●リプレイ本文
●混沌の香り
撮影に協力を申し出た傭兵達が順々に挨拶をする。
「映画に出るのは初めてでありやがるですが、楽しんで観てもらえるモンになるよう頑張るですよ」とシーヴ・王(
ga5638)が頭を下げる。
「お仕事‥演技‥‥大根役者‥‥なおすため‥?」とノエル・クエミレート(
gc3573)。
本気を出せば結構上手であるらしいが、独特とした間を持つゆっくりとした喋り方の為に演技力が評価されないということらしい。
「ふふ‥‥映画デビューも出来るだなんて、能力者になれて本当に楽しい日々ですわ」と嬉しそうなのはミリハナク(
gc4008)。
最高の悪役を演じてみせますわよ。と悪の女王を演じる気合充分である。
「‥‥傭兵ってホントなんでもアリなんですね」と呆れ顔のソウマ(
gc0505)。
LHに持ち込まれる依頼は、猫の里親探しから着ぐるみアクター、バグアとの戦闘まで‥‥ある意味がカオスなのかもしれない。
「やるからには、勿論映画文化大賞受賞を目指すんですよね? ‥‥答えは聞いてませんけど」
顔には出ないがかなりのノリ気である。
「私の名前レイカー。変装技術を磨きにきました」と髪をオールバックに固め、伊達眼鏡を光らせたレインウォーカー(
gc2524)。
***
脚本は王道の活劇と大筋が決まっているが微調整は現場で、といういかにもなボリウッド式である。
「ボリウッド的に、晴らせぬ恨みを仕事するシタール屋やビンディ職人は無理なんデスね‥‥帯解きならぬサリーくるくるは、ポロっても大丈夫なアジド中尉にお願いしたりとか、こう色々と‥‥」とぼやく古河 甚五郎(
ga6412)に「甚五郎さんがやる手もありますよ」と持ち前の軽さで答えるパナ・パストゥージャ(gz0072)。
「プロデューサー自らカオスを広げるような事を言っていいのかね?」というのは今回、音楽とダンス指導に協力を申し出たUNKNOWN(
ga4276)。
「台本を読んだ所、オープニングはゆっくりとしたテンポで良いような感じがするが‥‥目指す音楽はあるのかね? インド古来のメロディだけではなくアレンジも必要だろうが?」
チューニングを終えたヴァイオリンを手にメロディを即興で奏でるUNKNOWN。
「このままから題名までを繋ぐように」
リズムがアップテンポに変わり、そのまま勢いを付けてグイグイと引っ張っていくようなメロディに変わる。
「さて、こんな感じでいかがかな?」
帽子を取って一礼するUNKNWON。
***
「しっかし中々にカオスなシナリオになったな」
台本に目を通していたネオ・グランデ(
gc2626)が言う。
「なんたってコメディ主体らしいしね〜」とオルカ・スカイホップ(gv1882)。
慣れない映画の手伝いであるとりあえず出来そうなことは何でもやることにしたネオとオルカ。
「それにしても街中での市場のシーンの再現とかは、その場で借りてすればいいとして‥‥他何作ればいいのか途方に暮れるな〜‥‥」
とりあえず現場の状況に併せ『ない!』って言われた物から作るしかないのかもしれない。と腹を括る。
「あとは‥‥そうそうトラブルも無いだろうが、警戒はしとかないとな」
オルカは撮影に直接関わる仕事が中心だが、ネオは警備や炊き出しも手伝う予定である。
自分で立てたスケジュールだが、かなり忙しそうに感じるネオ。
「まあ、頑張るしかないか」
「わしも協力するぞ。なんかおこったらいかんけんきっちり警備せんと」
見学者の警備をする事にした早瀬 翔一(
gc3636)と中将坊(
gc3643)。
2人はパナから必要と思われる資料の束(撮影所の警備マニュアルと撮影所の敷地の図面、撮影の台本とタイムスケジュールのコピー)を貰う。
「結構、ぶ厚いもんだのう‥‥」
警備マニュアルには、参考例として最近起こった事件等が描かれていたがキメラやワームといった記載よりも難民による盗難事件等、戦争の影響を強く感じさせるものが多かった。
「‥‥どこにでも戦争の影響はあるんだな」
「戦争は疲れるけんのう。人心が荒む」
やれやれ。と溜息を吐く中将坊。
「確率的に低いと思うがテロが起こるリスクはどうかのう?」
「電気設備や危険物の管理状況は?」
お互いに考えられるリスクについて書き出して考える。
「この図面で行くとスタジオ内は、一般客の移動通路ということでラインで色分けすればいいか‥‥」
後は看板の設置しての誘導を行えばいいか? と翔一が中将坊を見る。
「そうじゃのう。ラインが引けぬ場所はロープも張っておけば、それを離れる客は『特別』な客という訳と判断すればよかろう」
装備は銃器使用による跳弾被害、可燃物も多いことから超機械も避けるのがいいだろうという事になる。
「一番の問題はロケの時か──」
台本を確認すると超巨大ロケットの発射シーンを含めたKV使用時と市場のシーンが一部ロケである。
奈落はないが、女王役がせり出てくる特殊な台がある。
うっかり見学者が登って落ちたら大事である。
「ここは、一般人の立ち入り禁止だろうな」
「警報装置も避難路もない所で見物人が怪我をしたら話にならんけんのう」
救急セットやスポーツドリンク等を用意しておいた方がいいだろう。と翔一が言う。
「後は、こまめな声掛けか‥‥」
中々どうしてこちらもやることが一杯のようである。
●深まる混沌
「勢い余って壊さないように、と‥‥」
運搬機変わりにディスタンを持ち込んだネオが、自ら作ったナラシンハ用の飾りを運ぶ。
「オーライ、オーライ‥‥ストーーーーップ!」
「さて、こんなもんで良いかな?」
フォークリフト代行作業は、やりはじめた当初はぶつけてばかりでよくセットを壊していたが、今では手馴れた作業である。
と、ここで携帯電話のアラームが鳴った。
フル・ロック(
gc3399)の交代でボチボチ警備の交代に向かわなくてはいけない。
まだ、運ぶ物があるので戻ってきて欲しいと大道具の責任者から声が掛かる。
「判っている。また後でな」
***
「パナさん、ポスターは大きな文字とかよりも写真を上手く使った若干B級っぽさが抜けない感じが面白いかも〜」
カオスっぽいかんじで!! と提案するオルカ。
「そうだね、はい」
ドサドサと写真の束を渡すパナ。
「パソコンは事務所のを使ってくださいね」
どうやら切り張って見本を作ってくれ。ということらしい。
自ら仕事を増やしたオルカであった。
事務所に資料を取りに来ていた甚五郎が、S・シャルベーシャ(gz0003)とパナを捕まえてこう言った。
「パナさんとシャルベーシャさん、どちらか食事制限できますか?」
「まあ、妻からはダイエットしろと言われていますけど‥‥?」
最近ぽっこりしてきたお腹をさすりながらパナが言う。
「病気のおとっつぁん役は年齢的にパナさんかシャルベーシャさんしかできません!」
キパッ! と言い切る甚五郎。
「NG続出でも大丈夫です! カレー粥は大鍋一杯発注頼みました★」
もし余っても残りはスタッフで美味しく頂きます♪ と言う甚五郎であった。
***
深まる一方のカオスなシナリオに心痛めるのは女性陣である。
「‥ミリハナクさん‥御免なさい‥‥」
「私も役の為とはいえ年増とか‥」
役とはいえ撮影中、ミリハナク(
gc4008)に対して色々な暴言があった。
「気にしていないから大丈夫ですわ」
やりすぎかもしれない。という点では監督指示とはいえ白虎(
ga9191)の両頬を引っ張ったり、くれあ(
ga9206)に対して失礼な言葉を言ってしまった。という。
「あの台本、一体どこまでカオスを広げるんでしょうね?」
●混沌は踊る
フルのディアブロがスクラマサクスを手に周囲を林の中を警戒して歩いていく。
キメラと思われる巨大カマキリの目撃情報が、警備室経由で入って来たのが5分前である。
発見に手間取れば人的被害が出る可能性もある。と必死にカマキリの姿を探すフル。
間もなく大きな木に止まるカマキリを発見したフル。
「こういうところに、外野は無粋でござる!」
突撃仕様ガドリング砲を避けて空に飛び上がるカマキリ。
「飛ぶでござるか!」
木立が邪魔をしてすぐには離陸できないディアブロではキメラを逃す危険性がある。
応援を要請するフル。
(「‥‥未改造の俺ではキツいでござるか?」)
素体がカマキリである長距離飛行には向かない筈である。
見失わないように必死に追いかける。
一瞬視界から消えるカマキリ。が、次の瞬間バキバキと枝と追って目の前に飛び降りてきた。
「く‥‥」
カマキリの鎌をスクラマサクスで必死に受けとめたフル。
組み合ったままのディアブロとカマキリ。
空を劈く轟音と共に20mmの弾の束がカマキリの顔を掠めていく。
「遅くなってすまぬ!」
フルの無線を聞き、駆けつけた中将坊のディアブロである。
「早瀬さんやネオさんは?!」
翔一が見学者を、ネオがスタッフを誘導していると中将坊が答える。
「避難が済めば追って手伝いに来る、と」
「ならば、この場から引き離すでござるよ!」
「承知っ!」
一方、警備員らに協力して貰い、避難対応にあたる翔一。
手を繋いで避難をしようとした親子連れに見物客の一人が当たり、喧嘩になっていた。
泣いている子供を抱き上げた翔一。
「大人が子供の前でみっともないところを見せてるんじゃねぇ!」と大人達を一喝する。
「働いた後の一服は旨いねぇ。帰ったら一杯やるか」
美味そうに紫煙を吐き出す中将坊。
「このキメラは『流れ』てきたのでござろうか?」
「そいつはこいつに聞かないと判らんけんの」
バラバラになったキメラを見て言う中将坊。
とりあえず撮影が終わるまで気が抜けないようである。
***
「ん? そこはもう少しステップを大きくした方がいい。画面では少し異なるから、ね」
こうだ。とばかりにオーバーアクションで手本を踊るUNKNOWN。
「男性は大胆に力強さを。女性はセクシーに。細かいニュアンスは画面では伝わりにくいから、ね」
「皆、はっちゃけてるな‥‥」
数時間前にキメラが襲ってきていたというのに、何事もなかったように撮影が継続されていた。
「映画撮影ってのが、それ自体がカオスかもな」
ネオがぽつりと言う。
***
「飯が出来たぞ!」
「腹が減っては戦は出来ぬ、皆さん一列に並んで下され〜」
フルがお玉でチキンカレーの入った元燃料タンクな鍋を叩き、大きな声を出す。
その声に役者も手が空いたものから食事の為に器を持って並ぶ。
「映画‥‥お酒‥‥呑み放題‥‥」
何処から香りを嗅ぎつけたノエルが、サルヴァの手の中のグラスをじぃーーーと見つめる。
「なんだ、飲みたいのか?」
「お酒‥‥大好き‥‥呑めるなら‥‥いくらでも飲む‥‥」
コクコクと頷くノエル。
「仕事中に飲んで平気なのか?」
「大丈夫‥‥酔わない‥‥」
少女のような外見とは裏腹に、蠎だと言うノエル。
「ボク‥‥普段‥‥ドジしない‥‥」
だから大丈夫だと言った。
「THIS IS カレー鍋 エーンド リュウセイ特製チャーハンだぜ!」
出番の合間に炊き出しを手伝っていたリュウセイ(
ga8181)。
「盛っていただいておいてなんですが、この暑いのに鍋ですか‥‥」とレイカーが丼に盛られた具材たっぷりのスープを見つめる。
「大丈夫、暑い時は暑いモノですっきり、同じ釜の飯を食えば皆友達だ!」
キラリ☆ と白い歯を輝かせて言う。
「出来たぞ!」
アルキメット鍋を振るうのはネオである。
「炒め物は火力が命!?」と炒め物に専念する。
ゴウゴウと燃え盛る炎と戦う調理人と化していた。
カオスというよりもブラックホールという飢えた胃袋がここには存在した。
一気に加熱することで野菜のしゃっきり感が残った炒め物は人気で、作る先からスタッフの腹の中に消えていった。
***
撮影された映像を編集し、効果音やCGが加えられる。
出来上がったラッシュにシーヴも協力した音楽、UNKNOWNにより曲が付けられて映画は完成した。
招待客を招いての試写会には、協力した傭兵らも関係者として招待されていた。
「さて、どんな感じに仕上がったかな」
いよいよ試写である。
「おぉ、良い感じじゃないか」と見始めたネオであった──
●暴れ剣インド漫遊旅日記
──明るい日差しの中、いかにもなのどかな田園衛風景が広がる。
だが、よく見れば所かしこから黒煙が上がり、空にはHWが飛びかっていた。
名もない村で行われるバグアの略奪行為。
響くのは、キメラに追いたてられる人々の悲鳴と爆発音だけである。
その様子をじっと見つめるのは、清らかな赤ん坊の瞳のみ──
──画面暗転。映し出されるのは、いかにも怪しげなバグア基地内部。
多くの臣下が並ぶ中、広間をバグアの悪の女王ミリハナクがイライラと歩き回る。
「ああっ、若さが憎い! 何かこう、エナジー的なモノを搾取して若返り大作戦ですわ」
ミリハナクがバグアになったのは、ちょっとお肌が気になるお年頃、20代中であった。
完璧な美しさを求めるミリハナクは隣の国の女王が許せなかった。
「あの若作りが‥‥子持ちだというのに、何が17歳よ」
プルプルと拳を震わすミリハナク。
隣国の女王は、1児の母であるが年齢不詳の超童顔である。
その上、珠のような肌を持っているか自称「永遠の17歳」であった。
ミリハナクも老いを知らぬバグアである。
小さな傷や夜更かしの皺は一瞬で治るが、その一瞬がミリハナクには許せなかった。
「あの女王も、あの国も、国民も許せなくてよ」
手に持っていた房飾りの扇子をバキリとへし折るミリハナク。
「お前、隣の国に侵攻(嫌がらせ)しておいで」
側近レイカーにそう命じる悪の女王ミリハナク。
「了解しました。いかなる方法で蹂躙いたしましょう?」
そうね‥‥と考えるミリハナク。
「洗濯物を悪趣味でトホホな服に摩り替えたり、市場の屋台で売られている人気のスイーツや若い娘に人気な流行の服・アイテムを買い占めたり──ちゃんと買い物した際は領収書を貰ってくるのよ」
女王たるもの料金を踏み倒したなんていわれるのは心外よ。とミリハナクが言う。
「了解しました。あなた様の為に全力を尽くしましょう」
(「やれやれ、またおかしな命令ですね。まあ仕事ですし仕方ありませんね」)
レイカーは腹の中の考えが漏れない様に何時ものポーカーフェイスで答えたが、それでも眼に思いが出ていたのかもしれない。
「お前、何か文句があるのかしら?」
邪悪な微笑を浮かべたミリハナクの手には愛用の黒い巨大ハンマー「超巨大大黒王丸1号君」が握られていた。
「いえいえ、滅相もない」
「はっ!」
四天王テトラと共に出撃するレイカー──
──いかにも女の子の部屋らしい部屋でドーナッツを美味しそうに食べる美少女が2人映し出される。
隣国の姫と友人ノエルである。
ばん! と勢いよくドアが開かれ隣国の女王が部屋の中に入ってくる。
ドーナッツの残骸(空箱)を発見し、ピキっとこめかみに怒りマークの青筋が走る。
「あははっ、ママ‥‥」
女王の形相にビビる姫とノエル。
「ママじゃありません。私のおやつを勝手に食べるなんて‥‥(プチン!)日本までドーナツを買ってこい!!」
そう言って姫とノエルを城外へと放り出す女王。
「ママ、財布は?」と城壁に向かって叫ぶ姫。
ぽい。と窓からつぎはぎだらけの姫の財布が落ちてくる。
どうやら自費で買ってこい。ということらしい。
「今月は、KVカードを買っちゃったからお金がないのにゃ〜」
日本まで行けないよ。と溜息を吐く姫。
「姫‥‥城下を探して‥‥ドーナッツを買う‥」
一生懸命謝れば許して城に入れてくれるかもしれない。と2人で城下へと歩いていった──
──ナップザック1つを担いだ青年が街道を歩いていく。
この国の属州を守る王の子、アーミルである。
「アーミルさん、ぼちぼち家に帰りませんか?」
旅の途中で知り合った謎の忍者 猫耳がそうアーミルに問う。
「お妃相応しい姫を見つけていないからね」
まだ帰れないとアーミルが答える。
やれやれ──と溜息を吐く猫耳。
(「これじゃあ僕の計画が‥‥」)
名もなき猫耳には、亡き君主の行方不明になった姫を探すという大儀がある。
幼い頃の面影だけが手がかりである。
小さな属国の王子とはいえ、王族である。
アーミルにくっついていれば諸国の姫と会う機会があるのかと思っていたが中々どうして上手くはいかない。
「じゃあ、この後どうするんです?」
「そうだな‥‥ここからは城が近い。とりあえず女王様に挨拶に行こう」
確か女王には美しい姫君がいると聞いている。と白く輝く城を指差すアーミル──
──色鮮やかな果物や野菜、美しい布や可愛らしい雑貨が売られるにぎやかな市場である。
だが、空に突如と現れたHWの大群。
恐怖でパニックを起こす人々を他所にHWから降り立ったバグア兵は隊列を作り、中央にレイカーとテトラが立つ。
「かかれ!」
小さい号令を下すとバグア兵達が店へと走る。
並んでいた客を押し倒しての横入りは勿論、コスメショップでは限定お一人様1つの限定商品を強制的に丸ごと買っていく。
「ボスの命令は絶対ですので従ってもらいます。従わなければ、どうなるか分かっていますね」
(「やれやれ、こんな命令に従うわけないですよねぇ。同情はしますけど、仕事なので諦めてください」)
黒い笑みを浮かべたレイカーが威圧的に言う。
「にゃ? なんか五月蝿い〜」
市場で一番美味いと噂のドーナッツ屋に並ぶ姫。
ノエルといえば隣の店で酒豪を見つけて飲み比べをしていた。
「まだ、足りない‥‥。もっとお酒出して‥‥」
堆く積まれた酒瓶。
真っ赤な顔をしている親父とは反対に無表情にカップを空けるノエル。
ドーナッツ屋の前に全身を黒い鎧を纏った四天王テトラがやってきた。
「この汚らしく醜い屋台から最高に美しいドーナッツを作っているとは、人の世は不条理だな」
横は入りを注意する店主を突き飛ばすテトラ。
「弱いもの苛めする様な奴らは粛清してやるのにゃー!」
何処からともなく取り出した100tハンマーを構える姫。
暴れる姫を取り押さえようとするバグア兵達を見て、慌ててノエルが飛び出してくる。
「姫を‥‥放しなさい‥‥」
「姫? なるほど、あの女王の姫君か」
ひっ捕らえろ! と兵に命令するテトラ。
「フニャー‥‥! 危ない‥‥」
ドン! とノエルがテトラを押す。
力が強かったのか押された弾みにコケ泥水にハマる姫。
「うにゃ‥‥ごめん‥‥」
慌てたノエルが姫を拭こうと手近なクロス、カレー鍋が乗ったクロスを引っ張る。
ガクン。
「ん‥‥フニャー」
重みでコケるノエルと共に鍋のカレーが引っ掛かり全身カレーである。
「ええい、醜いものを俺に見せるな!」
テトラの言葉に更に大量の兵が現れる。
「にゃーたーすけーてー」
姫の叫びも空しく、姫とノエルを押しつぶした──
──女王の謁見の間。
アーミルが姫君がいない事に気がつき女王に問う。
「女王様には美しい姫君がおいでになると聞きますが‥‥何れに?」
流石に自分のおやつを買いに行かせた。とは言えない女王。
どう返答したものかと思案している所に血相を変えた執事が入ってきた。
「なんだとバグアに姫君が浚われただと?」
指定された時間までに要求が通らない場合は、姫を処刑するとの事である。
「これは助けにいかねばなるまいっ! 待っていてくれ、将来の妃よ!」
アーミルの背に炎と「打倒、バグア」の文字が輝く。
「お待ちなさい、アーミル王子!」
どうせならば姫救出の道中、悪者やバグアを退治し、苦しめられている人々を助けて欲しい。とお願いする女王。
連日の嫌がらせ行為に兵のみならず、人々が疲弊してしまっているのだという。
「勿論、貴方への影ながらの支援は惜しみません」と女王は言った──
──王都を出て2日。アーミルと猫耳が街道を急ぐ。
「助けてーっ!」
2人の前で1人の村人がバグア兵によって斬り倒された。
「あ、あなたは〜‥‥た、助けてくださ‥‥」
「しっかりしろ!」
アーミルが村人を助け起こそうとするが、そのまま村人の頭がガクリと落ちた。
村人の手には、ベンガル屋と書かれた手拭が握られていた。
ベンガル屋に行けば何か情報が得られるのではないかとアーミルと猫耳はベンガル屋に向かうのであった──
──窓を締め切った薄暗い部屋にろうそくが揺らめく。
「これはほんのご挨拶です」
へへぇ──と床に頭をこすり付けるように黄金色のバルフィを差し出すのは、ベンガル屋である。
「皆様がこの地域を治められる事になりました暁には、現地調達は何卒、是非このベンガル屋に‥‥」
バルフィを1つ箱から取り上げるレイカー。
「ベンガル屋、お前も悪いヤツですね‥‥私達がまだこの地を治めている訳ではないというのに」
「生きていく為の知恵は色々ございます。国を治める方が変わればそれなりに‥‥」
弱者なりの知恵だと怪しく笑う。
ベンガル屋は手を叩いて踊り子たちを招き入れる。
「お近づきという訳ではございませんが、宴席をお楽しみいただければと」
美しい女性達が華やかな音楽に併せて舞い踊る。
「ご存じないかもしれませんが、この地にはこういった遊びもございまして」
楽器を奏でる女を1人立たせるベンガル屋。
サリーをぐいと掴みそのまま引っ張る。
悲鳴を上げる女がくるくると駒の様に回る。
平手打ちを食らうベンガル屋。
「ふむ、女の攻撃を避ける訳ですね。その後どうするんです?」
「レイカー様のお好きに‥‥商売女がお嫌でしたら村娘も一応ご用意いたしました」
「この、放しなさいっ!」
赤いサリーを纏った少女、ニーシャが連れてこられる。
「‥‥元気な娘ですね」
「元城仕えをしていた戦士の娘です。ごらんの通り気の強い娘でして‥‥」
「なるほど」
「ちょっと待ったー! その娘に手出しはさせないぜ!」
アーミルと猫耳が扉を力強く開く。
悲鳴を上げて女達が逃げていく。
「やれやれ、刃向かう気ですか。仕方ありませんね」
レイカーがすらりと刀を抜く。二刀流である。
「面白い、やる気か!」
アーミルの構える機械剣が青白い光を放つ。
猫耳がニーシャを見て驚く。
(「この娘、亡き殿と目元がそっくり‥‥もしや、僕が探している姫では‥」)
こそこそと逃げ出そうとするベンガル屋の首根っこを捕まえる猫耳。
「色々聞きたい事があるし、逃がさないよ?」
それとも口のサイズを倍する? と怪しく笑う。
「手温いわ!」
猫耳のキョウ運が災いしたのかもしれない。
ニーシャの右ストレートがベンガル屋の頬に炸裂し、吹っ飛ぶ。
「おかげで胸がすーっとしたわ」と猫耳に向かって笑うニーシャ。
激しく交える剣と刀。
一つ、二つと切り結ぶレイカーとアーミル。
「案外やりますね。私も愉しくなってきましたよ」
「何時まで余裕をかましていられるか、な!」
アーミルの振るう剣先が胸元を掠め、レイカーの服を切る。
『やっと見つけた』
ベリベリと部屋の天井が何者かによって剥ぎ取られた。
『こんなところで遊んでいたのか』
テトラの堕天使を思わせる真っ黒な機体 鹵獲シュルテンがベースと思われるワームが天井から覗き込む。
『ミリハナク様がお呼びだ』
「ち‥‥こんな時にボスの呼び出しとは、運の良い人ですね」
「逃げる気か?!」
俺と戦えというアーミルを一瞥するレイカー。
「命令は命令ですので‥‥ボスと同レベルですね。色んな意味で」
「名は?」
「アーミルだ!」
「では、アーミル。何れ会いましょう。その時は死んでもらいます」
テトラが差し出す手の上に飛び乗るレイカー──
──ニーシャの自宅。
家というには貧しく、壊れた入り口のドアの代わりに布が下がっている。
「汚い家ですけど、どうぞ」
アーミルと猫耳を通すニーシャ。
奥の部屋から声が掛かる。
「ニーシャかい? 遅かったな‥‥」
ゴホゴホと咳き込む男。
「おとっつぁん、ただいま。用事が長引いちゃってごめんなさい」
「お客さんかい?」
「旅のお人をお連れしたのよ。‥‥今すぐご飯にしますね」
長いバグアとの戦いで体を壊してしまい、以来病気がちなのだという。
「そうか、大変だな」
竈に掛かった薄いカレーを温めるニーシャ。
「おとっつぁん、カレーが出来たわよ。‥‥今日も具なしで堪忍してね」
「俺がもっとしっかりしていれば‥ニーシャには苦労ばかりを掛けるな‥‥」
「それは言わない約束よ」
バグアの連中が毎日のようにカレーの具材を強奪していくのだが、今日は奪い返すために父の形見(?)の大剣を片手にバグアを追いかけ、
「今までの鬱憤晴らしてくれるわ!」
と大立ち回りをしたのだが、ベンガル屋が投げたバナナの皮に足をとられ、捕らえられていたのだ。というニーシャ。
「この辺りは、バグアの被害が多いのか?」
「はい‥‥」
被害状況が知りたいという2人に村の状況を説明するニーシャ。
話す内に段々、嫌がらせの数々を思い出し、その怒りがついに爆発した。
「‥‥あんの年増バグア、私がちょっと若くて可愛いからって毎日毎日嫌がらせを‥‥なめんなぁ!」
猫耳が一瞬の早業で卓袱台の上の物をさっと片付ける。
卓袱台をひっくり返すニーシャ。
「そういう訳なので、私もお供します」
「協力してくれるのか? ありがたい、行こう。友よ!」
がっちりと握手をする3人だった──
──ミリハナク城の地下。
「憎たらしい、このすべすべの肌‥‥」
ミリハナクがもにゅもにゅと姫の両頬を引っ張る。
「ちょっとばかり若いからって化粧水は何を使っているのです?」
「ニャ? 化粧水なんて使っていないよ」
「嘘をおっしゃい!」
「嘘じゃないにゃー」
更にびよ〜んと頬を引っ張り伸ばすミリハナクに降参する姫。
「始めからそうすれば良いのよ」
下を向いた姫がボソボソと話す。
よく聞こえないと耳を近づけるミリハナク。
「ぼそぼそ‥‥‥‥‥‥‥‥そんなもの『使っていない』っていってるにゃー!!」
耳がキーンとするミリハナクを突き飛ばし、部屋を飛び出した姫。
逃げ回りながらゲームのセーブデータを消したり、ラーメンに1瓶胡椒を入れたりと思いつく限りの攻撃をする。
「油断ならない子。‥‥やはりあの女王の子ですわね。誰か姫をひっ捕らえよ!!」
ミリハナクの叫びが城に響いた──
──アーミルが太陽に向かって叫ぶ。
「こぉぉぉぉい! ナラシンハァァァ!」
アーミルの愛機ナラシンハがエンジンを高らかに飛翔してくる。
くるりと空中で一回転をし半獣神の姿を取る。
「ネコトビ流忍術KV召喚の術!」
地面に口寄せの魔方陣が現れ、そこから猫耳がついたシラヌイS型が現れた。
ニーシャの岩龍も洞窟からその姿を現した。
「打倒バグア! 姫君を取り返すぞ!」
おー! という掛け声の元、拳を上げる──
──いざ出陣という一行をさえぎる華やかな影。
「お待ちなさい、アーミル王子!」
逞しい美執事に担がせた輿でやってきた女王である。
「このままでは姫処刑時間までに間に合いませんよ。そこで‥‥」
ぱんぱかぱーん! とファンファーレが鳴り、超巨大ロケットが現れた。
「コレを使えば敵基地までひとっ飛び♪」
執事KVがガッチリとナラシンハと岩龍の両腕を抱えると超巨大ロケットへと引きずっていく。
臨時の管制室の上に一段高く設えられた台の床から、女中達の花と歌と踊りに出迎えられた女王が出てくる。
ドラミングが華々しく鳴る。
「不味いだろう、これは!」
「大丈夫。成功率は70%もあるから」
「30%も失敗があるって事だろうが!」
「じゃ、ポチっとねー☆」
キラン☆ と一瞬で星と化したロケットがくるりと方向を変更し、
急降下したと思った途端、
どっかーん!! 見事に敵基地へと直撃する。
バグア基地に着弾、もとい辿り着いたのを確認した女王は、くるりと猫耳を振り返る。
「さ、貴方も♪」
蛇に睨まれた蛙というのは、こういう事を言うのだろう──
──グラグラと揺れるバグア基地。兵士達が慌てふためく。
「落ち着け。醜い姿だぞ!」
テトラが無様な様だ。と手近にいた下級兵を切り捨てる。
「俺の言うことが聞けないのなら、お前たち全員刀の錆にしてくれる!」
流石バグア、理不尽である。
「一体何の騒ぎです! 説明しなさいレイカー」
騒ぎをミリハナクが一喝する。
「は! この基地に対して隣国の女王がロケットを打ち込んだようです」
何時ものように腹では別な事を考えながら涼やかにレイカーが答える。
「おのれ‥‥姫の命が惜しくないのか? 姫をここに!」
危険物という張り紙が張られた檻に入れられた状態で姫とノエルが連れてこられた──
──ドーン! と大きな音と共に20mはある大きな扉が吹き飛ぶ。
大量の埃と煙を伴い、逆光の中、岩龍・シラヌイSを伴ったナラシンハが現れる。
「悪党め! 姫を返してもらうぞ、この王子アーミルの名の下に!」
「まずは前哨戦です」
レイカーがゴーレムを召喚したゴーレムに命じる。
「行きなさい」
「ここは私に任せて」
岩龍が進み出る。
「元城仕えの岩龍なめんな!」
激しい弾幕でゴーレムを足止めする岩龍。
シラヌイSが姫とノエルの檻を壊し、突進してくるナラシンハに、
「本当に、愉しませてくれますね。いいでしょう、私も本気で行きます。来い、罪深き血(ペインブラッド)!」
死神を思い出させるその容姿で赤く輝くビームサイズを抜き、構える。
「この俺にそんな醜い顔を見せるんじゃないよ」
テトラもまた愛機を呼び出し、シラヌイSに対峙する。
「醜い? 醜いって言うのは貴方の機体でしょう? 大体、四天王って言ったって1人じゃないですか。四天王っていうのは4人揃って言うべきことですよ。見苦しい」
「なんだと? 俺が醜い‥‥見苦しいだと。貴様、もう一度言ってみろ!」
「かかりましたね。『ネコトビ流忍術狂心惑言繰り(きょうしんわくげんあやつり)の術』」
猫耳の心理作戦に引っ掛かったテトラが雪影を構えて突っ込んでくる。
刀を間一髪で交わすシラヌイS。
「こんな狭い広間で刀振り回すのと建物を壊しちゃいますよ」
「黙れ貴様! 首を叩き落して顔を刻んでやる!」
聞く耳持たずと雪影を振り回すテトラが支柱の一本を叩き斬る。
部屋の隅に追い詰めれたシラヌイSが苦し紛れにスナイパーライフルを放つ。
「何処を狙っている!」
叫んだテトラの上に大きな天井の塊が大量に落ちてくる。
絶叫を上げ、押しつぶされるテトラ。
「キョウ運の持ち主の僕に勝とうなんて百万年早いんですよ」
ふぅ。と額の汗を拭う猫耳。
「美しい‥‥美に定型なし、貴様らの武、確かに美しかったぞ‥‥ミリハナク様、申し訳ありません‥‥」
テトラが絶命する。
「テトラ!」
一瞬起こったレイカーの動揺をアーミルは見逃さなかった。
「もらったぁーーーっ!」
ナラシンハの一閃がレイカー機の腕を斬り落す。
「負けですね、私の。敗者は静かに退場するとしましょう」
ワームを変形させるとナラシンハ達が開けた穴から、飛び立っていくレイカー。
「レイカー、裏切るつもりか!」
「裏切る等滅相もない、ミリハナク様。他者を蹴落とし生きたいと思う気持ちは‥‥これもまたバグアの本能というもの」
上手く近隣基地に辿り着けたなら救援を送りますよ。といって通信を切るレイカー。
「全く部下は皆役に立たずとは、仕方がないわね」
戦闘をジッと王座に座っていたミリハナクが超巨大大黒王丸1号君を手に赤い絨毯を踏んで階段を下りる。
「ふふふ、止めたいのなら力を見せなさい」
「女だからと容赦はしない。その首、貰い受ける」
ナラシンハのセミーサキュアラーを超巨大大黒王丸1号君で軽く受け止めるミリハナク。
「貴方達の正義はその程度なのかしら?」
超巨大大黒王丸1号君を滑らせ、そのままナラシンハの腹に一撃を加える。
吹っ飛ばされるナラシンハ。
「次のこの一撃を避けられるかしら?」
衝撃で瓦礫にはまり込んで身動きが取れないナラシンハに向かって振り上げられた超巨大大黒王丸1号君をシラヌイSのスナイパーライフルが打ち砕く。
「‥‥武器がなくなってしまったわね。私にワームを呼ばせるとは、気に入ったわ。貴方達」
すっとミリハナクが右手を上げると床を破って西王母をベースにした巨大黒女神型ワームが現れる。
「姫‥‥皆を‥助ける‥‥」
「にゃ、KVを呼ぶにゃー」
「「来い、ビーストソウル(ディアブロ)!!」」
女王の落としたロケットから姫のビーストソウルとノエルのディアブロが現れる。
「私たちの邪魔しないで欲しいよ。おばさん」
「そうだにゃ。おばさんは我が儘ばかりで女王としては失格にゃー」
「この私を‥‥『おばさん』ですってぇ? 私はまだ24歳よ!!」
怒り狂ったミリハナクがミサイルを放つ。
「その口縫ってもいいのかな、おばさん」
「キィィィーッ! お黙り、小娘っ!」
ビーストソウルとディアブロを追いかけ、大きな剣を振り回すミリハナク。
「にゃ、これで少しは皆が攻撃しやすくなったね♪」
「何っ?!」
屋外へとおびき出されたミリハナク。
「皆、一斉攻撃だ!」
シラヌイSが援護射撃をする中、突っ込んでいく4機。
「この私の、村人たちの怒りを食らえ!」
岩龍が槍でワームの脇を突く。
「おばさんの出番はお終い。引っ込んでなさい」
KVグレイブを叩き込むディアブロ。
「姫、呼吸を合わせるぞ!」
「判ったにゃ!」
「レーヴァティンよ、ボクの手に!」
飛んできたレーヴァテインを空中で受け取ったビーストソウル。
ブーストし、一気に滑走スピードを上げるナラシンハ。
「人々の苦しみと怒りを、この一撃に!」
「コイツで‥‥」
全身全霊の力を込めワームへと振り下ろす。
「「食らえええええええ!!」」
「キィィィーッ! くやしいぃぃぃ!!」
激しい閃光と炎をほとばしらせワームが爆発した──
──激しい爆煙と炎を見つめる5人。
役目を終えたKV達は、
あるものは夕暮れの空を、
あるものは川を伝い、
それぞれのあるべき場所へと戻っていった。
姫の前に片膝を着き、恭しく礼をするアーミル。
「わが名はアーミル。姫、女王の命によりお迎えに上がりました」
「にゃ、ご苦労様です」
「噂にたがわず美しい‥‥俺の妃になってください、姫」と恭しく姫の手をとり、甲にキスをするアーミル。
「それは無理にゃ〜」
「何故です」
「にゃ、ボク男の子だよー♪」
「ん‥‥姫‥‥男の子‥」
ドカン! と衝撃を受けたアーミルがその場にへたり込む──
──激しい黒煙と炎が女王の眼にも見えた。
「ん〜、お見事♪」
優雅に冷たい紅茶を口に運ぶ女王。
1人の召使が姫から支援ロケットの攻撃が止まらないことに対する苦情電話が掛かってきたと受話器を持ってきた。
丁度、お代わりの紅茶を運んできた執事から女王が組んだプログラムにバグが発見され、このままだとロケットの発射は3日間止まらない計算になると報告する。
「ママ、間違えちゃった テヘ☆」
『なんじゃそりゃー!!』
全員の抗議に流石の女王も怯む。
「‥‥じゃあ何とかしましょう」
発射施設の兵士にコンピュータの破壊と撤退、王都防衛隊にG4爆弾を発射するように命じる女王。
爆弾を抱えた特殊機が護衛機を伴い上空を飛んでいるのが見えた。
「じゃ、そういう事だから気をつけてね♪」
女王の言葉が終わらない内に特殊機からG4爆弾が投下された。
一瞬全ての音が消え、画面が真っ白になる。次の瞬間激しい爆発と炎が一帯を包み込んだ──
──忍者らしくさっさとトンズラした猫耳以外、煤だらけになりアフロ頭になってしまった4人。
「に、逃げるぞ!」
「あっちから懐かしいカレーの匂いがします‥‥またお会いする機会があれば。じゃ!」
大剣を担ぎ、すたこらと逃げていくニーシャ。
姫がノエルを抱きかかえて走っていく。
転びそうになる姫を更に抱えて走るアーミル。
「アーミル王子って優しいにゃー」
「そう思うなら可愛い女の子紹介してくれ!」
叫ぶ3人の後ろで次々と武器や弾薬が誘爆していく──
──画面が3分割され、一番大きな画面には逃げるアーミル、姫、ノエルの固定映像が映し出される。
中くらいの画面にはスタッフロールが流れる。
小さい1つは、のほほんと紅茶を楽しむ女王、峰から爆発を望む猫耳、故郷の仲間が出迎えるニーシャ。と切り替わる。
そして、エンディングテーマが流れると出演者全員によるダンスと歌が流れた。
ダンスが終わると画面は1つに戻り、テーマ曲の流れる中でスタッフロールが続く。
画面が暗転すると、劇場内にエンジン音が響く。
楽しそうに邪悪な微笑を浮かべるレイカーの横顔が一瞬映し出された──
・CAST
アーミル王子:リュウセイ
姫:白虎
猫耳忍者:ソウマ
村の娘ニーシャ:シーヴ・王
姫の友人ノエル:ノエル・クエミレート
村人A:オルカ・スパイホップ
隣国の女王(姫の母):くれあ
側近レイカー:レイカー
四天王テトラ:テトラ=フォイルナー(
gc2841)
ベンガル屋:古賀 甚五郎
悪の女王ミリハナク:ミリハナク
・音楽:UNKNOWN、シーヴ・王
***
試写が終わって明るくなる場内。
「なんつぅカオスっぷり‥‥‥‥」
ネオがポツリといった──。