●リプレイ本文
傭兵たちはジョワユーズ艦内にあった。
「ヘパイストス戦もお馴染となってきましたが、今回はカンパネラ方面へ進出して来る敵戦闘艦とその部隊の迎撃ですね」
櫻小路・なでしこ(
ga3607)は和やかな口調で言った。
「まず割り振りですが――小型BF対応に、孫六様、ヤフーリヴァ様、夢守様。中型HW対応にわたくしとハヤテ×6。有人機対応にソーニャ(
gb5824)様にハヤテ×6、そして小型BF班が合流します。ジョワユーズ護衛にはアーちゃん様、全体管制も兼ねて。ルイシコフ様は護衛に付き、ラスヴィエート×12を展開します。無人タロスと宇宙キメラにはリヴァティー×20、こちらは護衛支援も兼ねて指揮はアキラ様に一任したいと思います。堺様も基本はこちらの支援部隊に組み込みでよろしいでしょうか?」
「ああ、大丈夫だ」
「それから、先制に前面展開の宇宙キメラ排除の一斉射撃。一斉射撃後、割り振りに応じて展開、交戦開始ですね。ヘパイストス・ツー撃沈はジョワユーズのG兵器にお任せします。トリガータイミングも艦長にお任せいたします」
「それにしても騎士道精神か‥‥キングスレーの配下も中々言うな」
堺・清四郎(
gb3564)は言った。
「いよいよ宇宙での決戦に入ってきたか‥‥。だが俺のやることは変わらん、どこであれ一本の刀であり、そして俺の武士道を貫くだけだ。――アキラ、こっちにはリヴァティー4機を借りたい。よろしく頼む」
「ああ。清四郎、そっちは任せるぜ」
「さーて、今度の標的はヘパイストスの二番艦か。一つずつ潰していくしかないから、がんばるしかないね」
と呟いているのはアーク・ウイング(
gb4432)。
「バグアが騎士道とは滑稽な話だ!」
孫六 兼元(
gb5331)はうなるように言った。
「敵が騎士道なら、ワシは武士道に則って戦うまでだ! 最も、元来の武士道や騎士道に、正々堂々なんぞ無いがな! アレは戦の時代が終わる頃、民衆に無法を働く輩を諫める為に、後付けした規範でしかない! そう言う意味では、ワシの武士道も古い意味合いの方では有る! 即ち、どんな手を使っても必ず勝利し、生きて帰り次の戦いに備える、だな! バグアの騎士道が、如何なる物か見せて貰おう!」
「こういうタイプは小細工は通用せん、ですか」
ソーニャはにやにやしながら言った。
「そうだね。策略、奇略、小細工を含んでの正々堂々だからね。向こうも織り込み済みってわけね。それに、形だけでも対等の相手として表現してきたという事は、驕りや侮りはないって事だね。これは喜ぶべきか、嘆くべきか。顔がにやけてくるよ。少なくとも彼女の前にいるのは石ころや家畜じゃなくてボクたちってことなんだから。さぁ、気を引き締めていこう。そうでしょ、アキラさん」
「お前冷静だなあ‥‥俺にはとても感情的に我慢できねえわあ」
アキラは、頭を押さえてうなるように言った。
「ま、ケルヒナ君にはそんなに興味ないケド。一応見せてもらおうかな、彼女のセカイを」
夢守 ルキア(
gb9436)は言った。
「私は指揮官機の邪魔を見越して無人機の破壊だね。迎撃態勢を取り、周囲を警戒していくよ」
「さて? 隊長達には暇を貰うけど、僕に似てる誰かさんの鉄面皮でも拝みに行くかな」
ドゥ・ヤフーリヴァ(
gc4751)は言って、モニターを見つめた。
「まずは小型BFですね。それから有人機、キングスレーの順に掃討を想定ですね。可能なら時折戦闘区域全体を見回せる位置で戦況を見つつ、気付いた事を管制や皆に伝えますね」
「小細工なんて無くても済む方がいい。それが騎士道、かどうかは知らないけどね。こういう場で出せる力が実力じゃない?」
クローカ・ルイシコフ(
gc7747)は言った。
「本気には本気で返そう。見せてよ、きみ達の戦い方を。全部受け止める、見届けてみせるから」
フローラの落ち着いた声が回線に流れる。
「みなさん、間もなく敵と接触します。KV隊、全機発進して下さい」
傭兵たちは駆け出した。
アーちゃんの管制の声が響き渡る。
「全機敵との距離400で攻撃開始お願いします。キメラ、ワーム、ジョワユーズの前面に展開。距離5000にキメラの集団展開中。敵艦との距離10000に到達します。全機、戦闘速度を維持、ブーストでデブリとの相対速度を合わせて下さい」
傭兵たちは宇宙空間を前進していく。
アーちゃんは、接近して来る敵艦をロータスクイーンで捕え、コンソールを操作する。
「敵艦との距離6000。すぐにキメラ群に突入します。――距離800‥‥400‥‥全機ミサイル発射」
「撃て!」
圧倒的なミサイルがキメラを薙ぎ払うが、それでも数で勝るキメラたちはばらばらとやってくる。
キメラ群を貫通する傭兵たち。
「バグア戦闘艦、加速します。中型HW、タロス、ティターン、来ます。全機格闘戦用意して下さい」
アーちゃんは言いつつ、複合ESMロータスクイーンで各機とデータリンクを図る。
「KV隊、バグア戦闘艦のミサイル攻撃、艦砲に警戒して下さい。ワームとキメラの抵抗を排除しつつジョワユーズの攻撃を誘導して下さい」
「G光線ブラスター砲発射!」
ジョワユーズから主砲が撃ち込まれる。
「行くぞ夢守氏、ヤフーリヴァ氏!」
孫六はルキアとヤフーリヴァと加速する。
「先ずは奴等の生命線を絶つ! 小型BFを沈めに掛かるぞ! 夢守氏! 管制を頼む! 周辺を確認しBFまでの最適進路を選択してくれ!」
「了解したよ兼元君、ドゥ君も行こう――(私だったら、BFが狙われるコトを見越す。攻勢に移る瞬間、防御が甘くなる)」
そこで、ヘパイストス2の長距離攻撃や、HWに注意する。デブリに身を隠し、蓮華の結界輪とアルゴシステムで警戒する。
「ジョワユーズ、G5弾頭でカスタム中型HWを狙える? 当たらなくていい。言わば、囮で、なでしこ君達の攻撃を当てさせるのが目的さ。エサは上等な方がいいでしょ。どっちに転んでもいーんだし」
「了解した夢守――」
ルキアは、蓮華の結界輪を使いつつ、ヤフーリヴァと孫六にデータを送る。アルゴシステムで統合された情報に、最適の進入路を手動入力する。
「さすが夢守さん」
ヤフーリヴァは人型に変形しキメラをレーザーで破壊していく。
突進して、ビッグフィッシュに取りつくと、09式を叩き込んだ。
「これ以上キメラを吐き出されては困るんでね、早々に潰させてもらうよ」
流れるように移動し、銃撃を叩き込んでいく。09式の銃弾がBFの装甲を貫通し、やがて大爆発を引き起こす。
孫六は、ルキアが割り出した進路から進入し、飛行形態で一気に接近、ソードウィングとウィングエッジの二刀ですれ違い様に斬り付けていく。
ターンし、刀傷の甲板に人型で取り付き、レミエルを撃ち込んでから09式を更に撃ち込む。激しい銃撃が叩き込まれると、BFは大爆発、轟沈した。
「これで奴らの生命線は絶った!」
なでしこは、友軍ハヤテとともに中型HWに加速する。
「行くわよみんな! 艦長、援護射撃に感謝します」
「礼ならルキアに言ってやれ」
なでしこは、ハヤテ三機と共に一方の中型HWと交戦、もう一方の中型HWは残るハヤテ三機が足止めする。
デブリの間を飛び交いつつ、G放電を叩き込む。直撃がHWを傾かせれば、ピンポイントでレーザーガンを撃ち込む。
ハヤテと連携し、人型へ変形しSESエンハンサーを起動してレミエルを叩き込む。そして急速離脱。
HWのハサミが宙を切る。後退しつつ、なでしこはレーザーガンを叩き込む。
「しぶとい!」
直後、中型HWから強化型プロトン砲が来る。なでしこは紙一重で避けると、残りのG放電を撃ち込んだ。ハヤテの攻撃も受け、爆発消失するHW。
「櫻小路氏! 待たせたな!」
「なでしこ君、お待たせ」
「こっちは片付いたんでね」
孫六、ヤフーリヴァ、ルキアがやって来る。
「ありがとう、良いタイミングね」
なでしこらは加速すると、もう一方の中型HWを包囲し、集中砲火を浴びせて撃破した。
ソーニャは、ハヤテとともに有人機の対応に回りながら、チャンネルを開いた。
「ねぇケルヒナ、先ほどの演説は本気なのかしら? ボクたちを対等の敵として見てくれてるの? ボクたちのことを見てくれてるバグアってどのくらいいるのかしら。貴方にボクはどう映っているのかな。ボクたちのありようが君たちに影響を与えてるのなら、それは素敵なことだと思うよ。機会があったら一緒にお茶を飲みながら話をしたいね。もっとも、今ここで君を殺す事に一瞬たりとも躊躇はないけどね。お互い様ね」
ケルヒナの声が返ってくる。
「半分は本気よ傭兵。言葉にすることによって私の本気も伝わったのではないかしら。あなたたちは対等の敵。そして、あなたが思っている以上に地球を見ているバグアは多い、と言っておきましょうか。私に抵抗するあなたは、愛らしくもあり、憎くもありますね」
「‥‥ところでアレン、ボクたちのそんな関係。素敵だと思わないかい。理想ではなくても、不幸ではあっても、救いはある。君たちが否定しても、ボクは求めるのをとめられない」
アレン・キングスレーは、「それは――」と言った。
「実に救い難い性だな。敵と長い時を相手にしていると、お互いの考えも少しは理解できるようになって来る。一部ではあっても。異星人であっても」
ルイシコフは、ジョワユーズの防備に位置し、ラスヴィエートと連携して迎撃に当たる。
「行くぞ。敵に僕達の戦いを見せてやろう。本気をね。機動防御を展開するぞ。時には動く盾として体を張り死守だ。被弾を恐れるなよ、何の為の重装甲だ!」
「ルイシコフさん、キメラ群、接近してきます」
「了解アーちゃん君」
ルイシコフはアーちゃんの管制を受けつつ展開する。データリンク、敵の位置を把握しつつ、接近するキメラ、無人タロスに対応する。母艦から離れすぎない程度の距離で迎撃。ミサイル、ガトリングで対空弾幕を形成。
「続いて接近タロス」
「近づかせるなよ!」
ルイシコフは盾を構えつつガトリングで弾幕を張る。
無人タロスは機械的な回避行動を取りつつ、プロトン砲で反撃して来る。
「有人機は止めているか‥‥ソーニャ君、やるな」
「ルイシコフさん、無人タロスが抜けます」
「そうはいかないぞ。逃がすなよ!」
加速するルイシコフ、ライフルでタロスを破壊した。
「本気で来るんだろ、バグア! これが本気か――」
ルイシコフたちはキメラを撃破していく。
「梅雨払いは任せろ、やつ等に一撃をかましてやれ!」
清四郎はキメラを破壊して、ジョワユーズに言った。
「エクスカリバーに取り付かせるな! しっかりエスコートするぞ!?」
矢じり型の編隊を取り、加速状態からの銃撃を加える。キメラの敵が固まっている場所から狙い撃つ。
「速さこそ攻撃であり、防御!」
清四郎らは前進した。ジョワユーズ周辺の敵は片付けた。敵艦への総攻撃に入る。
そこへ突進してきたのはキングスレーの黒いティターン。
清四郎は人型に変形し、接近戦を挑む。スラスターをフルに使い自分が巻き込まれること覚悟でリヴァティーたちに援護をさせる。相手の意表を突く。
「いよいよ宇宙でも決戦だ! 滾らないか? キングスレー!」
「むう――!」
「そちらが騎士道ならば、俺は武士道を貫くまで! 俺ごと撃て!」
キングスレーは受け止めつつ、舌打ちした。
すぐに立て直すと、キングスレーはレーザーブレードで狐ヶ崎の腕を切り飛ばした。
孫六も突進すると、ドレスA・B発動。機剣とウィングエッジを主体に、浮上回避も交え動く。
「バグアとは餓鬼道の申し子の様だ! ヨリシロを得て記憶や姿を得ても、他人を演ずるに過ぎん! 故に、自己を成す為に貪欲に、あらゆるモノを欲す! 即ち、ヨリシロを得ても、それは本当の自分では無い『虚構』だと解っているが故に、足掻き続けるのではないか? それが種として理想の姿かはワシには解らん。が、ある意味、誰より人間臭いとは思えるがな! アレン・キングスレーの内なる者よ! この戦いで、その存在を示して見せろ!」
「孫六兼元、我々は人間らしさを求めているわけではないし、地球侵略も、我々の歴史の一ページに書き加えられるだろう」
キングスレーはプロトン砲で反撃する。
「アレン君、知識は言わば、その相手の文明だの生活だのから培うモノさ。ある種、きみ達は何よりも私達や異星人に近いね。近似値、でも同一ではない。ところでさ、何故、説得力があるんだと思う? ――答えの先を知らなきゃ、ツマンナイ」
「夢守ルキア、俺は人間だろうと納得の出来る答えなら自分の考えも変えるさ」
「‥‥人間とは何か。少なくとも私にとっては、個々の価値観を持ち、自分の考えを持つセカイ。――バグアでも、動物でも。逆に言えば、それが無ければ私にとっては、物体さ。きみにとっての、バグア人って何?」
「‥‥それを否定はせん」
キングスレーはライフルを撃ってくる。
「バグア人とは、それは言葉に出来るが、敵に我々の正体を教えることも無いだろう」
ルキアは、白金蜃気楼とデブリ蹴って黄金龍の鍵爪を使用し、撃った。
「きみの、望みは? きみは、セカイだろうか、物体だろうか――?」
「今ここで言葉には出来ん。セカイのつもりであるとしても」
ヤフーリヴァも攻撃を仕掛けた。キングスレーは間合いを取る。
「ご無沙汰してますキングスレーさん。機嫌は如何でしょう? シュナイダーさんに宇宙での同族等散々殺されて尚、今の今まで逃げおおせ生き伸びて来て‥‥それで今どんな気分? 心境に変化は‥‥? ねえどうでしょう? ――後輩」
「今更諭されるとは意外だが、俺には俺なりの考えがある。確かに地球でナラシンハの道連れになりかけたが、今は宇宙へ上がることが出来た。それは偶然ではない」
そこまで言って、キングスレーは後退する。
ジョワユーズが加速する。ソーニャを先頭に、傭兵たちは敵艦に突進する。バグア艦の砲塔群を減らす。
エルシアンはGP−02を使いデコイ兼用で攻撃。
「多弾頭ミサイル、援護宜しく!」
アリス、通常ブースト常時起動、Mブースター、GP−02で撹乱、レーザーで攻撃。高速を生かした一撃離脱。
囮として撹乱陽動をかけ、味方の攻撃の起点とする。
爆発と閃光がバグア艦を包み込む。
「G光線ブラスター砲、G5弾頭、全弾叩き込め!」
ジョワユーズが主砲を撃つと、爆発するバグア艦からも応射が来る。
と、バグア艦が艦砲を連射しながら突っ込んで来る。
「バグア艦突進してきます!」
「全砲門開け! 撃ち落とせ!」
だが、そして、突進してくるバグア艦はジョワユーズのG兵器で破壊される。
離脱するケルヒナたちバグア人とキングスレー。
間一髪であった。
「‥‥逃げてここまで追われて‥‥あの声音。嫌な意味で業深いな‥‥彼は。そろそろ腰を据えるかな? 僕も」
ヤフーリヴァは、深淵の宇宙に向かって呟く。