●リプレイ本文
●出撃前
「さて、と――デートの続きをするかね?」
UNKNOWN(
ga4276)はテレビ電話の向こうのフローラ・ワイズマン(gz0213)に言う。フローラは喜んでいる。
「前回のがデートが散々だったでしょう? もう誘ってもらえないかと思ってました。私だって仕事が全てだって思われたくなくて」
「ふむ、そんなことは気にしてはいないがね。お互い様だよ」
それからUNKNOWNはゼブラに言う。
「シュテルン隊を借りれるかね? 装備は三機は対EQ用に地殻変化計測器を装備。夢守機に情報LINKだね。各機ディフェンダー、五機ヘビーガトリング、五機スナイパーライフルD02、あと220mm6連装ロケットランチャーかH12ミサイルポッドを重量8割以下で装備だね」
「了解したよUNKNOWN」
「フローラ、私の機体のHPCサーバとLINKを頼んだよ」
「はい」
井出 一真(
ga6977)は、KVの下から顔を出した。
「この局面もいよいよ大詰め、というところですね」
井出はKV好きが高じて整備士にもなったKV好きである。自分の手で愛機の整備はしっかりと。現地の環境に合わせてフィルターや足回り、駆動部の保護など中心に出来る限りのセッティングを行う。
「さて‥‥少し他の方の機体も見ておきましょうか?」
「ああ、じゃあよろしく頼むよ一真」
「それでは‥‥見させてもらいましょうか」
井出は歩いて行くと、整備士たちに「どんな調子ですか」と言葉を投げる。
「久々に戻って来たな、ここに――良いなこの緊張感。よし、やるぞ!(ぐ!)」
ユーリ・ヴェルトライゼン(
ga8751)は拳を握りしめる。
「こっちは空戦担当かな。ディアブロ七機と組んで行動させてもらうよ。残り三機はルキアの護衛に回ってくれ」
「それじゃあ‥‥空には俺が回るか」
ゼブラは言ってから、ウィンターには地上に回るよう伝える。
「了解しました」
「俺の基本は撹乱と引き付け。施設破壊の邪魔になる連中を、空へ引き付けて陸戦隊の負担を減らすというところか。とはいえ‥‥遠慮無く落としても良いんだよな?」
「もちろん遠慮なく落としてくれよユーリ」
ゼブラが言う。
「最速の矢となり、駆け抜けるぞ!」
堺・清四郎(
gb3564)は言うと、拳を打ち合わせた。
「またも中東での依頼となるとやはりキングスレーか? 前回シスを失っているがさて、補充を来ているか‥‥。何にしてもやることは変わらん、俺は二刀を信じ突き進むのみだ」
それから清四郎は、ゼブラに問うた。軍に協力を要請、ミカガミ部隊を貸してもらう。
「そう、じゃあミカガミはあなたに任せるわね。無茶な使い方をするみたいだけど気を付けて」
ウィンターは言って、清四郎の肩を叩いた。
「乱戦、近接戦闘してこそのミカガミだ。無茶をしないでどうする?」
孫六 兼元(
gb5331)は、牙を剥いて腕組みする。
「バグアを押し返しつつあるが、調子の良いときこそ慎重にならねば! シスが倒されたとは言え、キングスレーは健在だからな!」
ガッハッハ! と豪快に笑う兼元。
「ワシは陸戦対応だ! 電子戦機の夢守氏からの情報と指示は随時確認し、その情報の下で行動だ! 特に今回は、キングスレーを出汁に基地攻略をする予定だから、情報共有と位置関係は重要だ! UNKNOWN氏や井出氏とも情報共有は行い、自分と敵の位置関係に注意を払うぞ!」
「ボクは空戦に回るよ。軍KVにI−01の援護依頼しておくね。5機程度かな。守備的に動いてもらいたいかな」
ソーニャ(
gb5824)の言葉に、ゼブラは「了解した」と頷く。
「私も空から支援だね。ゼブラ君、ディアブロを三機借りるね。ロケット弾を搭載して貰うよ」
夢守 ルキア(
gb9436)が言うと、ゼブラは「手配しておく」と答える。
「ディアブロは敵の迎撃を主にして。ロケット弾は、破壊用ね。私のお守は大変だよ?」
「そうなのか?」
ゼブラは笑って、部下達に指示を出す。
「それじゃあ行くか。油断は禁物だぜ。みな気を引き締めて行こう――」
●戦闘開始
「アルゴシステム起動。データリンク開始するよ。私のお守の皆、空爆しちゃってー」
「FOX2ミサイル発射!」
ディアブロの対地攻撃。遠方でフォースフィールドの赤い光が輝く。
ルキアは言って、上空に舞い上がる。波長装置の逆探知を止めて垂直離着陸、ブーストで低空まで戻る。
「敵基地からワームが迎撃に来る。地上にアレン・キングスレー、カスタムタロストリプルプラス、カスタムタロスプラス。上空にマリア・シュナイダー? ヨリシロかな――プラチナタロスにカスタムタロス。敵さんがお出迎えだよ」
「ガッハッハ! キングスレーは地上か!」
「ミカガミ部隊行くぞ! 戦闘隊形パンツァーカイル!」
「よしみんな行くぞ」
ユーリは高空から基地施設へ目がけてブーストで加速。初手に地上へ向けてK−02を撃つので、最初は高空から囮兼ねて施設上空へブースト掛けて侵入、低空まで一気に降りる。
「了解した! 全機ユーリに続け!」
ディアブロの高出力ブースターが咆哮する。
「飛行高度は射程四百メートルで地上に届くギリギリのラインへ。対空攻撃を回避しつつ、地上に展開する防衛ラインへ先制攻撃。ゴー!」
「ユーリ君、管制支援するね。タイミングは任せて」
「頼むよルキア!」
ユーリのディースを先頭に、ディアブロ七機が高空から突入する。
「煙幕装置発射!」
ディアブロ二機から、撹乱を兼ねて低空から地上へまずは一発叩き込む。
「全機ターゲットをロック。対地攻撃を開始して」
ルキアの声が響く。
「よーし全機カプロイアミサイル発射!」
「撃て!」
「FOX2ミサイル発射!」
各機K−02を基地に叩き込む。数千発のミサイルがうねるように基地へ吸い込まれて行く。
「私からもグレネードをお見舞い。お守のみんなもロケットを発射」
ルキアは言ってグレネードを撃ち込む。残りのディアブロがロケットを叩き込む。
地上で凄まじい爆発が起こる。
「全機敵の対空攻撃に警戒して。標的は破壊したよ。速やかに高空へ離脱」
ルキアの管制で、全機高空へ上がって行く。
――バグア軍の戦列が乱れる。
「ちい‥‥派手にやってくれるな」
キングスレーは言って、空を見上げる。
「マリア、空の連中を押さえておけよ。これ以上余計なことをさせるな」
「了解。防御するのは趣味じゃないんだけどね――」
「来たよみんな、ボクが囮で行くからね」
ソーニャは雷電隊に伝える。エルシアンが初撃、突撃攻撃で囮になり、陣形を崩し雷電隊で蹂躙する。Mブースター、アリス常時起動。
「ソーニャ、こっちも側面から行くよ」
「ソーニャ君、あのシュナイダー、多分ヨリシロに注意だよ」
ユーリとルキアの言葉に、ソーニャは「了解」と答える。
「それにしても派手なタロス、新しいヨリシロ? アレンと連携されちゃまずよね。なんとか足止めしなきゃ。うん、怖いのは知ってる」
突撃加速するエルシアン。ミサイルポッドをばら撒けば、雷電部隊もミサイルを叩き込む。
「ふん、シスを殺したソーニャ傭兵か。面白い」
マリアのプラチナタロスが加速して来る。
「おっと危ない」
ソーニャはレーザーを連射しつつ後退する。本格的交戦は極力避け、近接離脱で注意を引く。
雷電隊とカスタムタロスがドッグファイトに入る。ユーリも空戦に突入。
「各機、特に状況に変化がなければ各個撃破に専念して」
ルキアは言いつつ、モニターに映し出される地上の様子にも目を向ける。
「こっちだよ」
ソーニャはアリス、Mブースター、通常ブースト起動で再度突入。威嚇攻撃から離脱を繰り返す。
UPC軍機は隊長機や雷電エース数機と機体を入れ替えながら撹乱、リスクを減らす。
相手がこれを陽動、誘い込みと思い、慎重になるなら、こちらの思うつぼだ。
時間を稼ぐ。
「どうしたのソーニャ傭兵。らしくないわね。あなたはいつも積極的に打ち掛かって来たでしょう。私が怖いの?」
マリアは言って、プロトン砲で応戦しながら挑発する。
「ボクがヨリシロ相手に五分にやれるなんて思っちゃいないよ。それでも小鳥には小鳥の戦い方があるんだよ。まぁ、たまに規格外の化け物傭兵もいるけどね‥‥下の方に。地上部隊が戦線を突破できればボクらの勝ち。落とすだけが戦いじゃないよ」
「そう、でもまだ終わってないわ。イランは広大だし、中東エリアもまだバグアが半分近く占領しているし、こっちはインドだって押さえてるのよ」
「平和なセカイって、知ってる?」
ルキアが問うた。
「思考が、全て制限された、枠の中に収まりながら、枠を知らないセカイ。取り換えができる、ソンザイなんて、無いのにね。セカイはジブンって言うソンザイ、そして、大きな共有する世界。きみ達にとって、生きると言うのはどんなコトを差すんだろう?」
「ブライトン様は危惧されているらしいわね。お前たちの使うエミタの方が、バグアという存在よりも種としてのありようとして正しいのではないか。我々の取って来た生き方は誤っているのではないか。そんな話が漏れ聞こえてくれば、下っ端の私でも生きるということがどういうことなのか分からなくなって来る。まあ、実際に生きているお前たちにとっては理解しがたいことだろうがな――」
清四郎はミカガミ部隊と共にパンツァーカイルの陣形を取り敵軍に突撃、敵陣を突破する。
「パンツァー・フォー!! 遮るものは粉砕せよ!」
「了解!」
「尖撃の堺、推して参る!」
「よーし堺に続け!」
「ガッハッハ! 堺氏の側面を固めて行くぞ!」
「よし行くかね」
「後ろを頼む――!」
傭兵たちは加速する。
やがて、タロスの集団が接近して来る。
UNKNOWNはフローラの管制支援を受けつつエニセイの銃撃を繰り出す。シュテルンは二機一組で陸戦傭兵部隊と行動同調。一組がUNKNOWN機の背後を固める。
敵機ナンバリングして、相手が連携取れぬ様に攻撃する。
「左から右に撃ち流す――」
「よし、7を切り離す――」
「3−21−5に一射、右にずれた所を撃つ――」
基本は射撃指示で、チェスの様に詰めていくと、徐々にフローラに指示を移行する。
「フローラ、私の癖を読んでくれ」
「はい――6を切り離し、4−1−7に掃射、後退したところを7を集中的に攻撃――」
「よし、もう少し際どくでいい」
「はい――8と5を集中攻撃、10を切り離して下さい」
「その調子で頼むよ」
UNKNOWNが持っているとっておきの巨大拳「雷雲」だが、その武器は凄まじい破壊力だが、30メートルの長大な武器であり、何しろ目立つ。さすがに敵も警戒してUNKNOWNに接近してこない。UNKNOWNは巨大拳を持て余しつつ、銃撃に専念する。
井出の蒼翼号は、孫六のシコンの露払いに回る。自信のある足回りとブースターを活かして駆け回りつつ、低い姿勢で突撃。
「行きますよ!」
ガトリング砲の弾幕で牽制を加えつつ接近。間合いが詰まったところで阿修羅の剣翼で一撃離脱。足を止めずに敵陣を引っ掻き回す。
「撃破できれば儲けもの、そうでなくとも注意がこっちにむけば味方が攻撃できる隙を作れるかもしれませんしね――!」
「ガッハッハ! 井出氏! ありがとう!」
基地に辿り着いたところで、清四郎らは通信、発電、対空系を破壊していく。
「毎度毎度の作業だな」
「今日は決着をつける、か、地球人?」
やがて、キングスレーのカスタムティターンが前進して来る。
「いい加減見飽きたぞ、キングスレー! 首を置いて行け! はじめまして、そしてさよならだ!」
「こいつがエースですね」
井出はティターンの背後に回り込んでいく。
「ガッハッハ! キングスレー! 基地と自分と、どちらが大事だ!」
「何だって?」
「それを試してやる!」
孫六は機剣を主体に打ち掛かった。ティターンの上半身に的を絞った攻撃を徹底する。
右肩、左肩・頭部をランダムで連続打ち込みを繰り返し、ガードされてもストライクACを使い、構わず打ち込む!
「また種子島を狙う気か。同じ手は食わんぞ」
「ガッハッハ!」
ルキアは上空からその様子を確認している。
孫六とキングスレーと敵基地が、直線上に並んだタイミングで、ストライクAC併用で筒(種子島)を抜打ち――避ければ基地が只では済まないし、避けねばキングスレーが只では済まない。
さて、奴はドチラを取るか試してくれる!
そして――。
「今がチャンス、撃っちゃってっ!」
「食らえキングスレー!」
孫六は至近距離から種子島を叩き込んだ。
キングスレーは躊躇なく避けた。
背後のバグア軍司令部が爆散する。
「それがお前の答えか!」
「SESフルドライブ。ソードウィング、アクティブ!」
井出は切り掛かった。
「旧式だからといって甘く見て貰っては困りますよ」
だがキングスレーは飛んだ。
上からプロトン砲を連射する。井出の阿修羅は破壊された。
そのまま落下していき、孫六のシコンへ機刀を叩き付ける。
「俺が地球の基地と我が身を引き換えにすると思ったか」
刀はシコンの腕を切り落とした。
「ぬう!」
レーザーを撃ちながら後退する孫六。
「いい加減しぶとい!」
清四郎も雪村で切り掛かったが、キングスレーは腰のレーザーブレードで弾き返すと、至近距離からプロトン砲で剣虎を破壊した。
「やるね」
さすがにUNKNOWNは戦況を見ていたが、するすると前に出た。巨大拳で威嚇する。
「UNKNOWN、この状況では捕獲は無理だな」
キングスレーは数を減らした友軍を見て、自身も後退する。
それが幕引きだった。キングスレーとシュナイダーは、部下達を率いて撤退するのだった。
戦後‥‥。
諸事情により、食事会はラストホープに帰ってからとなった。UNKNOWNが手料理を振る舞う。
機体冷蔵庫に食材とワイン。地中海風に作り皆で屋外食事。
「さすがUNKNOWNさんですねえ」
井出は感心して肉料理にぱくついた。
「おー、やっぱUNKNOWNの料理は期待以上だね」
ユーリもぱくぱくと肉を頬張る。
「現地の連中は厳しいなあ‥‥まあ仕方ない」
清四郎は言いつつ、肉を食べて豪快に酒をあおった。
「ガッハッハ! UNKNOWN氏は器用だな! 料理の腕も一級品だな!」
「流石にいいワインを選ぶね。え、とらないで。ボク大人だから飲んでも大丈夫なんだから」
孫六が笑うと、ソーニャが慌ててグラスを取り戻す。
「料理はお肉がいいね! 大食いさ、フローラ君も来るかな?」
ルキアは肉をばくばく食べながら、視線を上げた。
「あ」
「おっ」
普段着姿のフローラが歩いてやって来る。
「こんにちはみなさん」
「今回は帰ってこれたようだね。なに、分析もある程度なら機体にして貰おう」
UNKNOWNは言って、フローラのために席を引いた。
「肉だけでなく野菜も食わすよ」
「おいしそうですね」
それはラストホープでのささやかなひと時だった。傭兵たちはまた戦地へ――。