●リプレイ本文
崑崙から出撃する傭兵たち――。
櫻小路・なでしこ(
ga3607)は僚機との回線を開く。
「上空にわたくし、山下さん、ソーニャ(
gb5824)さん、クローカさん。地上、月面に孫六さんに夢守さん、アーちゃんさん、堺さん。上空および月面上から迫る敵に応じ、こちらも二手に分かれ迎撃。各個撃破とし、敵を確実に叩くわよ。キングスレーの動きには要注意ね」
「来たか! ‥‥だが寄せてが少ない気がするな」
堺・清四郎(
gb3564)は言った。
「人類の第一歩である崑崙を落とさせん! 来い‥‥ここの通行代の高さを教えてやる! ふん、数が思ったよりも少ない‥‥手柄を先走った奴か」
「崑崙を失う分けにはいかないからね。何としても食い止めないとね」
と気合を入れているのはアーク・ウイング(
gb4432)。複合ESM「ロータス・クイーン」を起動する。
「フローラさん、敵との距離はどれくらいですか?」
「現在タロスとティターンはおよそ300キロ先の宙域と月面から進軍中ですね」
「崑崙を落とすのに、戦艦一隻だと? 功を焦ったか、はたまた単なる無謀か?」
孫六 兼元(
gb5331)は、うなるように言った。鬼の目は笑っていない。
「丁度ワシも、新型のお披露目と行きたかったからな! 晴れの舞台を盛り上げて貰おう! ワシは月面で、陸戦を担当だな! 簡易ブーストは常時使用、機体の機動性を確保せんとな! 強化タロスを優先して、抑えるとしよう! 簡単にワシを抜けると思うなよ!」
「ボクは有人機対応、上空だね。単独先行? 罠? なめられてる? まぁ、それならそれで楽でいい? そういうわけにもいかないよ」
気合を入れていくソーニャ(
gb5824)。
「あたしは上空の強化タロス狙いだねっ。上空の敵を倒したら、月面からジョワユーズの順番で援護に向かいたいかな。月面の戦力が足りていれば、直接ジョワユーズへ行くよ」
「山下さん、ひとまず、月面の敵に当たって下さい。崑崙の防備はまだ弱体ですので」
フローラは言って山下・美千子(
gb7775)をナビゲートする。
「了解! それじゃまずは強襲で行くよ。機先を制して、突撃の勢いのままに猛攻を加える。攻勢が途切れたら囮や撹乱に移行して、牽制を交えながら再強襲のチャンスを窺っていくね。よーし、取りあえず突撃だよっ」
「エゼグス君、彼は感情的になりやすいと予測してる。挑発して、始めのうちは敵に当てず、調子に乗らせてほしいね」
夢守 ルキア(
gb9436)は言って、フローラに支援を頼む。
「十分食い付いたところで、ジョワユーズで反撃して欲しい。フローラ君、よろしく」
「了解しました」
「さあ、イクシオン。セカイを見に行こう」
アルゴシステム、強化特殊電子波長装置γ起動。逆探知、データリンク開始。
「単艦突撃なんてバカだね、本星艦隊だからかな。戦いのイロハさえ知らない、無能な指揮官だ。そんなのにこき使われるきみらも大変だねぇ。全く同情するよ。‥‥というわけで、今日もお帰り願おうか」
クローカ・ルイシコフ(
gc7747)は言って、ブラックな情動に突き動かされるように敵の部隊に向かって言った。
「我ら本星艦隊を愚弄するか! 小僧! 宇宙の塵に変えてやるわ!」
「面白いじゃないか。僕が塵に還るか、きみたちが塵に還るか、賭けをしようか」
クローカのルイシコフの挑発に、バグア人達の異星人言語の罵倒が返ってくる。恐らく罵倒と思われた。
「クローカ君、それくらいで良いんじゃないかな。ジョワユーズに掛かり切りになってくれれば幸い」
ルキアは言って、レーダーに目を落とす。
「オールグリーン。全機発進して下さい」
「行くぞ!」
傭兵たちは崑崙を飛び出した――。
「それじゃあ始めましょうか。ソーニャさん、山下さん、クローカさん」
「了解なでしこさん」
「ミサイル発射!」
なでしこは、先制にミサイルポッドを連射した。タロスは直撃を受けつつもプロトン砲で反撃してくる。
「まずは幾分の防御を削れれば上出来よ。ここから――!」
なでしこは加速すると、タロスをレーザーガンで牽制しつつ撃ち合う。接近戦になったところで人型に変形し練機刀で叩き込む。
「マニューバA!」
「ぬう!」
タロスの腕が飛び、宇宙空間に漂い遠ざかっていく。
「おのれ!」
タロスと激しく打ち合うなでしこ。
ソーニャのエルシアンが加速する。祈り、死を告げる者。アリス、通常ブースト常時起動、高速で移動し、ロール起動で最小限の動きで回避しつつ、最短、最速で肉迫、集中し火力を叩き込む。
「Mブースター!」
「ちいい!」
タロスは慣性飛行でエルシアンの機動を振り切る。
「まだまだあ!」
GP−02を叩き込むと、レーザーで攻撃。高速を生かし撃離脱、次を狙う。
爆散するタロス――。
「一つ目、次!」
アグレッシブにいく。
「ここでなめられる訳にはいかないのよね。ボクの手にかかり逝ったものの名誉の為にもね。みんな強くて勇敢だったよ。ねぇ、君。君もそうおもうでしょ。君ならわかるよね」
(ボクの存在で君たちの名誉を知らしめる義務があるのかな‥‥誠意の証が殺しとは、よくよく業の深い)
「何があ! 名誉が! 地球人!」
「はふ‥‥残念だなあ」
山下は強襲を狙って加速する。
「まずは君から! 残念だね! 崑崙には行かせないよ!」
FET・A使用。超伝導RAで身を守りながら全力突撃。SEM−1ガトリングが咆哮する。激突とともに機棍を叩き込む。
「ぐうう‥‥! 小娘ごときに!」
タロスは後退しつつライフルを連射する。
「何の!」
山下はその場に留まって、GP9にガトリングで広範囲を攻撃しつつ敵を引き付ける。
それからまた離脱し、突撃の素振りを見せつつガトリングを叩き込む。敵の動きに合わせて突撃したり後退を繰り返す。
「月、と言えば兎だよね。お餅ついてくれる兎キメラとかいないの?」
言って、山下は再度加速した。もう一度マニューバを起動し銃撃の後にそのまま姿勢制御で変形、機棍「蚩尤」を打ち込んだ。タロスは真っ二つになって砕け散った。
ルイシコフはミサイルポッドをばら撒き、友軍を援護する。なでしこや山下の支援。またライフル、ガトリングでタロスを追いこんでいく。一機に拘らず、僚機の穴を埋めるように接敵する。
「なでしこ君、タイミングを合わせよう。そっちだ」
「了解です!」
ルイシコフは、戦域の距離を生かし、地上戦含む全体の戦況に目を配る。月面上でも交戦が始まっている。
「よっと‥‥空爆に備えるかな」
ルイシコフは機体を傾ける。
「ところでバグア君さ、一つ聞きたいんだけどさ。きみはこの戦い、どう思う? 毎日毎日、押しては退いての繰り返し。あぁ、意味の有る無しじゃなくってね。僕らはこの星を守る為に、なんて言えるけどさ。きみらは有意義に戦えてるのかな、と思って。生存の為、なんて惰性に過ぎないなら。一度、自問自答してみた方がいいと思うよ」
「地球人、よくぞほざいたな。ここまで地球人が進化できたのは、バグアとの戦争によってだ。我々は地球を絶滅させるために戦ってきたわけではない。地球人を進化させ、優秀なヨリシロを確保するため。それには多少の犠牲を払う価値はある。ゲバウ様などはそこまで地球人を待つ機は無いようだがな――」
ルキアは、月面を進行しながら、偵察用カメラ、逆探知を使いつつ敵に備える。
逆探知する以上、敵機の攻撃も予想、自分の有効射程に入るまで回避と警戒に専念する。万が一、長射程ミサイルでも撃ち込まれる危険はあった。
だがその懸念は今回は杞憂に終わった。タロスは月面を疾走して来ると、傭兵たちに殺到して来る。
「ぬう! やはり正面から来るか!」
孫六はブーストで一気に接近すると、敵の一団内で「ミチェーリ」を叩き込む。飽和攻撃「ミチェーリ」。オーブラカの弾数3000発を使用して、全砲門を開き弾幕を形成する。
凄絶な銃撃がタロスを薙ぎ払う。足止めを謀ると同時に、少しでも多くの敵に損傷を与える。
「進行が鈍った今こそが好機! 一気に畳み掛けろ!」
「――破壊系の武装を持っている奴を優先的にねらえ!ここで何機落としても崑崙を守れなかったら意味はない!」
堺は言って、タロスにアサルトライフルを乱射して牽制する。
「行くぞ! ここは通さん!」
突撃し、機刀で斬り付ける。一撃二撃と弾く。
タロスはプロトン砲を連射して距離を保つ。
清四郎はスラスターをフルに使い、ドリフト走行で回り込みつつ、飛び上がって急速落下した。
意表を突かれたタロスは腕を切り飛ばされた。
「ここは通さんと言ったはずだ!」
清四郎はレーザーで後退するタロスを破壊する。
「さて、次はどいつだ!」
アーちゃんは、ロータスクイーンで管制を行いつつ、キングスレーのティターンに警戒していた。キングスレーは、あちこちで動きまわっては仲間たちの動きを封じていた。
清四郎はティターンの攻撃を受ける。
「キングスレーか! お前らしくない無理な攻勢だな!? また上司に恵まれなかったか!?」
「まだ崑崙は手薄だ。可能性はあったが、やはり難しかったようだな。簡単にいくとは思っていなかったが‥‥」
言って、キングスレーは清四郎と撃ち合う。レーザーガンとプロトン砲が交錯する。
加速する清四郎。月面という地形を生かして戦う。フレキシブルスラスターで地面を叩いて目くらましにしてその隙に体制を低くしして足を狙って切りつける。ベズワルの一撃――。
キングスレーはレーザーブレードを縦に構えて受け止めた。
「ふん、時たま夢想するな、お前が上司か部下だったら最高だったとな!」
「そいつはユニークな発想だな清四郎。俺はそんなことを考えたことは無かったが」
「夢の話だ! お前を好敵手と思えばこそ」
「だが、お互い理解するには遠いな‥‥」
アーちゃんはレーザーガンで牽制する。接近戦は避けるように距離を保つ。清四郎が攻撃するのに、合わせて撃ちこむ。
「まずは邪魔させてもらうよキングスレー」
アーちゃんはヴィジョンアイで清四郎を支援すると言った。
「月まで出張とはご苦労なことだね。バグアに出張手当とかあるのかな」
と冗談めいたことを言う。
「それはさておき、ところでバグアのお偉いさん方たちの中には、地球人類にまだ利用価値があると思っているのは、どれくらいいるのかな? ここまで抵抗しているんだから、いい加減、労力を費やすのもいやになっている奴もいるんじゃないの?」
と尋ね、さらに、
「もしかしたら、下等生物の分際で刃向うなど許してはおけない、滅ぼしてやる、とか言っている奴がいたりするのかな?」
と尋ねる。バグアの内情の探りを入れるつもりだが、正直、回答については期待していないし、偽情報をつかまされても困るので、慎重に対応する。
「アーク・ウイング、我々は知的生命体とのコンタクトに慎重を期している。事前に地球のことも調べたし、科学力が我々に遠く及ばないことも知っている。だが、勘違いしているようだが、恐慌派のズゥ・ゲバウ様でさえ、最初から地球を滅ぼすべきだなどと考えてはいない。未知の知的生命体が持つ情報、知識、文化は、我々にとって破壊対象ではない。それは、ヨリシロを得ることで我々の中に蓄えられるべき我々の存在そのもの」
キングスレーの言葉はアーちゃんにとって回りくどいようだったが、アーちゃんは意識を戦闘に向ける。
ルキアはその間に強化タロスを迎撃する。仲間がキングスレーを引き付ける間に敵を討つ。
十二式高性能長距離バルカンで移動しながら牽制を叩き込む。
タロスは流れるように回避していく。反撃のプロトン砲をルキアも回避しつつ、バルカンを撃ち込む。
繰り返してタロスが突進してきたところへ機拳シルバーブレットで迎撃する。タロスの剣を弾き返し、殴り返した。
逆探知の結果も見つつ――。
「何トカ抑えられてるけど」
ルキアは撃ち合い、タロスを破壊した。
加速するタロスを、ブーストで崑崙側へ回り込んで立ち塞がる。
「(自分で引き付ける間に、有人機を専攻させるかな)クローカ君、空爆お願い。私は崑崙側から回り込む」
「了解したよルキア君」
ルイシコフはタロスの進行方向にミサイルを叩き込んだ。
孫六は、ディフェンダーを主体に格闘戦を仕掛け、タロスを迎撃する。09式は牽制射に使用。
避けるより、装甲の厚さを活かした受け流しを使って行く。剣で敵の攻撃を受け流して捌き、カウンターで斬り伏せる。捌きながら至近距離で09式を叩き込み、タロスを撃破する。
それから、孫六もキングスレーに加速する。リーヴィエニAは弾が続く限り常時使用。
「キングスレー、『地球侵略も、我々の歴史の一ページ』と言ってたが、確かにそうだな! ただし、バグアの歴史の最後の一ページ、と言うやつだ! そして地球の未来への、新たな一ページともなるのだよ! 全ては、諸行無常だ。如何なる栄華を誇っても、バグアとて自然の一様! いずれ衰退の刻はやって来る。コレが摂理だ! 以前言ったろう? 『神でも止められん』とな! 強い『種』でも、イレギュラーなら自然は淘汰してゆくのだよ!」
「孫六兼元、それは随分と都合のいい解釈だな。いまだ地球を出たことしかないお前達に、バグア人の深淵を覗くことが出来るかな? 我々が宇宙を旅して得た英知は深いぞ。多くのヨリシロが我々を高みに導いている」
そこでルキアが言った。
「別にきみの正体を知りたいワケじゃないよ。きみの価値観、きみなりの定義を知りたいダケ。あの場で口に出来なかったなら、今は出来るんじゃない? セカイは、真実ばかりとは限らない。望みや幻、ユメ、きみはこの世界が好き?」
「バグアとは‥‥宇宙最強の種族だ。これほど多くの知識、情報、歴史を蓄積した種族を俺は他に知らない。そこに、バグアが他星を侵略する理由があり、存在の価値がある。宇宙の果てを見たことは無くても、地球人より真実に近い場所にいるのがバグア人だ‥‥ふむ、またしてもここまでか」
そこまで言って、キングスレーは後退する。
ソーニャは回線を開いた。
「ジョワユーズの方は大丈夫? 後退を装ってこちらに近づいてきてもらえたら助かる」
それから、ソーニャはバグアに呼び掛ける。
「ほんと。人もバグアもいっしょだよね。対等に殺しあって見せなきゃ話もできない。始めまして、こんにちわ〜。殺し合いから始まるコミュニケーション。やっと最近、ボクたちを認めてもらえだしたかな。ボクは思い続けているのに。ずっと片思いなんて、切ないね。それでも、前に立たなきゃなにも始まらない。立ち塞がってもね」
それから、ジョワユーズから応答があった。
「こちらジョワユーズ、敵艦が後退する。崑崙は無事か」
「こちらソーニャ、崑崙は無事です」
ソーニャは言って、バグアが後退する宇宙を見つめる。
月面会戦は、間もなく激戦に突入するところだった。