タイトル:KV少女な報告書マスター:矢神 千倖

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/02/06 22:53

●オープニング本文


「私はね、常々思っているのだよ。『味気ない報告書に、もっと面白味を持たせることは出来ないか』とね」
 ある報告官の呟き。こんな相談を持ちかけられたランク・ドール(gz0393)は、苦笑するしかなかった。というより、どんな反応を示せば良いのか。そもそも、この報告官はいったい何を言いたいのか。
 で? ランクは先を促した。
「そこでだね、私はちょっと挑戦的な報告書にチャレンジしてみようと思うわけだよ」
 ふーん。
 ランクの、明らかに興味無さそうな返事。しかしこの報告官、そんなことなどお構いなしに自分の計画を熱く語る。
「ほら、先日君が斡旋した依頼があっただろう? あれをだね、面白いよう、事実を変えないように工夫を凝らして報告書にしたいと思うのだよ。そう、KVを、KV少女に変えて」

 遡ること、というほどのことでもない。昨日のことだ。
 一件の依頼の完了報告が、届いていた。
 以下は、その依頼が斡旋された様子である。

「巨大なタコにイカにイソギンチャク‥‥。こいつらが暴れまわってるおかげで、地元の漁師が困っているそうだ」
 その日、ランクはいつものように傭兵に依頼を紹介していた。
 資料をささっと印刷し、敵の特徴を細かく説明してゆく。
 とはいえ、それぞれの敵に共通するのは、一点のみ。
「タコとイカは脚を、イソギンチャクは触手を鞭みたいに使って攻撃してくるようだ。それ以外の行動は、特に確認されていないな。墨も、吐いてこない」
 ふぅ、と一息。
「奴らが確認されんのは、割と陸地に近い海だな。イソギンチャクはどうかしらねぇけど、タコやイカは地上に出てくることもあるらしい。どいつもこいつもやたらでかくてな、7〜8mはあるって話だ。イソギンチャクに関しちゃもっとでけぇ。KVの使用許可も出てる。思う存分、やっちまってくれ」

●参加者一覧

水上・未早(ga0049
20歳・♀・JG
UNKNOWN(ga4276
35歳・♂・ER
鷹崎 空音(ga7068
17歳・♀・GP
九条・陸(ga8254
13歳・♀・AA
エレシア・ハートネス(gc3040
14歳・♀・GD
ドゥ・ヤフーリヴァ(gc4751
18歳・♂・DF

●リプレイ本文

●事後反応
「コザ・エ・クエストォォオオオ?!」
 思わずイタリア語で何じゃこりゃぁ、と叫んだのはドゥ・ヤフーリヴァ(gc4751)。人間、とっさの時には素の言葉が出るものである。
「な、なんということでしょう‥‥」
 同じく、言葉を漏らしたのは水上・未早(ga0049)。この二人、ULTより転送されてきた、先日参加した依頼の報告書に目を通していたのであるが‥‥。
 至極、真っ当な反応だったと言えよう。

●やってきました、海!
 青い空、輝く太陽、眩しいほどの照り返しを放つ白い砂浜に、何と言ってもこの海。え、この時期に海は寒すぎないか、って? 無問題、何故なら此度の依頼に参加した彼ら――いや彼女らは、人間ではないからだ。では、彼女らは何なのか。それは――

 K V 少 女 !

 そう、人であって人でない。そんなあいまいな線を行く彼女らだからこそ、冬の寒さになど負けはしないのだ。多分!
「やっぱ海やなぁ。くーっ、血が騒ぐわぁ!」
「久々の水中戦だし頼りにしてるよ!」
 ビーチで気合いを入れるのは、抵抗を少なくするために体をある程度締めるはずのダイバースーツですらその役割を放棄するほどのハリとボリュームのある胸部装甲のアルバトr――アクアマリン。そのパートナーは、彼女の周囲を浮遊する羽を生やしたイルカのマスコット、鷹崎 空音(ga7068)だ。
 その殺人的なボディは、しかし、この手のキャラのお約束として、本人に自覚はない。だが、そこがいい――! KV少女であるが故、その身長はおよそ15m‥‥。恐るべき大迫力の圧倒的な肉球。そこに埋もれてみたいと感じるのは、筆者だけでいい。筆者だけでいい!
「ん‥‥日焼けしそう‥‥」
 エレシア・ハートネス(gc3040)をパートナーとするアストレア。肩、肘、膝、脇、胸元と、露出箇所は多いがこの中では最もKVとしての名残を残した姫騎士らしい外観をしていた。神々しく、眩しく、凛々しく、しかしそれ以上に、やはりちらと見える谷間の、押し上げてくるような肉の塊。アクアマリンもそうだったが、いや、アストレアの胸部装甲は、それ以上のものがあった。が、そこは流石にアーマーファッション。金属に押し込められ、実際より大分コンパクトに収まっていた。
 さて、彼女らがここへ集ったのは、ただ遊びに来たわけではない。もちろん、現れたキメラを退治すべく、ここにこうしているのだった。
「そろそろ、行くか」
 ウォード・スパーダ。周囲にパートナーのドゥの化身であるビットを浮遊させ、パラソルに入らず腕を組み、じっと海の方を見つめる。
 ダイバースーツに鎧など、露出多めのものを用意したとはいえ、まだまだ肌を隠す部分の多い彼女らの中で、スパーダだけが唯一、ビキニだった。
 強くしなやかに鍛えられたその肢体に、照りつける太陽が輝きを与える。蒼のビキニすら彼女の肌に溶け込むようで、まさにその姿は女神であるとすら思えるほど。キュッと引き締まった体型に、主張せず、隠れもしない胸部装甲。それは、一つの芸術と言っても過言ではない。
 そんな彼女は、ぐっと体を伸ばし、海へと飛び込んだ。
「んじゃちょっと、いってくるわ」
 勇んでアクアマリンが海へダイブする。
「よーし、ぺん子もいってくるぞー!」
 パートナーUNKNOWN(ga4276)人形を首にぶら下げたぺん子が、よちよちと海へ向かって歩――走る。まさにペンギンだ。いや、着ているものがそもそもペンギンのきぐるみだ。もちろん、耐水性もばっちりである。体型に特筆すべき点はないが、しかし、無難だ、と言える。強いて言えば、胸がない。が、それがきぐるみに隠れて見えていないだけなのか、本当にないのかは、謎だ。だがそこにロマンがあるのだと、筆者は強く主張するものである。
「とーぅ!」
 ピョンと跳ね、くちばし(?)からぺん子が跳び込んだ。
 全ての作戦は、ここから始まる。まずは、海からイカやタコを陸に誘き出そう、というものだ。
「とりあえずは、待ちですね」
 イヌミミやイヌしっぽを生やしたワイバーンmk−2、りおんがパラソルの下に敷いたシートに寝そべる。その腰には水上を模した人形が下がっていた。気合いを入れてダイビングスーツを用意してはいたのだが、出発時にうっかり忘れてきてしまったようで、普段戦闘で着込むごつごつな鎧に身を包んでいる。うーむ、非常に、残念。
「退屈なものですね」
 九条・陸(ga8254)を司る黒猫のぬいぐるみを抱え、ディザスター――通称Dが、同じくパラソルの下に腰掛ける。
「しかし、コレ動いたら見えちゃいそうじゃないですか!?」
「なー」
 ぬいぐるみの指示により、普段はコートをビシッと着こなす彼女も、今回は海ということもありワンピース型の水着で来ていた。凹むところはばっちり凹み、とはいえ胸部装甲は控えめ。しかし。それが逆に、彼女の大人らしい魅力を引き立てる最高のエッセンスとなっていた。それが、この水着、意外に露出部が多い。背中なんかパックリだ。そして腰回りのV字も際どい。これはもしかしたら、もしかするかもしれない。
 それとなく指示者たるぬいぐるみに文句を言うが、しかしぬいぐるみは猫を被って話にならない。
 そうこうして待つこと数分。沖の方で大きな水柱が立った。

●合計36本
「うわーん! 上手くいったはいいけどー!」
 フリッパーをパタパタと動かし全力で泳ぐぺん子。そのちょっと先を、アクアマリンがすいすいと泳いでいた。
「はよしぃな。追いつかれてまうで!」
「もうすぐだ。負けるでない!」
 さらに、スパーダの励まし。
 KV少女だから水中でも喋れる。細かいことは気にしてはならない。そう、全て「KV少女だから仕方ない」で済んでしまうのだ。素晴らしきかなご都合主義。
 ともあれ、今、二人の背後からは猛烈な勢いで四匹のキメラが追いかけてきている。後は、陸まで全力で泳ぐのみだ。
 水面が見える。太陽光がゆらゆらと揺れて、綺麗だ。
 ざぱっ!
 跳び出したところには、待ち伏せていた面々が既に武器を構えていた。それが作戦だから、当然である。
「こ、これ、本当に‥‥?」
「なー」
 ぬいぐるみがちょいちょいと示したメモ紙を手に取ったDは、ちょっと頬を染めて一つ咳払いをする。やれというならば仕方ない。仕方がないから、やるしかない。
「とぁっ!」
 高く跳躍。その間にスパーダにアクアマリン、ぺん子が陸へと上がった。
 太陽を背に、美しいその身が光のベールに包まれる。
「ビーチの日差しの力を借りて!」
 Dの体に光が集う。額に収束したそれは、一気に扇状に広がった。
「いま滅殺のフォトニッククラスター!」
 跳び出したタコとイカを光が襲う。バチバチと焦げる音を鳴らし、キメラが一瞬怯んだ。
 これを機にと飛び出した者がある。
「やっちゃうぞー!」
 腹ばいになり、手足でよちよちと砂を掻いて砂浜のトボガン滑りを見せるのはぺん子。
 その速度は、意外に早い。というより、かなり早い。
「えーぃ!」
 そこから跳びあがってのフリッパーによる一撃が、タコの足を一本、斬り落とした。
 このペンギン娘、見た目に反して意外にやるものである。
 ぷちんとキレたタコ。仕返しとばかりにその足での叩きつけを狙ったが、しかしフリッパーでの反撃であえなく斬られてしまう。
「チャンスは、いただきます」
 りおんによる背後からの射撃に、タコが大きくよろめき、倒れる。
「うわわわわわわっ!?」
 下敷きとなるぺん子。残った6本の足が絡まり、身動きが取れなくなってしまった。
「わーん、、ぬるぬるー、気持ち悪いぃ〜」
 涙目でもがくが、どういうわけかもがけばもがくほど、より複雑に絡まってくるタコの足であった。

 さて、陸上のキメラはまだ三匹残っている。その対処には他の面々が当たっていた。
「ん‥‥もらう」
 イカに向かい、アストレアがD−02で牽制する。ぷちんぷちんと弾が当たる度に被弾箇所から青の血が弾けるが、しかしさほど痛がる様子を見せない。接近戦が有利か。そう考え付いたアストレアはD−02をしまい、クロスマシンガンやヴィヴィアンを構えて突撃する。
 が。
「‥‥!」
 突き出したヴィヴィアンを掻い潜り、イカに手首を掴まれてしまった。ぐいと捻り上げられ、これではヴィヴィアンを振るおうにも振るえない。とっさにクロスマシンガンの照準を合わせようとするが、既にそちらの手にも足が伸びていた。
「ん‥‥離して」
 もがけどもがけど、しかし腕が不自由なのでは脱出もままならない。
 べしり、と、イカの足が唸る。鎧の結合部に叩きつけられると、チェストプレートの締めが緩くなる。そしてその内側から押し上げる巨大な肉塊により、プレートはあえなく弾け飛んだ。
「‥‥!!」
 ぼよん、という音が聞こえてきそうなほどに激しく揺れる巨大なおpp――胸部装甲が姿を見せた。もちろん鎧の下に来ていた水着によりモロ出しは免れている。くぅ‥‥。
 これを見たもう一匹のイカが、にょろりと近寄ってくる。そしてアストレアを絞め殺そうと(多分)、その足を彼女に這わせ、まさぐり、ぎゅぎゅっと――
「ゼェアアア! 墜ちよ!!」
 グラディアスを手に突入してきたスパーダがイカの足を切り、アストレアを解放する。ちくしょう、もうちょっとだったのに!
「ん‥‥ありがとう」
 すぐさま臨戦態勢へ移行するアストレア。
 一匹のイカはアストレアのヴィヴィアンが貫き、もう一匹はスパーダのグラディウスが裂くことで、この場の戦いには決着がついた。

 さぁ、最後の一匹。タコ。
 この相手には、着地した直後のDが当たっていた。
「既に逃げ場はありません! 大人しくして下さい!」
 海の方から陸地へ追い上げるように、Dが迫る。サンアタッ――じゃない、フォトニック・クラスターによるダメージから立ち直りきれていないタコの足がさっくりと切れた。
「うちもやるで!」
 アクアマリンがその爪から高分子レーザークロウを伸ばす。
 Dのぬいぐるみにしてみれば、これぞ待っていた展開。さっとDにメモを投げ、受け取ったDもこの場はチャンスだと信じ、深く考えず、高分子レーザークロウを構えた。
「二人のこの手が!」「光って唸るでぇ!」
 そうして、このタコはまるで反撃する暇などなく、あっという間に息絶えてしまったのである。

●触手要塞イソギンチャク
 残る敵は、海の底にどっしりと構えるイソギンチャクのみ。先の戦闘中、特に邪魔してこなかった‥‥あるいは邪魔出来なかったのではないか、と考えると、やはり海に潜って戦うしかない。
 すると、ダイバースーツを忘れてきてしまったりおんはお留守番となってしまうのは、仕方なかった。
 先頭を泳ぐのは、そのりおんによってタコの足から引っ張り出されたぺん子。水中での泳ぎはなかなか機敏だ。先にイカタコを誘き出した際に遅れたのは、一重に彼女が先にイカタコに遭遇したからで、敵発見の知らせを聞いたアクアマリンやスパーダの方が先に陸への撤退を始めたからであった。
「お、いたいた♪」
 一番先を泳いでいれば、当然、敵を発見するのも一番早い。
 ぺん子の知らせを受け、他の面々が該当地点へ急行する。さほど距離は開いていないが、それより敵が動く方が早かった。
 ぐん、と触手を伸ばし、イソギンチャクがぺん子を襲う。
「わーっ!?」
 移動後の僅かな硬直にタイミングがぴしゃりと合い、その足が触手に捉えられた。
 ずるずると引き込まれる中、ぺん子はばたばたとフリッカーを動かして脱出を試みるも、上手くいかない。
「いかん、急がねば!」
 スパーダが慌てて水中用アサルトライフルを放つが、しかしぺん子に直撃することを恐れてなかなか当たらない。
「誰か、たすけあぶぅ」
 そしてうねる触手の塊へと飲みこまれてしまった。
 そこで何が起こっていたか。詳しく描写することは悔しいことに、実に悔しいことに、青少年健全育成の観点から断念せざるを得ない。故に、音声のみでお楽しみいただくこととしよう。

「ちょ、え、何これ、え、いや、あっ、そんなとこんむぅ‥‥っはぁ、い、やぁぁぁはむ‥‥ぅっ」(一場面抜粋)

「お、おのれイソギンチャクめ‥‥。我が断罪の怒れる武にて禁じ手に手を染めた貴様を滅する!」
 怒れるスパーダがアサルトライフルを乱射する。その脇を、アクアマリンが飛び抜けた。レーザークロウを翳し、突撃する。
「ん‥‥援護する」
 アクアマリンをも捕えようとイソギンチャクが触手を伸ばすが、それをアストレアのガウスガンが次々に打ち落としていった。悲しいことに、プレートは再装備されている。おのれぃ。
「そら、もらったで!」
 ぐいと接近したアクアマリンが触手を払うと、その中に触手によってあんなところやこんなところを攻め立てられているぺん子を発見した。
 他の触手に襲われる前にとぺん子の体をひっつかむと、ぶちぶちと触手がちぎれるような勢いで一気に離脱した。
 その時のぺん子の状態――だらしなく垂れた目、半開きの口、上気した頬、彼女の表情その他について、アクアマリンは口外すまいと心に誓った。
「そちらに気を取られ過ぎです。一気に決めますよ!」
 ガウスガンを打ち込むのはDだ。アストレアやスパーダの攻撃もあり、いつの間にかまともに動く触手は僅かとなっていた。
「よっしゃ、任せとき! 援護よろしゅう!」
 もう大丈夫だから。その言葉をぺん子から聞いたアクアマリンは、再び戦列に加わる。ぺん子はふわりとそのまま海上へと浮かんでいったが、恐らく大丈夫なのだろう。
 ガウスガンやアサルトライフルの弾幕を掻い潜るように、アクアマリンが進む。
 その手に輝くは、レーザークロウ。
 弾に身を貫かれ、イソギンチャクが上げられもしない悲鳴を上げようともがく。今このキメラを襲うのは、絶望以外の何物でもない。
 シャッ。
 そんな音が聞こえたような気がした。それこそ、キメラの命が引き裂かれた音だったに相違なかった。

●報告書後書
 以上を以て報告書とするものである。
 本文中の出来事は、殊戦闘に於いては擬人化、私の趣味が含まれている以外に偽りはなく、そこにあらゆる演出面の脚色を加えたものとなっている。

 なお、この報告書が読まれているということは、私はきっと報告官としての地位を保ち続けているということであろう。
 そうで、あるならば。また、こういった形で出会えることを切に願う。