タイトル:【MN】銀河の戦いマスター:安原太一

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/08/06 09:34

●オープニング本文


 宇宙暦685年――。
 銀河連邦第七艦隊は、銀河系の外縁部、ルドランシア恒星系を哨戒していた。
 司令官のガルシア提督は、執務室にいて、電子新聞に目を通していた。超光速通信で入ってきた最新の情報によると、首都の地球では、新たに大統領が選出されたと知らせていた。
「しかし、そろそろ故郷が懐かしくなってきたな‥‥」
 提督はコーヒーカップを口元に運ぶと、最新の記事に目を移す。
 そこで、卓上のフォンが鳴った。
 提督は音声を切りかえると、「何か」と、問うた。
「お休みのところ申し訳ありません。至急艦橋まで起こし下さい」
 提督は唸るような返事を返すと、立ち上がって軍服の上着を身に付けた。

「――どうしたか」
「はっ、提督、あれを御覧下さい」
 副官が指し示した先を見やる。艦橋のディスプレイに映し出されているのは、不可思議な赤い星であった。
「何だあれは」
「はい、たった今、近くの恒星系にあれと同じような物体がワープアウトしてきた模様です。もの凄い数です。総数は1000個を越えます」
「何だと?」
 そこで、オペレータが声を投げる。
「赤い星から通信が入っています! こちらに呼び掛けています!」
「構わん、繋げ」
 オペレータが回線を繋ぐと、画面には見たこともない異星人の姿があった。赤く光る目を持つ、グロテスクな異星人だ。提督はマニュアルに従って冷静に言葉を選んだ。
「こちら銀河連邦第七艦隊、提督のガルシアだ。貴君らは‥‥何者だ」
 すると、異星人は笑った。
「人類よ、我々はバグア人である。これは宣戦布告である。我々のバグア機動遊星がすでに銀河系外縁部に到達した。人類が敗北するのは時間の問題だ。降伏はない。お前たちは、滅びるのだ」
「何だと‥‥ふざけおって。我が艦隊を甘く見るなよ異星人。簡単に侵略出来ると思ったら大間違いだ」
 ガルシア提督は回線を切ると、全艦隊に迎撃の命令を下す。
「それから地球へ連絡を――ルドランシア恒星系にてバグア人と名乗る異星人と接触、これより艦隊は交戦に入るとな――」

 ――地球。
 新大統領オルソンの元へ、第七艦隊がバグア人と交戦に入ったと言う連絡が入ってくる。
「戦況はどうなっているか」
 軍人たちは、大統領に一礼して席に着いた。
「戦況は思わしくありません。元より第七艦隊に、『敵』の大部隊に抗するだけの戦力はありません」
「至急増援が必要になるでしょう。情報によれば、バグア人は小惑星のような機動要塞を以って侵入してきた模様です。その戦力は未知数です」
「我が軍も、持てる最大の戦力を、可能な限り差し向ける必要があるかと存じます」
 大統領は頷くと、卓上で思案顔で手を組んだ。
「よろしい、では、至急増援を。この異星人を片づけるのが、大統領に就任した私の最初の仕事だ」
「はっ――!」
 そして、人類もルドランシア恒星系に大部隊を差し向ける。こうして、銀河に巨大な戦雲が巻き起ころうとしていた。
 宇宙暦685年、地球の北半球が真夏に入ろうかという頃のことである。

※このシナリオはミッドナイトサマーシナリオです。実際のWTRPGの世界観に一切関係はありません

●参加者一覧

伊藤 毅(ga2610
33歳・♂・JG
水無月 春奈(gb4000
15歳・♀・HD
ノルディア・ヒンメル(gb4110
18歳・♀・DG
ブロント・アルフォード(gb5351
20歳・♂・PN
火柴(gc1000
13歳・♀・SF
巳沢 涼(gc3648
23歳・♂・HD
海原環(gc3865
25歳・♀・JG
ヘイル(gc4085
24歳・♂・HD
ニコラス・福山(gc4423
12歳・♂・ER
月読井草(gc4439
16歳・♀・AA

●リプレイ本文

「外宇宙、から‥‥、わざわざ、御苦労、さま。でも、ここ、人間の領土。出てって、もらう、よ」
 第七艦隊水無月艦搭乗オペレーターの火柴(gc1000)は、言って、レーダーに目を落とす。
「敵機動要塞から、小型戦闘機多数接近、攻撃至近、来ます」
「提督、大丈夫でしょうか」
 次席参謀の水無月 春奈(gb4000)少佐は、ガルシア提督に声を掛けた。
 ――直後。
 艦橋を閃光が覆った。ヘルメットワームからの集中攻撃を受けたのだ。直撃を受けた艦は激しく震動した。
 水無月も吹き飛ばされて壁に叩きつけられた。どうにか立ち上がると、倒れているガルシア提督に発見する。
「はにゃ! 提督!」
 ガルシア提督は口から血を吹いて何かを呟いている。
 水無月は艦内に向けて言葉を向けた。
「各員、被害状況の報告を‥‥。あと衛生兵を艦橋へ‥‥。負傷していないものは持ち場に戻り攻撃に備えてください」
 衛生兵が到着すると、ガルシア提督が意識を取り戻した。
「提督、大丈夫ですか? ‥‥えと‥‥指揮は誰に‥‥?」
「少佐‥‥君が艦の指揮を取れ」
「ふにゃ、私がですか」
「俺は、用兵家としての君の手腕を信じている‥‥」
 ガルシア提督は意識を失った。水無月は気を引き締めると、立ち上がった。艦内に向けて呼び掛ける。
「私は第七艦隊の次席参謀水無月です。敵の攻撃を受け、ガルシア提督が負傷されました。今より、艦の指揮を執ります。僚艦と連携して敵との距離をとります。近隣の味方に救援要請を、彼我の位置、こちらの予想進路を送っておいてください。救援の予想到着時間の報告もお願いしますね」
 そこで一呼吸置く。
「KV隊、出撃お願いします。距離を保つために軽くあしらってきてくださいね。大丈夫です、救援が来るまでの辛抱です」

「地球への宇宙人侵略か、熱い熱すぎる、この熱い展開こそが科学者の心に火をつける」
 第七艦隊二番艦の副長兼医療主任兼整備主任の科学者、ニコラス・福山(gc4423)は言って艦長の月読井草(gc4439)に戦況を報告する。
「一番艦が被弾した模様です。ガルシア提督が負傷されました。次席参謀の水無月さんが指揮を取ります」
「そうですか。では我が艦も援軍が来るまで持ち堪えなければ。それにしてもこんな宇宙のド田舎にまでやって来るなんて、宇宙人にも秘境マニアって居るのね〜」
「斉射三連! 敵を後方へ引きずり出すように後退せよ!」

 第七艦隊所属航宙機母艦アドミラルT・ヤマグチ艦載機部隊VF―380ブルードラゴンズ隊長、少佐、伊藤 毅(ga2610)。ナイトフォーゲルを率いて出撃する。
「ドラゴンリーダーよりドラゴンオール、敵第一波を迎撃する、全員、生きて帰るぞ」
「ラジャー!」
 12機のKVが宇宙空間に飛び出していく。
「各機散らばるな、エレメントを維持し、二対一で戦闘を展開」
 ブルードラゴンズは鮮やかな操縦桿捌きでアクロバットに飛び交うと、次々とヘルメットワームをビームライフルで撃墜して行く。
「いいいやっほう! 隊長! どこを見渡しても敵だらけだ!」
「バグア人よ! ブルードラゴンズの戦闘力を思い知れ!」
 KVはヘルメットワームの戦闘力を大きく上回っていた。数で勝るバグア軍機を圧倒する。
「リーダーよりオール、被害報告‥‥‥離脱機はなしか、その調子だ」

「進路クリア。発進、どうぞ」
 火柴は戦況を確認して、出撃するKVをオペレートする。
「出撃する各機、敵機動要塞の、動きにも、注意して」
「火柴、KVネクスト、ヘイルストーム! でるぞ!!」
 ヘイル(gc4085)はテスト機体のKVネクストとともに艦隊に配備されていた。KVネクストの実戦は初めてである。
「テスト機、だから。無茶、しない、ように」
 火柴はヘイルにはこの一言を添える。
 ブースターを全開にし、最寄の敵集団へ突撃するヘイル。一気に加速すると、レーザーで次々とヘルメットワームを撃ち落としていく。
 クイッ○ブーストを起動させて、ヘルメットワームのビーム砲をことごとく回避して行く。高機動で空間をアクロバットに回避して行く。反撃でレーザーを叩き込み接近、変形して機槍で貫く。さらにクイッ○ブーストで離脱。ミサイルをマルチロックし敵を殲滅する。
 それでも続々とヘルメットワームが接近してくる。もの凄い数だ。
「ち、埒が明かないな。もっと一気に叩かないと‥‥」
 火柴からの通信によって敵密集地帯のデータ取得すると、ヘイルは操縦桿を傾けた。ブーストで加速する。
「有難い。ヘイルより火柴。これより敵陣に突入する。オペレートを頼む」
「ヘイル機。突出しすぎ」
 敵のど真ん中へ突っ込むヘイルへ注意。
「多少の無茶は承知の上だ。KVネクストならいけるさ。俺が死んだら涙を流してくれるか」
 火柴は無感動に、
「冬瓜(馬鹿な男)」と返した。
「そう言うな。艦を守るために必要なことだ。それよりも代理に主砲の準備を要請しておけ」
 クイッ○ブーストを連続使用しアクロバットに弾幕を抜け、コンテナミサイルを全基発射する。敵陣一部に穴を開け突入。
「セリア、弾道予測! こいつらを主砲軸線上に誘導するぞ!」
 KVネクストに搭載された専用AIセリア。高機能のAIだ。
「了解。プラ○マル・アーマー整波率43%ですが‥‥いいでしょう。私達の力を証明しなさい」
 敵陣突入、全方位からの弾幕の中をクイッ○ブースト、プラ○マル・アーマーを駆使して機動し、反撃も加えながら誘導する。
「まだだ! もっとだ、もっと! もっとこっちへ来い!!」
 ヘルメットワームからの連続攻撃を受けてプラ○マル・アーマーの表面が薄緑色に波紋変色する。
「気をつけなさいヘイル。整波率37%にダウンしていますよ」
「了解セリア、ぎりぎりまで行く!」
 
 一番艦――。
「ヘイル機、が、敵を集めて、くれた‥‥みたい。救援、到着前、に、風穴空ける、好機。‥‥艦長代理?」
 火柴の言葉に、水無月は頷く。
「主砲発射の用意を。月読艦長に連絡」
「G−2と繋ぎます」
「水無月少佐――何か」
 スクリーンの月読は首を傾けた。
「主砲で敵集団を後退させます。協力願えますか」
「了解しました。岩木も主砲に備えます」
「よろしく――火柴さん」
 戦艦二隻は主砲発射準備を開始。
「G−1よりG−2および、戦闘中、の‥‥各機へ。これより、G−1とG−2による、主砲での敵一掃を、行い、ます。G−2は、準備を。各機、は、射線から、の撤退を」
「こちらブルードラゴンズ、了解しました」
「KV中隊、了解した」
「エネルギー、充填、開始。各機関、チェック。全力では、撃たないで、ください。後に、響く、から」
 火柴は淡々とコンソールを操作していく。
「エネルギー、70%に、到達。仰角、誤差修正。エネルギー充填、ストップ。KVの離脱、確認。G−2も、発射準備、完了。艦長代理、お願い、します」
 水無月は手上げた。
「主砲発射――」
 
 暗黒の空間を貫く二本の閃光。ヘルメットワームの集団が主砲で吹き飛ぶ。
「ふう、これで少しは‥‥!?」
「敵の大二波が来ます。もの凄い数です」

 戦場後方。救援の連邦艦隊が続々とワープアウトしてくる。
「あれが異星人――緒戦の敗北は許されんな。全艦対空レーザー・主砲展開。戦闘機隊は発進用意を進めよ!」
 ノルディア・ヒンメル(gb4110)提督は、手早く命令を出していくと、巳沢 涼(gc3648)提督も素早く艦隊を展開させる。
「バグア人め! その遊星を貴様らの墓場にしてやる!」
 巳沢提督は戦況を確認して、マイクで全艦に告げる。
「そう長くは持ち堪えられんだろう、急ぐぞ! 各艦、主砲斉射三連後に突撃! 第七艦隊を救え!」
 火柴はそれを確認して各艦に告げる。
「救援、到着‥‥しました。第七艦隊、一時、後退、します。所属各機は、一度、帰還して、ください」
「巳沢艦隊は前に出るぞ! 第七艦隊、下がってくれ!」
 巳沢提督は鶴翼陣を展開し敵を迎撃。
「‥‥救援が着ましたね。負傷者を後方へ輸送してください。戦闘能力がある以上、ここで下がるわけには行かないです」
 水無月は言って、友軍と交信する。
「救援、感謝します。正式な挨拶は敵の排除後に‥‥。それでは、失礼しますね」
 海原環(gc3865)は巳沢艦隊の戦闘機中隊隊長。
「こんな少数で大丈夫かって? 巳沢提督は女性にはモテないけど戦は滅法強いから大丈夫だよ。行くぞ」
 海原はKVを率いて出撃して行く。
 ヒンメル艦隊からもブロント・アルフォード(gb5351)らが出撃する。電撃作戦を得意とする切込部隊『サンダー・クロウ隊』の隊長だ。
「全機生きて帰るぞ‥‥誰一人として死ぬことは許さん」
 ブロントは自らは先陣を切り第7艦隊の救援に向かう。奮闘するヘイル機の救援に向かう。
「そこのテストパイロット、聞こえるか? こちら『サンダー・クロウ隊』。これより援護する!」
 猛烈な勢いで加速するサンダー・クロウ隊。ビームライフルをヘルメットワームに叩きつける。
 救援艦隊から出たKVの大部隊がヘルメットワームを撃墜して行く。
「識別はセイバー。『双璧』艦隊のエースか。流石、と言うべきか。敵が崩れ始めた」
 ヘイルはブロントと回線を開く。
「こちら第7艦隊所属のヘイル。これより貴隊の援護を行います」
「生きていたか。良く持ちこたえたな」
 ブロントは部下とともに加速すると、ビームサーベルでワームを叩き斬り、ファ○ネルで圧倒する。
「切り込むぞ。俺に続け! 全機、クリムゾンを起動しろ。サンダー・クロウの本領発揮だ!」
 ハイパー・ブリッツ・モード「クリムゾン」で宙間を駆け抜けるサンダー・クロウ隊。
 海原も前進して、敵ワームを叩いて行く。自らの機体はX字状に翼が開くKV−X。
「各機。星々の守りあれ」
「星々の守りを」
 海原中隊は凄まじい速さで突進すると、敵機を撃墜して行く。
 巳沢は戦況を見やりつつ、KVがヘルメットワームを撃墜して行く様子を確認する。
「KV隊! 艦隊中央に集結せよ! 敵遊星内部への突入作戦を開始するぞ!」
 巳沢は艦橋で仁王立ちで全機に命じる。
「敵ワームには三機一組みで当たれよ! 戦力を無駄にするな!」
 それから、全艦に突入を命じる。
「余剰エネルギーは全てシールドに回せ! 総員腹ぁ括れよ、機関最大戦速! 突撃開始だ!!」
 ノルディア・ヒンメル提督は、これを見て、頷いた。
「――宜しい、本懐である。ヒンメル艦隊全艦に通達、これより我らは前方の敵艦隊を突破。その後敵要塞に肉薄し、巳沢艦隊と共に攻撃部隊の目標突入を支援する。全艦紡錘陣形を取りつつ最大戦速。巳沢艦隊に遅れを取るな!!」
「援護は頼むぞノル」

 第七艦隊二番艦――。
 ニコラスは月読に自策を力説していた。
「バグア機動遊星は、表面を厚い装甲と無数の砲台で固めています。決定的な打撃を与えるには、遊星内部への直接攻撃をしかけるしかありません」
 ディスプレイを操作して、バグア遊星のデータを確認する。
 反物質燃料を搭載した機雷をバグア機動遊星内部にワープアウトさせ、核破壊を試みる。
「こんなこともあるかと! 遊星内部を直接攻撃できる新兵器を用意しておいたのだ!」
「でもそれ大丈夫なの? KV隊が突入しようとしているけど」
「私が設計思想から、使っているネジ一本まで考えて作った戦艦です、甘く見てもらっちゃ困ります。大丈夫です」
「じゃ、やっちゃって〜」
 しかし、遊星内部へのワープは妨害され策は失敗する。

 ――遊星内部への開口部付近では、激戦が繰り広げられていた。
「ここが踏ん張り所だ! 必ず無事に送り届けろ!」
 巳沢提督は、衝撃に揺れる艦橋で指揮を取り続けていた。
「突入部隊に告ぐ、奴等に目の覚めるモン喰わせてやれ! 諸君らに星々の守りがあらんことを!」(死ぬなよ、環‥‥

 突入作戦が始まると、月読は通信装備を出力全開にするように命じる。
「艦長、オンステージです」(冷静なオペ子)
 待ってましたとばかりに、アイドルソングや心に訴えかけるバラードを歌い出す月読。バグア人に歌は通じるのか?
「アタシの歌を聞けぇ!」
 バグア人の回線に鳴り響く月読の歌。
「みんなー! 頑張ってー! 銀河のー! はじっこでー! I lov you、I lov you、銀河に平和と愛を〜」
 歌い続ける月読。
 
「艦長、バグア軍から応答はありません。歌に反応はなしです」
「イケズな宇宙人だなー。歌の素晴らしさが分からないとはねー」
 月読は言って、艦を遊撃の位置に回した。

 海原中隊は、友軍各機、ヒンメル艦隊と巳沢艦隊が作り出した間隙を縫って、敵の対空砲火をやり過ごし、バグア遊星内部に侵入する。
「星々の守りあれ」
 それから海原は中隊を率いて加速する。
「第一目標核、第二目標核、第三目標核だ! 他には目もくれるな!」
「了解!」
「シールドを前面に集中しろ」
 偏向シールドの出力を上げて加速する。
 遊星内部、不気味でグロテスクな空間や通路の中を飛ぶ。
「ピー、ポー」
 と、補助ロボットが危険を告げると、
「大丈夫だから最大戦速まで上げろ」
 海原は言ったが、ロボは「ピポパ」と心配の声を上げた。
「やるしかないよ。おっと‥‥今のは危なかった」
 迎撃のレーザーが直撃する。
「隊長! これ以上は持ちません! うわあああ!」
 次々と部下達が撃墜されていく。海原は心を殺して、更に加速、そして――。
「核が見えた!」
 照準装置を引き出す。しかし、核を狙えるのは僅かな隙間。どうしても当たる気がせず惑う。
『環、星々の声を聞け‥』
 どこからともなく声がする。
「師匠?」
「プル、プー」
 怪しむロボに、
「大丈夫だ、問題無いよ」
 海原は照準装置を外すと、自分の心を信じてプ○トン魚雷を発射した。
 魚雷は吸い込まれるように核を捕えた。
「やった! 脱出するよ!」
 連鎖爆発を起こす遊星から、離脱する海原。

「突入部隊がやったか――!」
 巳沢提督は爆発して行く遊星を見て、頷いた。
「よし、全艦最大戦速で離脱する、ヴァイスローゼは粒子砲の使用を許可する。我々の路を阻む者は、これを実力を以って排除しろ!!」
 ノルディアも艦隊を離脱させる。
 海原は間一髪飛び出した。
 凄まじい閃光と爆炎を上げて消滅するバグア遊星。
 ヘルメットワームは散り散りに逃げ散っていく。
 巳沢は回線を開いた。
「ノル、大丈夫か!」
「リョウ‥‥旗艦はこれ以上持ちそうにない、後を頼むぞ」
「ノル、脱出しろ!」
「すまない、後を頼むぞ」
 ノルディアは傷ついた体でマイクを手に取る。
「――総員、直ちに退艦せよ。ヴァイスローゼはここまでだ。私に付き合う事は許さん。諸君には、これからバグアとの戦いが待っている‥‥」

 炎上して轟沈してくヴァイスローゼと、戦友の死を確認した巳沢は、軍帽をかぶり直した。
「全艦後退せよ。KV隊ご苦労だった。だが、休むには早い。1000個のバグア遊星がまだ残っている。我々の戦いは、これから続くのだ‥‥」
 ――銀河の戦いが始まる。