タイトル:地球軌道上の境界線マスター:安原太一

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/07/30 20:57

●オープニング本文


「バグア軍後退します――」
 エクスカリバー級宇宙巡洋艦ジョワユーズは、地球軌道上のバグア残党の討伐に向かっており、成果を出していた。残存のワームやキメラを次々と撃破して行った。
 その中には、上級バグアのアレン・キングスレー(gz0472)の姿もあった。キングスレーは、各方面の戦力を束ねて、バグア本星へ退却しつつあった。
「艦長、またしてもキングスレーの戦闘艦です。部隊をまとめ、後退していきます」
 艦橋にて、フローラ・ワイズマン(gz0213)はモニターに映し出される識別コードを見て言った。
 艦長のジャック・モントロン中佐は、うなるように吐息して、軍帽を整えた。
「中々しぶといな‥‥キングスレー、殿を務めるのも、見上げた努力だが‥‥」
 言って、モントロン中佐は攻撃命令を下した。
「退却するバグア軍を討つ。このまま本星に連中を帰すなよ」
「KV隊各機、発進準備。バグア残存部隊に攻撃開始」
「了解した! 任せとけって。連中をこのまま本星に帰しはしないぜ!」
 KV隊の隊長アキラは言って、敬礼した――。

 ――バグア戦闘艦。
 キングスレーは、厳しい顔で三次元ディスプレイを見つめていた。
「アレン、何を思うのですか」
 副官のバグア、クワイスは言ってキングスレーの肩に手を置いた。
「我々は敗れたも同然だ。このまま本星に傭兵たちの突進を許すことになるとは‥‥」
「まだそう決まったわけではありません。ブライトン様は手を尽くされるでしょう」
「それはそうだが‥‥」
 キングスレーは、先だっての戦いで死にかけけた。危なかった、と自分も思った。
「ここで殿を務めるのは意にそぐわないものですか?」
 クワイスの言葉に、キングスレーは吐息して眉間を押さえた。
「確かに時間は余りない。地球人と戦うのも、あと僅かだろう‥‥」
 キングスレーは言って、画面を切り替えた。
 そこに、彼が生まれた、赤い月が浮かび上がった。すぐにあそこに帰ることが出来るだろう。
 バグア軍の一つの集団が、キングスレーを殿に後退していく。
 ジョワユーズ始め傭兵たちは激しい追撃を敢行するのである。

●参加者一覧

漸 王零(ga2930
20歳・♂・AA
櫻小路・なでしこ(ga3607
18歳・♀・SN
美空(gb1906
13歳・♀・HD
堺・清四郎(gb3564
24歳・♂・AA
孫六 兼元(gb5331
38歳・♂・AA
ソーニャ(gb5824
13歳・♀・HD
夢守 ルキア(gb9436
15歳・♀・SF
黒羽 拓海(gc7335
20歳・♂・PN

●リプレイ本文

 出立前に、いつものように櫻小路・なでしこ(ga3607)が口を開いた。編成と分担について確認を取る。
「出てくれば、ティターンブラックスターの対応に孫六様、堺様、夢守様が管制に当たり、リヴァティー×3に付いて頂きます。本星型HW対応に黒羽様、それからハヤテ×4。バグア戦闘艦にジョワユーズと、美空(gb1906)様、ラスヴィエート×3。強化タロス対応にわたくしとリヴァティー×4に当たって頂きます。タロス対応には王零様とリヴァティー×6。ジョワユーズ防衛にソーニャ(gb5824)様にラスヴィエート×6が付いて頂きます。HWと宇宙キメラ対応に残るリヴァティー×11、ハヤテ×10、ラスヴィエート×5に当たって頂きます」
「了解した。では、編成についてはそのように」
「それから、全体の方針ですが。まずは先制の一斉攻撃をいつものように行い。先制攻撃後、目標毎に展開並びに交戦開始。目標撃破後は、余裕のある範囲で他所の応援に回ります。ジョワユーズはバグア戦闘艦への牽制および周辺への支援攻撃。締めはいつものようにジョワユーズが戦闘艦へ止めを行って頂きます」
「全体としてはオーケーだ。後は、各機の連携に任せるかね」
「今回は追撃戦ですので、突出による孤立には注意が必要ですね」
「方針はこれで行くぞ。全機、締めて掛かれよ!」
 アキラは言って、傭兵たちは出撃した。

 夢守 ルキア(gb9436)はKVに乗り込むと回線を開いた。
「リヴァティー3機に随伴をお願いしたい。味方の援護として、主砲を潰したり警戒の目を担当する」
 ジョワユーズ内のKVで、データリンクと事前まで打ち合わせを行う。
「デブリに身を隠して、データを収集して欲しい。各個撃破されないように、私達はフォローに入る」
 アルゴシステム、蓮華の結界輪起動。各機とデータリンクする。
「聞こえる? この追撃戦、気負い過ぎて、突出しないでね」
 ザザー、と時々ノイズが入る。バグアのジャミングも入っている。ルキアは通信状態を調整しながら管制を行う。
「各機、データリンクするよ。通信を確保するね」
「了解した夢守」
「オッケー、それじゃあ、デュスノミア出るよ!」

「さぁて、それじゃ狩りの開始と行きますか」
 漸 王零(ga2930)は言うと、コクピットから暗黒の宇宙に目を向ける。
「漸王零。ダーナヴァサムラータ‥‥ハンティングを開始する」
 機体セッティングは砲撃重視のTypeG――。あらかじめキングスレーの戦闘データを入れておき、行動パターンデータを作成しておいた。
「全機ミサイル攻撃開始――」
 王零は、仲間の一斉砲撃にあわせてブーストを使い飛行形態で突撃。K02と管狐を全弾放出する。宇宙空間に閃光ときらめきが交錯する。
 なでしこはGP7ミサイルポッドを叩き込む。
「追撃戦か‥‥数年前までこちらばかりやっていたのだがな‥‥」
 堺・清四郎(gb3564)は呟いた。
 追撃戦か‥‥相手はおそらく奴だ。油断ならんな‥‥勝ちにおごった奴らの横っ面を叩き続けて来たからな。こちらがそうならないようにせねば。
 清四郎は突進し、迎撃に出てきたタロスやキメラなどに対してK−02を全弾発射。
「久々の追撃戦だ、相手の尻ばかりを見すぎて自分が掘られるなよ!」
「キングスレーも、いよいよ本星へ敗走か。だが此処で油断は出来んな! 奴が戦を、簡単に放棄する筈が無いからな! ワシはキングスレー対応だが、先ずは奴を燻り出す為に戦闘艦に攻撃を仕掛けるぞ!」
 孫六 兼元(gb5331)は言って牙を剥く。
 王零は全弾放出後、反転し味方と合流すると、タロスの迎撃に向かう。
 攻撃は僚機と束ねるようにして集中させてすばやい撃破を行うように対応する。
 プルート・デヴァステイターを連射し、加速して接近。姿勢制御とブーストで戦闘態勢を保ちつつ銃剣サクリファイスをタロスに突き立てる。爆散するタロス。
「ふむ‥‥相変わらず化け物じみた機体だね」
「王零、支援する」
「よろしくお願いするよ」
「わたくし達も行くわよ!」
 なでしこはリヴァティー4機と共に強化タロス撃破へ果敢に向かう。
「リヴァティー2機で強化タロス1体をお願い! もう1体に対してわたくしと残る2機とで集中攻撃し撃破するわ」
「了解した!」
 なでしこらは加速した。
 レーザーガン「フィロソフィー」で牽制し、荷電粒子砲「レミエル」を叩き込む。
「かわす!」
 なでしこは回避されて舌打ちした。
 続いてリヴァティーと連携して包囲、強化タロスの側面を突く。
 レミエルを連射した。爆発と閃光に包まれる強化タロスは罵り声を上げて後退した。
「次、行くわよ!」
 残る1体にも同様に4機で集中攻撃し後退させた。
「こちらなでしこ。王零さん、支援するわ」
「了解なでしこ。支援は歓迎する」
 なでしこらは突進し、自身はGP7ミサイルポッドの残弾を放出、練剣「ビームクレイモア」での近接戦闘を挑みかかる。
 キメラは撃破され、ヘルメットワームとキメラは後退しつつあった。
 清四郎は敵戦闘艦艇に一気に突撃。至近距離から荷電粒子砲をキメラ搬出口、主砲に叩き込んで戦闘艦の能力を削る。
「いつまで引きこもってられるかな!?」 
 孫六は09式で牽制射を加えつつ飛行形態で接近する。周辺のキメラを撃墜していく。対空砲火をかわしつつ、慣性をブーストでコントロールして戦闘艦の至近に取りつく。そのまま甲板に人型で取り付き、主砲を最優先に各砲門を潰していく。練機爪「レビン」、機刀「一文字」、ウィングエッジ、ナックル・フットコートδで武装、装甲を破壊していく。
「足を止める事は出来ずとも、無力化する事は出来る! キングスレー! さっさと出て来んと、この艦がお前の棺桶になるぞ!」
 ルキアはライフルで戦艦の主砲を随伴機と共に潰していく。ウィングエッジで切り裂きつつ、至近距離で十二式高性能長距離バルカンを叩き込む。毎回の移動タイミングを計算、味方機が突出していないか警戒する。
(ジョワユーズを落としに来る筈、来るなら迎撃すればいい)
 傭兵たちに外部装甲を潰されて行くが、バグア艦は凄まじい速さで再生していく。
 美空は着々とジョワユーズとともに移動していた。
「将を射んとするならばまず馬を射よ、であります」
 美空は言った。シスターズ総出で幾度もアレンを狙うも力及ばない美空としては事ここに至って少々戦略を変えることにするのであった。今回は、名のある傭兵達がアレンに当たることもあって、彼らの支援に徹することにする。
 今回の美空の目標は敵の足でありかつ守るべきものである戦闘艦そのもの。本来なら直接傷つけることすらかなわないものであるが、人類軍最新鋭の砲艦KV「吼天」の主砲であれば撃沈にも手が届くというもの。愛機「雷神ヘング」に実績をつけるためにも負けられない美空であった。
 ここで黒羽 拓海(gc7335)は軍から借り受けたハヤテ四機とともに本星型HWの対応に回る。
 キメラ群を回避していくが、一部どうしても避け切れないところにあった。
「手早く片づけるぞ」
 黒羽は友軍に合図を出し、キメラ群に接近する。人型形態に変形すると、機刀「陰」と練機刀「陽」を振るってキメラを叩き伏せて行く。
 ハヤテもライフルを連射して、次々とキメラを撃ち落としていく。
 黒羽は二挺のライフルを連射し始めた。アサルトライフルとレーザーライフルを連射してキメラを破壊していく。
「いいだろう。行くぞ」
 加速する黒羽ら。そのまま接近していく。
「よし‥‥」
 目標の位置を確認次第、ブーストとマニューバAで加速して強襲する。
「全機、ブーストおよびアクセラレータ起動。一気に詰めるぞ!」
「何です?」
 クワイスは出現した黒羽らに眉をひそめた。
「こんなところへ蠅が寄ってきましたか」
 クワイスは口許を緩めた。
 黒羽らは接近し、強化FFを削るべく手数を重視して連続攻撃。しかし、クワイスは全弾アクロバットにかわした。
「まだまだ! そっちだ!」
「何?」
 黒羽に気を取られたところで、クワイスはハヤテから連撃を受けた。
「ちい‥‥!」
「今だ、一息に仕留める!」
 黒羽はFET−Aを、僚機にはAAを使用して貰い全力攻撃を行う。銃撃を叩き込む。
 クワイスは乱れた。黒羽はもちろん撃墜するつもりで掛かるが、あくまでも、敵の指揮管制を乱す事を主目的として、管制に集中させないよう行動する。
 激しい連続攻撃を打ち込む。しかし、クワイスは立て直してアクロバットに回避する。反撃のプロトン砲が来る。黒羽は直撃を受けた。
「ち‥‥!」
 黒羽は激しく揺れる機体の中で真紅に染まった瞳でレーダーを見つめる。
 ここは敵後方での戦闘であり、味方対艦砲の射線に入らないよう注意する。
 それからもクワイスを包囲しつつ集中攻撃を浴びせたが、クワイスは巧みな操縦で受け切った。マニューバが底をつく。
「ふむ‥‥一時補給に戻るぞ」
 黒羽たちは離脱してからバグア戦闘艦に向かう。
「深追いは厳禁、だが‥‥」
 ソーニャはジョワユーズ防衛に一人いた。チャンネルを切っていた。誰にも聞こえない。
「独り言。ボクがアレンなら、艦を囮に艦を守る、かな。出来るだけ多くのKV、特に厄介な傭兵をバグア艦に引き付け、ティターンでジョワユーズに取り付き、艦橋の一点狙いかな」
 ソーニャは言った。
「タロスやキメラもバグア艦よりに引いて、ジョワユーズの護衛も徐々に引き離す」
 ソーニャは想像を巡らせた。
「ボクなら小細工を重ねる。バグア艦からのアレンの録音放送で注意を引いて――アレンは人気者だから囮には最高だね――ティターンの偽装射出。――射出するキメラにまぎれる、大型キメラの腹の中とか――ほんの数秒の時間稼ぎでバグア艦からではティターンの最高速には追いつけない」
 ソーニャの想像は続く。
「途中のKVもあらかじめ指示があれば交戦中のタロス、キメラで短時間抑れる。バグア艦にいくらKVがとりつこうと、ジョワユーズが追いつけなければ落ちない。アレンはどうくるかな。どう考える? みんなを抜ける? 艦の足をとめられる? なんてね。こんな一人よがりの妄想。人には言えないね。笑いものだ。笑われるのは怖い。存在を否定されている様で。だから言わない」
 そこで、ソーニャはようやく回線を開いた。
「フローラさん、ボクの持つわずかな世界。艦橋だけはやらせるわけにはいかないね。保険はかけとくよ。今回だけはヤバイ気がするから」
「そうですか? どうしたんですか?」
「うん‥‥まあ、ね。たまには待ちぼうけもいいさ。杞憂ならそれでいい」
 だからジョワユーズの陰に待機。アレン一点待ち。
「待ちぼうけだって、みんな強いから、ボクの出番がなかったってそれだけだよ」
 美空は主砲の射程圏まではジョユワーズに随行し、同艦を隠れ蓑にして接近していく。3機のラスヴィエートを直衛に、離脱。離脱の際に煙幕を展開、ジョユワーズ防衛用と見せてその間に離脱する。敵戦闘艦の側面方向に移動。敵艦へ常に正面を向けつつ移動する。味方部隊がバグア艦に取りつく間に、収束砲撃機構「天龍」を使用してチャージを開始する。砲撃は2チャージずつに分け、3射の予定であったが、改めて確認すると、天龍の砲撃は一度が限界であった。
「仕方ありませんね。この一撃に掛けるのであります。艦尾へ集中」
 敵艦の足を殺すのが主目的だ。
「12時方向、距離400、チャージ開始なのであります」
【SP】艦載式対艦荷電粒子砲【吼天】の先端に光が収束していく。
「収束砲撃機構『天龍』――発射であります!」
 雷神ヘングの砲門から閃光がほとばしった。その一撃はバグア戦闘艦を貫通した。
 ややあって、キングスレーがティターンで出て来る。
「やってくれるな美空傭兵」
 清四郎は、キングスレーが出てきて機刀、ベズワル以外をパージして高速接近戦闘を挑む。
「来たか、艦長席で椅子を温めているのはお前の趣味じゃないだろう? キングスレー!」
「言ってくれるじゃないか清四郎」
 マニューバを使用し素早い動きでとにかく相手を翻弄し、時には蹴りや体当たりを加えてベズワル、機刀を無理にでも叩き込む。
「数年前までは俺達傭兵は死にもの狂いでバグアの追撃を防いできたが、逆が多くなってきたな、これが時勢という奴だな! お前たちの故郷の赤い月はどんなところだ!? 俺たちの地球のように美しいか? それとも死の星なのか? お前が命をかけて守りたいと思えるものなのか? どうなんだ!?」
「遥か昔に母星を発って、バグアにはあの星しか帰る場所が無い。バグア的には美しいと思うがね」
 孫六も突進した。FアセンションとFビートダウン併用で、スキルを伴う移動は上下も含めた3次元の機動。
「バグアが抱く、地球人への恐怖の根源か‥‥。お前から、恐怖と言う台詞が出るとは思わなかったぞ! だが、今のお前達が味わっとる恐怖は、ワシ等地球人が長い年月味わって来たモノだ! その恐怖を受け入れ昇華した時、更なる力を生み出して来た! それが地球人の強さだ! それは理論や理屈を超越した所に有る! 純粋な意志や願い、信念でも良い! それ等の想いがユダにどれだけ影響したか、お前なら解っている筈だ! 奴といい、お前といい、バグアは理論で考え方を縛り過ぎだ! 地球人を知ろうとするなら、そんなモノかなぐり捨ててぶつかってみろ! ワシ等は必ず、赤い月へ行く! 全ての決着を付ける為にな! 其処でお前達は、地球人の更なる力に驚く事になるだろう!」
「お前たちはどこまでも来るつもりか。ならば、我々も総力を以って迎え撃つまでだ。赤い星がお前たちの墓場となる」
 ルキアはライフルとウィングエッジで立ち向かう。ミサイル+白金蜃気楼の使用で牽制する。
「――もし、此処で誰かが死んだら、何かを託すのだろうか? 死と言う事象に、何を見るのは勝手だケド。生きないと『セカイ』はソンザイしないんだよね。死に意味を見いだすと、生の意味が薄れる。だから、私は生きるよ。どちらが生き残るか、どちらに転んでも楽しもう。笑っても泣いても、生も死も変わらない」
「今さらセカイもソンザイも残酷だ、などと言うつもりはない。死に意味を見出すつもりもない。我々の旅路は続く」
 キングスレーは言って後退する。
 だが王零がいた。仲間の攻撃やキングスレーの対応から用意したデータと照らし合わせて砲撃のタイミングを見定め、対応班を振り切ろうとしたところを狙い、ブーストとフォース・アセンションの併用して狙い済ました300mm多薬室砲「ガンクラブ」の一撃を撃ち込む。
「悪いがその行動は見えている。DMSモードN起動。‥‥撃たせてもらうぞ、キングスレー!!」
 直撃を受けたキングスレーはだが転がるように退却する。
 その後バグア艦は自動操縦で突撃、ジョワユーズに破壊される。