タイトル:【北伐】ハルビン攻撃マスター:安原太一

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/10/23 16:30

●オープニング本文


「攻撃は最大の防御なり。時を逸し、座して死を待つは用兵の愚である」
 UPC東アジア軍中将、椿・治三郎(gz0196)の決断により、極東ロシア開発を脅かすバグア軍新兵器「雷公石」の発射基地を擁する中国東北部のバグア一大拠点・瀋陽攻略作戦は発令された。

 だが瀋陽はそれ自体が重武装要塞都市へと改造された難攻不落の牙城である。これを陥落させるには過去のあらゆる大規模作戦をも上回る困難が伴うであろう。しかも中国内陸部から侵攻するには、北京包囲軍を始め障害となるバグア支配都市が多いため時間がかかりすぎる。
 そのためUPC軍が選んだのは遼東半島経由の北上ルートによる攻略だが、同時に陽動作戦として黒竜江省、吉林省を経由したロシア側からの侵攻も実施される。そのための足がかりとして重要なのが中国東北部の要衝・ハルビンの攻略だ。
 これはまた、中国方面から極東ロシアへの再侵攻を図るバグア軍と正面から激突し、その意図を挫くという重要な戦略目的も兼ねている。

 ハルビン攻撃の主力を担うのは極東ロシア軍だが、そのための侵攻ルートは2つ。
 ウラジオストックから綏芬河市(中露国境の町)で中露国境を越えてハルビンに向かうルートからバグア軍の側面を衝き、アムール川(黒竜江)をさかのぼってハバスロフクで中露国境を越えてハルビンに向かうルートで正面からバグア軍を阻む。
 しかしバグア側もかつて大敗した極東ロシア戦での屈辱を晴らすべく、並々ならぬ決意で挑んでくるであろう。陸空を舞台に激戦が予想される。
 傭兵諸君は遊撃戦力として極東ロシア軍を適宜支援して欲しい。



 ――GDAB。UPC軍ゴビ砂漠空港基地。
 瀋陽攻略へ向けて、南の遼東半島から攻撃を開始するのに合わせて、北のハルビンへ陽動攻撃を行う。そのためのルートは二つ、ウラジオストックとハバロフスクから中露国境を越える案が示された。
 そして、ここGDABには第三の攻撃命令が下る。千キロ以上離れたハルビンに対して、長駆中国北部を飛び、攻撃を開始せよと。
「‥‥なるほどな。大規模作戦が発令されたようだな」
 言ったのはGDABに詰めるUPC軍将校の一人。瀋陽攻略作戦は彼らにも存分に働いてもらわねばならない。GDABは中国内陸部から攻撃を行うことの出来る唯一の人類側の拠点である。
「だが、戦力が足りないな。南からの援軍はまだ届きそうに無いからな」
 そう言って思案顔で卓上の地図に目を落としたのはもう一人の将校。
 中国情勢は厳しい。GDABから簡単にハルビンを攻撃しろと言うが、北京などを守っているバグア軍を始め、この国には群小のバグア基地がひしめいている。例え仮にラストホープ屈指の名機でもまともに基地の一つへ攻撃しようものなら、周辺の基地から集まってくる増援の前に、たちまち数の暴力で打ち倒されてしまうだろう。
「それでも、やるしかない」
 内陸部からの攻撃で、ハルビンと遼東半島を間接的にでも援護するのは有効であろう。GDABには少数の戦力でバグア軍を足止めすることが求められていた。
 だが、彼らが待っていた戦力が到着し始める。UPC軍が、南で行われていた西安の戦闘において、敵航空戦力のHWに打撃を与えることに成功したのだ。これによりGDABの補給が改善したことを受けて、ハルビン攻撃のための増援の部隊が到着し始めたのである。
「待たせたな」
 コクピットから降り立った傭兵たちは、GDABの兵士たちと握手を交わす。
「西安解放はまだ途上だが、敵の哨戒は半減したようだぜ。南の本部から増援が届くだろうぜ」
「有難い。吉報を待っていたところだ」
「それで、何でも長駆ハルビンへ攻撃を掛けろって聞いたんだが。これが千キロ以上離れてるらしいな。ロシア戦を思い出すぜ」
 傭兵たちは言って肩をすくめる。ロシア大規模においても、傭兵たちはハバロフスクからヤクーツクへ千キロの道を辿った。
 そして今――GDABから進発し、可能な限り敵の哨戒を抜けてハルビンを攻撃せよという任務が、傭兵たちに与えられたのである。

●参加者一覧

熊谷真帆(ga3826
16歳・♀・FT
アルヴァイム(ga5051
28歳・♂・ER
井出 一真(ga6977
22歳・♂・AA
ヒューイ・焔(ga8434
28歳・♂・AA
紅 アリカ(ga8708
24歳・♀・AA
抹竹(gb1405
20歳・♂・AA
セレスタ・レネンティア(gb1731
23歳・♀・AA
蒼河 拓人(gb2873
16歳・♂・JG
アンジェラ・D.S.(gb3967
39歳・♀・JG
ルノア・アラバスター(gb5133
14歳・♀・JG

●リプレイ本文

 出立前――。
 後はエンジンに火を入れるだけの十機のナイトフォーゲルが並んでいる。その下で、十人の傭兵たちが今回のミッションについて打ち合わせを行っていた。
「‥‥というわけで、予定の航路は中国北部、モンゴルとの境界付近を飛ぶことになります。行きも帰りも同様です。情報によれば、東のウラジオストックへ抜けるには敵基地の真上を飛ぶことになるようです」
 アルヴァイム(ga5051)は言いながら、卓上の地図に目を落とし、マジックで予定の千キロの航路を書き込む。UPCからは、帰路のウラジオストックは近いが敵基地が多すぎると追加の情報が来ていた。
「ふむふむ、真帆ちゃんは出来る子なのでアルヴァイム先生から良く作戦を教わるです」
 戦場の風紀委員こと熊谷真帆(ga3826)は眉間にしわを寄せて、自分の地図にも赤いマジックで線を書き込み、ぐっと拳を握り締める。
「御存知の通り敵の哨戒も厳重です。基本的に敵レーダーに捉えられないように、地形に沿って低空飛行で進むことになります」
「敵中突破千キロか。そうそう出来る体験では無いですね」
 機体の下から顔を出したのは井出一真(ga6977)。器用に地図に目を落としながら、機体の最終チェックを行っている。この井出、KV好きが高じて整備士の資格を持っていた。
「んでよ、編成の方なんだが‥‥」
 ヒューイ・焔(ga8434)が仲間達の顔を見渡す。現地に着いてからの編成。空中班にヒューイ・焔(ga8434)、アルヴァイム(ga5051)、ルノア・アラバスター(gb5133)。空挺第1班に紅アリカ(ga8708)、セレスタ・レネンティア(gb1731)、抹竹(gb1405)、熊谷真帆(ga3826)。空挺第2班に井出一真(ga6977)、アンジェラ・ディック(gb3967)、蒼河拓人(gb2873)と続く。
「‥‥今回の難しさは、千キロもの距離を横断していくことにもあるけれど‥‥」
 アリカは地図を見て呟く。単純に千キロ敵地を飛ぶだけでも危険な任務となろう。
「まあそこは、UPCからの情報を信頼するしかないわけですが。大規模作戦で無ければ到底実現不可能な任務ではありますね」
 抹竹は思案顔で地図に目を落とす。すでにハルビンと遼東半島においてUPC軍が作戦を展開しつつある。
「空挺第一班と第二班の支援体制は‥‥第一班が支援に回るということで宜しいでしょうか? 数も多いことですし」
 セレスタが仲間達の顔を見渡すと、空挺班の傭兵たちは改めて確認する。
「陽動攻撃か‥‥一つ暴れに行きますか! また極東ロシアを渡すわけにもいかないしね!」
 蒼河が元気な声を出せば一同思いは等しく、アルヴァイムが口を開いた。
「ハルビンの制圧作戦はロシア方面に出てくるバグア軍を叩く目的もありますからね。ここで少しでも敵に打撃を与えておきたいところですね」
「まあそれにしたって、ダブルヘッダーとは相変わらずUPCの要求は高いわね。ワタシたちは与えられたミッションをこなすだけだけど」
 アンジェラが肩をすくめれば、ルノアがたどたどしい口調で呟いた。
「今回の、作戦で、少し、でも、助けに、なる、なら‥‥絶対に、成功、させ、ます」
「そうですね。何としても、ハルビンに楔の一撃を打ち込みたいところです」
 アルヴァイムは頷いて、仲間達の顔を見渡した。ヒューイがにかっと笑って腕組する。
「意見も出尽くしたようだし、そろそろ行くかね」
 アルヴァイムは改めて頷いて、井出に最終チェックの様子を尋ねる。
「準備オーケーです。いつでも発進できますよ」
「では行きましょうか。いえ、言い忘れるところでした、途中無線は無しで行きましょう。どこで敵に傍受されるとも限りませんからね」
 アルヴァイムの言葉に一同頷くと、それぞれ愛機に飛び乗った。
 そうしてGDABの滑走路から次々と飛び立っていく傭兵たち。千キロの道を越えて一路中国北東ハルビンを目指す。

 ‥‥傭兵たちはバンクサインを交換しながら中国北部を飛ぶ。UPCからの情報を元に、敵の哨戒を避けて飛ぶ。中国北部にもバグアの基地は点在しているが、傭兵たちは地上すれすれを飛んで行き、敵の哨戒網をかいくぐっていく。
 途中北京北部に差し掛かったところで、一段と緊張感が高まる。北京の周囲にはバグアの環状包囲網が敷かれており、ハルビン途中の難関空域でもあった。だが傭兵たちは北へ北へ進路を取り、かつ適度な距離を保ってバグアの哨戒を抜けていく。
 そうして、傭兵たちは目的の場所、ハルビン西部、烏蘭浩特空港跡地に辿り着くことになるのである。

 ――例によってバンクサインを交換する傭兵たち。みなレーダーの反応を見て戦闘隊形を取る。前方に10個の光点が浮かび上がって、接近してくる。ヘルメットワームだ。
 アルヴァイムが機体を傾けると、ヒューイとルノアが続いて攻撃態勢に入る。
「さて、ワームには早々に消えてもらいましょうか」
「行くぜ! 付いて来いよルノア!」
「行き、ます、攻撃、開始」
 無線は切っているので声は届かないが、バンクサインを交換しながら敵機との距離を詰めていく。
「‥‥今回はこれまで以上にハードね‥‥気合入れていかないと‥‥」
 アリカも空中戦形黒鳥――ブラックバードにてワームに接近していく。その後方を固めるようにセレスタがウイングマンの位置に付く。アリカはセレスタ機を一瞥すると、軽くバンクサインを送る。
 真帆と抹竹のロッテはアリカとセレスタの横に展開する。
「おいでなすったな。行きますよ皆さん!」
 井出がバンクサインを送ると、アンジェラと蒼河は井出の両翼に展開してトライアングルを形成する。
「行くわよ、攻撃開始」
 アンジェラはロックオンキャンセラーを発動させると、カプロイアミサイルを全弾放出した。
 流星群のように500発のミサイルが敵ヘルメットワームに襲いかかる。次々と命中するミサイルが爆炎を上げて空を紅蓮の炎で染め上げる。
 アルヴァイムは照準の先のワームにトリガーを引く。ディスタンから炸裂するライフル攻撃。爆裂するワーム、反撃のプロトン砲を回避しながらアルヴァイムはワームを叩き落した。
「行っくぜー! かっ飛ばせー!」
 ヒューイはライフルを叩きつけると、ソードウイングで切りかかる。プロトン砲の反撃をローリングでかわしながらウイングで切りつける。ウイングが直撃してワームの装甲を切り裂く。
 ルノアはヒューイの攻撃に合わせてエネルギー砲を叩き込み、接近してはヒューイの前にいるワームにライフル、マシンガン、機関砲を浴びせかける。
 きゅん! きゅん! と鋭角軌道で接近してくる敵ワーム。青いエース機である。
「エース機がおいでませ!」
 ヒューイは機体を傾けると、放電ミサイルを撃ち込んだ。ミサイルが直撃して、放電を巻き起こす。
「余所見、なんか、させ、ない!」
 ルノアはヒューイの支援攻撃、エネルギー砲を連発して敵エースを打ち抜く。
「まさかこんなところまで人間どもがやってくるとは‥‥ご苦労なことだが、ここで全機撃墜される運命だ!」
 パイロットの強化人間は無線機に声を叩きつける。
「にゃろう‥‥そうはいかないぞ」
 ヒューイは操縦桿を傾けると、エース機に接近しながらライフルを叩き込む。
 ルノアも後に続いて銃撃を行う。銃弾を次々と受けつつも、エース機は反撃してくる。プロトン砲を三連射して後退する。
「逃がすものかよ」
 放電ミサイルを撃ち込むヒューイ。ルノアはエネルギー砲を打ち込んだ。
 エース機は直撃を受けて傾くが、体勢を立て直してプロトン砲を打ち込んでくる。
 アリカはスラスターライフルとレーザーライフルで敵ワームを撃ち抜き、ソードウイングで切り掛かる。セレスタもガトリングを叩きつける。ワームは後退して逃げるが、アリカのウイングが切り裂き、爆発轟沈する。
 抹竹と真帆もヘルメットワームを一機撃退する。
 井出、アンジェラ、蒼河たちもワームを撃破する。
「おのれ‥‥! ここまで来て生きて帰れると思うな!」
 エース機は脱出を試みるが、アルヴァイムのディスタンがライフルで撃破した。爆発四散するエース機。
 と、レーダーに新たな光点が浮かび上がる。敵の増援である。数は二機。
 アルヴァイムは空挺第二班にバンクサインを送る。
「残りは我らで引き受けるとしましょう」
「よし、行きましょうか、敵陣突破」
 井出が先陣を切って降下していく。基地に降り立つ阿修羅は四足の獣に姿を変えるとゴーレムを確認する。
 アンジェラもキャンセラーを発動させながら着陸していく。
 蒼河は着陸すると、煙幕を発生させながら降下して行く。
 ゴーレムとの交戦に入る第二班。
 そうする間にも空ではアルヴァイムとヒューイ、ルノアが中心となって敵機を掃討していく。
「制空権を確保、戦域クリア」
 セレスタはアルヴァイムたちとバンクサインを交換すると、第一班の味方ともサインを交換する。
「こちら第一班、Eポイントを確認‥‥これより降下体勢に入ります」
 セレスタはシュテルンを垂直降下させていく。続いて、アリカのシュテルンが。
「着きましたか‥‥では、かっ飛ばして行くか!」
 抹竹はアヌビスのフレキシブルモーションを使用して変形しつつ着陸していく。
 真帆は基地の管制塔や施設に対してロケット弾を打ち込んでいく。粉々に吹き飛ぶバグア基地。そうして真帆も着陸していく。

 ゴーレムが剣を振りかざして突進してくる。井出の阿修羅はプロトン砲を風のように回避して、サンダーテイルを打ち込む。
「SESフルドライブ。ソードウィング、アクティブ!」
 阿修羅が突進、ゴーレムにソードウイングを叩き込めば大爆発が起こってゴーレムは傾く。反撃の一撃をかわしつつ、ウイングで切りつける阿修羅。
 アンジェラは戦場を見渡しながらライフルで支援攻撃を行う。
「すぐにも別の基地から新手がやって来るはず‥‥」
 蒼河は敵のプロトン砲を接近してくるゴーレムを盾にして一気に間合いを詰める。レーザーカノンを打ち込みながら突撃。だが敵も立ち止まってプロトン砲に切り替える。
 蒼河は操縦桿を激しく傾けると、ミカガミはプロトン砲をかいくぐってゴーレムに突進する。
「行くよ!」
 ビームアクスを叩き付ければ、ゴーレムは凄絶に切り裂かれて爆炎を上げる。
 反撃の一刀を蒼河のミカガミは素早く回避する。
 そこへ第一班が駆けつけてくる。
 真帆の雷電が銃弾の嵐を叩き込んで味方を支援する。真帆は打って打って打ちまくる。
「よし、行ってくれ! バックアップするぜ!」
 抹竹は仲間達に手を振って合図を送り、自身は銃撃による支援攻撃を開始する。
 アリカとセレスタのシュテルンがゴーレムに突進していく。
 反撃のプロトン砲をかいくぐって駆け抜けるシュテルン。
 アリカの陸戦形態黒騎士――ブラックナイトが走る。セレスタも同時に駆け抜ける。
「‥‥どんな相手であろうと、穿ち貫く‥‥。そして三枚に下ろす!」
 レーザーを打ち込みながら突進したアリカは、ハイ・ディフェンダーを振り下ろす。直撃がゴーレムの胴体に打ち込まれ、爆発的な閃光がほとばしる。
 セレスタも実体剣リヒトシュベルトをゴーレムに打ち込む。剣がゴーレムの機体を切り裂き、激しく火花を散らす。
 第一班の支援を受けた第二班は、一気阿世にゴーレムを叩き潰していく。
「阿修羅の牙は鋭いぞ!」
 井出の阿修羅がサンダーテイルを打ち込めば、ゴーレムは活動を停止して崩れ落ちた。
 蒼河もビームアクスでゴーレムを粉砕する。それでも怯むことなく襲い掛かって来るゴーレムをアリカ、セレスタ、井出、蒼河は叩き潰した。
 そこでアンジェラが戦場を見渡し、照準先の気配を探る。と、北方から新手の影が出現する。アンジェラはその姿を認めると、仲間達に合図を送る。敵の突進に合わせてキャンセラーを発動させる。
「やはりここでもUPCが侵攻‥‥全機攻撃開始! 思い知らせてくれるぞ! 奴らを生かして返すな!」
「了解!」
 ゴーレムに搭乗している強化人間たちは裂ぱくの気合いとともに突撃を開始する。プロトン砲を構えて突進してくる。
 傭兵たちも銃撃の構えを取りつつ、ゴーレムの接近に備える。
 プロトン砲と銃撃が飛び交い、互いに距離が開く。傭兵七機に対してゴーレム五機。数の上では傭兵たちが有利である。
「そろそろ時間が迫ってる。さっさと倒して尻尾を巻いて逃げないとね!」
 蒼河は煙幕を放出すると、ランダムな軌道を描きつつ接近していく。
「この辺りで総攻撃を開始しませんと‥‥」
 セレスタも手を振って仲間達に合図を送ると、立ち上がる。
「やるしかない‥‥行くぞ!」
 抹竹も立ち上がって銃撃を行いながら機体を前進させる。
 傭兵たちも一気に突撃する。プロトン砲をかいくぐって七機のナイトフォーゲルが駆け抜ける。
 ゴーレムも抜刀すると、全機で突撃、両軍入り乱れての格闘戦が始まる。
 主力はアリカ、セレスタ、井出、蒼河の四人、残る真帆と抹竹、アンジェラはサポートに回ってディフェンダーなどで支援する。
 殊に強力なアリカのシュテルンと井出の阿修羅、蒼河のミカガミは敵エースをも圧倒する。
 アリカのシュテルン、ハイ・ディフェンダーでゴーレムを両断する。井出の阿修羅はクラッシュテイルでエース機に止めを差す。
 蒼河も機体内臓「雪村」でエース機を真っ二つに切り裂いた。
「いかん‥‥撤退‥‥! 撤退するぞ!」
 強化人間たちは狼狽して後退するが、傭兵たちはさらに機体を押し進める。ゴーレムが逃げる前に肉薄し、敵を全機殲滅する。
 最後にアンジェラが戦場を見渡す。ゴーレムは全機撃破、傭兵たちは残骸となった基地を制圧する。

 アルヴァイムら空戦班は空の増援を断ち切っていた。地上に降下した傭兵たちは空に舞い上がると、空戦班と合流して速やかに撤収準備に移る。予定通り地上のゴーレムを撃破して、敵の増援が来ないことを確認すると戦域を離脱する。
 帰路もまた千キロの道を飛ぶ。傭兵たちは言葉もなく、ただ無言で中国北部の山岳地帯を低空で抜けていく。
 敵の哨戒を抜けて、GDABに帰還後、傭兵たちはようやくプレッシャーから解放される。任務の無事成功を軍に報告するのであった。