タイトル:オセアニアへ・2マスター:安原太一

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/03/20 08:38

●オープニング本文


 アジアの趨勢は全く変わった。UPC軍はデリー決戦において甚大な被害を出しつつも、ナラシンハ(gz0434)を撃破し、バグア軍の抵抗を粉砕した。アジアに残るバグア達は、この敗北受けて、続々とユーラシア大陸から離脱した。バグアが向かった先は南半球、今だ一大拠点を誇っているオセアニアである――。
 司令部が置かれた東南アジア近海洋上のユニヴァースナイト三番艦「轟竜號」に集結したUPC東アジア軍の指揮官たちは、会議を開いていた。UPC東アジア軍は、オセアニア揚陸作戦を発令したのだった。そこには、ULT情報部門から出向してきた分析官のフローラ・ワイズマン(gz0213)の姿もあった。
「バグアの拠点オセアニア。中でもオーストラリア大陸は、今だ大きな戦力が存在する奴らの一大拠点だ」
 司令官は言って、フローラに頷いた。フローラは手元の端末を叩いて、モニターの画像を切り替えた。
「我々はこれより東南アジアへ展開中の部隊を移動させ、オーストラリアへ上陸を行う。ダーウィン、サウスヘッドランド、パースから揚陸を決行。主力となる傭兵部隊によるKVで迎撃が予想されるワームを叩き、この三か所を制圧する。最終目的は、あのジャッキー・ウォン(gz0385)がいるという情報が入っている、アリススプリング――」

 アリススプリングは、オーストラリアの中心にある荒野に囲まれた広大な面積を持つバグア基地である。その総司令官であるジャッキー・ウォンは、眼鏡を拭きながら、目の前のバグア人を見やる。
「キングスレー、久しぶりですね。アジアの本部にいたころは楽しかったですねえ。私の試みはやはり失敗に終わったのでしょうかねえ」
 ウォンの問いに、アレン・キングスレー(gz0472)は肩をすくめた。
「時間は無くなりつつあります。あなたの実験が失敗したかどうかは、これから分かることでは」
 その言葉に、傍らにいたウォンの部下の女――村松咲は「可愛げのない」とキングスレーを睨みつける。
「仲間割れしている時ではないでしょう。我々はただでさえ穏健派や強硬派から監視されているのですからねえ。我々がここにいることも、宇宙には知れ渡っていますよ」
 ウォンはにこやかな笑みを浮かべつつ、三次元ディスプレイに映る轟竜號を見つめていた。
「ユニヴァースナイト三番艦を見るのも久しぶりですねえ」
 ウォンは穏やかに笑うと、キングスレーに言った。
「あなたには、オーストラリア北部全域で指揮を取ってもらい、ここへ後退する同胞たちを援護して頂きたい。強硬派に属するあなたを疎外しているわけではないのですが。優秀な人材を私も多く失いましたからねえ。副官には、こちらの咲をつけましょう」
「こんな形でここにいるとは、あなたにとっては意外な結末ですかな」
 キングスレーの言葉に、ウォンは寛大に笑うだけだった。
「あなたも人が悪いですねえ。ですが許しましょう。我々は確かに友人ではありませんが、敵ではない」
 ウォンはキングスレーの上官でありこのような物言いをする必要はなかったが。キングスレーもまた笑うだけだった。
「相変わらず人使いの荒い方だ」
 そう言うと、キングスレーは「それでは」と踵を返した。
「咲、あなたも行きなさい。彼を助けてやるんですよしっかりと。我々の命運が掛かっているんですからねえ」
 ウォンは咲を送りだすと、三次元ディスプレイに目を戻した。
「さて‥‥UPC軍、いよいよここまで来ましたか――」

●参加者一覧

セラ・インフィールド(ga1889
23歳・♂・AA
櫻小路・なでしこ(ga3607
18歳・♀・SN
堺・清四郎(gb3564
24歳・♂・AA
孫六 兼元(gb5331
38歳・♂・AA
ソーニャ(gb5824
13歳・♀・HD
夢守 ルキア(gb9436
15歳・♀・SF
神棟星嵐(gc1022
22歳・♂・HD
クラフト・J・アルビス(gc7360
19歳・♂・PN

●リプレイ本文

●ダーウィン
「オーストラリアの地を踏むことになりましたね。今まで以上に気を引き締めてこの地を奪還しましょうか」
 神棟星嵐(gc1022)は言って、目の前に広がる敵陣を見やる。
「指揮官が見当たりませんね。今のうちにダーウィンを奪還しましょう」
 突進して来るゴーレムを、破暁、シラヌイと共に近中距離で迎撃する。ツインブレイドで切り裂き前進する。
「その様に纏まっていては良い的です。打ち合わせ通りに纏めて撃破しましょう」
 集団にラバグルートを中央に撃ち込む。分散した所を破暁とシラヌイが両脇より挟撃、銃撃で足止めした所を雷電の砲撃で一網打尽。
「雷電各機、牽制願います――」
 回避に動くところをゴーレムの側面から背面に周り、ツインブレイドで袈裟切りに切り裂く。
 神棟は加速する。雷電の砲撃がゴーレムを撃ち抜き神棟はゴーレムを切り捨てる。
「お互い援護が出来る距離を保って下さい! 連携を組んで各個撃破します!」
 ――と、神棟の前にティターンが出現する。
「キングスレーとは違う‥‥自分は神棟星嵐。貴公の名は?」
「私は村松咲。人間、邪魔をするな」
「‥‥雷電隊、牽制願います。自分と破暁、シラヌイはブーストで囲むように移動願います! 超限界稼働+光刃「凰」、シラヌイは追撃を――自分も更に追い込みます! ティターンです、警戒して下さい! ここでの戦い、負けるわけには行きません!」
 神棟らは突進した。
 咲は銃撃を受け止めつつ、神棟らの攻撃を捌いて行く。
 が、咲はやがて連絡を受けて離脱する。
「クラフト殿、戦況はまだ混沌としていますが。そちらは――」
 クラフト・J・アルビス(gc7360)は、上空にいて、激戦の渦中にあった。
「あー、神棟、こっちも混沌としてるぜ! まだまだ分からないな!」
 言って、クラフトはレーダーに目を落とす。
「ようやく来た、オーストラリア‥‥」
 ここはクラフトの故郷である。オーストラリアに戻れると聞いてすっ飛んできたのだ。だからいつも以上に思い入れがあったし、全身全霊で奪還するつもりである。我が身に代えても――。
「自分のとこくらい自分で取り返す!」
 だが――。
「こうゆう時こそ落ち着くんだっけー?」
 大前提、無理はしない。
 確実に、射程内の敵機の撃破に努めていく。
「行くぜ! 冷ややかに、侵略するがごとし!」
 マイクロブーストで加速すると、向かいあうHWを撃ち落としていく。
 スナイパーライフルで近くにいる敵を徹底的に攻撃していく。適時、ロッテを組みつつ、HWを撃破していく。
「友軍各機! 連携よろしく!」
 操縦桿を傾け、マニューバでHWの背面に出る。
「どんなもんだいってね」
 場所取りはしない。どこからでも撃つ、動きながらプロトン砲の交錯する中を回避していく。
「帰れー。おれたちの居場所だー!」
 と、その時である。レーダーに見慣れぬ機体が出現する。
「ん? こいつは‥‥噂のアレン・キングスレー(gz0472)? やっべ!」
 クラフトは急速離脱、というより脱兎の如くマイクロブーストで逃走である。
「ちゃんと準備してから倒しに来てやんよー」
 それからまた補給を受けて戦線に復帰し、空戦を継続。
「まだまだ! 故郷のみんな待ってろよー!」

●サウスヘッドランド
 セラ・インフィールド(ga1889)は、万感の思いで故郷の地に降り立った。
「故郷を追われてはや数年。随分時間がかかりましたがようやくここまで来ることが出来ました。とは言え本番はこれからです。何としてでもオーストラリア奪還、成し遂げて見せますよ」
 セラは陸戦を担当。友軍のオウガ、シラヌイ各4機で部隊編成する。
「【ガーデン】所属のセラと申します。皆さんのご協力感謝します」
「バグアどもをいよいよ駆逐できるとなれば気合も入るってものよ!」
 軍傭兵たちは士気も高く笑った。
「みなさん、オーストラリアは敵の一大拠点です。当然ある程度迎撃準備は整えられている筈で、そこに真正面からぶつかれば消耗戦は避けられないでしょう。そこで機動力と打撃力重視の部隊で敵陣を強襲することで味方が攻め易い状況を作り出します。自分を先頭にシラヌイを前衛、オウガを後衛としてファランクスをバラ撒きながらチャリオッツで突撃。敵を潰しつつ進める所まで進んだらそのままUターン。オウガとシラヌイの前後衛を入れ替えて再度チャリオッツで味方方面に抜けます。適宜補給を受けつつこれを繰り返し敵を撹乱します」
「俺たちのチームで戦うなら、それに向いている戦だね」
「よろしくいお願いします」
 セラたちは隊形を組んで前進する。アッツェンプッツェルの必殺チャリオッツで駆け抜ける。
 敵陣を貫通――。
 吹き飛ぶゴーレム、タロス。そしてまたチャリオッツでUターン。
 淡白だが、この戦術は利いた。UPC軍の道を切り開く。
「これ以上の長居は無用です。一旦退いて再突撃を図ります!」
 そこへ姿を見せるキングスレー。
「あれは‥‥例のカスタムティターンですか。では――参ります!」
 セラはチャリオッツで突進した。が、キングスレーはやはり受け止めた。
「シラヌイ各機、周辺の敵を押さえて下さい!」
 言って、セラはプラズマライフルで中距離を保ちつつ攻撃する。
 が、カスタムティターンのプロトン砲も尋常ではない。ツヴェルフウァロイテン・改でどうにか受け止める。
 キングスレーが踏み込んで来る。セラはカウンターでスパークワイヤーを解き放った。キングスレーを拘束し、オウガと共に白雪で波状攻撃を仕掛ける。
「何――!」
 だが、セラのシンディはワイヤーで逆に引きずり込まれる。慌ててワイヤーを離した。
 キングスレーはそこで離脱した――。

●パース
「パースへの一番槍は俺がもらう!」
 仕掛けるのは堺・清四郎(gb3564)。
「ついにオーストラリアへの第一歩‥‥全力で行かせてもらおう! おそらく相手はキングスレー、相手にとって不足はない。今度こそ、この地でケリをつけてやる! ミカガミ部隊よろしく頼むぞ!」
 清四郎はミカガミ8機を僚機にしていた。
 編隊を組み、自機を先頭にして超低空の全速飛行で一直線にパースの海岸へ強行着陸を試みる。
「一気に行くぞ、空の支援を無駄にするな! 全機ミサイルをぶち込め!」
 着陸前に着陸地点付近の敵に対してにK−02を全弾叩き込む。
「邪魔だ、どけ!」
 そのまま強行着陸。展開すると、着陸した勢いに任せて自分から先頭に立って斬込みをかけて海岸一帯を確保する。凄絶な剣虎の破壊力でゴーレムの集団を薙ぎ払う。
「俺たちの任務は舗装工事だ、揚陸部隊の上陸地点を確保する!」
「了解!」
 清四郎達は、「舗装工事」を速やかに進めていく。無人のゴーレムを次々と銃器で破壊していく。
「おのれUPC!」
 突進して来るタロスも斬り伏せる。
「邪魔を‥‥するなあ!」
 友軍各部隊と連携しつつ、舗装工事を固めていく。
 やがて揚陸地点の敵の排除が完了すると、積極的に攻勢に出て敵を近づけさせない。
「踏ん張れ! ここが勝負どころだ! もう一度斬りこむぞ、俺に続け!」
 清四郎達は補給を受けると、今一度切り込む。あちこちでワームが破壊されて行く。清四郎達も友軍の奮戦に続いた。
 やがて、清四郎のもとにもキングスレーが出現する。
「また派手にやらかしているな堺清四郎」
「ちぃ、今はお前を相手にしている暇はない! ミカガミ二機! 援護を頼む!」
 清四郎はただ突撃はしない。ここはキングスレーとの駆け引き。押すと見せかけて引き、引くと見せかけて押し、とにかく時間を稼ぐ。友軍が一帯を確保し、揚陸部隊が来るのを待つ。
「ただの猪武者ではないな清四郎」
「黙って下がったらどうだ伊達男」
 やがてキングスレーは何を感じたか離脱する。
 空にはソーニャ(gb5824)がいた。
「北部方面はアリスに近いけどインド脱出組もいて守りは堅い。その点、パースは距離はあるけど裏をつける。つまり、作戦の成功はパース組の速進にかかっているの! さぁ、みんな! いくよ!」
 エルシアン+シュテルン8でケッテ×3。
 最初にソーニャの心理作戦が展開する。
「そのタロス、見覚えがあるよ。アレン隊だね。しかしそのティターン?」
「ソーニャ傭兵か。小賢しい小娘」
「あら、またアレンの新しい女?」
「奴一人に戦線は任せられんのでなあ」
「お目付け役? そぉ」
 それからソーニャは回線を開いた。
「ねぇ強化人間、相手にとって不足なし。未来はボクたちの血と意志で作られる。机の前でしたり顔で笑うやつの思惑で作られるものではない。さぁ、どちらの意志が未来を作るのか。行くよ!」
「ソーニャ傭兵か‥‥ならば、我々はあの方の未来を切り開くために貴様を倒す!」
「ひゅう! なんて嬢ちゃんだ。味方だけじゃなく、敵の士気まで上げちまうなんてな。しかし、面白い。野郎ども遅れるんじゃねぇぞ!」
 敵も味方も燃え燃えである。
 激戦のステージが開く。
「来たよ! 5番機、後ろに付かれている! 上ループ! 6番7番、後ろのタロスに食らい付いてワゴンホイールに!」
 ソーニャは超高速で加速する。
「傷ついた機は内側に回して、勝手に落てはだめよ! 右! エルシアン吶喊する! 続いて!」
 銃火器の咆哮がワームの戦列を突き破る。
(アレン隊は強い。しかし、今日に限り、1点だけ弱点がある。そうだ。もうすこし、離れろ)
 弾幕を張り分断する。
「今よ! 目標ティターン! 全機攻撃!」
「全機、I−01一斉発射!」
 エルシアンはアリス、Mブースター、通常ブースト起動。スクリュー軌道で突っ込み、ミサイル群にまぎれGP−2を撃ち込み高分子レーザーを叩き込み離脱する。更にシュテルンは側面からコンボオフェンス使用で追撃する。
 エルシアンはMブースター、通常ブースト再起動で方向転換し再突入攻撃する。
 だが、ティターンは受け止めつつ、離脱した。
「例えオーストラリアが落ちても、もはや‥‥」

●オーストラリア北部
「キングスレーを追っての、オーストラリア上陸作戦に参加。戦域はオーストラリア北部を転々とすることになるわよ。主にダーウィン〜サウスヘッドランド間を転戦。戦域の制空権拡大と維持に尽力ね」
 櫻小路・なでしこ(ga3607)はチームのメンバーに言った。
「了解なでしこ」
「慌ただしく厳しい事になるかと思うけど、よろしくお願いするわね。補給は、練力、生命が残20%をボーダーラインとして、後退し受けること」
「敵集団、来ます」
「早速来たわね。それじゃあ、打ち合わせ通り行くわよ!」
「後衛シュテルン各機、マルチロックでFOX2ミサイル発射!」
 なでしこらは、マルチロックでミサイルを叩き込む。
「ファルコンスナイプ! ――ってえ!」
 直撃がタロスの集団を捉え、爆炎が炸裂する。
 続いて、前衛のオウガとフェニックスが各個撃破に出る。
 なでしこらは支援射撃を行いつつ、タロスを追い詰めていく。
 強化人間たちは罵り声を上げて反撃するが、オウガとフェニックスが止めを刺す。
 夢守 ルキア(gb9436)は管制に回り、全戦域の状況把握に努めていた。チームはシュテルン×5、フェニックス×1、雷電×2。
「シュテルン、垂直離着陸は陸の味方が危機の際に使って。まずは制空権の奪取、攻撃は最大の防御、忘れないで。私は、管制と補助に回る。煙幕は、撤退時に。練力は温存気味に、お願いね」
 アルゴシステムを起動してデータリンクを行っている。
「兼元君、ルキアだよ。補給に行く時は、連絡をお願い。空から支援する」
「了解‥‥し‥‥た!」
 雑音の中から、孫六 兼元(gb5331)の声が返ってくる。
 言いつつ、ルキアは接近して来る敵機を確認する。チームの傭兵たちは操縦桿を傾けると迎撃に向かう。
「ルキア、支援をよろしく」
「了解」
 敵機の回避型を長距離で威嚇する。避け方が鋭角なら無人機、滑らかなら有人機と想定する。
「敵は有人機。注意してね」
 それから、ルキアらはスキルフルでワームを撃破していく。
「なでしこ、いったん離脱する。援護頼む」
「了解、それじゃあシュテルンで煙幕をお願いネ。他のみんなは大丈夫カナ。無理な子は言ってね。互いに間に入って2機ずつ補給へ」
 そうこうするうちに、ルキアはなでしこらと合流して、戦況を確認していた。
「まあ、いい感じだけど。わたくしはサウスヘッドランドへ向かうわ」
「了解したよ。そっちは任せるね」
 それから、村松咲と遭遇する。
「ヨリシロ? みんな、注意して」
「こんなところにも出張っているとはご苦労だな」
「で、きみ達はこの戦いに命を賭けて、何を求めてるのさ。代償と対価、釣り合わないと、じゃない? 私は戦士の誇りを、ずっと前の戦いで知った。他の彼等は、どうなんだろうってね。命を粗末にしないって、習わなかったー?」
「ふふ‥‥求めるものなどない。いずれ分かるだろうが、な」
 咲ははそれだけ言って離脱する。
 孫六は地上にいて、激戦の渦中にあった。二刀でゴーレム、タロスを粉砕していく。
「ワイズマン氏から事前に聞いた、オセアニアの人々の現状‥‥。人類同士が奪い合い憎しみ合う状況を作り出しとる、ウォンの存在! 考えれば考えるだけ、怒りが込み上げる! 断じて許すわけにはイカン!」
 オウガ5機と雷電3機でチームを組み、片っぱしからワームを片づけて行く。
「みな、今回は、徹底的に敵を『叩きツブす』為、最も敵が多い所へ突っ込む心算だ! 必然に過酷な戦いになろうから、無理にとは言わん! 付き合ってくれる者だけ、来てくれ!」
「あんた一人を行かせるわけにはいかんだろう」
「雷電は火器で牽制射、敵の足を止めてくれ! オウガはワシと共に足が止まった敵を包囲、集中攻撃を行い短時間で敵を屠る様に心掛けてくれ! 倒れた敵へも、剣を衝き立て脚甲で踏付け、跡形も残す気は無い! その身に恐怖を刻め! 蹂躙された人々の苦しみは、こんな物では無いぞ!」
 荒れ狂う孫六は突出してダメージも受けたが、やがて狙い通りキングスレーが姿を見せる。
「来たかキングスレー! オセアニアの人々は如何なっている?! 人としての尊厳も無く、獣の様な生き方を強いているのは本当か?!」
「熱くなっているな孫六。ウォンの実験は北京でもあったし、今に始まったことでもないが、確かにこの地の人類は家畜のように扱われている。だが、多かれ少なかれ占領地域では優秀な人間はヨリシロ候補だがな。そのやり方としての、ウォンの考えは俺にも理解できんがね」
「そんなことを聞いているのではない! ならばキングスレー、お前を倒し外道なるウォンの下への道を開く!」
「おっと‥‥時間が迫りつつあるようだ。孫六、お前の相手をしている時間は無い」
 キングスレーは離脱する。
 やがてバグアの戦線は撃破される。
 UPC軍はオーストラリアへの揚陸を開始する。
 だが何が始まろうとしているのか、この時まだ誰も知る由は無かった。