●リプレイ本文
メンフィス・ワイズマンとジェスター・サッチェル(gz0189)。二人のケンカに巻き込まれた傭兵は互いにチームを分け、広場で対峙していた。
ルールは辰巳 空(
ga4698)の提案で『30メートル四方のフィールドを使用、10分3ラウンド、覚醒なし』を採用で全員了承した。
「10分やってヘタってた方がそのラウンドは負けだな、ルールはそれでいいぜ。それから負けたほうはお約束の罰ゲームな」
メンフィスは勝手に罰ゲームの提案をした。そのほうが緊張感もあっていいと、30代後半の男が熱弁をふるう。
「負けたほうは、そうだな、俺の行きつけの店に『にゃんにゃんバックス』っていう喫茶店があるんだが、そこで一日店員をするってのはどうだ?」
「一日喫茶店の店員? それが罰ゲームか?」
そう言っていぶかしむのはネクタイの曲がり一つもない身だしなみの紳士、木場・純平(
ga3277)。それならばすでに相手を惑わせるためにメイド服を着ている翠の肥満(
ga2348)(もちろん男)とカンパネラ学園の女子制服を着ている基町・走太郎(
gb3903)(もちろん男)のほうが罰ゲームらしいのだが‥‥
「に、にゃんにゃんバックスだと?」
ジェスターは顔面蒼白でわなわなと震えている。
「それが眠気も覚める恐ろしい罰ゲームなの? ふああ‥‥」
盛んにあくびをしている少女は寒河江 菜摘(
gb2536)。チャイナドレスからはみ出んばかりの豊満な胸に嫌でも目がいってしまう。
「みんな知らないと思うが、『にゃんにゃんバックス』は‥‥メイド喫茶なんだぞ!」
ジェスターは握りこぶしを震わせて叫んだ。メイド喫茶。
「メ、メイド喫茶? あの翠さんがしているような格好をして、ご主人様をお迎えするという喫茶店?!」
事情もよくわからないままなんとなく巻き込まれてしまった周藤 惠(
gb2118)が、菜摘以上の胸をプルルンと震わせて飛び上がった。
「何よそれ! ちょっと興味あるけど!」
ツインテールの少女、天道 桃華(
gb0097)も抗議したが、反対ではないらしい。
「メイド喫茶、それは男の夢ぢゃ」
集まった面々の中でもひときわ異質な存在である老人、Dr.Q(
ga4475)はぴこぴこハンマーに白粉を打ちながらなにやら想像しているようだった。
「決まったな! 負けたらにゃんにゃんバックスでメイドさんだぜ! 楽しみだな!」
メンフィスは自分が負けることなど頭にないのか、喜び勇んで時計のタイマーを10分にセットした。
「ところでお前のそのアレな格好はなんなんだ?」
「これは、女好きのワイズマンさんのための女装だよッ!」
走太郎はその場でくるりと回り、「走子でーす!」と言った。
「ねーよ‥‥」
メンフィスは女装少年に頭を抱えた。
●ウォームアップ
メンフィスは慣れない義足でグラウンドの土を踏みしめた。
「こんなバカ事やる時点でそれなりに余力はあると思うんだけど‥‥本当に大丈夫?」
桃華がメンフィスを見上げて、大きな目に少し不安をにじませた。
「心配ご無用、コロネ頭のチビナース」
「こ、コロネ頭? チビナース? せっかくワイズマンのためにナースの格好してきたのに!」
桃華はプンスカ怒りながらぴこぴこハンマーを振り上げた。が、背の高いメンフィスに頭を抑えられ、コントのようにぴこぴこハンマーが宙を切る。
「俺のことはメンフィスでいいぞ。あと、俺はロリコンじゃないがそのカッコ、かなりかわいいぜ」
「えぇっ‥‥」
桃華は頬を染めてもじもじした。かわいいと言われて嬉しくない年頃ではない。
「菜摘のチャイナおっぱいには劣るけどな」
余計な一言で、メンフィスは菜摘と桃華にハリセンで挟み撃ちにされた。
「女の敵!」
「巨乳好き!」
菜摘と桃華がそれぞれメンフィスをののしった。
「試合の前から仲間割れか、やっぱりあいつは人望がないな」
ジェスターは巨大ハリセンを手に不敵な笑みを浮かべた。
「さっちゃんや。わい公の事は嫌いなのかの?」
「はい?」
Dr.Qに突然『さっちゃん』などと呼ばれ、ジェスターは一瞬戸惑った。
「嫌いというわけではないですが‥‥」
「やはりのぅ、単なる友達が、一人っきりで男の下に見舞いする訳がないと思ったんぢゃ‥‥」
どうやらこの老人はあまりよろしくない妄想をしているようだ。
「このムシャクシャを早く解消したい、始めようじゃないか」
ある任務で撃墜され、荒ぶっているらしい翠。相手を油断させるためとはいえ、メイド服にヘルメットにぬいぐるみ云々ととんでもない格好をしている。それをおろおろしながら見守っている惠も、着物にエプロン、おたまというなんとも言いがたい格好だった。しかしそれ以上にインパクトを与えるのは胸。胸である。
「Jカップのピチピチ娘がジェスのチームにいるのはおかしくね?」
メンフィスはまたしても菜摘と桃華からハリセンを食らった。
●ラウンド1
30メートル四方を白線で切り取ったグラウンド、そこからやや離れた場所にメンフィスがどこからかもって来たタイマー付きの置時計。
「多少アバウトだが審判がいないんでコイントスではじめ、時計のベルで終了。了解?」
コインを手のひらで転がしながら言うメンフィス、対峙する面々はそれぞれ頷いた。
「じゃ、いくぜ! 恨みっこなしのガチンコバトル!」
はじかれたコインは高らかに宙に舞い、それが地面に落ちるとほぼ同時に両軍が動いた。
「かくごぉー!」
菜摘がなぜかライバル心を現したのは惠。すさまじい巨乳対決が始まった。
「ど、どうして私‥」
巨大ハリセンをバックラーで受け止める惠。身に覚えはなくともなんとなく胸に覚えはあるような。
「バックラーなんて反則だよぉ‥」
攻撃を盾で受け止められ、菜摘は重たいまぶたを上げて抗議した。
「ぶ、武器の制限はありますけど、防具はだめだとは‥ごっ‥ごめんなさいっ」
おろおろと謝りつつ、惠はエアーソフト剣で反撃した。
「ほあぁ〜」
リーゼントカツラをエアーソフト剣で吹き飛ばされ、菜摘はぐにゃぐにゃと地面に崩れ落ちた。
慌てて惠が菜摘の顔を覗き込むと、菜摘はスースーと寝息を立てていた。
「おぉい! おっぱいチャイナ! 寝るなよ!」
メンフィスの声にも反応なし。
「怨みはないが殺意はある!」
巨乳決戦に気を取られていたメンフィスを翠の巨大ハリセンが捉えた。下半身狙いで男の大事な部分を叩きのめす戦法‥‥か?
「お前! この女装緑色変態めっ!」
股間を押さえつつメンフィスもぴこぴこハンマーで応戦する。
「ハイパー賢者(ワイズマン)いたぶりタァァァァイムッ!」
しかし翠も引かない。
「賢者タイムは寂しい時間の後だろ! 俺には無縁!」
ぴこぴこハンマーとハリセンが激しく交錯する。
「患者は患者らしく!」
『絶対安静ストイックスタイル』と達筆で記された巨大ハリセンがメンフィスの後頭部を直撃した。清く正しい入院ライフを勧める純平だ。
「木場さんと翠さんがワイズマンさん狙いの今こそっ」
地面を蹴って空がジェスターに急接近、ぴこぴこハンマーで一撃をくわえるがジェスターはそれをハリセンで受け止める。反撃される前に跳躍、ヒット&アウェイで攻める。
「まじかる☆ナースが愛の癒しをお届けするわよっ☆」
死角から桃華がぴょこんと飛び出し、ぴこぴこハンマーでジェスターの頭をたたいた後すぐさまハリセンに持ち替え左顔面に強烈な一撃をくわえた。
「油断ならん子どもだ」
ジェスターは左目の眼帯を直しながら桃華に向き直るが、どうも攻撃しにくい。
「ぺちゃパイ! やっちまえ!」
メンフィスが翠と純平を相手にしながら桃華に檄を飛ばす。
「誰がぺちゃパイだーッ!」
持てるだけのハリセンとぴこぴこハンマーを振り回す桃華。
「俺が言ったんじゃないぞ!」
どうにも少女相手では攻撃の手が鈍るジェスター。精神的にまだまだ甘い。
「い、今加勢に行きますっ」
惠が着物から零れ落ちんばかりの胸を揺らしながら駆け寄ってくる。それを横目で捕らえる桃華。
「サッチェルも巨乳派なのね? そーなのねっ!」
ありったけの武器を無理やり両手に持って詰め寄る桃華。
「ち、違う! 貧乳はステータスだ!」
「えっ?」
「えーい!」
ジェスターの口から出たどうしようもない言葉に一瞬隙を見せた桃華を、惠がお玉で一発こつんとたたいた。
「や、やっぱり胸は小さいほうがいいんですね‥」
おたまを握り締めてふるふると震える惠。彼女は巨乳にコンプレックスを抱えているのだ。
「いや、お、大きいのもいいと思う‥」
「大きいのも? やっぱり貧乳が好きなんだぁ‥‥」
さっきまで寝転がっていた菜摘まで起き上がって胸を揺らしながらジェスターに詰め寄る。
「いや、その、大きさより形というか‥」
別の武器でジェスターはノックダウン寸前だった。
「さっちゃんはな、こーみえてもナース好きなのぢゃ! むっつりぢゃから判らんだろうが、並みのむっつりぢゃあらせん! バニー娘も猫娘も、軍服パブに電車イメクラ! こーこーせいどころか、小学生もOKなむっつりぢゃわい!」
グラウンドに響き渡る老人の声。Dr.Qが背筋をしゃんと伸ばしてぴこぴこハンマーを構えていた。
「変態!」
女性陣の刃はなぜかジェスター一人に降り注いだ。
「さすがにそれは言い過ぎだぜじいちゃん! 小学生は完全にアウトだ!」
Dr.Qに飛び掛るのは走太郎。ぴこぴこハンマーを振り上げる。
「なんと! 女装少年のほうが問題ぢゃ!」
Dr.Qは老人とは思えぬ反応速度で走太郎の攻撃を同じくぴこぴこハンマーで受け止めた。
「サッチェルさんは変態じゃないよなっ?!」
「何というか、お前には言われたくないぞ」
スカートをはためかせる走太郎を見上げながら、ジェスターは額を押さえた。
結局第一ラウンドはジェスターが女性陣に精神的にKOされたせいもあり、メンフィスのチームの勝利となった。
●ラウンド2
「次も頂くぜ!」
コイントスの合図と共に飛び出すメンフィス。真っ先に翠を捉えると、ぴこぴこハンマーで思い切り股間を殴打した。
「あqwせdrftg‥‥!」
ぴこぴこハンマーとはいえ、能力者の一撃はかなり効く。股間を押さえて悶絶する翠。
「さらに助太刀っ!」
翠に追い討ちをかけるようにぴこぴこハンマーを頭から振り下ろしたのは走太郎。メイド服の男と女子制服の少年が戦う様は、なんとも形容しがたかった。
「か、覚悟してくださいっ」
おたまを構える惠と対峙するのは、対照的な胸の桃華。
「何、何なのこの違いは!?」
圧倒的なJカップ。メロン? いやスイカ? これがスイカップってやつなの?
胸に圧倒されている桃華に、惠のおたまが飛んだ。それを紙一重でかわす桃華。
「‥‥動くだけでゆれるんだ‥‥揺れるのねぇ‥‥うああーん成敗してやるぅー!」
ハリセンとぴこぴこハンマーの6刀流で桃華が惠に襲い掛かる。半ばやけくそで。
「はわ‥はわわっ‥‥」
勢いで着物が破れるが、惠が着物の下に着ていたものはなんとバニーガールの衣装だった。
「えっ?」
「はっ?」
豊満な胸がさらに強調されたバニーガール。思わずメンフィスとジェスターが固まる。
「こ、困ります‥‥」
おろおろする惠。
「こっちのほうが困るぜ」
まぶしげに惠を見つめるメンフィス。その隙に勢いをつけた純平がフィギュアスケートのごとく回転しながら攻撃するというハリセンの究極奥義でメンフィスを叩きのめした。さすが紳士、胸くらいでは動じない。
「本当に困るから‥‥」
こちらはなぜかしゃがんだまま動けなくなったジェスターを、菜摘が眠い目をこすりながら一方的にハリセンではたき続けた。
「第二ラウンドは引き分けのようですね」
手持ち無沙汰にぴこぴこハンマーをいじくりながら、空が苦笑いした。
Dr.Qはというと‥‥
「その時、さっちゃんは‥‥わい公を鞭打ちながらその感触に身体を喜悦に震わして、ぢゃ。わい公もどんどん、そのな。あんたもわかるぢゃろう」
いけない妄想に浸っていた。
とりあえず空は老人の頭にショックを与えておいた。
●ラウンド3
「泣いても笑ってもこれが最後、にゃんにゃんバックスで働いてもらうぜ!」
メンフィスの手から離れたコインが地面に落ちる。
空が軽いステップで一気に距離を詰め、純平に襲い掛かった。できれば避けたい強敵でもあったが、これは手合わせのチャンス。腕を上げるためにも、最終ラウンドで積極的に向かいたい。
純平も勢いをつけて巨大ハリセンを繰り出す。激しいツッコミの応酬。
菜摘は果敢にも翠に戦いを挑み、ときどき眠気で意識を失いかけながらも戦闘を繰り広げた。
「行け、クマ五郎とネコ左右衛門!」
翠の投げたぬいぐるみが顔に当たり、菜摘はまたしてもほわわ〜と夢の世界へ落ちていった。
惠はバニーガール姿でメンフィスにハリセンを叩きつける。
「え、ええーいっ!」
「くっそ! 目のやり場に困る!」
ぴこぴこハンマーで攻撃を受けるメンフィスだが、どうしても胸に目がいってしょうがない。女好きのさがだ。
それぞれが激しい戦闘を繰り広げ、膠着状態に陥ると思われたが‥‥
「そ、それはおっぱい社長ことミユちゃんのブーツじゃねーか?!」
「ええ」
メンフィスが目ざとく翠の足元を見て叫んだ。自慢げに足を突き出す翠。一瞬にしてそれがミユ・ベルナールのブーツであると見抜くとは恐るべき男魂である。しかしそれがあだとなった。
「さいっってぇー!!」
桃華の裏切り! というか、桃華にとって巨乳好きの男はすべて敵である。怒りの一撃がメンフィスの後頭部を直撃した。
「変態ー」
菜摘までもメンフィスをハリセンで張り飛ばす。
「お前ら俺の味方じゃなかったのかよ!」
「アンタは全世界の貧乳少女を敵に回したぁー!」
「女の敵‥」
抗議も虚しく、寝返った女性二人に叩きのめされるメンフィス。
「絶対安静っと」
投げ飛ばされたメンフィスを待ち受けていたのは純平が構えるお約束のハリセンだった。
「怪我はないようですね」
仰向けに地面に転がるメンフィスを覗き込んで、空がやれやれと呆れたように笑った。
●戦いの後で
「お帰りなさいませ、ご主人様」
メイド喫茶にゃんにゃんバックスでご主人様を出迎えるのは、ごついメイドとメイド少年、巨乳メイドにミニミニメイド。
ジェスターはテーブルに突っ伏して笑い続けた。
その日は俗にロリコンと呼ばれる少女好きの男性陣がミニメイド見たさに列を成したとか。
後にDr.Qによって事実をかなり捻じ曲げられた噂により、メンフィスとジェスターは頭を抱えることになるのだが。