タイトル:【ODNK】獅子の牙18マスター:安原太一

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 15 人
サポート人数: 1 人
リプレイ完成日時:
2009/12/11 10:57

●オープニング本文


 北九州、春日基地――。
 司令官のダム・ダル(gz0119)は、モニターに映る北九州のマップに目を向けていた。先の戦闘によって、築城方面の南、中津市へ大規模な兵力を送り込むことにほぼ成功したダム・ダルは、またまた部下の強化人間たちを集めて会議を開く。
 強化人間たちは久々の勝利と呼べるものに沸き立っていた。佐賀でも福岡南部でも敗退が続いていたのだ。ダム・ダルにとってはさしたる問題ではないが。当面ジャッキー・ウォンからは春日基地さえ守ることが出来れば良しと言われている。部下たちの喜びに特に関心はない。彼の中身はバグア人で、戦闘に勝つことと人類の観察と、個人的な関心は二つとも等しい。口に出しては、部下たちに次なる一手を模索させる。
「何とか中津市へ戦力を投入する目処は立ちました。中津市の西部はほぼ抑えてあるから、ここから市の東部と北部に向かってUPC軍を締め上げていきましょう」
 元UPCの軍人で強化人間の高橋怜奈は、部下でもある格下の強化人間たちに冷静に言ってのける。
「戦力は十分とは言え、無限というわけではありません。中津市を確実に制圧するには、UPC軍に決定的な打撃を与える必要があります」
「決定的な打撃とは‥‥」
「UPC軍の反撃が来るはずです。座して築城を明け渡すほど、彼らも怠慢ではないでしょう。敵の攻勢を叩きつぶすのです」
 高橋の瞳は、冷たく光っていた。
「作戦の詳細は任せるぞ。俺は中津市で嫌がらせの攻撃を準備しよう」
 ダム・ダルはそう言うと、自身はファームライドでの出撃を伝える。

 ――UPC軍の本部、熊本基地では情報部が忙しく中津市の状況を分析していた。偵察の電子戦機や旋龍からの報告を集約する。
 少なくとも、中津市の西部山岳地帯はバグア軍によって見る間に要塞化されつつあり、地上は対人キメラで溢れかえっている様子である。
 士官たちのもとに、詳細なデータが上がってくる。
「中津市の西部は落ちたか‥‥ファームライドが各所で猛威を振るったとは言え、初手から本格的に侵入してきたバグア軍を、全力で叩いておくべきだったか」
 士官たちは吐息する。攻防の先手はバグアに奪われてしまった。こちらから強引に攻撃を仕掛けるか、東部と北部の守りを固めるのが先か、士官たちの意見は割れる。
「敵の規模は苅田攻略戦に勝るとも劣らない大規模な軍勢だ。築城の守りをおろそかにも出来ないし、迂闊に仕掛けるのは厳しい」
「と言って、西部のバグア軍を放置しておくことも出来ん。守るだけでは中津市は取り戻せん。競合地域だったとはいえ‥‥」
 議論の末に、士官たちは中津市西部のバグア軍に攻撃を行うことを決断する。
 尤も、単に正面から攻撃するには戦域が広大過ぎる。移動するだけならナイトフォーゲルにとって4、50キロ程度大したことはないが。
 軍は中津市西部の山岳地帯を幾つかの戦域に分割する――。
1.山岳地帯東方、空戦域メイン。30機ほどのヘルメットワームの存在が確認。キューブやや多め。軍からもKV30機が出撃する。
2.山岳地帯東方、陸戦域。30機ほどのゴーレムが確認されている。軍からもKV30機が出撃する。
3.山岳地帯中央、空戦域。50機ほどのヘルメットワームの存在が確認。キューブ多数。地上に対空支援のタートルワームも確認。軍からもKV50機が出撃する。
4.山岳地帯中央、陸戦域。50機ほどのゴーレムが確認されている。軍からもKV50機が出撃する。
5.山岳地帯西方、空戦域。30機ほどのヘルメットワームの存在が確認。軍からもKV20機が出撃する。
6.山岳地帯西方、陸戦域。10機ほどのゴーレムが確認されている。軍からもKV10機程度が出撃する。
 バグア軍の布陣は中央が厚く、制圧がほぼ確実な西方はやや戦力が落ち着いている。東方はこれから敵兵力が増してくるものと思われる。
 軍のナイトフォーゲルは新型から中堅クラス、S−01まで幅広いラインナップである。シラヌイやフェニックスも多少配備されている。
 六つの戦域に分割された中津市西方山岳地帯、UPCも盤石とは言い難い。だが、攻撃命令は発令された。これ以上の侵入を許さず、バグア軍を叩く。
 だがそれは、バグア軍の待ち受けているところでもあったのだ。

●参加者一覧

藤田あやこ(ga0204
21歳・♀・ST
UNKNOWN(ga4276
35歳・♂・ER
クロスフィールド(ga7029
31歳・♂・SN
砕牙 九郎(ga7366
21歳・♂・AA
錦織・長郎(ga8268
35歳・♂・DF
麻宮 光(ga9696
27歳・♂・PN
冴城 アスカ(gb4188
28歳・♀・PN
鹿島 綾(gb4549
22歳・♀・AA
フィルト=リンク(gb5706
23歳・♀・HD
ソーニャ(gb5824
13歳・♀・HD
ナンナ・オンスロート(gb5838
21歳・♀・HD
天原大地(gb5927
24歳・♂・AA
神楽 菖蒲(gb8448
26歳・♀・AA
ゼンラー(gb8572
27歳・♂・ER
桜庭 結希(gb9405
18歳・♀・SF

●リプレイ本文

 ‥‥戦闘開始前、中津耶麻渓の牧場にてささやかな押し問答が繰り返されていた。
 伍長は目の前の牧場主に丁寧に説明する。
「藤田あやこ(ga0204)さんはご存じですね。あなた方の娘さんである傭兵です。隣接する北の中津に戦火が及んできました。ご家族には、ラストホープへ疎開してほしいとのことです」
 あやこの家族はこの牧場でブランド牛を飼育することに命をかける酪農家で、最初は伍長の言葉をはねつけた。
「‥‥娘さんはご家族を心配しておいでです。ラストホープへ避難されることが最善だと、娘さんはお考えなのですが」
 伍長の説得に折れたあやこの家族はラストホープへ向かう。

 中津市――。
 戦場に到着した傭兵たちは、UPCが六つに区分した戦場の内、バグアの戦力が薄い西方から進入する。
「UPCへ、ラストホープからの支援部隊です。戦況はどうなっていますか」
 あやこの言葉に、KVを操る軍属傭兵たちの声が無線から応える。
「戦闘はこれから始まる。援軍に感謝する」
「俺たちは西から攻撃を開始する。何とか持ちこたえてくれ。西から東へ、敵戦力を各個撃破しつつ転戦する」
 砕牙九郎(ga7366)の言葉に、軍属傭兵は「了解」と答える。
「では諸君らの勇戦に期待する。軍は当初の作戦通り、バグア軍に攻撃を開始する」
「勇戦はお互い様ですね。俺たちも軍の奮闘なしにこれだけの敵を相手には出来ませんからねえ」
 クロスフィールド(ga7029)は言うと、不敵な笑みを浮かべる。
「では行くか‥‥降下開始。空戦の諸君、健闘を祈る」
 UNKNOWN(ga4276)は操縦桿を傾けると、地上に降りていく。
 傭兵たちはAからEまで五つの班に分かれて戦域に進入する。空に二班六人、地上に三班九人。西から攻撃を開始する。

 レーダーに光点が浮かび上がってくる。
「2時の方向から敵ヘルメットワーム接近。全機エンゲージに備えよ」
 電子戦機から流れてくるナビゲーションに、九郎、クロスフィールド、鹿島 綾(gb4549)らはケッテを形成する。
 もう一つの傭兵ケッテはあやこにソーニャ(gb5824)、天原大地(gb5927)。
「攻撃を開始する」
「ミサイル発射」
「発射――!」
 ナイトフォーゲルの集団からミサイルが放たれる。流れる軌跡を描いて、ミサイルはヘルメットワームを捉える。炸裂する火球が飛び散って轟音を上げる。
 反撃のプロトン砲は容赦ない。ワームから放たれる怪光線はナイトフォーゲルを捉えて、傭兵たちはコクピットで閃光に包まれる。
「怯むな! 行くぜ!」
 九郎と鹿島は前に飛び出すと、機体を旋回させてワームを追撃する。クロスフィールドは二人の背後からサポートに。
 照準先のワームに銃撃を撃ち込む鹿島と九郎。クロスフィールドも敵の機動を抑制するように銃撃を叩き込む。
 弾丸が流れるようにワームを追う。逃げるヘルメットワームは旋回してジグザグの慣性飛行で回避する。
 あやこ、大地、ソーニャは空中を飛び交うプロトン砲の嵐の中で敵機を捉えるように飛ぶ。あやこと大地は積極的に前に出て、機関砲やレーザーを撃ち込む。ソーニャは電子戦機と情報交換しながら支援攻撃の機会を窺う。
「逃がしゃしねえぜ!」
 九郎は操縦桿を傾けながらライフルを撃ち込む。鹿島もライフルを叩き込めば、ヘルメットワームは直撃を受けながらも逃げる。
 背後を守るクロスフィールドはレーダーに目を落としながら僚機の奮戦に言葉を送る。
「二人とも後ろは気にしなくてもいいぞ、何しろ俺の他にも軍のKVがいるからな」
 クロスフィールドは言いつつ、上方から接近してくる敵機に牽制のライフルを撃ち込む。
 九郎と鹿島に追われていたワームは急速旋回すると反撃に転じてくる。プロトン砲の応射に、九郎と鹿島は機体をひねるようにかわす。
 上空をぐるぐると飛び交うあやこと大地、ソーニャ。ヘルメットワームと追いつ追われつのドッグファイトを繰り広げる。
「別府は渡さないわ!」
 あやこの怒声が回線に鳴り響く。故郷を踏みにじられて平静ではいられなかった。家族は無事だろうか‥‥と不安がよぎる。
「今は‥‥お前たちを倒す!」
 あやこはレーザーを果敢に撃ち込み、ヘルメットワームに突撃する。
「ここは渡さないぜ! バグアの好きにはさせねえ!」
 大地はスロットル全開で斬り込むと、機関砲を撃ち込む。
「今後の展開のためにも、ここは、ひとつでも多く落としておくべきね」
 ソーニャはG放電ミサイルを撃ち込めば、命中してワームは炎上する。
「――チームアルファ、敵機撃墜! 攻撃を継続する!」
 軍属傭兵たちの声が回線を揺るがす。
 鹿島やあやこら傭兵たちも、敵ワームとの激闘の末に徐々に敵勢力を撃墜していく。が、味方にも相当数の被害が出る。
 空の激戦を制しつつ、傭兵たちは東へ向かって飛ぶ。

 地上――。
「危険なナニかだな‥‥」
 UNKNOWNはトリガーを引く。森の中、駆け抜けるゴーレムをライフルで撃つ。
 銃弾の嵐がゴーレムを捉える。撃ち抜かれたゴーレムは爆炎に包まれて膝を突く。
「誰の許可得て人の彼女に粉ァかけてんのかしら?」
 神楽菖蒲(gb8448)はバイパーを操りながらサポート攻撃。ライフルを撃って撃って撃ちまくる。
「アスカにゃ触らせないわよ?」
 冴城アスカ(gb4188)はシュテルンを加速させると、ガンランスを突き出す。ガンランスが貫通して、ゴーレムは大爆発を起こす。
 突進してくるゴーレムは三人の銃撃の前に粉々に砕け散った。

「一端はこちらがイニシアティブを握ったとはいえ、補給路を抑える為に中津市を半分も封じてしまうとはね。奪い返すのにも迎撃で待ち構えているのが明らかだろうけど、手を廻さねば仕方があるまい。まあ、余計な牡牛座が邪魔しなければ良いのだけれどね、くっくっくっ‥‥」
 錦織・長郎(ga8268)はフィルト=リンク(gb5706)の支援攻撃を得ながら、ライフルを撃って前進する。
「錦織さん、援護します。今のところバグアはこちらに戦力を向けていません」
 フィルトは電子戦機から情報を集めていた。バグアが東で猛烈な攻撃を仕掛けていることを聞く。
「ただし一刻も早く東へ向かわないと‥‥」
 熱血少女の桜庭結希(gb9405)はヘルヘブンを操りながらゴーレムに突撃。
「悪の異星人はおうちへ帰れーってね! おかあさんは泣いてるぞ!」
 桜庭はスロットル全開で突撃すると接近戦を仕掛ける。
「悪の宇宙人め、正義の鉄拳を受けてみろ! 必殺! バニシングゥゥゥゥゥゥナッコォォォォォォオ!!」
 バニシングナックル――通称ロケットパンチが発射。有線式のロケットパンチがゴーレムを直撃、装甲に穴を開ける。
「貫け! エグツ・タルディィィィィィ!」
 続いてエグツ・タルディを撃ち込む。
「‥‥悪いが、バグアとのんびり構えている時間は無いのでね」
 錦織はスロットル全開でバイパーを加速させると、ディフェンダーでゴーレムを切り裂く。
 反撃の一刀を跳ね返し、錦織と桜庭はゴーレムに連続攻撃を浴びせかける。フィルトもレーザーを叩き込む。
 連打を食らって傾くゴーレム、かろうじて後退してプロトン砲を撃ってくるが、傭兵たちは銃撃で叩き伏せた。

「例えファームライドは落とせなくても、戦力を低減させれば占領地域を維持できないはず‥‥」
 ナンナ・オンスロート(gb5838)はショルダーキャノンを叩き込み、ゴーレムの動きを阻害する。
「お二人とも、一気に攻撃を仕掛けて下さい」
 ナンナはシラヌイを操りながら、ゼンラー(gb8572)と麻宮光(ga9696)に声をかける。
「動かざるを得なかったUPC。それを待つバグア。混戦は必至。混戦中でこそ、ナナハンの新しい活路が見出せると思う。バグアは、望むところだといったところだろうが‥‥拙僧達も、負けてはいられないからねぃ。これを勝利で飾って、一つドデカイ宴会をぶちあげたいところだねぃ」
 ゼンラーはヘルヘブン750を加速させると、ゴーレムの側面からスラスターライフルを叩き込む。
「あの世でゼンラの神様の裁きを受けるんだねい‥‥!」
 ライフルを撃ち込めば、直撃する銃弾が爆炎を巻き起こしてゴーレムを包み込む。
 反撃のプロトン砲をかいくぐって斬りかかるゼンラー。ゴーレムは後退しながらプロトン砲を連射する。
 コクピットが閃光に包まれる。ゼンラーはライフルに持ち替え、応射する。
 麻宮は操縦桿を傾けると、阿修羅が大地を疾走する。
「こないだの負け分はキッチリ返してやる。前回初めて撤退させられたからな‥‥負けっぱなしは性に合わない。今回は簡単にはやらせないぞ‥‥」
 ダム・ダル(gz0119)へのリベンジを誓いつつ、スラスターライフルを撃ち込む。阿修羅の銃撃は獰猛な獣のようにゴーレムに襲い掛かった。
 次々と直撃を受けて傾くゴーレム。
「止めを‥‥支援します」
 ナンナはショルダーキャノンを構えて麻宮とゼンラーをサポートする。キャノンを撃ち込み、麻宮とゼンラーが加速する。
 ゼンラーはプロトン砲をかいくぐって突撃、ディフェンダーを叩き込む。
「まだ先がある。ここで立ち止まってるわけにはいきません」
 麻宮はゴーレムに突進すると、ツイストドリルを突き出した。
 ディフェンダーとドリルがゴーレムの装甲を貫通し、大爆発を起こす。ゴーレムは半身が吹き飛んで崩れ落ちる。

 ――軍属傭兵たちから通信が来る。
「こちらUPC、ゴーレムを撃沈」
「ゴーレム全機の沈黙を確認した。戦域をクリア」
 コクピットでタバコをふかしながら、UNKNOWNは仲間たちと回線を開く。
「これで西部地上は確保した‥‥が、さらに西のバグアエリアからの支援の可能性は否定できない。早期に東の敵戦力を撃破し、中津市の安定化を図っておくとしよう」
「ラジャー」×8
「よし、全機東へ移動‥‥」
 かくして西部地上のゴーレムを圧倒して撃破した傭兵たちは、開けた空間から飛び立つと、東へ向かった。

 ‥‥ダム・ダルはファームライドの中から、眼下を見下ろしていた。空を舞うヘルメットワームとナイトフォーゲルの大部隊。
「司令――」
 そこへ強化人間の通信が入る。
「何か」
「西のワームがUPC軍によって撃破されました。意外にも敵の戦力は多く、苦戦を強いられた模様です。ゴーレムは全滅です」
「そうか、御苦労。引き続き情報収集に当たれ」
「はっ」
「さて‥‥」
 ダム・ダルは操縦桿を傾けると、ファームライドを転身させる。

 ――中央の集団戦に突入した九郎、クロスフィールド、鹿島、あやこ、ソーニャ、大地たちは、キューブワームの強烈なジャミングを受けつつ、ケッテを崩さずに進入する。
「こっちはとんでもないことになっているが、やるしかねえな‥‥! 行くぜ!」
「バグアどもの好きにはさせないぞ‥‥ここは悪いが落ちてもらおう」
「各機! 油断するなよ! まだファームライドがどこかにいるかも知れない! あいつが出てきたら厄介だぞ!」
「ビアダルには言いたいことが山ほどあるけど、行きましょう、今は目の前の敵を討つ!」
「サポートします。あやこさんに大地さんは攻撃を。何とか電子戦機とリンクを図ってみますが‥‥」
「負けるわけにはいかねえんだ‥‥! あの時みたいに、みんなが失われていく姿は‥‥決して負けはしねえ! ダム・ダルだろうとな!」
 低空飛行で進入を図るUNKNOWN、神楽、アスカ、フィルト、錦織、桜庭、ゼンラー、麻宮、ナンナら。
「さて‥‥ここからが正念場だ。東の大部隊は数で圧倒できるほどに盤石ではない‥‥」
「アスカ、サポートは任せて、思いっきり暴れてくれて」
「ダム・ダルの動きが気がかりね‥‥今日の牡牛座の運勢は最悪のはずだけど‥‥ね」
「正規軍のみなさん、到着が遅れてごめんなさい。まだ私たちの分は残っていますか?」
「ふふ‥‥ダム君はどこにいるのかな。さすがに僕たちの前にはでてこないのかね」
「悪の異星人に正義の鉄槌を! 桜庭、突貫します!」
「さて、拙僧の力の及ぶ限り750で戦うのみだが、ここはゼンラの神に祈るかねい」
「ダム・ダル‥‥お前と会ったなら、何としても先の借りを返すぞ」
「みなさん気をつけて‥‥言うまでもないことですが、ファームライドとの遭遇の可能性がありますから」
 その時である、15人の傭兵たちの背後から、凄絶な威力のプロトン砲が飛んできて、ナンナのシラヌイが数発で炎上する。
「何だ! 後ろから撃ってきたぞ!」
「何もないところからの攻撃です‥‥ファームライドですか」
 ナンナは冷静に分析すると、自身は機体を立て直して離脱する。
「私は逃げますが‥‥皆さんも生きて帰って下さい」
 ナンナはふらふらのシラヌイを操りながら離脱。
「ダムダルに言う事は山ほどあるわ」
 あやこは機体を旋回させると、果敢に見えないファームライドに討ち掛かっていく。
「ビヤダル、いで湯の守護者――この言葉に聞き覚えはあろう。今まで私の仲間がお前に抗ってきたのは今日のためだ。これは私の本土決戦、聖戦だ! 故郷が消滅すれば私の戦う動機、存在理由全てが消える。お前もバグアの闘士なら故郷の重みが判ろう。全身全霊を傾けてお前を追い払う。出て行け!」
「あやこさん‥‥! 余り出過ぎずに!」
 仲間たちは急いであやこの側面を固めると、合流して戦闘隊形を組む。
 光学迷彩で完全に目視不可能になっているファームライド、ダム・ダルは悠然と傭兵たちの頭上に回り込んでいた。
「いで湯の守護者‥‥ということはラストホープの者たちか」
「声が、どこだ‥‥!」
「‥‥瀋陽では驚かせてくれた。シェイク・カーンを倒すとはな。クリスマスパーティには間に合ったか」
 ダム・ダルの言葉に感情揺れる傭兵たち。何とか落ち着いて、赤外線レーダーに目を凝らすも、ファームライドの反応は全くない。
「牡牛座よ、出来れば邪魔せずに見物していてくれないかね? 僕たちも君にいつまでも関わってはいられないのでね」
「‥‥‥‥」
 ダム・ダルは返答の代わりにプロトン砲を錦織のバイパーに撃ち込む。数発の攻撃でバイパーは炎上する。
「上だ! 大丈夫か錦織!」
「厄介だねえこいつは‥‥光学迷彩は慎重に操縦されると脅威だね」
 錦織はそう言い残して、戦線を離脱する。
「全くだ、俺が慎重に操縦している限り、ファームライドを撃墜するのは至難だがな‥‥」
 ダム・ダルの言葉を受けながら、傭兵たちは散開して機影を探す。が、ファームライドはさらに上昇してその場を離れる。
 傭兵たちはダム・ダルのアクションが全く無くなってからしばらくして、軍と合流し、集団戦に加わる。
 その後傭兵たちとUPC軍は中央と東部の戦いでワームを封じ込め、何とかバグアの勢いを削ぐ。バグア軍は中津市西部に後退して反撃の態勢を整えることになる。
 だがファームライドの脅威が消えたわけではない。戦闘中、特に空戦においては時折出没し、軍のナイトフォーゲルが十機ほど撃墜された。