●リプレイ本文
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幸運にも温泉旅行を獲得した面々がチェックインしたのは、午後2時頃のことだった。旅行にガイドは一応いたのだが、それもほとんど送迎用。旅館へ到着したら後はご自由に、といった様子だ。
この中でも特に幸運だった者達がいる。ヴァレス・デュノフガリオ(
ga8280)と流叶・デュノフガリオ(
gb6275)の、デュノフガリオ夫妻。それから互いに友人同士だという夕風 悠(
ga3948)とLetia Bar(
ga6313)だ。
部屋に荷物を置いたら、そこからは完全自由行動。夕飯の時間もある程度融通が利くため、外出も気兼ねなく出来るというもの。
さて、何をして過ごそうか‥‥。
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まずは旅館の中を見て回ろう、と考えたのはエレシア・ハートネス(
gc3040)。何がどこにあるかを把握しておくのも悪くはないだろう。
この旅館は4階建て。3階と4階は宿泊用の部屋、2階には温泉などがある模様。
エレベーターもあるのだが、2階から1階へ降りるためにわざわざ使うのも逆に面倒だ。
階段で降りよう、としたところで、ばったりアンリと出くわした。
「あ、えっと‥‥」
「ん‥‥エレシア。来る時、一緒だった」
きっと彼も、同じように館内を見て回っているのだろう。上から来たということは、さっき部屋を出てきたばかりに違いなかった。
自己紹介するアンリに対し、この階には温泉があることを教えてやる。そうなんですか? と、ちょっとその場から覗きこむようにしてみる。「男湯」「女湯」と書かれたのれんが下がっているが、そもそもアンリには漢字が読めない。
「あっちの青い幕が下がってるのが男性用、そっちの赤い幕のが女性用のお風呂ですねー」
突然の声に振りかえると、そこにいたのは山田 虎太郎(
gc6679)だった。
「あ、山田さん、先日はどうも」
「ん‥‥知り合い?」
首をかしげるエレシアに、まぁちょっと、と曖昧に答えるアンリだった。苦手というわけではないが、ちょっとだけ苦い思い出がある。その横で、山田がパッと見ただけでは分からないほどかすかに、笑った。
「暇なら一緒に探索する‥‥?」
これはエレシアの提案だ。同じ旅行券で来ている者同士、同じことをするのに別行動とする必要もないだろう。
こくり、と頷いた2人を伴い、エレシアは先だって階段を降りた。
階段を降りたすぐ脇にはカウンターがある。これが受付だ。これから用があるとすれば、チェックアウトの際に鍵を返す時くらいなものだろう。その受付とは反対側には、方向としては階段を昇るのと同じ方向へ続く廊下がある。それを挟んだ向こう側は土産屋になっていた。廊下の先には、どうもゲームセンターのようなものが見える。
「やはり温泉旅館のお土産は木刀ですよねー」
パタパタと並べられた商品に駆け寄った山田は、早速目についた木刀を手にする。絵には何故か「根性」と書かれていた。いったい何に使う気なのか、それと温泉饅頭を手に会計へ。
エレシアも温泉饅頭を購入。アンリは湯飲みなど、普段見慣れないものに目がいっていた。その背後に迫る、白い影。
「おやぁ、アンリさんでしたっけ?」
「はい、そうですけ――!?」
振りむいたアンリが固まった。眼前で、まるで押しつぶしてくるような存在感のそれ。宇加美 煉(
gc6845)の双丘だ。浴衣に着替えたことで、サイズの関係からその半分は零れ、ちょっとずれればモザイクゾーンが見えかねない。この殺人的な危険映像が、純粋無垢なアンリの眼に飛び込んできたのだ。
それが何であるか、アンリにはすぐ理解することは出来なかった。それもそうだ。基本的にはほぼ完全に衣服の内側に隠れているものが、こうも堂々と露出しているのだから。
「うわわわわわっ」
視線を上げると、そこに女性の顔があることを認識。もう一度視線を下ろし、目の前に現れたものの正体を知ったアンリは思わず後ずさった。その肘にぶつかった湯飲みがことんと倒れ、陳列棚から転がり落ちる。
すっと眼を細めて、宇加美が手を伸ばす。ストン、と湯飲みは宇加美の手に収まった。
ちょっとだけ前かがみ。何かが、見えた気がした。
「アンリさんはー、やっぱり大きい人が好きなようですねー」
山田の眠たそうな声に、否定すら出来ないアンリであった。
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「がぅ、温泉一番乗り‥‥。‥‥気持ちいい」
荷物を下ろし、真っ先に温泉へ向かったのは佐倉・咲江(
gb1946)だ。
温泉の縁に顎をつき、足を伸ばしている。その引き締まった可愛いヒップがぷかりと浮かんでいた。ちなみに、タオルは巻かない派。あぁ、なんといじらしい。お願いです佐倉さん、仰向けに(破れている)
そこへがらと戸を開けたのは夕風、それからLetiaだ。2人は相部屋を希望し、荷物を置いて色々と話しながらやってきた関係で、佐倉より一足遅れたといったところか。
「あ、佐倉さん」
「がぅ」
にこっと微笑で挨拶した夕風に、佐倉は鳴き声(?)で応じた。
女性しかいないとはいえ、裸体のまま浮かんでいる佐倉の姿に、思わずLetiaは笑った。なんだか、それはそれで可愛らしい。
マナーのようなものだが、入ってきた2人はまず体を洗うことにした。この時ばかりは、体に巻いたタオルを緩めざるを得ない。肉球が呪縛から解放される瞬間、何かが起こ‥‥ってほしい。
そんな筆者のささやかな願いは、どうやら神に届いたようだ。
「大きくなったんだって?」
重力に揺れる夕風のそれを見て、Letiaはにたりとして尋ねた。彼女の記憶によれば、以前の夕風のアレは、ほんの少しだけ、今よりコンパクトだった気がする。
え? と問いたげな視線を返す夕風。眼前には、わきわきと何かを揉みしだくような動きを繰り返すLetiaの手が迫っていた。
「どぉれ、ねーさんが確かめてあげよーぅ」
だがにやりと笑んだ夕凪。そうそう容易くやられはしない。
飛び出すようにしてLetiaの背後に回った彼女は、素早くLetiaの乳房を掴んだ。緩んでいたタオルがはらりと落ち、その控えめかつキュッと締まり、まとまった肉体が露わとなる。
「西洋の方はスタイル良いですよねー♪」
血筋も青く透き通るLetiaのあんなところやこんなところに、夕風の手が這いまわる。
「ちょ、ま、ごめっ、やめ‥‥はぁん」
湿気を十分に含んだ空間に、Letiaのなめかましい声が響く。
その様子をジト目で見続け、ちょっと疼くような感覚を覚える佐倉であった。
そこで新たに入ってきた人物が、山田だ。手早く頭や体を洗うと、ざぶんと湯船に入る。そのまま浸かるかと思えば、ざばざばと湯を歩き、壁面に手をついた。
「がぅ?」
「あれ、山田さん?」
何をし出すかと思えば、タイルとタイルの間に指をひっかけ、壁面を昇り始めたのだ。
どう見ても、奇行。ようやくじゃれあいをやめた夕風やLetiaも、首を傾げる。
そうこうしているうちに、ついに山田が壁を登りきった。天井との間に50cmほどの隙間があり、彼女はそこから首を突っ込む。
「山田さん、何を‥‥」
「アンリさん、もう少し鍛えて筋肉付けた方が良いのでは?」
夕風が尋ねようとしたところで、山田のその言葉。壁の向こう側から(恐らく)アンリの悲鳴が上がる。Letiaは急いでそのいたずらをやめさせ、山田を引きずり下ろした。
逆覗き‥‥。こやつ、やりおる。
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初めに露天風呂を選んだのはデュノフガリオ夫妻だ。とはいえ、ほんのちょっと部屋でくつろいでからなので若干日も傾いている。今は他に客もおらず、貸し切り状態だ。混浴であるため、夫婦を隔てる壁もない。一足早い裸の付き合いといったところか。
しかしここはこの世界のお約束。傭兵が温泉に入る際、ハプニングが起きないわけがなかった。
「うわっ!?」
「‥‥っ!?ちょっと、ヴァレス‥‥!?」
足を滑らせた夫が温泉に倒れ込んだ。その際、咄嗟に掴んだものがふわりと宙を舞う。
ひらひらと落ちたそれを頭に被るようにして、ヴァレスが温泉から顔を出した。その視界に映ったものは何だったか。
湯煙に浮かぶピアノ線のように強くしなやかで美しい銀の髪、夕日に照らされ仄かに朱に染まる玉のような肌。愛する妻の裸体であった。
ヴァレスの頭にあったのは、手に取ってみると、彼女が見に纏っていたタオルだったことが分かる。
「ご、ごめんっ!」
事態を理解し、タオルを返そうと立ち上がるヴァレス。しかし、それこそが罠だった。
「本当に気を付け――」
大事なところを隠しつつ、タオルを受け取ろうと手を伸ばす流叶。だが、恥ずかしさに赤くなった顔は、そのまま硬直した。
温泉に落ちた時点で、ヴァレスのタオルは緩んでいたのだ。それがややあって立ちあがったことで、タオルの結び目は決壊。はらりと落ちた。
直接的描写は、全年齢対象である本報告書では不可能な内容なので、適当な比喩で表現すると、だ。
ぞうさんが、元気にぱおーん。
「あら?」
「がぅ」
そんな騒ぎもとりあえず収まり、2人は露天から上がることとした。脱衣所へ入ったところで、丁度衣服を脱ぎ終え、タオルも巻かないまま温泉へ入ろうとしていた佐倉とばったり出会った流叶は、彼女に声をかけた。
これ以上長居していたら危なかったな、と思ったのは容易に想像出来る。
ごゆっくり、と言葉を投げ、そのまま切り上げようとした。
だが。
「あれ、今何か‥‥」
外へ通じるドアが、軽く空いている。そこから、黒い小さな影が飛びだしたように見えたのだ。
慌てて、自分の着替えを入れておいたカゴを確認する。
「‥‥ない」
もってきていたはずの着替えが、下着ごとなくなっていたのだ。
それと知るや、佐倉も自分のものを確認。やはりなくなっている。今の影が持ち去ってしまったに違いなかった。
脱衣所の看板には、「衣服を盗む猿に注意」とも書かれている。なるほど、猿か。
「がぅぅ! 返して‥‥!」
「ちょっと、え、そんな格好で!?」
一糸纏わぬ裸体のまま、佐倉はその場を飛びだした。うろたえたのは流叶の方だ。
どうしよう、とその場をぐるぐる回っていると、やがて佐倉が戻ってきた。その手には、彼女のものであろう服が握られている。
「これだけ、取り返せた」
「え、じゃあ下着や、他の服は?」
「‥‥」
無理だったようだ。
「話は聞いた! こんな事もあろうかと!」
ひとまず追い払ったので、しばらく猿も出ないだろう。佐倉が改めて温泉へ入っていったところで、男性用更衣室との間を隔てている壁の上を通り、ビニール袋が投げ込まれた。声の主はヴァレスだろう。
ごそごそと中を漁ってみると、出てきたのはなんとメイド服。スカートの丈は、短い。
「これで今日一日過ごして♪」
「ぅ‥‥分かったよ」
まぁこれしかないなら仕方ない。まさか裸のままでてゆくわけにもいかないし、提案を飲まざるを得なかった。
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夕飯は各自個室でいただくこととしていた。中でも特殊な食事の摂り方をしていたのは、やはり例の夫妻。えぇい■■■■(塗りつぶし)!
「ん、ご主人様‥‥?はい、あーん」
「あらら、すっかり色っぽくなって♪」
すっと妻を抱き寄せて口を開ける夫。そっと伸びる箸に挟まれた料理を咥えこんだ。
料理と共に運ばれた酒により、今や流叶はほろ酔い状態。夫はそれを良いことに、それはもう好き放題やっていたのである。ちくsy(破られている)
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深夜。
ゲームセンターで食後の時間を潰していたエレシアと宇加美は共に温泉へ向かっていた。
Notタオル派のエレシアは、爆弾とすら形容出来るそのバストをたゆんたゆん揺らしながら浴場へ。宇加美に関しては、今にも暴発しそうなソレがあるにも関わらず、ちゃんとタオルが巻けたのは奇跡と言えよう。
2人の入浴は静かなものだった。たまに会話があっても、「ん‥‥いいお湯」とか「そうですねぇ」とか、そんな簡単なものだ。
ぷかりと浮く系4つのでかめろん。ここで筆者は敢えて叫ぶ。私をそこにまぜ(切り取られている)
「ん‥‥先に上がる」
ざぱ、と脱衣所へ向かったエレシアを、宇加美がひらひらと手を振って見送る。彼女らは同じ部屋であるので、どうせ後で部屋で合流するのだ。もうちょっとくらい長く浸かっていても問題あるまい。
ちょっと縁によって、腕枕。胸がぶにんと潰れるが、それが、良い。実に良い。
気が緩んでしまったのか、そのままうとうと。従業員の話によると、彼女は浴場清掃時間に発見されるまでそこで寝ていたのだとか。
‥‥危ないところであったのは、言うまでもない。
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「そういえばレティさん、最近はどうですか?」
部屋で夕風が問うのは、Letiaの恋愛模様。どうもLetiaには恋人が出来たらしく、その馴れ初めを聞いてみたいとのことだった。
それと同時に顔を赤くしてもじもじし出すLetia。意外とシャイなご様子。
「最初は、そうは見てなかったんだけど、気づいたらどんどん入ってきて‥‥はぅ」
あらまぁ畳にのの字なんか書いちゃっていじらしいこと。リア充め‥‥。
「そ、そんなことより、悠こそどうなの?」
「え?」
このまま弄り倒そうと考えていた夕風。急に切り返されては、きょとんとするのも無理なかった。
「決まってるでしょ、好きな人とかいないの?」
「えっと」
夕風は困ったように頬を掻く。どう言ったら良いものか。そもそも、言うべきことなのか。
彼女は迷った。わざわざ話すべきことではない。だが、この人になら、今ならば。
そして、決めた。
「メトロポリタンXが陥落した時、大切な人を失って‥‥」
そんな言葉から始まった、夕風の話。それ以来恋愛に消極的だったこと。でも今は、Letiaを始めとし、人との出会いの中で立ち直り、前向きになれたこと。
まとめてしまえば簡単な話だ。しかし、それが彼女にとってどれだけ重く、どれだけ辛く、そしてどれだけ救いと、希望と、力になっていたことか。Letiaには、それが分かる気がした。
「よし、今夜は一緒に寝るぞ!手つないでっ!」
だから、言葉では伝えきれないと思った。ただ、傍にいる。隣にいる。きっとそれで、全て伝わると思った。
きっとすぐ朝がくる。陽が差す。Letiaは、必ずや昇るであろう地平線の彼方にある太陽に、強く祈った。
大事な大事な親友の心に、暖かな光を届けておくれと。
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「なんだか眠りづらかった気がします」
夜中、従業員によって部屋へ強制送還された宇加美。相部屋のエレシアは既に眠っていたが、よほど寝相が悪かったのか、朝になれば2人の体は完全に絡まっていた。朝になった時、色々とイヤンな体勢になっていたことは、筆者の脳内写真にのみ収めておくことにする。
その他にも、実は様々な出来事があったりした。特に例の夫妻の夜
この報告書はここで終わっている。