タイトル:【AS】未知なる接触マスター:安原太一

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/12/02 07:03

●オープニング本文


 宇宙要塞カンパネラ――。
 浮上後のカンパネラでは、慌ただしくエンジニアやKVがその本格的な稼働作業に追われていた。要塞外部でも宇宙服を着た作業員や、KVが活動している。
 宇宙へ上がって後、カンパネラの下部構造を展開、ブロックのそれぞれに電気やら空気やらを繋ぎ、稼動させねばならない。先の戦闘で戦場にもなっており、補修、掃討などはまだまだ必要であった。中にはKVで行う方が良い作業や、生身であっても一般人よりも動きの良い能力者が行う事を望まれる作業も多々あり得る。また、周囲の掃討はまだ十分とはいえず、作業中であっても敵の襲撃は存在する。配置されたばかりのラインガーダーは数の面でも練度の面でも十分とはいえず、支援を必要としていた。
 軌道周辺にバグアの小型衛星は残っており、浮上したカンパネラの安全を確保する為にも、近傍の衛星は撃破するのが望ましい。小型封鎖衛星は巡洋艦に積み込まれたG5弾頭で対抗可能だが、攻撃の為に衛星へ近接する際、敵キメラやワームへの対処は艦には難しい。ここでもKVの出番と言うわけだ。
 ULTからカンパネラのオペレーターとして派遣された綾川美里(gz0458)は、司令センターのデスクで端末と向き合い、周辺宙域の警戒に当たっていた。美里は配属されたばかりの新米オペレーターであり、緊張した面持ちで画面を見つめている。
「美里さん――」
 先輩オペレーターの女性がコーヒーカップを二つ持ってやって来る。先輩は美里のデスクにカップを置いた。
「ありがとうございます先輩」
「随分緊張しているようだけど、もう大丈夫よ。大型衛星は破壊されたし、残敵はカンパネラの防衛力でも対応できるわよ」
「初任務が宇宙だなんて‥‥ここから落ちたら助かりませんよね」
「まあ、落ちるっていうか‥‥カンパネラは慣性制御で静止しているから大丈夫よ」
「でも‥‥映画で見るようなバグアの宇宙戦艦とか‥‥あんなものが攻撃してきたら逃げる場所もないですよね。宇宙って怖いですよ」
「この20年から10年で地球はひどいことになったけど‥‥バグア人はひと思いに地球を滅ぼすためだけに戦っているわけじゃないみたいね、まあ歴史を話すと複雑な話だけど、とにかく、カンパネラはかなり安定して来たんだから、もっと元気出していきましょ。後に続くであろう後輩たちのためにもね、私たちが頑張らないと先が無いんだから」
 ――と、そこで美里のモニターに異変を知らせる警告が出た。美里はコンソールを叩いて情報を弾きだす。
「大変です! カンパネラの制宙圏内にワームとキメラが侵入してきます!」
「落ち着いて美里さん、待機中の傭兵たちにスクランブルを出して」
「はい――待機中の傭兵に連絡します。緊急事態発生。エリア48にワームとキメラが侵入しました。直ちに迎撃に向かって下さい。輸送用の高速艦艇がみなさんを運ぶために待機しています。頑張って下さい。私も怖いですけど、全力でみなさんをサポートします。気合入れて行きましょう!」
 美里は、己を奮い立たせるように言って、傭兵たちをナビゲーションする。

 ――エリア48。
 侵入してきたワームとキメラは、この宙域を制圧するべく展開していた。ティターンと本星型ヘルメットワームには、ヨリシロが搭乗していた。ティターンに搭乗する男性型の異星人をドゥ・ヴァルガ、本星型に搭乗する女性型の異星人をミディスと言った。
「いよいよ‥‥人類が宇宙へ上がって来たか。カンパネラ宇宙要塞。まさかここまで来るとはな。いや、科学力の問題じゃない。あのエミタとやらを扱う種族、人間、恐るべき存在だ。それだけに、コンタクトを図るのは楽しみでもある」
「お手並み拝見よね〜。まさかブライトン様が‥‥いえ、バグアがここまで後退させられるなんて、私たちの記憶には存在しなかったんだから」
「甘く見てると死ぬぞミディス。地球での異常な死亡率が物語っている」
「そんなんじゃないわ。私だってわくわくするわよ。こんなエキサイティングな経験は初めてだもの。ふふ‥‥」
 二人のヨリシロは、地球人とのファーストコンタクトに興奮していた。それはそうだろう。もしブライトンが敗北せず、順調に地球の侵略を続けていれば、彼らにとっての未知の種族、地球人と相対することも無かったのだから――。

●参加者一覧

UNKNOWN(ga4276
35歳・♂・ER
シャーリィ・アッシュ(gb1884
21歳・♀・HD
ハミル・ジャウザール(gb4773
22歳・♂・HG
孫六 兼元(gb5331
38歳・♂・AA
ソーニャ(gb5824
13歳・♀・HD
神棟星嵐(gc1022
22歳・♂・HD
天小路 皐月(gc1161
18歳・♀・SF
クローカ・ルイシコフ(gc7747
16歳・♂・ER

●リプレイ本文

 カンパネラ――。
「宇宙食の歴史を語るにおいて、アポロ計画は欠かせないものなのだよ。当時の宇宙食と言えば‥‥」
 UNKNOWN(ga4276)は、宇宙食の歴史について、テレビ電話の向こうのオペレーターの綾河美里(gz0458)にうんちくを披露していて、料理教室を行っていた。美里は感心して聞き入っていた。
「UNKNOWNさんよくそんなに色んなことをご存じなんですね」
「まあ、ね、知識を集めるのは趣味なんだよ」
「すごいですねー」
「カンパネラでは宇宙食は必要ないだろうが、まあ、バグアとの戦闘がどんな状況で行われるとも限らないし、宇宙食の開発はメガコーポレーションで盛んに行われているんだよ。最近の宇宙食は随分と改善されておいしくなったようだがね」
「あ、私兵站部で見たことありますよ。缶詰とかレトルト食品とか‥‥」
 シャーリィ・アッシュ(gb1884)は、先のアウターフロンティアを思い出していた。
「宇宙での戦闘は過酷でしたが、もう随分と改善されましたね。今回の大規模作戦でビッグワンも撃破出来ましたし。これからは私たちが反撃に出る番です」
 シャーリィの言葉に、神棟星嵐(gc1022)が応じる。
「そうですね‥‥初めての宇宙戦がカンパネラ要塞の防衛になるとは、是が非でも成功させますよ」
「今回はよろしくお願いしますね神棟さん。支援に期待していますね」
「任せて下さいとは言えませんが‥‥全力を尽くしますよ。敵もワームを投入してきていますからね。いよいよカンパネラも本格的に稼働ですね。自分、学園生ですから、ここは何としても守ります」
「そうですよね。私たちの学園ですから。宇宙に上がっても、ここは私たちの家ですものね」
「いつかきっとカンパネラが平和な世界に浮かび上がることが出来る時まで、自分たちで支えて行くつもりです。この戦いが終わった後も、自分の働き場所はあるはずですからね」
「私たちの学園ですか‥‥」
 神棟の言葉に、シャーリィはふと遠くを見つめる。
「宇宙‥‥えっと、無重力だから‥‥色々気を付けなきゃ‥‥とにかく‥‥頑張りましょう‥‥!」
 ハミル・ジャウザール(gb4773)は言って、ソーニャ(gb5824)に笑みを向けた。ソーニャは頷いて、口を開いた。
「ボクがこの学園に送られた時は少し抵抗あったけど、大人なのにって。でも学園生の中にも院生とか大人はたくさんいるし、カフェとか図書館は居心地が良くて今ではすっかりボクの家で、友達は少ないけど、カンパネラ全部がボクの家族だよ。だから守ってみせるよ。よろしくね美里さん」
 ソーニャは、テレビ電話の美里に笑顔を向けた。
「そうですよね‥‥! ここはみなさんにとっても宇宙の家になるんですものね。私も怖がってばかりじゃなくて、少しずつでも前に進まないと。ほんの少しでも、みなさんの役に立てるように頑張ります!」
「ソーニャさん、美里さん‥‥僕は‥‥地上では色々‥‥依頼を受けてやってきましたけど‥‥宇宙へ出るのも初めてですし‥‥僕だって怖いですけど‥‥頑張ります!」
「ハミルさん、プロフィール見ましたけどベテランじゃないですか。ボクよりずっと頼りになりますよ」
 ソーニャの言葉にあたふたするハミル。
「そんなことないですよ‥‥! 僕なんか‥‥まだまだひよっこですよ‥‥本当にベテランの人たちの足を引っ張らないようにしないと‥‥」
「ハミルさん! 頑張って行きましょうね! 私も頑張らなきゃー!」
 美里は画面の向こうで小さくガッツポーズを取った。
 孫六 兼元(gb5331)は、UNKNOWNに言葉を投げる。
「UNKNOWN氏! 今回はキミに世話になることになるな! よろしく頼む!」
「何、気にすることはないさ。私の知的好奇心をくすぐられるテーマだからね。実体験に勝るものはないし、今後の研究にも役立つと言うものだよ。能力者でなければ出来ない体験だしね」
「ガッハッハ! UNKNOWN氏の活動範囲は広いからな! だがキミがいてくれて本当に助かるよ! 宇宙ではワシらにほとんどアドバンテージはない。それでもキミのK111は、宇宙KV並みに動けるからな!」
「正直、K111には相当つぎ込んできたけどね。それでも、すぐみんなに追い抜かれるんじゃないかな。宇宙では練力がネックだからね」
「それはそうだが、差し当たり、今日の任務ではキミのK111は最高だからね!」
「褒め殺し作戦かね孫六」
「ガッハッハ! 何言ってるんだUNKNOWN氏! キミは本物だろう! おちょくると思うかね!」
「そう言えば長いこと酷い目にあってないね‥‥いや、と言うことはないか‥‥」
 天小路 皐月(gc1161)は、思案顔で口を開いた。
「それにしても、皐月が眠っている間に、戦況は随分様変わりしたものですね。宇宙へと舞台が移っているなんて‥‥」
 その言葉には、クローカ・ルイシコフ(gc7747)が応じた。
「まあ、宜しくお願いしますよ皐月さん。ちょっとしたタイムトリップをした気分でしょう? 冷凍睡眠から目覚めたんですから」
「冷凍睡眠じゃありませんけどね」
「本当に冷凍睡眠してたらびっくりしますよ」
「クローカさんは宇宙へ行かれたことはあるようですね」
「まあ幾度目になりますかね。宇宙開拓ってほどじゃないですけど、アウターフロンティア作戦にはかなり参加しましたからね」
「それは大変だったようですね。犠牲者も出しながら、宇宙への道を切り開く過酷なミッションだったようですから」
「それも報われましたよ。ようやくカンパネラを宇宙へ送り出すことも出来たんですからね」
 そこで、美里が館内放送で傭兵たちに告げる。
「エリア48へ向かう高速艦艇の発進準備が整いました。傭兵のみなさん、自機への搭乗願います」
「さて、では行くかね――」
 UNKNOWNは煙草の火を灰皿に押しつけて消すと、仲間たちとともにドックへ歩きだした。
 高速艦の発艦ドックは無重力で、傭兵たちは床を蹴って艦艇に乗り込むと、KVのもとへ艦内を浮遊状態で移動しつつ向かう。
 そうして、傭兵たちがKVに搭乗すると、高速艦はカンパネラから暗黒の宇宙へ飛び出した。

「間もなくエリア48へ到着します。KV各機、発艦に備えて下さい」
 艦のオペレーターの声に、傭兵たちは「了解」とレーダーに目を落とす。
 そして、各機次々と高速艦から発進していく。
 UNKNOWNは妙に慣れた動作で進入していく。
「2.3度上昇、極北側に5度、ブースト加速量は1.3秒、だ」
「ガッハッハ! よろしく頼むぞ!」
 孫六はUNKNOWNとロッテを組みつつ飛び出す。UNKNOWが言う機体操作は、戦闘に入る前なら可能な範囲だった。戦闘で慣性制御下に入れば、そのような悠長な事はしていられない。
「これが宇宙‥‥行きます!」
 ハミルとソーニャのロッテも進入する。ソーニャはデブリマップを仲間たちに送る。
「少々数が多い‥‥面倒ですね」
「デブリ帯が見えて来ましたね。シャーリィ殿、自分が援護させて頂きますので宜しくお願いします」
 シャーリィと神棟は、レーダーに映るキメラとワームの集団を確認する。
「よろしくお願いします神棟さん。これは厄介なことになりそうですが」
「さて、ここより先は立ち入り禁止です。早々にお引き取りいただきましょう」
 皐月は、クローカとロッテを組む。
「宇宙でバグアと直接相対するのは初めてですね」
 クローカはバグア人との戦闘に関心と昂揚を隠し得ない。
「さて、見せて貰おうか。バグアの闘いってものをね」
 各機デブリ帯に紛れ込みその影に静止すると、バグアの前進を待つ。
「よしよし、獲物が来たようだね」
 UNKNOWNはデブリから飛び出すと、K02を発射した。500発のミサイル群がデブリの間を抜けて、キメラの集団を破壊する。
 反撃のレーザーが来るが、
「ぬう! さすが!」
 孫六は、言いつつ、デブリの影からレーザーライフルを叩き込む。
 キメラは爆散して、暗黒の宇宙できらめく閃光を放って消失する。
「ボクがバグアなら、相手が押して出てくる時を待つ。引く時にデブリにキメラを隠し、KVに貼り付けて動きを封じた所にとどめをさす。だから数を減らして、居場所を把握できるまではうかつに前へ出ないこと。厳しい状況での長期戦を覚悟してたんだけど、UNKNOWNさんが来てくれてだいぶ楽になったね。ほとんど反則技だね」
 ソーニャはバルカンでキメラを破壊しつつ、仲間達に通信を投げる。
「でも、ここは手堅くいかせてもらうよ。ボクにもちょっぴり守りたいものがあったみたい。スイングバイ? 地球半周するの? 派手な事はまかせるよ。でも防衛ラインは維持しておかないとね。ボクたちが守るよ。もともと少ない戦力で守りきる事を前提に考えた作戦だからね。やってみせるよ」
「ソーニャさん‥‥! サポートお願いします‥‥!」
 ハミルは言って、優雅に泳ぎながら接近してくるキメラに相対する。デブリを蹴って加速すると、デブリ間を足場に使いながら、レーザーガンを叩き込む。格闘戦ではディフェンダーでキメラを切り裂く。
「まだまだですね‥‥バグアは勢いがありますね‥‥」
 ハミルは言いつつ、ソーニャの支援を受けてキメラを撃ち落としていく。
「行きますよ‥‥神棟さん、援護お願いします‥‥!」
 シャーリィは飛び出すと、アサルトライフルでキメラを破壊しつつ、KVランスでまたキメラを串刺しにして投げ飛ばした。
 神棟は、デブリの脇からピリジーチにSEM−1ガトリングをマウントさせた状態でキメラへ向けて掃射する。
「シャーリィ殿、気をつけて下さい。宇宙ではまだどんな攻撃が来るか‥‥」
「エミタの力を信じましょう。でも練力は節約しないといけませんね」
 シャーリィは姿勢制御装置で方向転換しながらライフルでキメラを撃ち落としていく。
「行きますよクローカさん――!」
 皐月はデブリから飛び出すと、ミサイルを次々と発射する。着弾したミサイルがキメラを粉々に打ち砕いて行く。
「その身に叩き込もう。人類の手が届く限り、彼らに居場所などありはしないことを。ねぇ、分かる? これが自らの命を賭して闘う事。古来、人が数多繰り返してきた戦争というものだよ」
 クローカは言って、D08ミサイルポッドを撃ち込んだ。数百のミサイル群がキメラを吹き飛ばす。
「地球人よ――ようこそ宇宙へ。我々はバグア人である。地上での戦いは見せてもらった。お前たちと遭遇出来たことを、我々は歓迎する」
「あなたたちのようなヨリシロを手に入れることが出来たら、きっと私たちの探求も前進することでしょう。実に興味深いわ」
 ティターンと本星型HWに搭乗するドゥ・ヴァルガとミディスは、そう言うと、前進してくる。彼らはこのコンタクトを待ちわびていた。
 と、そこで、UNKNOWNが加速する。
「行くぞ孫六――忙しくなるから、私を盾に」
 UNKNOWNが突出すると、キメラとタロスが群がって来る。
「距離や速度が、計器を常に確かめる」
 十分引き付けたところで、
「3秒後にお前の動きは止まる」
 地球影から恒星光出るのを計算し、それを背後にして降下する。
「ガッハッハ! よし! 行くぞ!」
 孫六はキメラを一気に叩く為、大勝負に打って出る。スイングバイ的な機動をとる。
 地球へと高度を下げ、重力と大気摩擦を利用して急減速を掛ける。
「キメラが重力に逆らえず落ちてくれれば儲けものだが、例え慣性制御で堪えても、地球の重力に逆らうのならば、相応に動きは鈍る筈!」
 ただし、この機動は現実のスイングバイとはかけ離れている。スイングバイは惑星の重力圏を使うものであり、KV戦闘で扱うような数十、数百メートルでの機動には影響がほぼ無い。無理にスイングバイを移動に利用しようとするなら、擬似慣性制御を使わなくてもよくなる戦闘後になるだろうが‥‥実際問題としてカンパネラのある高度ではバグアの封鎖衛星が多数配置されている影響で、そのような「自機の擬似慣性制御をカットした」軌道を簡単に取る事は狙い撃ちされる大きな危険があるために推奨はされない。一応孫六の動きを補足するなら、大気圏上層の抵抗利用は、簡易ブーストの擬似慣性制御を使って機体の慣性を操作している場合のみ「意味があるかもしれないが無視できる」程度である。大気上層の薄い空気の抵抗で減速したり旋回したりするには膨大な距離の移動と時間が必要になるが、宇宙でのKV戦闘は擬似慣性制御を使っているのが前提であり、簡単に旋回も減速も出来るためだ。
 それはともかく、キメラもワームも、推測とは違って、重力の影響など全く受けずに攻撃して来る。
「ぬう! そう簡単にはいかないか!」
 孫六は簡易ブーストで旋回すると逃げた。
「ふむ‥‥」
 UNKNOWNは思案顔で煙草をふかしつつ、キメラとタロスを撃ち落としていく。
「すまない!」
「何」
 孫六はCRブースターを起動し一気に高度を上げて戦場に戻る。
「神棟さん――!」
「援護します」
 シャーリィはデブリでの方向転換を使ってワームに仕掛ける。
「スフィーダは他に比べて身が軽い。故に、こういう芸当も容易‥‥ということだ!」
 メテオブースト! デブリを蹴ってランスをティターンに突き刺す!
「な‥‥何!」
 受け止めたティターンをランスが貫通する。
「馬鹿な‥‥!」
 ティターンは閃光を放ってドゥ・ヴァルガもろとも爆散した。
「ほう‥‥やるものね」
 ミディスは本星型HWを前進させると、プロトン砲で反撃して来る。
 クローカはとっておきのスナイパーライフル叩き込む。
「こちらクローカ、敵機侵攻を確認。予測座標送信、各機配置願います」
「こちらもいくわよ――」
 三機のタロスが前進して来る。
 皐月は、重練機剣を構えてデブリから飛び出した。通常ブースト併用の全力攻撃。
「に――!」
 正面からクローカの銃撃を受けたところへ、皐月の練剣が切り裂く――。
「まさか‥‥私がこんなところで‥‥!」
 もがくミディスに、皐月はゼロ距離からG193レーザー砲を叩き込んだ。本星型HWはミディスもろとも閃光を放って爆発四散した。
「よし‥‥いけますね‥‥このまま‥‥バグアを倒してしまいましょう‥‥!」
 ハミルは、デブリを蹴って格闘戦を仕掛けると、タロスを破壊していく。
「みんないい感じね。今回は勝ちみたいね」
 ソーニャも、ハミルをバルカンとレーザーガンで援護しつつ、レーダーに目を落とした。
「これでおしまいです‥‥!」
 ハミルはタロスを真っ二つに切り裂いた。
 やがて僅かに残ったキメラの群れは逃走していく。
「ガッハッハ! UNKNOWN氏! どうも作戦はうまくいかなかったが、貴重なデータが得られたよ! どちらにしてもいっぱい奢るよ!」
 帰還後に確認したところ、UNKNOWNが得た計測結果は意味不明なものだった。バグアの封鎖衛星やカンパネラ自体の慣性制御フィールド的なものの影響が強いためだろう。いずれにしても、バグアが制圧する宇宙を解明するのは現状では至難であるようだ。