●リプレイ本文
スクランブルが掛かると、傭兵たちは繋留されているKVに向かって走り出した。ドックで合流する。オペレーターから情報を受け取ると、傭兵たちはデータを確認した。
「それでは――」
櫻小路・なでしこ(
ga3607)は確認しつつ言った。
「確実に分かっているキングスレー様に対しては、孫六様に夢守様、堺様が当たられますね。残るエース機の片方をアーちゃん様――全体管制に当たり、ゲシュペンスト(
ga5579)様が僚機に。もう一機をわたくしと神棟様が担当。遊撃にソーニャ(
gb5824)。他、強化タロスにリヴァティー×16。艦隊護衛にハヤテ×8とラスヴィエート×8に当たって頂きます。宜しいでしょうか?」
「了解した櫻小路」
軍傭兵の隊長は頷く。
「まずは初手に先制で前衛の全機で一斉射撃を実施。一斉射撃後、各自役割に応じて散開、ただし緊急時の艦隊護衛の援護は意識した散開をお願いします。強化タロスと艦隊護衛は軍KV隊にお任せします。各自は担当との決着後、他所への応援に駆け付けるとしましょう」
「だが‥‥当然だな、此方も黙って行かせてくれるとは思っちゃいない。ここで躓いてる暇は無いんでな‥‥」
ゲシュペンストは言って、肩をすくめた。
「強化タロスと船団の直衛は軍KVに任せて俺たちは三機のエースを仕留めにいくか。とにかく速攻で頭を潰せば後はどうにかと言った所だろう。戦闘時はすぐに船団の直近まで戻れる位置を確保しておき、船団に何かあった時は即座に戻って対応する。但しこれによって敵を船団に近付け過ぎない様に注意しておく必要があるだろう。自機と敵機と船団の位置関係は常に把握しておくことだな。補給は適宜。最悪、敵は斃せずとも船団が安全圏に到達するまでの時間を稼げればよし、だ」
「兵糧を狙いその隙に体制を整える、劣勢時の基本中の基本だな」
堺・清四郎(
gb3564)は言って思案顔。
「拡張工事か、妥当な線だな、補給ができなければ戦闘は継続は出来ないしな。だがそいつを黙って敵が見過ごすはずがない、といったところか」
「月まで行ったり帰ったり。そして、毎回、バグアに襲撃される、と。まあ、愚痴は置いとくとして、依頼はきっちりと果さないとね」
と呟いているのは傭兵たちの妹アーク・ウイング(
gb4432)。
「奴の他に、色違いのタロスが2機か? 恐らく、手練れの手下を連れて来たと言った所か? だとすれば、少々厄介だな!」
言ったのは孫六 兼元(
gb5331)。
「とは言え、さっさと終わらせて綾河氏がDVDを堪能出来るようにして来ようか! ガッハッハ!」
「前回の居住区拡充計画でお風呂を作ったんだけどユニットバスだったんだよね。早く大浴場を作ってほしいなぁ。居住区なんてKV格納庫にコンテナでも積めば十分なのに」
ソーニャは言って吐息した。
「今回の居住ブロックが済めば次は大浴場かも知れないからがんばるよ――。それにしてもアレンが輸送船を襲うなんて意外。しかし、アレンもつれないね。前回、ボクがあれだけ赤裸々な愛の告白したって言うのに。軽くあしらって、帰っていっちゃうなんて。もっと優しくしてくれてもいいのに。しかもまた別の女はべらせてるのかなあ‥‥。今回はお風呂がかかっているからアレンに突っ込んでいけないのは残念。(今回、お風呂ないよ。しかもアレンはお風呂以下?)そこは大人の駆け引き。追いかけてばかりじゃ飽きられちゃう。それに、他も妙なタロスがいる。あさはかな女と思われるのも面白くない」
「私は積極的に戦闘に出つつ、直ぐに駆けつける距離にいる事で護衛と迎撃を兼ねる、かな」
夢守 ルキア(
gb9436)は言った。
「輸送艦は、軍の皆にお願いするよ。勿論、私達も長距離武器で援護するし、突破されるようなら追い付く」
「よろしく頼む」
「月面基地の拡張、ですか。そんな事にも力を入れられる位には、落ち着きが出て来たということでしょうか。尤も‥‥バグアはここへ来ても見逃してはくれないようですが」
神棟星嵐(
gc1022)は言って吐息する。
「では参りましょうか。みなさん、幸運を」
なでしこの言葉で、全員散っていく――。
「敵との距離、有効射程に入ります。各機、ミサイル攻撃開始――」
アーちゃんはロータスクイーンを操りながら言って、合図を送る。
「――まずは先制の一斉射撃で強化タロスの防御を削っていくわよ! FOX2ミサイル発射!」
なでしこはコンフォーマルガンポッドを連射した。
「キングスレー、いつぞやのインド以来か‥‥生憎とここでお前達に喰わせる物はないんでな。これより強力な戦法を知らない以上どんなに戦場が変わろうとも俺のやり方は変えようも無い! 全弾くれてやる、残さずもって逝け!!」
ゲシュペンストはDRAKE STORMを連射。
清四郎は接近したところで強化タロスにK02を全弾発射し機先を制する。
「さて、いつもの挨拶だ、受け取れ! FOX1!」
「行くぞ! 不死鳥光線! プロトディメントレーザー! 撃てい!」
孫六はレーザーを放つと加速する。
「よーし行くよ! ミサイルポッド発射!」
ソーニャもミサイルを連射すると、遊撃的に加速する。
「アルゴシステム、蓮華の結界輪起動。各機データリンク開始。さて、きみの変化は変容に成り得るだろうか?」
回避型、迂回に警戒し、敵を全てナンバリングする。
「リゲンタウルス、有事に備えて近接武器で時間稼ぎが出来るように」
最悪を想定し、最高の結果へ導く。初手のミサイル攻撃に合わせて、敵の回避を想定してその方向にスナイパーライフルを叩きこむ。
「兼元君前衛お願い。私は後衛で向かうね」
神棟はGP−9とHA−06を発射する。
「定番の戦法ですが、地味に効果があるのは魅力的ですね」
「撃て!」
「ファイア!」
1000発を越えるミサイルが強化タロス目がけて飛ぶ。バグア有人機は回避しつつ、プロトン砲を叩き込んで来る。
ミサイルの直撃が閃光となって宇宙空間に弾ける。
強化タロスは散開すると、編隊を組んで接近する。
「ジンダハール、ケルヒナ、お前たちは両翼から回れ。俺は中央を抜く」
「了解したキングスレー」
「ふふ‥‥お手並み拝見ねアレン」
バグア軍は三つの集団に散っていく。
「よし、行くぞアーちゃん。ジンダハールとやらがこちらの相手だ。あの赤いタロス」
「了解ですねゲシュペンストさん」
アーちゃんは言って操縦桿を傾けた。
ゲシュペンストはアサルトライフルで牽制しつつ、接近戦を挑む。ライチャスで切り結ぶ。一撃、二撃と弾いて、両者は後退する。
「ふふ‥‥やるな人間。この興奮、久方ぶりだ」
アーちゃんはウイングエッジとレーザーで無理押しをせずに着実にダメージを与えていく。
ゲシュペンスト機と交互に攻撃を加えることで、ジンダハール機に反撃の機会を与えないようにする。ヴィジョンアイを適時。
「こんなところまで出張とはご苦労なことだね。人類が滅びるかどうか高みの見物でもしていたんじゃないの?」
と問いかける。挑発というよりは、ジンダハールたちの士気等がどの程度か確かめることが目的である。
「人類が滅びる? 面白くなってきたではないか。ゲバウが敗北すれば、我々穏健派の思惑通りに事を運ぶことが出来る。地球人との対決をな」
「随分余裕だなバグア人。いちいち月面基地を攻撃しているせこい真似をしているくせに」
ゲシュペンストは言って、切りつけた。
「それとこれとは別だよ地球人。私たちは、大きな流れに乗っている」
「その流れは、アーちゃんたちが絶ち切らせてもらうよ。バグアの思い通りになんかさせないんだからね!」
アーちゃんはレーザーを連射した。
ジンダハールは受け止めつつ後退する。
「地上から持ち込んだとっておきだ、威力は受けて確かめろ! 究極ゥゥゥゥゥッ! ゲェェシュペンストォォォォォッッ! キィィィィィィィッック!!!!」
「ぬう――!」
ゲシュペンスト・フレスベルグのレッグドリルが炸裂する。ドリルが貫通する。
「ぐ‥‥ああああああああ‥‥何‥‥だと!」
ジンダハールの強化タロスは、軋むように弾けると、閃光を残して爆発した。
「ふう‥‥片付いたか」
「ゲシュペンストさん、いったん補給に戻って下さい。アーちゃんが支援します」
「了解アーちゃん」
アーちゃんは全体に目を落とすと、味方の消耗具合や敵味方の位置と動きを把握して、補給の指示を出していく。また、味方が破れそうなところへ、友軍にフォローをお願いする等の対応を取る。
「KV隊、各個撃破に専念して下さい」
「行くわよ神棟さん! どうやら相手はケルヒナのようね。この程度、さっさと片付けて、輸送物資を『崑崙』へ送り届けましょう」
「カラーリングされたタロス。ケルヒナと言いましたか‥‥。貴公の相手はこの神棟星嵐が務めます!」
「ふふふ‥‥地球人が。随分勢いがあるわね。嫌いじゃないわよ、手応えの無い相手をやっても面白くないものね」
「あら、そう思惑通りに行くかしらね!」
櫻小路は人型に変形すると切り掛かった。
「小娘が!」
一撃二撃と弾いて、ケルヒナはプロトン砲を放ってくる。
櫻小路は回避しつつレーザーガンで応戦。超電導RAを使い簡易ブーストと姿勢制御で間合いを図る。
「的を絞らせない様機動力を活かして仕掛けます!」
神棟は凍風で牽制しつつ櫻小路とは反対の軌道をとり、常に挟撃している体勢をとる。
人型に変形すると、ブーストで加速した。アグレッシブ・ファングとブレス・ノウを起動し、ライチャスで一撃必殺を狙う。
「その隙を見過ごすわけにはいきません! 決めます!」
「ぬう――!」
後退するケルヒナは、腕を切り飛ばされた。
「おのれ! 小僧!」
プロトン砲を連射するケルヒナ。
「あら、さっきまでの余裕はどこへ行ったのかしらバグアさん!」
櫻小路は加速すると、練剣を叩き込んだ。
「く――!」
受け止めたケルヒナの機体を、櫻小路の一撃が貫く。
「ち‥‥畜生!」
ケルヒナは罵声を浴びせつつ、後退するも――。
神棟が加速。凍風を連射した。爆発と閃光に包まれる白いタロス。ケルヒナの悲鳴を残して、閃光とともに爆散した。
「やったわね神棟さん。次は――」
「いったん補給へ戻りましょう。それから味方の援護へ」
「了解ね。アーちゃん、こちら櫻小路よ。補給へ戻るわ」
「了解しました。誘導に従って下さい――」
孫六は加速する。甕布都神。銀色のフィー二クスが突進する。
「うむ、ワシはキングスレーの抑えに回るぞ!」
飛行形態で移動しつつ、進路上の敵機は、ウィングエッジで斬り裂いていく。
「ワシの戦いの邪魔をするな! 無粋な奴め! ――キングスレー!」
「孫六か。とことん俺の邪魔をする気か」
「それはワシの台詞だ!」
人型となると、突進した。練機爪でティターンを切り裂く。が、キングスレーは受け止めつつプロトン砲を叩き込んだ。孫六は残像回避で回避した。残像回避での移動は、左右だけでなく上下の機動も織り交ぜ、追撃され難くする。
孫六はキングスレーの剣の軌道の反対側に回り込んでいく。向かって左から剣が来たところへ、自身は左手側へ避け相手の右脇腹を攻撃に向かう。
「相手の無防備な部位を狙う、柔の基本だな! キングスレー!」
ゼロ距離でカウンター狙いで、残像回避で前に進み、相手の背後に回り込み振り向き様に背中を斬る。
「KV柔法『鬼門』!」」
「ちい‥‥!」
ティターンは吹っ飛んだ。
「欲するモノが有るなら戦って掴み取る! 守るべきモノが有るなら剣となり盾となる! キングスレー! お前にも、そう言うモノが有るだろう? ソレが互いに相容れ無いのなら、武士としての意地と信念に勝る者のみが手に出来る! ワシは地球をレスキューする男だ! 故に譲れんモノも山程有ってな、そろそろお前には覚悟を決めて貰うぞ!」
「確かに失って久しい感覚がある。だが、お前たちとの戦いで、それを思い出した気がする‥‥」
清四郎は加速すると、キングスレーに対して突進、真っ向から剣での勝負を挑む。
「やはりいたか、キングスレー!! そのティターン! そろそろお古だろう? ここで撃破して新しいのに乗り換えさせてやる! だが、補給を狙うというのは戦いの常道だがもうひとひねりを加えるべきだったな!!」
「清四郎か、来い」
ティターンは反転した。清四郎は機刀とベズワルでの一撃に加えて、脚部による蹴りやマニューバを叩きつけるなどをして強引に隙を作り相手のブースタ部分等を狙って攻撃を仕掛ける。
「貴様との因縁も長くなったな、だがそれもそろそろ終わりだ! 奪うことできず育むことで進化をできない貴様らは‥‥ただの災害だ!!」
「ふむ。まさしく、人類はバグア人にとって災害となりつつあるな。我々は手痛い傷を負って、教訓を得たわけだが‥‥」
キングスレーは弾き返しつつ後退する。
夢守は言った。
「デリーにもきっと、花はあったよ。見せたかったなぁ」
笑いながら、バルカンを叩き込んでいくと、ホーミングミサイルはすれ違いざまに撃ちこむ。
「私も地球は見たケド、故郷はシラナイ。親もシラナイケド、カロンって言う対人傭兵が生き方を叩き込んだんだ」
攻撃はバレルロールで回避し、側面を狙う。
「一瞬に消えていくソンザイも、永遠に続くソンザイもカワラナイ。私達もきみ達もセカイだしね、一瞬も永遠もオナジコトさ」
煙幕とバルカンを撃ち込み撹乱する。
「それはどうも、刹那的な感覚だな。自分が消えてしまえば、世界にも触れることは出来なくなるだろう」
ソーニャは遊軍的に動く。戦域を移動しつつポイントにフルブーストで肉迫し敵の隊形、出端を挫いていく。死角から急襲し、タロスを撃墜していく。
アリス、通常ブースト常時起動。高速で移動。ロール起動で最小限の動きで回避しつつ、最短、最速で肉迫。集中し火力を叩き込む。
データーリンクにより戦域全体の動きを楽しむ。
「傭兵に成り立ての時もリンクデーターと直感頼りにボクの空での居場所を必死に作ろうとしてたね。少しは成長したかな」
ソーニャは言いつつ、いったん補給に戻り、前線に帰還する。
「アレンの中央突破かあ‥‥でもうまくいかないみたいだね。受けって言うのもなかなか面白いね」
ソーニャはティターンに接近する。
「みーつけた。人の思惑をつぶすのって快感。アレンがいじめるからだんだん性格が悪くなるよ」
「またソーニャか。いじめているのはお前じゃないのかね」
「あれ? それってもしかしてジョーク?」
「今日のところはジョークで済ませておこうか‥‥」
キングスレーは言って部下とともに離脱する。
やがて月面基地が見えてくる。傭兵たちは歓迎の声に迎えられ、崑崙へ着陸するのだった――。