぐると火傷の上に固定をする。それを見て慌てて手伝うユリア。
 一生懸命包帯を巻くユリアを見ていたシャルベーシャが言う。
「俺がいつまでもムンバイにいると思うなよ」
 現在、朝はセーフハウス(シャルベーシャとて簡単な朝食メニューぐらいは作れる)、昼はMSIのムンバイ支店、夜はパナ・パストゥージャ(gz0072)をはじめとするシャルベーシャの知合いに連れられ食事をしている。
 だがシャルベーシャがムンバイを離れればユリアが食事も洗濯(現在、下着を含めて洗濯屋に出している)も自分1人でやるしかない。パナならたまには食事に連れて行ってくれるかもしれないが‥‥‥。
 コンビニやファーストフード店にレストラン、そういったものもムンバイにあるが、それでは従兄のキースが別れ際にくれたお金もあっという間に尽きるだろう。

 ***

「──そうなると、あなたに家事一般を教える人が雇いたい。という事になるのかしら?」
 ユリアの要望を入力していたオペレータの指が止まる。
「‥家事‥‥全部‥‥は‥一度に‥‥ユリアも‥‥覚えられない‥ので‥‥とりあえず‥ご飯の‥‥」
「食事の作り方を教えてくれる人の募集?」
 オペレータの言葉に頷くユリア。
「‥‥‥それに‥ユリア‥‥は‥‥お友達を‥‥作りたい‥‥です」
 どうやら先日のショッピングは楽しかったようである。

●参加者一覧

シーヴ・王(ga5638
19歳・♀・AA
忌瀬 唯(ga7204
10歳・♀・ST
秘色(ga8202
28歳・♀・AA
憐(gb0172
12歳・♀・DF

●リプレイ本文

「──ここが、ユリアの家でやがるですか」
「獅子の‥セーフハウス‥という点では‥‥あまりにも‥普通ですね‥‥」
 指定された住所はムンバイ市内の極一般的な古いマンションであった。
 ユリア・ブライアント(gz0180)に超初心者向けの料理を教える為に集まった勇者は、同じ初心者だが餃子経験者のシーヴ・フェルセン(ga5638)、趣味お菓子作りの家事が得意な忌瀬 唯(ga7204)、家事万能でお母さん経験もある秘色(ga8202)、日本の料理を教えると言う憐(gb0172)の4名だった。
「ユリアさんは‥‥‥偏食で小食‥‥お料理が‥出来ない所も‥‥‥お姉ちゃん‥そっくりです‥‥‥」
 唯はユリアからの依頼が料理と知ってがっかりする姉の代りにやってきたのだ。
 ドアの脇にある呼び鈴を押すと重いドアが開き、ユリアが顔を覗かせる。

「初めましてじゃよ、ユリア。わしは秘色と申す。よしなに願うのじゃよ」
 割烹着姿でにっこりと笑う秘色に「こちらこそよろしく御願いします」と頭を下げるユリア。
「わしのように親父くさい女でも、可愛らしいおぬしの友達にして貰えるかのう?」
「ユリア‥‥こそ‥‥よろしく‥‥御願いします」
 ぺこりともう一度頭を下げるユリア。
「‥‥お買い物に‥‥引き続いてです‥‥よろしくお願いします‥‥‥‥」
 深々と御辞儀をした後、Myエプロンを取り出す憐。
 何時でもばっち(り)こいの臨戦態勢である。
「シーヴはちゃんと教えられるか不安でやがるです。でも、初心者だからこそのレベルで、頑張るです」
 ぐっと握りこぶしを作るシーヴは兄チョイスのフリル付き白エプロンである。
「ユリアもエプロン着ねぇと汚れやがるです」
「エプロン‥ですか?」
 そういえば前回の買い物の時エプロンは買わなかった。
「無かったら、シーヴの予備を使いやがれ、です」
 こんな事もあろうかと。と揃いのエプロンを取り出すシーヴ。

●レベルチェック
「えと‥‥何から教えましょう‥‥?」
「まず依頼書によると『卵をレンジで爆発させた事がある』『ゆで卵を作ろうとして割れてぐちゃぐちゃになってしまう』‥‥良くある失敗と言えば失敗じゃの」
「電子レンジの場合は、黄身に楊枝で数箇所刺さねぇと爆発するです」
「楊子で‥刺したら‥‥中身が‥でません‥‥か‥?」
 ユリアの返答に顔を見合わせる一同。
「どうやった、です?」
「どう‥と‥言われても‥‥」
 卵をレンジの中央に置きスイッチを押すユリア。
「殻付き卵をレンジでチンしたらダメー」
 慌ててレンジを止める憐。
 思わず覚醒して「にゃー!」叫んでしまう。
「うむ、噂に違わず強敵じゃの」と感心する秘色。
「‥‥ゆで卵は専用器具使ってるですか?」
「ゆで卵専用器‥ですか?」
「でなけりゃ、卵をアルミホイルで包まねぇと爆発しやがるです」
「後は、冷蔵庫から取り出したばかりの卵を熱湯で茹でたあたりじゃろう」
「違うんですか‥‥?」
 恐る恐る聞くユリアに水から茹でるのだと教える秘色。

「ユリアさんを‥見ると‥本当に何処から教えれば良いのか‥‥困ってしまします‥‥」
 唯にとって料理の基礎は普段意識していない分、どう教えるかとても難しい。
「‥危ないですから‥火と包丁はしっかり教えた方が、良いですよね?」
「‥‥まずは‥‥包丁や調理道具慣れる所から‥‥怖くなくなれば‥‥余裕が出来ますし‥‥」
「そうじゃな。どうやら火加減の調整が出来ぬようじゃな」
 鍋を良く焦がすと書かれておる。と依頼書の備考欄を差す秘色。
「‥火を使っている時は‥‥絶対に側を離れては‥ダメです。特に‥ユリアさんは‥‥慣れていないですし‥火を付けたままで‥‥他の作業は禁止です」
 ビシっ! という唯。
「安全第一です。後で慌てねぇよう、道具や材料は最初に準備しとくが良し、です」
 気を着けなければ自分も火傷をしそうだが、ユリアはキーボードプレイヤーである。
 指を切ったり火傷をしたりしては。キーボードが弾けなくなってしまう。

「‥‥教えるメニューは‥‥何が良いでしょう‥?」
 ユリアは野菜も魚も肉もダメな超偏食である。
「卵は潰さず割れるっつー話なんで、目玉焼きとか?」
「どうやら卵は比較的好きなようじゃしの?」
 殻が入っても取り出せばいいだけの話である。
 それに潰れたら潰れたで使いようがあるのが卵の良い所である。
 ユリアのプロフィールによれば、両親共に英国人であるが生れも育ちも日本である。
 日本食は外せないだろうと言う憐。
「えと‥ご飯の炊き方から‥‥はじめます‥?」
 炊飯器があれば良かったのだが、炊飯器は家に無かった。
「大丈夫です‥お鍋があれば‥‥」
「お鍋で‥‥ご飯が‥‥炊けるのですか?」
「‥そうです。‥‥そう難しく無いですから」と唯。

●STEP1 包丁の使い方
「えと‥キッチン届かないので‥‥椅子をお借りしますね‥?」
 まずは唯と秘色が包丁の使い方を教える事になった。
 ユリア曰く皮剥きはピーラー(皮剥き器)、みじん切りはフードプロセッサー、スライスはスライサーを使っているので、出来ない小口切りやリンゴの皮剥きを教えて欲しいと言うユリア。
「‥‥包丁を使う時は‥‥包丁と反対の手で‥材料をしっかり押さえるです‥‥反対の手は‥‥にゃんこの手です‥‥」
「にゃんこ?」
「そうです。そうしたら‥包丁は‥あまり浮かせず‥‥指に接触させたまま‥動かして切ります‥‥」
 葱を小口切りにするユリア。
「材料が大き過ぎる‥‥と思った時は‥‥先にカットしておくといいですよ‥‥」

 続いて秘色がリンゴの剥き方を教える。
「林檎の皮むきは‥‥まず『肩の力を抜く』じゃ」
 肩に力が張ると腕だけでは無く手首や指にも余分な力が入るのだと言う。
「包丁をリンゴに当て、リンゴを包丁を持った手の親指で回すように押し乍ら切るのじゃ」
 ユリアの前でリンゴを途中迄剥いてみせる秘色。
「やってみるのじゃ」
 ユリアがお危なっかしい手でリンゴを切る。
 ブツブツとリンゴの皮が切れ──かなり厚めの皮である。
「ゆっくり慌てず、練習あるのみじゃ」
 押さえるリンゴが大きくて大変ならば、8切り等持ち易い大きさに切るのも一つの方法だと説明する秘色。
「丸だろうが、8切りでウサギじゃろうが皮を剥く時の手の首の返しは同じじゃからのぅ」
 ウサギリンゴを作ってみせる秘色であった。

●STEP2 卵料理
 教えるのはシーヴと秘色。
 特にシーヴが教えるのは基本中の基本、卵焼きである。
「卵は必ず常温に戻すです」
 面倒臭がらず卵は器に割って、よく熱したフライパンに小匙1杯の油を馴染ませてから静かに注ぎ入れるのだと言う。
「白身が固まり始めたら、水を大匙1杯入れて蓋をするやがるです」
「蓋?」
「こうするとひっくり返す手間もなく、表面も素早く過熱できるです」
 黄身の具合も良く見えるので、固さの調節も簡単に出来るのだという。
 強火から中火、水気が無くなったら火を止めて完成である。
「ケチャップがいいか、塩胡椒がいいか‥‥あとはユリアの好みで味付けをするといいです」
 卵を流し入れる時、一緒にベーコンやハムを乗せて焼けばハムエッグになると教えるシーヴ。
「途中で黄身が潰れたら、混ぜてスクランブルエッグに、です」
 料理ベタの二人である。
 火傷をしないように注意し乍らフライパンを火にかけ、目玉焼きを作っていく。

「次はわしじゃな」
 秘色が教えるのは、卵スープである。
 小鍋に湯を沸かし、スープの素を少量入れ、塩胡椒で味を調節し、そこに溶き卵を円を描くように静かに流し込む。というお手軽さである。
「好みで葱や好きな具を入れても良いし、水溶き片栗粉でとろみをつけるも良しじゃ」
 スープの素をコンソメ、中華と変えるだけでもかなり違うと笑う秘色。
「気をつけるのは、余り繰り替えし味見をしないじゃな。舌が麻痺するので最後の確認の時だけ味見をするのが良かろう」
 後はスープの素はお湯が沸騰したら一度火を止めてから入れるといいと教える。
「沸かしている最中じゃとスープの素を入れた途端に鍋が噴く時があるのでの」
 ベテラン主婦からのアドバイスであった。

●STEP3 日本伝統料理?
「‥‥お教えするのは‥‥日本に伝わる‥‥伝統的な簡単料理です‥‥」
 まずは基本である唯と憐による鍋で米を焚く方法である。
「無洗米とかも‥‥ありますが‥まず‥‥お米の研ぎ方です‥‥」
 まずは米に付着したゴミを洗うと言われて洗剤を取り出すユリア。
「‥ダメーっ!」
 がっしりと唯と憐にタックルを食らうユリア。
「ボールに‥お水を入れて揺らす程度で浮きます‥‥ポイントは手早く静かに水を捨てる‥です」
 ゴミが再び米の間に紛れないように素早く行う必要があるのだと言う。
 研ぐ回数は好みによるが、米を洗う水が白く濁らなくなるまで、丁寧に水は変えるのだと教える。
 その際は流水は厳禁だとと付け加える。
「できれば‥‥一度水切りをした方がいいですが‥‥すぐに給水させても‥いいです‥‥」
 米を深鍋に移し、米にあった水の量を加える。
「インディカ米は‥日本米に比べて水分が少ないので‥‥モチっとした感じにするには‥‥お水は多めに‥蜂蜜かお酒を少し入れて炊くと‥‥甘味と柔らかさが出ます‥‥‥」
 吸水時間は最低でも30分は取るといいと付け加える。
 火力は一度吹きこぼれる迄強火で炊き、その後は弱火でじっくり炊き上げるのだと言う。
 炊きあがったご飯を器に盛り、鰹節と醤油をあえた物を乗っけ──
「じゃじゃーん! 『猫まんま』の完成です」
 ユリアの前に猫まんまが置かれる。
「たしかに‥‥お手軽な逸品‥‥です」
「‥‥簡単すぎだといわれるのは判ってます‥‥‥好きなんだもん‥‥猫まんま‥‥‥」
 生卵と醤油の卵かけご飯も美味しいと言う憐。
「猫まんまは‥好きです‥が‥‥‥‥実は‥ユリアは‥生卵が‥苦手で‥‥ぬるっと‥した所も‥‥なんですが‥‥生臭いのが‥‥‥‥」
 過熱しないと卵は食べられないのだと申し訳なさそうに言うユリア。
 だが、熱々ご飯にバターを置き、醤油を垂らして交ぜご飯にするのも好きだと言うユリア。

「‥‥‥‥さすがに‥‥これだけではあれなので‥‥」
 ホットプレートや電子レンジで簡単に出来る料理を紹介すると言う憐。
 キャベツや玉葱、チンゲンサイなど適当に切り、ツナの缶詰めと混ぜた後、塩胡椒で味を整え、電子レンジで過熱する方法を教える憐。
「‥‥野菜がしなっとして‥‥ツナの油と塩胡椒が利いて‥‥とても食べやすいのです」
 野菜と聞いてフリーズしているユリアを見る憐。
「‥野菜は何でも‥‥いいんですよ‥?」
「キャベツ‥だけでも‥‥いいんですか?」
 それも過熱したキャベツしか青臭くて食べれないのだと言う。

「‥‥‥では‥‥日本の一部地域では主食の‥‥簡単料理です‥‥」
 お好み焼きを紹介する憐。
「出汁で溶いた小麦粉に‥‥キャベツ、海鮮類や豚肉などを‥‥好きな具を混ぜて‥‥鉄板でじゅーっと焼く、お好み焼きも‥‥野菜も取れて良いのではないかと‥‥」
 1枚焼いてみようとやってみたが、ひっくり返す時に立派に粉砕してしまった。
 上手くひっくり返せなくてもヘラで後からそれらしい形にまとめればよいとユリアを慰める憐であった。

●STEP4 パスタ料理
「スパゲッティを茹でる時の注意は、袋に書いてある時間と湯の量を守るじゃな」
 あとはひたすらパスタ同士がくっつかないように箸で掻き回し、良く湯を切るのだと言う秘色。
 ツナパスタにする場合、付け合わせの野菜はパスタと一緒に茹でると時間も短縮されお手軽だと言う。
 後は、缶詰めのツナを加え、バター、醤油、塩胡椒で味を整えれば完成である。
 もう1品はナポリタンもどきは、文明の力でスライスされた玉葱やピーマンをフライパンで炒め、そこに茹で上がったパスタを入れ、ケチャップで味付けである。
「ぶっちゃけ、かなり手抜き仕様じゃ」
 と笑い、スパゲッティは常備しておくのが便利だと言う。
「なにしろスパゲッティは『混ぜる』『炒める』で大概何とかなるからの」
 極端な話、醤油味だけでも、わしは食える。と秘色。
 ビバ醤油というべきかもしれない。

●実食
 作ったからには食べなくてはいけない。
 皆に色々指導してもらい乍ら初めて自分で作った料理を口にするユリア。
「美味ぇですか?」
「食べれない物は‥‥残して良いですよ?」
 唯に言われてナポリタンもどきから嬉しそうにピーマンと玉葱をフォークで弾いているユリア。
「ユリアは肉が苦手って言ってやがったですが、ひき肉も苦手ですか?」
「ひき肉は‥大丈夫です‥」
 ロールキャベツやハンバーグ(玉葱なし)は好きだと言うユリア。
「餃子は大丈夫でやがるですか?」
 ニラが多くなければ餃子は食べられると言う。
「いつかシーヴが教えてあげるです」
 にっこりと頷くユリア。

「‥‥お吸い物は、どうですか?」
 他の人がユリアを教えている間に唯が作った1品である。
「出汁が‥美味しい‥です」
 魚の中骨を炙って臭みを取ったものを使って出汁を取ったのだと言う。
 珍しい物を出せば、少しは食べる事に興味を持ってくれると思い、作ったお吸い物である。
「葱も‥‥炙ってから‥入れると甘味も増すだけじゃなく‥さらに‥魚臭さを取ってくれます」
「唯さん‥‥ユリアに‥‥この‥お吸い物の‥作り方を‥‥教えてくれますか?」
「よろこんで‥♪」
 唯からお吸い物の作り方を教わるユリア。
「お魚の身は‥ソボロにしたり‥面倒だったら‥獅子に‥食べさせるとか‥‥」
 ふんふん聞き乍らメモを取るユリア。

「疲れたじゃろうで、茶でも淹れようぞ」
 ユリアに茶葉の場所を教えられた秘色が手際よくお茶を入れる。
 その姿をじーっと見つめるユリア。
「‥なんでも‥‥できるんですね‥‥」
「何事も、やる気でどうにかなるもんじゃ。頑張るが良いぞえ」
 ユリアの頭を撫でる秘色。

 使った食器や道具を洗い、綺麗に後片付けをして4人はLHに帰って行った──。

●おこげ
 ──だが、教えてもらった事を1人ですぐにできる程器用では無いユリア。
 図解付きメモを片手に何度も繰り替えし作っているうちになんとか形になっていったものもある。
 が、どうしても上手く行かないものもあった。

 白飯炊きである。

 何度やっても唯と憐が教えてくれたように上手く炊けないのだ。
 つい、どうしても炊ける状態が気になり何度も鍋を開けてしまうのだ。
 それがイケナイのだと判っているが止められないのだ。
 あまりにもユリアの落ち込みようが激しかった為「鬱陶しい」とS・シャルベーシャ(gz0003)が何処から買って来た遠赤外線竈風圧力炊飯保温ジャー。
 それから立ち上がる白い湯気をユリアは、飽きもせず見つめていた。