●リプレイ本文
二十機のナイトフォーゲルが久留米市に向かって飛ぶ。北に向かってY字編隊を組んでいる。Y字の中心にはSIVA傭兵団のディアブロ改が展開しており、両翼を傭兵たちが固めていた。
「此方フェンリル01。これより電子支援を開始します」
篠崎公司(
ga2413)はウーフーのコクピットでレーダーを操作する。
「情報リンク開始します」
傭兵たちは篠崎からの情報を受け取り、レーダーに目を落とす。
10個の光点が浮かび上がると、篠崎はナンバリングする。
「こちら藤田あやこ(
ga0204)機、情報を受け取りました」
「伊藤毅(
ga2610)機、情報を確認。敵は有人機らしいですから、足止めとか甘いことは考えず、全力で行きましょう。おそらく、それで五分です」
今度はこっちか‥‥一体ダム・ダルの目的というのはなんだろうな。バグアの目的が戦争を長引かせる事にあるにしても‥‥それだけが目的か? カルマ・シュタット(
ga6302)は内心で問いかけながら、レーダーを確認する。
「ファームライドの姿はなしかな。あいつが何を考えていようと、好き勝手にはさせない。‥‥あのバグア人には借りがある」
「こちらソード(
ga6675)。情報を確認しました。今回はレギオンバスターはなしですが、油断すると痛い目を見ますよ」
ソードのシュテルンは今回圧倒的なアテナイ装備の近接仕様である。
「セレスタ・レネンティア(
gb1731)、情報を確認しました。敵ワームを挟撃しつつ、各個に撃破していきましょう」
「Ogre――孫六兼元(
gb5331)、情報を確認した! ガッハッハ! 天駆ける鬼となるか、兄弟!」
孫六は愛機の操縦桿を軽く叩くと、豪快に笑った。
「サバター、鷹谷隼人(
gb6184)、情報を確認しました」
鷹谷はレーダーに静かに目を落としていた。常に冷静でいようとしているが、内心は穏やかではない。戦闘前の緊迫感で体内のアドレナリンが活性化している。
「騎士ってのはね、後ろに守るものがある方が強いのよね。神楽菖蒲(
gb8448)、情報を確認したわ」
「ブロンズ(
gb9972)情報を確認した。さて、どこまでやれるかな‥‥戦いくらい集中していくか」
篠崎はSIVA機とも情報を交換して、妻の美影からも情報を受け取る。
――レーダーの光点が動き始める。
「敵機接近してきます。全機エンゲージに備えて下さい」
篠崎は続々と集まってくるタロスの群れに警戒の声を投げかける。
傭兵たちはY陣形を取りつつ、タロスを飲み込むように前進する。
ソードは加速すると、タロスに突進していく。
「手数を生かした攻撃で、タロスだろうと落として見せますよ」
現れたタロス達からプロトン砲の応射が飛んでくる。しかし、ソードのシュテルンは跳ねるように空を飛び、タロスに接近していく。
「何だこいつは!?」
驚く強化人間の声が飛び込んできた。ソードは篠崎の管制を受けながら加速した。切り込むと、シュテルンがタロスに密着する。タロスを射程に捕えると、3000発のファランクス・アテナイが火を噴いた。
轟音と閃光が炸裂し、アテナイの銃弾がタロスを貫通した。
「う‥‥おおおおお!」
「逃がしはしませんよ」
ソードは旋回して、タロスに食らいつく。しかしタロスはあっという間に超音速に加速すると、慣性飛行でジグザグに飛んでシュテルンから逃げた。
「俺だけではないですからね。味方の牙から逃げられると思わないことです」
ソードはタロスを見送り、レーダーを見やりつつ、別のタロスに向かう。
「幾ら再生能力があってもこれなら‥‥どうだ!」
ブロンズは逃げるタロスに追い打ちをかけるようにミサイルを叩き込んだ。さらに上下に加速、左右に旋回して逃げるタロス。
ミサイルはタロスを追尾して、命中した。爆炎が炸裂して、タロスの装甲を貫通した。
「やったか‥‥いや」
ブロンズはレーダーの光点を確認して、軽く吐息した。
「簡単には落ちないか」
ブロンズはシラヌイの機体を傾けると、飛び交うプロトン砲をかわしながら次なる一手を探る。
「ダイヤモンドバック、エンゲイジ。騎士の誇りってのを見せてあげるわ」
バイパー愛称ダイヤモンドバック、神楽の機体は高空から急降下してタロスに攻撃を開始する。
「行くわよタロス。おねーさんが厳しくしつけてあげるわ」
降下しながら接近した神楽はツングースカを叩き込んだ。50発の重機関砲が火を噴いた。タロスを打ちのめす弾丸の嵐。
「篠崎機、遅れたけど支援するわ。電子戦機の操作に集中してちょうだい」
「ありがとうございます」
篠崎は言いつつ味方に情報を送り続ける。
「現状タロスは正面から向かってきます。SIVA機はそのままタロスを受け止めて下さい。傭兵各機は、両翼からタロスを挟撃、包囲殲滅を」
「あいつが出てくるまでは‥‥何が起こるか分からない」
カルマは、篠崎の管制を聞きながら、目の前のタロスに向かってトリガーを引いた。機関砲ツングースカが炸裂する。
轟音とともに銃弾がタロスを貫通する。
「やってくれるな! 人間が!」
タロスは加速しながら後退してプロトン砲を撃ち込んで来る。
カルマは全弾回避する。
「タロスのパイロット、ダム・ダルはいるのか」
「そんなことを聞いてどうするか。司令が出てくる頃には、お前の命は尽きておるわ」
「自信たっぷりだな」
カルマは構わずスロットルを吹かせて前進した。
タロスは後退しながら長距離からプロトン砲を撃ち込んでくる。
カルマは操縦桿を傾けると、機体が悲鳴を上げるような機動でプロトン砲を回避していく。
「(ピーガガ‥‥)ドラゴン1、エネミータリホー、2ボギー、マスターアームイグニッション、エンゲージイング」
伊藤は孫六と鷹谷の背後にフェニックスを付けると、レーダーに目を落とした。
「刃の下ぞ地獄有り! 踏込み行かば‥‥あとは極楽っ!!」
孫六は突進すると、プロトン砲をかいくぐってレーザーバルカンを叩き込みながら、バレルロールで突貫、ブレードウイングで切りつけた。
「ガッハッハ! タロスよ! 武士の一刀を受けよ!」
「何を抜かすか!」
タロスは慣性飛行と超音速の動きで孫六のウイングを回避しつつプロトン砲を撃ち込んで来る。
「ガッハッハ! やってくれるな、だが‥‥ワシがこの程度では引かん!」
「ならば撃ち落としてくれるわ!」
「ガッハッハ! 落ちるのはそっちだ! タロスよ!」
そこへ鷹谷が突進してくる。
「敵機視認‥‥サバターエンゲージ。援護頼みますよ」
ガトリング砲「嵐」を撃ち込む鷹谷のハヤブサ。40発のガトリング砲が回転して猛烈な火を噴く。嵐の名にふさわしく、タロスの装甲を銃弾が嵐のように撃つ。
しかしタロスは耐え凌ぐと、反撃のミサイルを百発ばらまいた。
「ドゥオーモですか‥‥? 回避行動――」
鷹谷と孫六は操縦桿を傾けると、うねうねと飛んでくるミサイル群を上下左右に機体を振って回避した。
「逃げろ逃げろ! この新型機が容易く落ちると思うな!」
強化人間の嘲笑が回線に鳴り響いた。
「(ピーガガ‥‥)シーカーオープン、ロックオン、ドラゴン1、FOX2」
伊藤は、態勢を立て直す孫六と鷹谷の背後から、ミサイルの支援攻撃を行う。伊藤はミサイルのボタンを押した。フェニックスからUK10が発射される。
ミサイルはタロスを直撃。
「行くぞ鷹谷氏! 再度反撃する!」
「単独戦闘は禁止‥‥複数で1機しとめる」
「(隼の限界‥‥新鋭機相手に何処までやれるかは‥‥僕の腕に掛かってる‥‥)」
鷹谷と孫六はタロスに接近、ドッグファイトを仕掛ける。
「(ピーガガ‥‥)エネミーガンレンジ、FOX3」
伊藤の声はジャミングの中で乱れている。再びミサイルを発射する。
「(ピーガガ‥‥)ボギー、2オクロック、レベル0、ライトターン」
空に上がると、自衛隊のパイロット時代を思い起こす。伊藤は淡々と支援攻撃に徹する。
「敵機補足、支援します。ロックオン、FOX2」
セレスタもまた孫六たちの戦闘に加勢すると、タロスを追いこんでいく。
と、別方向から新手のタロスが出没して、セレスタのシュテルンに迫る。
「セレスタ機、タロスが上方からそちらへ向かっています」
「‥‥了解、確認しました」
篠崎の管制を受けながら、セレスタは機体を傾けた。
「やられたらやり返すまで!」
強化人間は叫びながら、セレスタ機の上からプロトン砲を撃ち込みながら体当たりを仕掛けてくる。フォースフィールドを利用したワームの攻撃、フィールドアタック。
セレスタは操縦桿を傾けると、うなりを上げて加速するタロスをやり過ごした。旋回して、タロスを捕える。
「ロックオン、FOX2」
セレスタは元軍人らしく静かにコードを口にすると、ミサイルを撃った。ミサイルはタロスを捕えて爆発した。
藤田も接敵すると、飛び交うタロスに向かってD2ライフルを叩き込んだ。
「長距離兵器で鞭打つわよ!」
ライフルの連射にタロスの装甲が吹き飛ぶ。
「ふふ‥‥この程度で‥‥甘く見られたものだ!」
タロスは攻撃を受け止めながら、慣性ジグザグ飛行で接近してくると、藤田機に長距離からプロトン砲、接近してフィールドアタックを仕掛けてくる。
「何の!」
藤田はアンジェリカをひねるように回転させる。バレルロールで突貫すると、SESエンハンサーを起動させる。
「これが私からの贈り物よ! 受け取れ!」
ありったけの高分子レーザーを叩き込んだ。タロスを貫通するレーザーの連射。
「このまま叩き潰してやるわ!」
タロスは構わずに藤田の機体に体当たりをぶちかました。
直撃を受けて揺れるアンジェリカ。
「ちいっ! しぶといわね!」
「落ちろ!」
「落ちないわよ!」
藤田は再度エンハンサーを起動して、至近距離からレーザーを撃ち込む。
「おのれ!」
タロスは後退しながら100発のミサイルをばらまいた。
「ドゥオーモミサイル‥‥? でも当たるもんですか!」
藤田はスロットル全開で逃げると、ミサイルを全てかわして振り切った。
――その時である。
傭兵たちの背後に突如として新たな光点が浮かび上がる。
直後、SIVA傭兵の悲鳴に似た声が回線に鳴り響く。
「何だ! 後ろに付かれた! (ドカーン! ‥‥ザザーッ)」
SIVA傭兵のディアブロが2機、レーダーから瞬時に消えた。
戦場に緊迫が走る。
「FRの反応がありました。作戦通りに対応します。siva8〜10は援護を」
篠崎は眉間にしわを寄せながら、味方機に情報を送る。
「後方に大きな反応があります。恐らくファームライドでしょう」
「今回はお出ましか‥‥やる気か」
カルマは仲間たちとともに機体を旋回させる。
「タロス各機、そのまま傭兵たちを引き付けろ。俺が一機ずつ撃墜に回る」
それは紛れもなくダム・ダル(gz0119)の声であった。
聞いたことのある者には分かった。
「陣形を反転させましょう。SIVA機でタロスを足止め、主要な傭兵でファームライドの迎撃に向かいます」
篠崎は冷静に友軍に指示を出すと、傭兵たちはSIVAと連携を取って陣形を反転させる。
ヨリシロになって以来、ダム・ダルのファームライドが傭兵たちと激突することは少ない。
傭兵たちはまた消えるのではないかと言う不安を抱きながら、ファームライドに接近した。
「来い、春日基地司令のファームライドがいかほどか、知っておきたいだろう。たまにはな」
ファームライドは逃げも隠れもせずに、加速してきた。
「ビアダルが生意気な口聞いてんじゃないわよ! 耶馬渓の親の仇!」
激昂した藤田は突貫してエンハンサー起動でありったけのレーザーを撃ち込んだ。
ファームライドは――タロスとはけた外れの機動力で、藤田のレーザーは見事に空を切った。
「ビアダルと呼ばれるのも慣れてきたな」
ダム・ダルはのんびりとした口調で言いながら、容赦なく藤田のアンジェリカにプロトン砲を撃ち込んだ。
大爆発する藤田のアンジェリカ。
「藤田機、危険です。下がって下さい」
「こいつのせいで‥‥故郷が‥‥」
沸騰しそうな怒りを抑えながら、藤田は後退する。
篠崎はそれを確認しながら、全機をナビゲートする。
「各機、ミサイルを保持している機体は全弾撃ち込んで下さい。逃げる前にけりをつけましょう」
言いつつ篠崎もミサイルを発射する。
「ロックオン、FOX2」
「FOX2」
「ミサイル発射」
ブロンズ、セレスタ、伊藤、神楽らもミサイルを全弾発射、ありったけのミサイルを叩きつけた。
しかし――みな改めてファームライドの機動力を確認することになる。
そして小憎らしいまでのダム・ダルのアクロバットな操縦で、飛び交うミサイルをファームライドは全弾回避する。
加速するファームライドからプロトン砲が飛んでくる。
ブロンズは超電導アクチュエータを起動させるも、プロトン砲が直撃して貫通する。
「な、何‥‥この距離で当てた‥‥っ」
ブロンズは回避行動を取りつつ、何とか態勢を整える。
伊藤のフェニックスも、プロトン砲の連射を受けて、大爆発を起こした。
「(ピーガガ‥‥)くそっ、ドラゴン1、イジェクティング」
フェニックスはあっと言う間に行動不能となり、伊藤はコクピットから脱出した。パラシュートを開いて、空を見上げる。
「ちくしょう‥‥」
伊藤はそう呟いて、昂ぶる感情を抑えていた。
接近するファームライドに、孫六と鷹谷がドッグファイトを挑む。
「KV兵法・隼鷹!!」
孫六はブースターでファームライドの上方からウイングで襲い掛かった。
同時に鷹谷がガトリング「嵐」で突貫。
「力不足は承知! だがやらねばなるまい!」
「カルマさん、ソードさん、この機を逃さずに、決めて下さい‥‥」
孫六と鷹谷の攻撃を易々と回避し、ダム・ダルは二人のミカガミとハヤブサを蹴散らす。
「さて‥‥この辺りが潮時か」
「そうはいかないぞ‥‥!」
カルマとソードはファームライドを挟撃すると、エニセイとアグニを叩き込んだ。ラストホープでも上位に入る二人のシュテルンは、ファームライドを――捕えた。砲火が命中するが、それはだが小さな傷に過ぎなかった。
「消える前に奴を捕えろ!」
だがファームライドが消える前に、傭兵たちはありったけのペイント弾を撃ち込んだ。ペイントが命中する。
「消える前にお見舞いしておくわ」
神楽とカルマが煙幕発生装置を撃ち込む。
――と、レーダーからファームライドの光点が消える。
「ファームライド、ロストしました」
「出て来い。物質が消えたわけじゃない。煙の動きは見えるはずだ」
傭兵たちはファームライドの動きを見守った。
「ん? タロスが撤退していきます」
レーダーから、タロスの機影が後退していく。
「ダム・ダルは‥‥」
傭兵たちは待ったが、ファームライドの姿を捕えることは出来なかった。
すでにダム・ダルは、正面の傭兵たちに対して、煙幕を盾に真後ろに後退して逃走していたのであった。