タイトル:【Woi】太平洋の盾マスター:安原太一

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 4 人
リプレイ完成日時:
2009/06/25 18:07

●オープニング本文


●第二次五大湖解放戦――
「‥‥以上を踏まえた上で、“第二次五大湖解放戦”を実施する」
 作戦会議室のテーブル上で、ヴェレッタ・オリム大将が宣言した。
 居並ぶメンバーはオリム大将の幕僚と、そして特殊作戦軍のハインリッヒ・ブラット少将である。
 スクリーンに映し出される北米大陸の地図。重要ポイントとして強調されているのは五大湖周辺である。北米各地の拠点から五大湖周辺の戦力の集中。ヨーロッパからの援軍も五大湖へと配されており、太平洋方面からの援軍が手薄になった西海岸、とりわけロサンゼルスを穴埋めする形となっている。
 五大湖地域。それは言わずとしれた北米大陸でも屈指の工業地帯であり、2008年2月の大規模作戦において解放を目指した地域である。
 極東ロシアでの華々しい勝利は、バグア軍の戦略的意図の粉砕、重要兵器の鹵獲、豊富な地下資源の眠るシベリアの奪還などの成果を得た。だが、1つ目についてはあくまで防衛上の達成であり、2つ目、3つ目については目に見える効果があがるまでには、時間を要するであろう。
 極東ロシアでの勝利の勢いに乗って、より即効性のある戦果を求める声は当然であり、それが巨大な工業地帯を要する五大湖周辺の解放であるのは自然な流れであろう。
「バグア側への情報のリーク、感づかれるなよ?」
「むろん、その点はぬかりなくやってみせます」
 オリムが幕僚の一人に念を押すと、幕僚は自信ありげに答える。
「ブラット少将からは何か?」
「思い切った作戦だとは思います。が、やってくれると信じます。作戦名は決まっているのですか?」
 オリムに聞かれたハインリッヒは作戦の困難を指摘しながらも、それを克服できるという自信を見せる。
 オリム大将はしなやかな指で顎をつまんで、ブラット少将の問いに答えた。
「The American Revolution(アメリカ独立革命)‥‥というのはさすがに身贔屓が過ぎるな。作戦名は、War of Independence(独立戦争)だ」
 大規模作戦の本格的な発令は6月末。作戦期間中、アメリカは233回目の独立記念日を迎える。

●前哨
 かくして、北米における大規模作戦が再び始まろうとしていた。全戦線から大規模な動員が行われるのは今に始まったことではなく、UPCアジア方面軍にも総司令部から北米に向けて援軍に出向くように命令が下されることになる。
 現在UPC北中央軍とヨーロッパ方面軍が五大湖周辺に着々と展開、あるいjは向かっている途上にある。
アジア方面軍に与えられた任務は、手薄になったアメリカ西海岸の防衛である。現在の西海岸の情勢は以下の通り。
 2009年、フロリダにあると考えられていたシェイドが中米ドミニカ共和国に姿を現し、その後、UK弐番艦が極東ロシア戦線に参戦した隙を突いて、ステアーと共にロサンゼルスを強襲。UPC北中央軍とULT傭兵の抵抗によりロス市街は守られたが、ステアーの攻撃によってロス南部の橋頭堡が半壊、単機で市街地深くまで侵入したシェイドもまた、その驚異的な機動力を人類に見せつけた。
 極東ロシア戦線が終息し、修復中のUK弐番艦は、間もなくロサンゼルスへと帰還する。現在は、UK弐番艦の存在がサンディエゴ周辺のバグア勢力を抑え込んでいると考えられるが、シェイド、ステアーを含む敵エース機の脅威が消えたわけではない‥‥。

 太平洋――。
 アジア方面軍の艦隊がアメリカ西海岸へ向かって進んでいた。
 その上空には常に傭兵たちが展開している。UPCの大規模な動きをバグアが見逃すはずが無いのは当然のことであり、艦隊が西海岸に到着する前にバグアの襲撃があっても不思議はない。いや、それは必然とも言えるだろう。
 傭兵たちは緊迫した面持ちでレーダーを見つめていた。そして――。
 ピッ、ピッ、ピッ、ピッ‥‥と次々と光点が浮かび上がってくる。適度なジャミングにレーダーがザザーッと乱れる。
「‥‥おいでなすったようだな」
 傭兵たちは操縦桿を傾けると、編隊を組んで迎撃に向かう。
「予想通りだ。敵さんを一機たりとも艦隊に近づけるな。行くぞ、グッドラック!」
「こしゃくな人間どもが、全機撃ち落としてくれるわ‥‥全機散開! UPCの飼い犬を海の藻くずにしてやれ!」
 敵は有人機――回線から鳴り響くバグア軍パイロットの声に傭兵たちは操縦桿を強く握りしめた。
 太平洋の上空で激戦が始まる――。

●参加者一覧

榊 兵衛(ga0388
31歳・♂・PN
篠崎 公司(ga2413
36歳・♂・JG
篠崎 美影(ga2512
23歳・♀・ER
熊谷真帆(ga3826
16歳・♀・FT
智久 百合歌(ga4980
25歳・♀・PN
藍紗・バーウェン(ga6141
12歳・♀・HD
ソード(ga6675
20歳・♂・JG
緑川 めぐみ(ga8223
15歳・♀・ER
ヴァレス・デュノフガリオ(ga8280
17歳・♂・PN
アーク・ウイング(gb4432
10歳・♀・ER

●リプレイ本文

「どうやら護衛機が敵機と交戦に入ったようです」
「うむ‥‥やはり来たな」
 UPC艦隊旗艦の艦橋で、艦長は部下からの報告を受けて重々しく頷いた。
 北米の戦いに向けて、全軍が移動を開始している。バグアには当然察知されているだろう。
「我々の任務は、傭兵たちとともにロサンゼルスを守り抜くことだ。どうやら本部からの指示も出たようだな」
「しかし‥‥少数の部隊でバグア軍の攻勢を支えきれるのでしょか‥‥北米には噂のバグア機エースが存在するのでしょう?」
「疑問を差し挟む余地は無い。この作戦は上が決めたものだ。我々は命令に従うまでだよ」
「は‥‥」
 艦長はじっと前を見つめた。
「空で戦っている傭兵たちの健闘を祈るとしよう。だが万が一ということもある。艦載機の発艦準備を整えさせよう。敵の増援は今のところ確認されていないが‥‥」
 艦橋は慌しさを増していく。待機中の傭兵たちが乗る艦載機に出撃準備命令が下される。
 そしてその頃、護衛機の十機のナイトフォーゲルは来襲した八機のHWと遭遇戦に入りつつあった‥‥。

「‥‥敵機確認。間もなくエンゲージに入ります」
 篠崎美影(ga2512)は岩龍のレーダーに映る敵影に機体のコンソールを操作する。
「カプロイアミサイル搭載機は敵機AからEに攻撃をお願いします」
「HW編隊真正面から突入してきます。各機体当たりに警戒せよ」
 ウーフー乗りの篠崎公司(ga2413)もレーダーを操作しながらジャミングを開始する。
「了解管制官、榊機は差し当たり正面の敵機を粉砕する。バグアパイロットにはあの世で後悔させてやろう。敵には速やかな退場を願う」
 榊兵衛(ga0388)は言って雷電の操縦桿を傾ける。
「ソード機了解しました。初撃で敵の足を止めましょう。ミサイルはレギオンバスターで全弾発射します」
 シュテルンの機体を操るソード(ga6675)の必殺技、レギオンバスター。PRMシステムを起動し錬力100全てを攻撃へと転換。行動値全てを使ってカプロイアミサイルを発射する技である。現在1250発のミサイルを発射可能である。
「ヴァレス機了解。ミサイルで敵さんの出鼻を挫く」
 凄まじい速さで接近してくるレーダーの敵機を確認して、ヴァレス・デュノフガリオ(ga8280)はミサイル発射ボタンに手を置く。
「間もなく射程に入ります。各機割り振られた目標への攻撃をお願いしますね」
 美影はレーダーに目を落としながら僚機に攻撃の合図を送る。
「各機とも現在の高度を維持、カプロイアミサイル発射後は速やかにドッグファイトに移行願います。警戒発令、オーバー」
 公司の官制がそれに続く、美影はカウントダウンを開始。
「カウント、4,3、2、1、0!!」
「ミサイル発射」
「ロックオン完了。『レギオンバスター』発射します!!」
「挨拶の花火だ、残らず持っていけ!」
 榊、ソード、ヴァレス機から二千発以上のミサイルが放たれ、無数の流星となってHWに向かって飛んでいく。
 HWは回避行動を取って上昇したが、ミサイルはもの凄い勢いで追尾、全弾命中して轟音と爆炎を巻き上げる。
「やってくれるな傭兵ども! だが我々の攻撃を防ぎきることが出来るか!」
 炎の中から姿を現すHW。損傷しているがパイロットの強化人間たちはワームをナイトフォーゲルに向かって突進させてくる。
「敵機散開。榊さんは敵機Aに向かって下さい‥‥」
「敵機CとE、上方から背後に回り込みつつあります。ソード機とヴァレス機で対応願います」
 美影と公司は引き続き官制を続ける。
 空中戦はドッグファイトに移行していく。
「超伝導アクチュエータ軌道、我が忠勝の前に露と消えるがいい」
 榊は敵機をロックオンするとミサイルを叩き込んでいく。
 突進してくるワームを超伝導で回避しながらミサイルを打ち込む熊谷真帆(ga3826)。サポートの保護者と一緒に敵機を追い込んでいく。
「逃さないです、母ちゃんに言いつけるです。私たち一人ひとりは単なる能力者ですが‥‥二人で敵を挟撃すると丼となります。『丼』、丼となった親子は‥‥無敵ですっ!」
「わけの分からぬことを‥‥何が無敵だ! 舐めおって!」
 強化人間は真帆に罵声を叩き付けると上昇下降してプロトン砲で反撃してくる。超伝導アクチュエータを起動して回避する真帆。
「悪いバグアはお母ちゃんと一緒に倒すです! 戦場の風紀委員真帆ちゃんが許しません!」
 真帆は雷電をうねるような動きでHWに食らいつく。
「厄介なキューブがいないのは幸いだけど‥‥」
 智久百合歌(ga4980)は乱れ飛ぶワームの背後にぴたりと付けると、ドゥオーモミサイルを発射。ワイバーンから百発のミサイルが流れるようにHW目がけて飛んでいく。――命中。爆発がワームを包み込む。
 さらにブースターを起動して一気に間合いを詰める。旋回するHWのプロトン砲の反撃をマニューバ機動で回避しながらソードウイングで切りつける。
「残念ながら、ここから先は関係者以外立ち入り禁止なのよ。あなた達には退場してもらうわ」
「我ら強化人間はバグアのテクノロジーでお前達を越えた! 止めることは‥‥出来ん!」
 HWは慣性飛行で急旋回してワイバーンの攻撃を回避する。
「来たな‥‥CIWS起動、火器管制アクティブ‥‥空戦隊Simoonの鴇‥‥いざ参る!」
 藍紗・T・ディートリヒ(ga6141)のアンジェリカから放たれたドゥオーモミサイルがワームを捕らえる。
 爆発炎上するワームが旋回してアンジェリカに向かってくる。プロトン砲が直撃してコクピットを揺らす。
「さすがに、この重い機体では回避は無理‥‥ならば当たっても、被弾箇所を散らして態勢を維持し、一撃を当てるのみ!」
 藍紗は機体をロールさせながらすれ違いざまに粒子砲を叩き込む。
「そう簡単に落とせると思うでないぞ‥‥味方が来るまでの時間くらい稼いでみせるのじゃ! その油断とともに沈め!」
「おのれ‥‥どこまでも邪魔立てするとはしぶとい奴らだ!」
「それはこっちの台詞じゃ!」
 強化人間の言葉に藍紗はアンジェリカを反転させる。逃げるワームにブースター、スタビライザー軌道で接近、ミサイルを叩き込んで粒子砲を連射する。瞬く間に練力が無くなっていくが、ワームに大打撃を与える。
「めぐみさん、敵機Cへ攻撃をお願いします」
 美影の指示で緑川めぐみ(ga8223)は敵ワームに接近する。
「了解、いきなり全力全開でいくわ! パニッシュメント・フォース発動!!」
 ディアブロの機体能力を解放するめぐみ。コクピットから見える位置にもワームを捕らえると、G放電ミサイルを連射する。命中したミサイルが放電を巻き起こす。
 続いてホーミングミサイルを叩き込む。流れる軌跡を描いてミサイルは命中。だがワームは怯むことなく飛んで旋回する。
「もう! ただのヘルメットワームじゃないわ! 装甲硬いじゃないの! こんなのを艦隊に近づけるわけにいかないわ!」
 マシンガンを打ちながらブレードウィングでの斬り合いに移る。
「最後の武装はこれしかないし、ディアブロは斬り合いを目的にしたものだもんね。いくわよ!」
 ブースト+パニッシュメント・フォースを併用。一気に肉薄する。
「受けてみなさい。生まれ変わったディアブロの怒りの一撃を!」
「小賢しいわ!」
 逃げるHWにブレードウイングを叩き込む。爆発するワームはまだ落ちない。それどころか反撃の体当たりを受けてめぐみは冷や汗ものだ。
「くっ‥‥やるわね!」
 そこへ智久のワイバーンが援護に訪れる。
「どきなさい強化人間、ここはお呼びじゃないのよ」
 D2ライフルの連打を受けて離脱するHW。
「すいません智久さん!」
「何の、お互い様よ」
 アーク・ウイング(gb4432)はシュテルンを操りながらソードとともに空戦に挑んでいた。
 慣性飛行で逃げるHWに食らい付きながらミサイルを全弾叩き込む。アークの見つめる先で爆発するワーム。
「大規模作戦に悪影響を出すわけにはいかないからね。一機たりとも抜かせないよ」
 さらにPRMシステムで命中を上昇させ、D2ライフルを叩き込んでいく。HWは巧みなロールでかわすが、直撃を食らって態勢を崩す。
「取り柄は硬いだけですか? つまらないですね」
 ソードはブースターを起動させると、一気に間合いをつめて、対空砲エニセイを打ち込む。
「う、おおおお‥‥!」
 強化人間の叫びとともにHWの装甲が弾け飛び、遂にワームは爆発四散した。
 ヴァレスはワームのプロトン砲を右に左にロールで回避しながら、機会を伺っていた。
「バグアのパイロット、この程度か‥‥」
 シュテルンの可変翼を左右上下に開いて空気抵抗を発生させ、機体を下降させて失速させる。急ブレーキが掛かって、ワームはシュテルンを追い抜いた。直後、ヴァレスは翼を戻し、ブースターで一気にワームとの間合いを詰める。
 8.8高分子レーザー、通称アハトを浴びせかけ、さらにスラスターライフルを叩き込み、最後にソードウイングの直撃を打ち込んだ。
 ワームは爆発し、強化人間の悲鳴が通信回線に響いた。
「馬鹿な! この機体がナイトフォーゲルに落とされるなど‥‥そんな馬鹿なことが!」
 そしてHWは爆発四散して木っ端微塵に吹っ飛んだ。
「‥‥戦況報告。残る敵は六機です。ヴァレスさんは敵機Bを‥‥ソードさんは‥‥」
 美影はレーダーのマークに目を落としながら味方を割り振っていく。
「各機とも最後まで手綱を緩めることなく。増援が無いとも限りませんからね」
 公司は機体を傾けながら、コクピットから飛び交うナイトフォーゲルとヘルメットワームを見つめる。
「智久、俺とロッテを組めるか? 連携プレーで行こう」
「いいわよ。お望みならね」
 榊の問いに智久はバンクサインで答える。
「よし、行くぞ!」
 雷電とワイバーンが編隊を組んで敵ワームに攻撃を仕掛ける。
 榊がライフルでワームを追い込み、智久がソードウイングで攻撃を仕掛ける。
「やるわね」
 智久は榊の雷電を見やりながら、メロディを口ずさんでいる。二機一組でワームを追い込み、智久もライフルを次々と叩き込む。
「ぐあああああ!」
 爆発四散して吹っ飛ぶHW。
 真帆もサポートの母親とともにHWを追い込んでいた。
「丼は最強です! 親子丼アターック!」
 ガトリングとD2ライフルを立て続けに食らったHWは爆発、遂には吹っ飛んで砕け散って海の藻くずと消える。
 藍紗のアンジェリカはめぐみのディアブロとロッテを組んで敵機に当たる。
「まだまだ護りの天使の二つ名は不似合いかもしれないですけど、その名に負けないように頑張ります! 行くわよ!」
 ブレードウイングを叩きつけるめぐみ。離脱するめぐみに続いて藍紗が必殺の粒子砲を叩き込む。
「我が主砲必殺の一撃‥‥その身に刻むがいい!」
 閃光がHWを貫き、ワームは木っ端微塵に爆発して消滅。
 ソード、ヴァレス、アークは三機一組のケッテを組んでワームを追い詰めていく。
「おのれ! 何と言うことだ! ここまで撃墜されるとは‥‥」
「全機撤収せよ! 残念だがこれ以上の戦闘は不可能だ。撤退!」
「傭兵たちよ! この借りは北米で返させてもらうぞ!」
 捨て台詞を残して次々と離脱していくヘルメットワーム。太平洋の彼方に飛び去っていく‥‥。
 美影と公司はレーダーから敵影が消えたのを確認する。
「敵ワーム全機撤退しました。周辺に敵影なし」
「任務はひとまず無事に終了です。艦隊にワームの撤退を知らせるとしましょう」
 こうして太平洋の激戦は幕を閉じた。
 UPC艦隊は、この後無事に北米西海岸に到達することになるのである。
 だが戦いはこれから、待ち受ける北米決戦において、傭兵たちは再び激闘に身を投じていくことになるのであった‥‥。