タイトル:【OMG】月へマスター:安原太一

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/03/27 07:44

●オープニング本文


「こちら地球、UPC司令部ワイズマンです。カンパネラどうぞ――」
 ULT情報分析官のフローラ・ワイズマン(gz0213)は、地上の基地からカンパネラとの回線を開いた。
 モニターに映ったのは、カンパネラ宇宙軍担当のULTオペレーター綾河美里(gz0458)であった。
「こちらカンパネラ、綾河です。ワイズマンさん、通信状態は良好です」
「綾河さん、マスドライバーからの物資は無事に届きましたでしょうか?」
「はい! 先日第一便が到着後も、続々と物資は届いています! こちらでは輸送船団を組んで、早速月面への輸送を行う準備に入っています」
「そうですか‥‥それを聞いて安心しました。物資が月へ到達すれば、地上での苦労も報われるというものですね」
「後はこちらに任せて下さい! ワイズマンさん安心して下さいね!」
「ありがとう。それでは、後をお願いします」
 そう言って、フローラは通信を切った――。

 ――カンパネラの美里は、それから月面基地建設の物資を輸送するリギルケンタウルス級宇宙大型輸送艦の船団に関わる依頼を担当することになり、慌ただしい日々を送った。
 そうして、その日がやって来た。輸送船団がカンパネラを出発する日が。輸送船団は8隻のリゲルケンタウルス級で構成され、8機のKV隊を搭載した高速艦が4隻護衛に付く。有事の際には、これらのKV隊が迎撃の任を帯びることになる。
「みなさんの任務は、物資が無事に届くまで、月面までの道のりをバグアの攻撃から守ることです! 重大ですね!」
 美里は言って、モニター越しに、出発に備える傭兵たちに言葉を投げた。
「月に行けるなんて羨ましいですね! でも遊びじゃないんですから、はしゃいだりせずに頑張って下さいね!」
 はしゃいでいるのはお前だろうと、傭兵たちは突っ込みたくなったが、言葉を押さえて「行ってくる」と敬礼する。
 いよいよ、月面基地建設へ向けて、計画は宇宙を舞台に動きだした。

●参加者一覧

須佐 武流(ga1461
20歳・♂・PN
櫻小路・なでしこ(ga3607
18歳・♀・SN
堺・清四郎(gb3564
24歳・♂・AA
アーク・ウイング(gb4432
10歳・♀・ER
孫六 兼元(gb5331
38歳・♂・AA
ソーニャ(gb5824
13歳・♀・HD
美空・桃2(gb9509
11歳・♀・ER
神棟星嵐(gc1022
22歳・♂・HD

●リプレイ本文

 出発前、カンパネラ――。
「相変わらずパープリ‥‥んじゃなくて美里はお気楽だな‥‥ある意味で根性座ってるかもな‥‥そうだ‥‥こういうときは、全員に行ってらっしゃいよりもお帰りなさいと言ってもらうほうが嬉しいもんだぜ」
 言ったのは須佐 武流(ga1461)。
「あー! ひどい! 武流さんそんなこと言うなんて‥‥美里ショックで寝込んじゃいそうです‥‥彼女さんに言いつけて叱ってもらいますらね!」
 綾河美里(gz0458)は言って、しゅんと泣きそうな顔を浮かべる。
「まあ、俺の彼女にそんなこと言ったって無駄だと思うけどねえ」
「ふふ‥‥武流さん、女子の団結力の怖さを知らないんですねー?」
 美里の瞳がきらーんと妖しく光る。
「お前意外と怖い奴だな」
 武流は言って、その場を後にする――。

「‥‥てなことがあったんだけど。どうかね神棟」
 武流は、神棟星嵐(gc1022)に言った。神棟は肩をすくめる。
「綾河殿、随分とはしゃいでいらっしゃいましたが、宇宙には慣れたようですね」
「いや、そんな感心してないでさあ」
「須佐殿、口は災いの元とはよく言ったものですが。些細なことから女子を怒らせない方が無難でしょうね」
「あー、お前良い子ぶってやんの!」
 武流は、神棟の首を掴んでヘッドロックする。
 堺・清四郎(gb3564)はそんなやり取りを見やりつつ、吐息する。
「宇宙での初陣か‥‥」
 あの、ミカガミを手放した今、心情には深い思いがあった。はぁ‥‥さらば剣虎‥‥宇宙対応しておらず、フレームなどにも限界がきていたのならばもう手放さざる得ないな‥‥。狐ヶ崎よ‥‥剣虎より引き継ぎしその魂、お前の力を見せてくれ!
 狐ヶ崎とは、新たに購入したナイトフォーゲルGSS−04タマモである。
 地球を見下ろして一言。
「美しいな‥‥ここから見れば国境も何もない‥‥青い宝石のようだ」
「月面基地建設計画も、いよいよ本格化してきたね。同じ様にバグアの妨害もおきているから、しっかりと護衛をしないとね」
 と気合を入れているのはアーク・ウイング(gb4432)。通称アーちゃん、いつもの傭兵たちの妹だ。
「ガッハッハ!」
 と笑うのは豪放快活、孫六 兼元(gb5331)である。
「いよいよ堺氏も宇宙機を購入したかね!」
「まあ、なあ‥‥。時代の流れには逆らえないってところかね」
「ガッハッハ! それだけ地上のバグアを掃滅して来たことの証でもあるがな! さて、地上では随分と荒れた戦いをしてしまったが、気持ちを入れ替えて落ち着かねばな!」
 孫六は今日は平静だった。
「いよいよ月面も目前か! アームストロングやオルドリンの付けた足跡は、まだ残っておるのかな? ガッハッハ!! 一度は月に行ってみたいと思っとたが、戦いの為に赴くと言うのも皮肉な物だ! まぁバグアには、感傷も趣きも無かろうがな! 邪魔をするなら、全力で排除するのみだ! ワシは迎撃班として、前衛に就くぞ! 第一次防衛線として、向かい来る敵を片っ端から叩いてゆくぞ!」
 ソーニャ(gb5824)は窓から月を見つめていた。
「月がだんだん大きくなるね」
 そう言って、歌を口ずさむ。それは1983年の曲だった。
「どこかで聞いたことがあるが‥‥」
「殺された恋人と遠い空の下で会えることを祈るって歌。みんなも月の光にさらわれて、恋人を泣かさないでよね。ああ、ボクも恋人ほしいなぁ。まぁ再会の約束はあるけど。話すこといっぱい仕入れなきゃね。簡単には死ねないよ」
 言って、ソーニャはオペレーターの彼に微笑んだ。
「綺麗な月。こんなとこまできたよ。ボクはここにいるよ」
「今日はクルーエルの初陣であります。バグア共はさくっとゃっつけるのであります」
 美空・桃2(gb9509)は言って、ちゃきっと敬礼した。
 美空にとっては優秀な知覚機であるクルーエルは趣味的にも機能的にも大好物。先に発売となったコロナには堅実性しか感じられず物足りなく思っていたところへの1カ月遅れのロールアウトにハヤテを売り払ってまでも購入したいと思わせる何かをこいつは持っていた物である。ただし、回避も防御も脆弱なこいつはこのままでは役立たずなのは自明の理。そこでもともとハヤテ用に調達していたブースター類を鬼積みしてやっとこさ回避機として完成を見ているのである。
「美空は迎撃でありますね。クルーエルの初陣をばっちり飾ってやるのでありますよ」
「いよいよここまで来ましたね。この任務を成功させ、月面基地建設を成功させたいものですわね」
 言ったのは櫻小路・なでしこ(ga3607)。ふわりと空気が和んだ。良くも悪くも場の雰囲気を和ませてしまうお嬢様騎士である。
 なでしこは、モニターに映る他の艦の傭兵たちと連絡を取りつつ、仲間たちにも言った。
「まずは編成ですが、迎撃・前衛に神棟様、美空様、ソーニャ様、孫六様、リヴァティー×8にハヤテ×8。護衛・後衛にわたくしと、堺様、アーちゃん様、須佐様、ラスヴィエート×8となりますわね」
「了解した。まあ、敵さんが来なければそれに越した事は無いんだがね」
「それはそうですが、わたくしたちは、最悪の状況も想定して動きませんと‥‥。全体の方針としてですが、敵と輸送船団の位置関係から以下で構成します。迎撃・前衛が敵に対する最前の防衛ライン。護衛・後衛が2つ目の防衛ラインとして機能します。敵の戦力は不明ですが、ヨリシロなどが出現した場合、まずは他の想定されるキメラや無人ワームを確実に仕留めます。その間は上位機は足止め、退く場合はそのまま、戦闘継続なら全力で撃破としましょう。全体の管制制御はアーちゃん様のピュアホワイトにお任せを。敵発見時、最大射程内で全機のミサイル等による先制攻撃を行います」
「ふむ‥‥迎撃を最前の防衛ラインとして、護衛は討ち漏れた敵を叩く布陣、と言うわけか」
「そんなところですわね。神棟様、大丈夫ですか?」
「ええ?」
 神棟は、逆に須佐をヘッドロックで押さえつけていた。
「ギブギブ! 神棟そこまでだ!」
 武流は、神棟の腕を叩いて降参していた。
「月に拠点を造るのがこんなに早く訪れるとは思いもしませんでしたね」
 神棟は言って、武流を離して軽く埃を払った。
「自分は前衛として貴公らと協力し、船団より距離を置いた所で防衛ラインを築く役割ですね。了解しました。お任せ下さい」
「俺は後衛か、ま、任せてくれや。任務はばっちり決めてやるぜ」
 武流は言って、拳を上げた。
「俺も後衛での迎撃だな。狐ヶ崎の初陣、派手に飾ってやろうか‥‥と言って、まずは俺が宇宙に慣れないとな」
 堺は言って、モニターに目を移す。
「管制は任せくれていいよっ。アーちゃんがしっかりサポートするからねっ」
 アーちゃんはぐぐっと拳を握りしめる。
「ガッハッハ! アーちゃん氏、よろしく頼むぞ! ウム! 都牟刈大刀の本領を発揮する機会は、本当は無い方が良いのだがな!」
 孫六が言うと、ソーニャもモニターの編成情報を見やる。
「ボクは迎撃で前衛だね。今日は歌うよ」
「美空は了解であります。あいつでバグアをぶちのめしてやるのでありますよ」
「それでは皆様、後は敵の襲来に備えて、わたくし達は待機いたしましょうか。孫六様がおっしゃるように何事も無ければそれでいいのですが。地球でもキングスレーが妨害して来たくらいですから。バグアが見逃してくれるとも思えませんね」
 なでしこが言うと、一同頷く。
「では自分達はKVで待機ですね。後は、祈るだけですね」
 神棟が言った時、艦内にサイレンが響き渡る。
「何か――」
「未確認飛行物体が感知されました。こちらへ接近してきます」
「早速来ましたかね」
「よし、行くぞ――!」
 傭兵たちは駆けだした。

「敵機はタロス25機にティターン、本星型HWですね。タロス25機は‥‥厄介なことになりそうですっ。キメラとは桁違いの機動力を持っているワームです。対艦ミサイルなども想定されます。みなさん、敵機を射程内に近づけないように行きましょう」
 アーちゃんが言うと、全機「了解」と展開する。
「ここまでの装備を用意して船団を襲って来るとは、バグア陣営も割りと必死なのですね」
 神棟は言うと、加速してGP9ミサイルを叩き込んだ。回避行動を取るが、逃げ切れないタロスは直撃を受けて爆発の閃光に包まれる。
「頭を潰せば敵は怯むであります。‥‥なんとこいつは双頭でありましたか‥‥」
 美空は言いつつ、前進するとナックルでタロスと激突すると、レーザーシールドで押し返し、練鎌リビティナで切り捨てた。クルーエル――ペイルライダーの知覚の一撃がタロスを切り裂く。
「一撃必殺、練力が厳しいところでありますが‥‥いけるでありますね」
「さぁエルシアン! いくよ!」
 ソーニャは囁く様に歌い出した。1983年の歌‥‥が、突如大音量でバグアの怪音波が発せられ、ソーニャの歌の邪魔をする。
「グギギ‥‥これが古のバグア行進曲でござる!」
「えー、な、何なの?」
 閑話休題――。
「どちらが月の女神に見初められて消えてゆくのかな。出会い、人もバグアも変ってゆく。再会した時にはそんな話をしようか。月面基地がきになる? そんなのよりボクたちの方がずっと面白いよ」
「人間‥‥ここから先へは行かせないわよ。月面基地は面白そうだけどね」
「君達も、ボクの中に刻まれて行くんだ――」
 ソーニャはエルシアンを駆り、タロスを次々と撃破していく。ソーニャは気を取り直し、エルシアンでタロスを圧倒する。時間制限付きならメンバーの最強機体だ。高機動力を展開してタロスを追尾、レーザーで撃ち落としていく。
「ガッハッハ! そうはいかんぞ! お互いにここは譲れん! むう!」
 孫六は味方のミサイル一斉射に合わせ、K−02を2連射する。なるべく多くの敵機にダメージが入るように、一射目と二射目は別目標を狙う。爆発するタロス。
「みなの衆! こうなると、先ずはタロスが厄介だ! 艦に向われる前に、早々に始末する必要が有るな! D.Re.Ss A発動――!」
 WR02Cや09式を連射しタロスを足止め、ウィングエッジの斬撃でタロスを切り裂く。
「アーちゃん氏! 防衛線を抜けそうなタロスを指示してくれ! 最優先で落とす!」
「はい。データを送ります」
 アーちゃんはコンソールを叩いて、孫六機に指示を送る。
 コンソールの表示を見て、孫六は操縦桿を傾ける。
「ウム! 了解した!」
 神棟は引き続きタロスにアルコバレーノを撃ち込み、流れるように姿勢制御で態勢を整えつつ人型へ変形、マシンガンで牽制し接近してライチャスを叩き込む。
「宇宙に来てから様々なヨリシロが出て来ましたが、やはり今回も指揮を執っている者がいるようですね」
 だが、後続へ抜けていくタロスを全て止めることはできない。タロスは遠距離から対艦ミサイルの発射態勢に入ったが、そこへ武流らがインターセプトする。加速してアサルトライフルを叩き込む。タロスは爆散した。
「よーしラスヴィエート! まずはこっちで正面から行く! 側面から援護してくれ!」
「了解した!」
 武流は友軍に指示を出すと、加速する。
「輸送艦! 急げよ! 近づかれたらここまでの努力が無駄になる!」
「よろしくお願いします」
「バグア人ども! お前達が黙って見ているとは思わないし、お前達の遊びでもない。たとえ遊びでもお前達は招待していない。招待状のない人間は早々に帰っていただこう!」
 武流はタロスとドッグファイトに移行し、シルバーブレットをブースター代わりにアサルトライフルとレーザー砲「凍風」で迎撃する。
 堺ははず、K02を叩き込んだ。
「宇宙では地球以上に全てを見なくてはな‥‥」
 直撃を受け、爆散するタロスの集団。
「あくまで輸送船護衛だ、深追いはするなよ! 守り抜ければそれでいい!」
 清四郎は的確に艦との距離を保ち、アサルトライフルでドッグファイトでタロスを撃ち落としていく。狐ヶ崎のスペックは高仕様。宇宙初陣の堺を十二分に支える。
 星々の流れる宇宙空間を見やりつつ、堺は初めての浮遊感覚に捕らわれた。重力から解放されたこの世界は、地上での空中戦とは何とも言葉にできない感触があった。疑似慣性飛行の簡易ブーストがあるとは言え。
「宇宙か‥‥ここが狐ヶ崎の新たな戦場か」
 言いつつ、堺はタロスを撃ち落としていく。
「ま、わたくしはすっかり慣れちゃったけど、気を抜かないで!」
 なでしこは言って、タマモ――葛葉姫を駆る。まずはGP7を全弾叩き込む。更にタロスを破壊する。
「行くわよみんな!」
 ミサイルを次々と撃ち込み、なでしこは加速する。姿勢制御で態勢を整え、スキル全開でタロスに突撃する。反撃のプロトン砲を回避して上昇した移動力で回り込み、槍と刀で立て続けに粉砕した。
 アーちゃんはロータス・クイーンで戦況を確認し、バグアの動きに目を光らせていた。アーちゃんも初撃のミサイルに参加後、逐次敵の動きを仲間達に伝える。ロータス・クイーンで味方を支援すると同時に、敵全体の動きを把握して、輸送艦に接近しようとする敵の情報を味方に伝える。
「うん、そろそろ拙いかな。みんな、アーちゃんが誘導するから、適時補給を受けて」
「了解したアーちゃん、指示を頼む」
 アーちゃんは味方の消耗具合を把握しており、戦況と照らし合わせて効率的かつ敵に突破を許さないタイミングで各機に補給の合図を出していく。
 補給完了。
「機動はまだ慣れんが近接ならば!」
 清四郎は加速すると、姿勢制御で位置取りを変えつつマニューバA使用のベズワルを叩き込む。本星型HWは爆発した。
 武流も突進する。FETマニューバAを起動、ソードウィングとエナジーウィングを力の限り叩きつける。
「止めはさせるときに刺す。それが俺のやり方だ」
 本星型HWは「ぐああ‥‥!」と爆散した。
 神棟もティターンに激突する。
 ミサイル2種を全弾発射して弾幕を張り、視界を塞いだ所を敵下方に回り込みブーストで接近。人型へ変形しスキルA・ファングとB・ノウを起動、ライチャスで一気に貫く。
「新たなヨリシロと見ました。船団には近付けません!」
「にい――!」
 孫六はD.Re.Ss Bを発動、運動性も確保しウィングエッジでの近接戦を仕掛ける。
「抜刀! さぁ、抜き身の刃は血を吸うまで納まらんぞ!」
 ブーストを掛けレミエルを撃ち込みつつ、錐揉みしながらサブアームのウィングエッジを、ティターンに捻じ込む。
 続いて美空が孫六と連携、蹴りで関節部や、足首を踏みぬき姿勢を崩したうえで、リビティナの頭部分に蹴りを入れて加速度を変える等、虚を突いて攻撃。
「好奇心はバグアをも殺すであります」
「お、おのれええ‥‥!」
 ティターンも爆散する。
 それから、タロスを殲滅した傭兵たちは、無事に船団とともに月面に着陸。ナイトフォーゲルで初めて月面の地を踏んだのであった。