●リプレイ本文
「さて、任務開始だ」
御影・朔夜(
ga0240)が愛銃のハンドガンを取り出し構える。慣れているのか、一連の動きが非常に様になっていた。
その様子をファティマ・クリストフ(
ga1276)は複雑な表情で眺めていた。嬉しいような哀しいような不思議な表情だった。ただならぬ雰囲気を感じ取ったのか、今回チームを組んでいるリディス(
ga0022)と御山・映(
ga0052)は声を掛けずにしばらく見守ることにした。
一方その頃、もう一方のチームは炭鉱の鉱山夫から話を聞いていた。
「キメラの出る場所をもしご存知であれば教えていただきたいのです」
山上公二郎(
ga2886)が緊張しているのか、非常に丁寧な口調で鉱山夫に尋ねる。すると鉱山夫の方にも緊張が伝わったのか、丁寧な口調が感染していた。
「私が見たのは多分二匹でございますね。奴らは似たような姿をしているので正確な数は私にも分からなかったりするのでございますが‥‥。場所は、そうですね」
鉱山夫はいそいそと地図を取り出しては、二箇所に印をつけて山上に渡してくれた。
「これで準備完了ですね」
UPCから借りてきた通信機と双眼鏡を性能を確かめながら、新条 拓那(
ga1294)は言う。
「それにしても敵の見分けがつかないとは困ったことですね」
しみじみと語る風戸 悠(
ga2922)。今回の敵がスライムということもあるのだろうが、敵の見分けがつかなければ個体数を調べるのはどうしても難しくなる。
しかしミハイル 平賀 (
ga0275)はむしろ嬉しそうだった。
「今回金を溶かすキメラというものが気になって参加してみたのだが、どうやら他にも研究対象にできることがあるようだね。私もいずれは双子のカラクリを作ってみようか、わははははは」
どこまでも楽しそうに笑うミハイルだった。
今回能力者達は八人を四人ずつに分けて、二手で捜索することにした。お互いを対角線上に配置し、もしものことがあれば通信機と照明銃で連絡を取り合うという作戦である。
そして先に遭遇したのは、レディス、御山、御影、ファティマの一班だった。
拓けた場所にぽつんと立つ一本の木の上部にしがみつくかのように緑色のスライムがくっついていたのだ。
「あれでしょうか?」
「でしょうね」
確認しあうように話し合う四人。そしてグラップラーのリディアを最前線に出し、後ろに御影、更に後ろに御山とファティマが木を取り囲んだ。
「準備は良いか?」
御影が全員に意思を確認し、覚醒(御影「アクセス」)。スライムのくっついてる枝に弾丸を撃ち込んだ。
枝とスライムは重力に従いそのまま落下する。
それが戦いの合図になった。
「まずは一発殴らせていただきましょうか」
一番始めにこうどうしたのはリディス。まず始めに接近し、一発拳を振るうがリディスの拳は空を切った。
「ではもう一度!」
先ほどの回避が偶然なのか確認するために、リディアがもう一度拳を振るう。
「手ごたえありです」
どうやら先ほどのは偶然の回避らしい。リディアの拳は確実にスライムを捉えていた。しかしスライム独特のぬるぬるとした感覚が、リディアの拳の手ごたえを受け流す。
「やはり無理ですか」
リディアはすぐに思考を切り替え、後方からの援護を期待しつつ回避に専念した。
「拳が駄目なら鉛弾ならどうだ」
御影がスライムにむけ銃を三射、弾はすべてスライムに直撃した。
しかしスライムはそれでも応えない。
「では火の海に溺れろ」
スブロフを取り出す御影。しかし御山が止める。
「まだ必要ない」
超機械一号の射程は二。射程圏内ぎりぎりまで近づき攻撃する。
「さすがにこれは利くんだな」
超機械から発せられた電磁波がスライムを包む。するとスライムがもがき出したのだ。
覚醒のため性格がきつくなった御山は口元を歪めて笑う。続いてもう一度攻撃を加え、スライムにダメージを蓄積させた。
「では次は私‥‥」
「待て」
前に出ようとするファティマを御影が止める。スライムの方が先に動いたのだ。
スライムはあまり知能がないのか、一番近くにいるリディアに不気味な色の液体を吐き出したのだ。
「これがスコップを溶かしたという溶解液ですか」
当たれば溶かされる可能性が高い。事前に溶解液の事を知っていたリディアは回避に専念、スライムの攻撃を全て回避したのだった。
「当たらなければどうということはありません」
どうやら超機械による攻撃が有効と判断した四人は、攻撃を御山とファティマに任せて、リディアと御影は回避に専念。そして無事一匹目のスライムを倒したのだった。「なんとかなったな」
スブロフの出番は無かったものの、無事撃退に成功し御影は銃を仕舞う。そして回避役だったリディアは一撃だけ受けたダメージをファティマに癒してもらっていた。
「あのスライム、それほど狙いは定かではありませんでしたが、当たれば痛いですね」
リディアはケプラージャケットを着ていたものの、スライムの溶解液はジャケットの一部に穴を開け大ダメージを与えてきた。現にファティマの練成治癒でも一回で生命力が回復しきれていない。
「では二班にも伝えておきましょう」
御山が通信機の電源を入れて呼びかける。しかし反応は無かった。
どうやら二班も戦闘中らしい。
「話が通じない奴は好きにはなれないね」
ミハイルはスライムをおびき出すために金貨を一枚、以前出没したという場所に置いていた。しかし当のスライムは金貨にはそれほど興味を示さず、そのままスルーしていた。
能力者達はスライムを追いかけることになったのだった。
「倒せば問題ありませんよ」
フォローに入る新条。そしてそのままツーハンドソードで攻撃に移るが、やはり手ごたえは薄い。その後風戸も攻撃してはみるが、同様にスライムが傷ついている様子はなかった。
「ミハエルさん、山上さん、お願いします」
風戸が二人に攻撃を託す。しかしその前にスライムが攻撃に溶解液を吐いた。
「これが問題の溶解液ですね」
新条はツーハンドソードで受けに入る。SES機関搭載のツーハンドソードなら大丈夫と踏んだ新条だったが、一度受けただけで新条の剣は煙をあげていた。慌てて確認すると、剣の先のほうが一部溶け始めている。
「この剣も溶かしますか」
そこで風戸も前に出て、新条と風戸の二人で回避に専念。後ろからミハエルと山上が攻撃し、スライムを仕留めるのだった。
「何とかなりましたね」
警戒しつつ近づく新条、スライムが動いていないことを確認する。そして風戸がスライムを捕獲するのだった。
その横では山上が自信を取り戻していた。
「美男子じゃなくても活躍できる」
今回のチーム分けで他三人が美男子だったことに落ち込んでいた山上の心の叫びだった。
その後、念のため探索を続ける二チーム。時計回りに四分割した場所を二周し、怪しいと判断した穴には照明銃まで打ち込んで確認して能力者達は探索を終了した。
「どうやら二匹だけだったようですね」
今回の依頼人であるゴールドマテリアル社の幹部に連絡をとり、山上がキメラの死体の回収の話を切り出す。
すると、先方の方でも新たな襲来に備えて研究したいということだった。
そこで能力者達は一つをGM社に渡し、もう一つをUPCに届けることにした。
帰りの高速艇の中、ミハエルはゴールドマテリアル社に金属探知機を売り込む計画を考えていた。その横で御山は鉱山夫に教えてもらった露天掘り用の巨大な機械であるバケットホイールエクスカベーターを興味深く眺めているのだった。