タイトル:天使に悪魔のラブソングマスター:矢神 千倖

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/03/06 22:38

●オープニング本文


 最近になって発見された新たな能力者の形、ハーモナー。スキル、つまり能力者が使える特殊能力のことなのは既に周知のことであるが、ハーモナーの持ちうるスキルの多くは、歌うことによって発揮される。言い方を変えれば歌ってさえいれば、スキルを発動させることが可能で、そのジャンルはPOPSだろうがロックだろうが演歌だろうが構わないわけだ。さらに歌の上手い下手も問われないため、音痴なハーモナー、というのも存在するようである。
 さて、前置きが長くなってしまった。別に上記は読まなくとも問題ないが‥‥え、「もう読んじまった」って? ‥‥すまなかった。

「今坂ののかです。よろしくお願いしますね!」
 薄桃のワンピースを着た少女がふわと良い香りを浮かばせ、透き通るように白い肌の、薔薇を散らしたように赤い唇の少女が微笑と共に小さくお辞儀する。スカートの丈は膝が見える程度の位置に留まっているものの、短か過ぎるという印象はない。
 可憐だとか、花だとか、そういった言葉で形容するに相応しい容姿と言えた。
 彼女のクラスは、ハーモナー。きっと、柔らかく可愛らしい歌声を披露してくれるに違いない。
「あ‥‥」
 そんな彼女を見て、呆けた声を出した男がいた。
 その姿は、異様。
 染料特有の、反射のきつい金髪。塗りたくった白の肌に、まるで隈のように黒く塗られた目元。唇も黒く塗られ、なんだか人間とは思えないような容姿だ。
「あの、よろしければお名前を‥‥」
 雰囲気が怖かったのだろう。ののかは恐る恐るといった様子で、彼に声をかけた。
「え? あ、あぁ! 俺様は佐久間‥‥じゃない、ゲーデ様だ、よろしくなァ」
 ボケっとしていたせいか、一瞬本名を言いかけ、慌てて訂正したさk――ゲーデ様。
 彼らは今、高速艇の中。ちょっとしたキメラ退治の依頼を受け、現場へ向かっている最中だった。
(この人、怖い‥‥)
 そう思っても口に出さないアンリ・カナート(gz0392)。彼もまた、同じ依頼を受けていた。

 さて、外部から描いていたのでは伝わらない。
 以下は、あなたの深層意識からこれを覗いているであろう、もう1人のあなたに贈る、ゲーデ様の心の呟きである。

(ウッハ、のんちゃん(もちろん今坂ののかのことである)マジパネェ! 超マブいんスけど。あーヤベェ、めっちゃ彼女にしてェわ。くぅ、どうにかなんねェかなァ)

●参加者一覧

ラウル・カミーユ(ga7242
25歳・♂・JG
蓮角(ga9810
21歳・♂・AA
安原 小鳥(gc4826
21歳・♀・ER
山田 虎太郎(gc6679
10歳・♀・HA
石凪 死憑(gc6704
11歳・♂・EP
セラ・ヘイムダル(gc6766
17歳・♀・HA

●リプレイ本文


 今回の依頼主と軽く挨拶や依頼についての簡単な話をした後、彼ら傭兵達は早速牧場へと向かっていった。ヤギキメラ3体の討伐。それが今回の仕事だ。
 もちろん、先に向かった依頼主の家が牧場の中にあるわけではなく、徒歩でほんの1分ほどの距離がある。道中は適当な会話などをしつつ、足を運んでいた。
 中でも、山田 虎太郎(gc6679)の表情は明るい(ように見える)。そろそろ生活費に困ってきたから、という理由で依頼を受けただけあって、ちゃっかり依頼主にミルクやチーズなどをねだったのだ。依頼をこなしたらという条件でOKをもらえたので、自然気持ちも弾む。
「お久しぶりです‥‥お元気、でしたか?」
「覚えて‥‥ますかね?」
 アンリ・カナートと面識のある安原 小鳥(gc4826)、蓮角(ga9810)は、少々期間を置いての再開となる彼に声をかけていた。彼と面識があるのは山田もそうであったのだが、彼女は今や報酬のことで頭がいっぱいのご様子。
「お久しぶりです。蓮角さんは‥‥僕の初めての依頼の時の?」
「うん、そうだったね。‥‥ちょっと逞しくなった様な気がする、かな」
 そんな、と手を振って赤面するアンリを、安原はにこやかに眺めていた。
 和やかな雰囲気の形成される他方で、さk――失敬、ゲーデ様は、愛用(にしていくつもり)のエレキギター型超機械を背負い、胸中穏やかではない様子だった。
(Oh my Angel‥‥。俺様のHeartは、もうのんちゃんにズッキュンズッキュン言ってるぜ。あぁこの気持ちを歌にしたい、超絶歌にしたいゼッ)
「何でもいいが、俺を巻き込むような事は死ないでもらいたいものだ」
 まるで心を読んだかのような、石凪 死憑(gc6704)の強烈な釘刺し。これにはゲーデ様も、言い返すことは出来なかった。
 だがその中にあって、セラ・ヘイムダル(gc6766)はまた一見好意的ともとれる助言をしていた。
「ここは積極的に交流を持って距離を縮めると良いのです♪」
「な、なるほど、そういうもんか‥‥」
 セラの囁きにすっかりその気になってしまったゲーデ様。いったい何を企んでいるのやら。
「ハーモナー多いネ」
 ラウル・カミーユ(ga7242)が呟くのも無理はなかった。今回の依頼に参加したハーモナーは、今坂ののか、ゲーデ様だけでなく、安原、山田、セラと、実に5名。半数を超えている。
 果たしてこの牧場に、どのような歌声が響くのであろうか。


 依頼に参加したのは9名であるから、丁度キリよく3人ずつの3班に分かれ、各キメラに当たろう、ということになった。
「‥‥邪魔するなよ」
 1班。自分の道だけを進もうという石凪は、挨拶の代わりに酷く殺伐とした、拒絶とも取れるような言葉を放った。相手が相手なら機嫌を損ね、全体の崩壊すら招きかねない態度ではあるが、共に行動する者が温厚な性格だったおかげで、そういったことはなかったようである。
「ご心配なく。お仕事ですから、しっかりやらせていただきますね」
 場数を踏んだだけあり、安原が足を引っ張ったり、ということはどうにも考えにくいことだ。
 ふん、と鼻を鳴らし、石凪はずんずんと先を進む。
 その様子に、安原はくすくすと笑う。
 もう一人、この班にはセラがいた。
「ははーん、見たところ、まだまだ経験が少ないですね。ここはしっかり励ましてあげないと」
 聞くだけならば頑張るお姉さんなのだが、その腹の中に、所謂ポイント稼ぎの魂胆があることは筆者の胸の内に秘めておく、と併記せねばなるまい。
 ちなみに、経験だけで言えば、石凪よりもセラの方がやや少ないということも筆者の胸の内に以下省略。
「ふふ、頼もしいですね。よろしくお願いします」
「はい、よろしくおねガ――ッ」
 さりげなく寄ったセラ、躓いた(ふりの)勢いで安原に激突。
 そっと抱きとめた安原。だが、セラはこれを狙っていた。素早くその手で安原の腰をなぞり、頬で胸の感触を確かめる。全てこのトラブルに見せかけた一瞬で行われたことだ。
 恐ろしいぞセラ・ヘイムダル。筆者とかわr(切り取られている)
(なるほど、上から下まで着やせするタイプではないということですね。ククク‥‥)
「あ、あの、大丈夫ですか?」
「あはは、ごめんなさい。ちょっと不注意だったのです」
 苦笑するその瞳の奥にギラリと光るものがあったことは、筆者の以下省略。
「おい、いつまでやってる。いたぞ、さっさと用意死ろ」
 そうこうしている間に、石凪がキメラを発見したようだ。
 流石にここまでくればおふざけをしているわけにもいかない。セラ、安原も気合を入れ直してキメラに向かった。
 そのキメラは、どこからどう見てもただのヤギだ。牧草を食み、ぼんやり周囲を見渡しては欠伸などしている。能力者が近付いても動こうとすらしない。
 だがこれが情報にあったキメラに違いない。
「お前、ハーモナーとか言ったな? 動かれては面倒だ。何とか死ろ」
「はいはい、お任せですよ!」
 石凪の高圧的な態度にも愛想良く答えるポイントゲッターセラ。のこのことキメラに近づいてゆく。
 念のために、というのもおかしなことであるが、石凪、安原もそれぞれ鎌を構え、セラの横につく。あ、上手いこと書いた? そうでもないですか、そうですか。
「時は21世紀、バグアの襲来で離ればなれになる恋人達(ベンベン)、嗚呼、彼らに、祝福はあるのか〜。セラ・ヘイムダルで、『らすとほーぷ慕情恋歌』」
 そんな前口上を入れつつ。
「嗚呼〜、らすとほーぷの波止場から〜♪ 想うあなたの面影は〜♪ 高速艇で飛んでゆく〜♪」
 演歌だ!
 哀愁溢れる歌声に、悲哀の歌詞。ヤギキメラはいつしか聞き入り、その体は次第に痺れる憧れる。
「恨みはありませんが‥‥」
「会いたい思うことすら〜ぁ、許されぬ‥‥♪」
 涙だ!
 鎌を持ち駆ける安原の眼に、にじみ出す涙。その雫はどこまでも透きとおり、清く、美しく。
「‥‥面倒だ」
 思っていた以上に耳障りだ。と、そんな風に感じながら、石凪が鎌を振るう。
 痺れたその首をぐっと持ち上げ、何とか致命傷を回避したヤギ。そこへ安原の鎌が迫る。
 グッ!
 ヤギキメラ渾身のツノ攻撃。一瞬怯んだ安原だが、痺れた体から伸びたツノなど、見切るに容易い。
 さっと身を翻し、安原が鎌を振り下ろす。
 意外なほどあっさりと、ヤギは真っ二つになって事切れた。
 セラの歌は、ようやっとサビに到達したようであるが、オーディエンスは既に血だまりに沈んでいる。


「とらちゃん、アンちー、よろしくー♪」
「山田のことですか」
「え、えっと、ボク‥‥?」
 2班。眩しいほど朗らかな笑みを浮かべながら、ラウルが山田とアンリに愛称をつける。それがあんまりにも綺麗な笑顔だったものだから、2人はぎこちないながら頷くしかなかった。
「まーほら、ボクはイェーガーだから、前衛は任せるヨ」
「山田もハーモナーなので、前の方はお任せしますよー」
「あ、はい、うん、頑張ります‥‥」
 そういえば、こうして周囲に頼りにされた(のとはちょっと違う気もするが)のは、いくつか依頼を受けてきて初めてかもしれない。
 ほんの少しじーんときているアンリを他所に、ラウルと山田はキメラを探す。
 放牧されていたヤギ達は既に避難させられているので、ヤギがいればそれがキメラなわけだ。
「お、見っけ」
 だから、すぐ見つかった。
 ラウルが肩をぐるりと回し、アンリの背を叩く。
「ほれ、行ってこい」
 前衛。それがアンリに与えられた役。ならば、やるしかない!
 やや後ろでは、山田がスキルを発動させる態勢に入っている。きっと大丈夫だ。きっと‥‥。
「アンリさんは〜♪ 意外ときっとムッツリスケベ〜♪ 実は鎖骨フェチとかっぽいですよー♪」
「エ――――ッ!?」
 これは山田の呪歌なのであるが、効果そのものはヤギキメラに、言葉はアンリに突き刺さったようだ。
 せっかくのアタックチャンスではあるのだが、これでは流石にアンリもそれどころではない。
 代わりにラウルが、その矢をひょっと放った。
「お腹が空きましたー♪ 眠くなって来ましたー♪ とっとと倒して下さいよー♪」
「そそそ、そんなこと言ったって!」
 その間、ラウルがバシバシと矢を突き立ててゆく。
 ヤギキメラ、何も出来ずに動きが止まる。
「はい、アンちー突撃GO☆」
「え? あ、は、はいっ」
 一々忙しく歌詞に反応していたアンリを引き、ラウルがGOサインを出す。そう、今は戦闘中なのだ。全く被害はないけど。
 気を取り直し、剣を構え突撃をかけるアンリ。
 ラウルが弓を放り、腰に提げていた刀を抜く。
「弓だけじゃないんだなー」
 すっと流れた刃がキメラの足を切り落とす。
 ぐらついたその体に一拍遅れてアンリが接近。
 ずぶりと音を立て、切っ先が白の毛皮に食い込んだ。ごぽりと溢れる真っ赤な血に、思わずアンリが目を逸らす。
 これには、何度やっても慣れることはないのだろう。
「さて、こっちはこれでよさそうダネ。‥‥かすかに聞こえるあのシャウトは何だろ」
 その頃、また別所から、奇声ともとれるような声が響いて来ているのを彼らは感じていた。
 まぁ、容易く想像出来ることではあるが。


 さて、3班。新人ハーモナーの今坂とゲーデ様を引き連れ、蓮角が先頭に立った班編成だ。どう見ても、ゲーデ様が浮いている。
「初依頼、頑張りましょう!」
 そう笑顔を見せる蓮角。ドギツイメイクのゲーデ様に臆した様子も一切見せない。
「はい、頑張ります!」
 可愛らしくにこっとふわっと返した今坂。その姿に思わずゲーデ様がズッキュンしているが、それはまぁおいておこう。
 しかし恋愛関係に疎い蓮角。ゲーデ様の穏やかならぬ心中など全く気にかかることもなく、朗らかに話しかけてくる今坂と適度に会話を交わしていた。
 そうしているうちに、浮きっぱなしゲーデ様の心に嫉妬の感情が芽生えだしていた。
(野郎、俺様ののんちゃんにあ〜んなに親しげに話しかけやがって。許さねェ、てめェちょっとでも変なことしてみろよ、俺様が黙っちゃいねェかんな)
 だがそう心中呟いても、2人には聞こえない。残念だな、ゲーデ様。ざまぁねぇぜゲーデ様。と、筆者の毒はこれくらいにしておこう。
「あ、蓮角さん、あれじゃないですか?」
 ゲーデ様の名を出さず、視界に捉えたヤギを指差す今坂。
 何か言おうと口を開いたゲーデ様だが、しかし言葉が出てこない。
 さっさと討伐してしまおう。今坂と蓮角は駆け出していた。
「お、おい、ちょ、待、うぉいッ!」
 慌ててゲーデ様もダッシュ。その過程でエレキギター型超機械を取りだす。
 蓮角が呼笛を取りだした。響いた音が、ヤギキメラの注意を引く。
「ベリーさんのひっつっじ〜♪」
 今坂が呪歌で援護。相手はヤギだが気にしない。
 撹乱を受けたヤギが何を対象にすべきか迷い、動きが鈍る。
 蓮角が風火輪を走らせた。刀を鞘から引き抜き、今にも斬りかからんとしている。
 このままでは、ゲーデ様の出番がない!
 戦って、いいところ見せて、のんちゃんのHeartをガッチリキャッチせねばならないのだ。
「イヤァァアアアアアィッ!」
 弦にピックを走らせたゲーデ様が、ビブラートを聞かせたハイトーンを上げる。
 空気すらも振動。まさに一撃与えんとしていた蓮角も、歌い続けていた今坂も、動きが止まる。2人は、口から心臓が飛び出そうな、そんな感覚を覚えた。
「まだだ、まだ俺様のターンは始まったばかりだZE! ヒヤッハハー!」
 凶悪に口角を持ち上げ、舌を出しながら中指を突き立てる。
 ピックを握り直し、さらに超機械を掻きならした。
「のんちゅあん! 愛してるZEベイベー! ィヤッハァ!!」
 歌か、歌なのか。しかし少なくとも何かのスキルを発生させているようだ。
「‥‥すー」
 あおっと、今坂、眠ってしまったァ!
 まさかの子守唄、このシャウトで子守唄! しかも対象は今坂だ!
 そんなことをしている間に、ヤギキメラが痺れから解放される。
「ハッ、いけない!」
 気を取られている場合ではなかった。
 蓮角が素早く反応し、キメラへ肉薄。
 刃が閃く。キメラの首はあっけなく飛んだ。彼ほどの使い手なら、造作もないことだったのだろう。
「ふぅ、危ないところだった‥‥」
 何とか被害自体はなく、キメラの討伐に成功。
 だが、ゲーデ様‥‥。あんた邪魔しかしてなかったような。


 こうして、とりあえず依頼は達成し、山田は振舞われたチーズなどを頬張っていたわけだが、一方ではアンリや安原らが談笑。一方では、がっくりうなだれるゲーデ様の姿が見てとれた。
 間もなく日暮れ。牧場に戻ったヤギ達もちらほらと横になっており、街灯のない景色は、夜と共に一日の終わりを迎えようとしていた。
 このままでいいのか。そう感じ取ったゲーデ様はふいに立ちあがり、依頼主から紙とペンを借りて何事か書き込み、「初めてなんでちょっと緊張しました」などと語っている今坂の近くに紙を落とし、その場を後にした。
「のんちゃん、そこ、何か落ちてるよ」
 それに気づいたのはラウルだ。今坂は頭に疑問符を浮かべ、紙を取り、開く。
「何それ、何て書いてあるの?」
「え、あの、牧場の入り口で待ってる、と‥‥」
 ぎこちなくそれを読み上げた今坂だが、周囲は「ははぁ」としたり顔。その意図に気付いていないのは蓮角くらいのものだ。
 行ってくるといい。と、蓮角。安原やアンリも頷いた。
 慌ただしく紙をポケットに突っ込むと、今坂は牧場の方へと駆けていった。
「さて、と。ここはやっぱり、行くしかない、ですよね」
 セラの笑みがなんとなく黒い。
 ラウル、山田らが賛同した。
「あの、ヤギに蹴られて地獄に落ちますよ?」
 分かるような、分からないような理由で安原が反対。蓮角はどっちつかずでいたが、邪魔しない方が、などとおずおずと。アンリもやはり反対した。
 石凪は我関せずといった様子で、今夜の宿として依頼主が提供した部屋の隅で読書しつつうつらうつらとしている。

 結局のところ、石凪以外の全員で様子を見に行くこととなった。反対組までついてきたのは、興味津々な一同が余計なことをしないように見張るため、という名目ではあったが、内心やはり気になっていたのは言うまでもないことだろう。
「俺様が呼び出したのは、だな‥‥」
 茂みから耳を澄ましていると、ゲーデ様のそんな声が聞こえてきた。
「俺様はだな、まぁ、のんちゃんのことが、だな」
 一同、唾を呑み下す。
「す、好きだッ!」
 いった!
「ごめんなさい」
 断った!?
「あ、でもあまり気を落とさないでくださいね。家が、ちょっと厳しくて‥‥そういうのは、急には‥‥。あの、お友達からでしたら、是非」
 どうにもテンプレート的な回答に、その方面にはちょっと疎いアンリや蓮角は内心ガッツポーズだったが、他の面々は吐き出したいため息をぐっとこらえていた。