タイトル:【ODNK】果断と勇気とマスター:安原太一

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/08/17 13:52

●オープニング本文


 北九州春日基地――。
 先だっての戦闘で順当な戦果を上げたバグア軍は、福岡をほぼ制圧し、熊本への足がかりを築くことに成功する。
 春日基地司令ダム・ダル(gz0119)を筆頭に、春日のナンバー2高橋麗奈と、先の戦いで頭角を現した春日のエリート指揮官の“洋子”ら、エース級の強化人間たちが一堂に会する。やはりこの地域は、活発なダム・ダルとともに戦場に出る前線指揮官たちが戦場の華であった。強化人間たちにとって、ワームに搭乗することは昇格の好機でもあった。彼らの大半は、前線においてUPC軍を撃破することがヨリシロになる近道だと考えていた‥‥。
「福岡はほぼ抑えました。佐賀方面から散発的な敵の抵抗があったものの、全体として我が軍の優位は動きません」
 洋子が淡々と先の戦闘結果を振り返りつつ、ディスプレイを操作する。
「UPC軍も無能ではありません。ここからは熊本基地を守りつつ、いざとなれば基地を放棄することも考えているでしょう。ここに至って、熊本から我が軍を追いだすのは至難だと、彼らも理解しているはずです。敵軍の戦力はまだ健在であり、南部基地には十分なナイトフォーゲルを擁しています。我々は、勝ったわけではないのです」
「だが、勝っていることは事実だ」
 高橋麗奈が鋭い口調で言った。
「年内に熊本基地を陥落させ、佐賀、長崎と確実に占領地域を拡大して行くことが、我々の目標となる」
「敵は強力だ」
 ダム・ダルが口を開き、居並ぶ諸将に言った。
「ラストホープにいる傭兵を始め、能力者たちは我が軍と同等の戦力を有している。俺はお前たちに、死んでも奴らを止めろとは言わん。だが可能な限り、北九州における混乱を拡大し、我が軍の脅威を人類に喧伝せねばならん。‥‥差し当たり、我々の攻撃目標は、東アジア軍西部方面隊九州司令部、熊本基地」
 ダムの言葉に、諸将はディスプレイに移る熊本基地の映像に視線を移し、ある者は熱い視線を、ある者は冷たい視線を、またある者は感慨深げな視線を送った。

 ――熊本基地。UPC軍九州の総司令部である。
 司令部は奇妙な落ち着きに包まれていた。熊本北部にバグアの大部隊が迫っていると言うのに、慌てている者はいなかった。敵機の来襲は頻発的に発生しており、対応する士官たちの声とオペレータの声が司令室にも淡々と響き渡っていた。軍属傭兵たちは随時出撃し、散発的なワームの攻勢を跳ね返していた。
 上級士官たちは、モニターを確認しつつ、冷静に協議していた。ここに至って彼らには軍人生来の適応力が芽生えて来たのかもしれない。
「熊本北部に展開する敵の主軍ワーム千弱、これを叩くには、時間が必要だ。奇跡などない。間近の機会は、敵将が出現した時、これを撃破する。それによって少なくともバグア軍の活動は停滞する可能性はある」
「可能性に過ぎんがな」
 春日基地司令ダム・ダルを撃破する。それは因縁浅からぬ九州軍にとって待ち望まれていた。だがダム・ダルの狡知はこの一年以上の戦いで嫌と言うほどに見て来た。
「大分は善戦しているが、佐賀方面に新たに展開する敵軍の動きは要注意だ。逆檄を食う可能性がある。先の攻撃は呼び水になってしまったな」
 そこへ、下士官が報告を持ってやってくる。
「敵の大部隊、行動を開始しました。熊本北部と佐賀方面に本格的な攻勢が来ます」
「遂に来たか。よし、待機中の能力者たちにスクランブルを掛けろ。ダム・ダルに平手打ちを食らわせてやれとな」
「はっ」
「さて、いよいよ動き出したか。熊本にて迎撃するのはこれが最初だが」
「ダム・ダルか、ここまで来るとは‥‥予想していなかったな」
「北九州の均衡を崩したバグア人だ、知識も経験もヨリシロになった頃とは比べ物にならん」
「ダム・ダルの気分任せと言うのは気に食わんな」
「先方もそれくらいのことは思っているかも知れんぞ。何かと、隙のないバグア人だからな奴は」
 そして、UPC軍は、初めて熊本に侵入するバグアの大部隊と、新たに佐賀方面に展開する敵軍に対するのだった。

●参加者一覧

三島玲奈(ga3848
17歳・♀・SN
ソード(ga6675
20歳・♂・JG
リュウセイ(ga8181
24歳・♂・PN
ヒューイ・焔(ga8434
28歳・♂・AA
ユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751
19歳・♂・ER
アーク・ウイング(gb4432
10歳・♀・ER
ソーニャ(gb5824
13歳・♀・HD
ブロンズ(gb9972
21歳・♂・EL
湊 獅子鷹(gc0233
17歳・♂・AA
神棟星嵐(gc1022
22歳・♂・HD

●リプレイ本文

●熊本北部
 空を飛ぶ無数のKV。熊本北部に展開して、ワームの大部隊を迎え撃つ。陸にもKVの大部隊が、地上には推定一万を越えるキメラ、そしてゴーレムにタロスが出ていた。
「久しぶりのKV戦だぜ! 気合が入るってもんだが‥‥しかしここはとんでもないな」
 リュウセイ(ga8181)はキューブワームのジャミングで壊滅したレーダーに目を落とす。
「ここは意外に激戦区だよリュウセイさん」
 傍らを飛ぶソーニャ(gb5824)が、言葉を掛けた。
「ああ、こんな大規模な戦力が日本に展開しているなんてな‥‥ダム・ダル(gz0119)だったか? ここを指揮するバグア人」
「うん‥‥そうだよ」
「ソーニャ、お前この間捕まりそうだったなあ。冷や冷やものだぜ?」
「好奇心猫を殺すって言うからね。もう馬鹿な真似はしないよ。多分、あれは最後警告だったのだと思う。無傷で生きて帰ることが出来たのは、運が良かったとしか言いようがないね」
「全くだぜ? 俺あの第一報を見た時は、心臓が止まりそうになったぜ」
 ソーニャは小さく笑みをこぼした。
「うん‥‥心配かけたね。軍の人にも随分怒られたよ。今度ダムと会う時は、戦場だね」
 そこで、ユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751)が口を挟んだ。
「仲良し御二人さん、と言いたいところだけど、ソーニャは本当に無茶はしない方がいいよ。バグア人が人間と心を交わしたいと思っているとは思えないからね。人間より長く生きて、ずっと宇宙を流れていたバグア人にとって、俺たちはきっと好奇心の対象以上には なり得ないんじゃないかな」
「好奇心か‥‥」
 ユーリの言葉にソーニャは呟く。あのバグア人の瞳の深い光の奥に何があるのか、それは見届けるつもりであった。この戦いの果てに何があるのか‥‥。
「こちら地上部隊。予定通り進んできたが、半端ないな敵の戦力は、こっちの何倍もありやがる」
 地上からシラヌイS型ディープブルーに乗って言葉を投げたのはブロンズ(gb9972)。彼の機体はエースパイロットの専用機とも言えるシラヌイの指揮官型である。
「どうやら、こっちにはティターンが下りているようだな。FRはどうだ? 見えるか?」
「ええっと‥‥」
 ユーリは壊滅的なレーダーをどうにか操作してみるが‥‥。
「かろうじて捕まる範囲だと、FRは後方に待機しているようだね。また決定的な場面で登場してくるのかな」
 神棟星嵐(gc1022)は、思案顔で言葉投げた。
「ティターンは望むところですがね。高橋麗奈、今回で撃墜させてもらいます」
「高橋麗奈か‥‥ダムの子飼いには厄介なのが揃ってるよな。あのティターンも相当な機体だぜ」
「そのようですね。どうにか抑え込んでおきたいところではあります、可能なら撃墜ですよ」
 ブロンズは頭を掻きながら、吐息した。
「まあ、相手を選べるわけでもないからな。俺もFRとは運次第ではあるかな」
 そうして、UPC軍から「間もなく接敵するとの知らせが入る。
「よし、行くぜ! ソーニャ、死ぬなよ!」
「ダムは戦術家と言うより戦略家だからね、ここは急がないだろうなぁ。‥‥と言うよりこのすりつぶしあいこそダムの求めているものかも。仕掛けたいのはどちらかと言うと軍の方でしょうね。オフサイドトラップか、カウンターか」
 ソーニャもスロットルを吹かせる。エルシアンを高速で駆る。
「有人機‥‥強化人間。つまる所、この戦い、能力者と強化人間の、バグア出現により品種改良された闘犬同士の闘技場なのかも。しかし、ここは負けるわけにはいかないからね」
「さて‥‥軍も適時動いてくれよ。――行くぞ!」
 ユーリも加速した。
「全機攻撃開始――」
 管制官の声が響き、例によって最初のミサイル攻撃が行われる。
 ワームの大部隊からはプロトン砲の応射が来る。
「正直まともにやれるかどうかは分からねえが、何もせずに終わるのはらしくねえからよ! 行くぜ兵隊さん!」
 リュウセイはロックオンキャンセラーを発動させる。
 プロトン砲の照準が揺れて逸れる。
「接近戦で仕留めるぞ! ソードウイングで切り掛かれ!」
 軍のKVがHWを叩き斬っていく。
「いけー! エルシアン!」
 ソーニャはバレルロールで突撃すると、レーザーを叩き込んだ。
「各機連携して行くぞ、骸龍と斉天大聖はFRの逆探知頑張ってくれ。‥‥いやホントに、姿消されるとどうしようもないから」
 ユーリは言いつつ、タロスを捕え、機関砲を叩き込んだ。
「くっ‥‥こいつは‥‥!」
 近くにいるキューブから怪音波が頭に鳴り響く。銃撃が逸れる。反撃のプロトン砲が来る。直撃が来る。
「ちっ‥‥CWの排除頼むぞ!」
「ヴェルトライゼン、支援する。持ち堪えろ」
「全機警戒せよ! FR、急速に前進してくる!」
「何? もう来るのか、早いな」
 ユーリはレーダーに目を落とした。
 前線に出て来たFRは、瞬時にKV数機を撃ち落とした。
「ダム・ダル、来たか。今日ここで、その機体もクズ鉄に変えてやるぞ。FR対応友軍各機、奴を仕留めるぞ」
「ラジャー。やってやるさ」
 FRはKVの反撃をことごとくかわしてアクロバットに突進してくる。
 ユーリはFRに立ち向かった。
「R−01。ラストホープのユーリ・ヴェルトライゼンか」
 ダムの声が回線に響く。
「お前に名を覚えてもらえるとは、有り難いね!」
「私も光栄だ。名だたる傭兵から注目を浴びるのは戦士としての誉れ」
「‥‥お前、言ってて歯が浮いてないか」
「ふふ、無論冗談だ。行くぞ!」
「迎撃するぞ! ミサイル発射!」
 KV各機からミサイルが発射される。
 FRはアクロバットに回避すると、プロトン砲を連射した。
「う‥‥わああああ!」
 直撃を受けたフェニックスが炎上する。
「離脱しろ! ちい! この怪物!」
「任せとけ! やらせはしねえ!」
 リュウセイが加速して、ロックオンキャンセラーを発動させると、ガトリングを撃ち込んだ。
「今だ! 奴の命中が落ちている間に!」
「そう簡単には行かんぞ」
 FRは悠然と回頭すると、リュウセイに狙いを定める。
 直後――。
 スキル全開で突撃してきたソーニャがFRに加速する。
「ダム!」
「ん、お前は‥‥ソーニャか」
「今日はやらせはしないよ!」
「次に占領地域へ入ったら、お前の運命もそこまでだ」
 ダムはエルシアンのミサイルを全弾回避すると、反撃に転じるが、ユーリ達が攻勢を掛ける。
 FRは真正面から攻撃を受けて弾き返すと、ユーリの機体にプロトン砲を連射した。
 光条が機体を貫く――。
「くっ‥‥ダム!」
 ユーリは後退する。
「ユーリ!」
 リュウセイはガトリングを撃ち込んだが、反撃のプロトン砲を受けて炎上する。
「みんな!」
「ソーニャ、あの時お前を殺さなかったのにはわけがある。いつの日かその答えも見つかるだろう」
 ダムはそう言うと、地上へ急降下して行った。

 地上では、ゴーレム部隊とKVが激突していた。
 神棟は高橋麗奈の赤いティターンと向き合っていた。ティターンの周囲には、すでにKVの残骸がある。
「‥‥今更名乗っても興味が湧くとは思えませんが名乗らせて頂きます。自分は神棟星嵐。自分の力を過信する気はありません。ですから‥‥今後も貴公の前に立ち塞がる男、と覚えて下さい」
「何だと? 私の前に立ち塞がる男? くく‥‥正気か貴様。そんなぼろぼろのミカガミで何が出来ると言うのだ」
「行きますよ――」
 右半身を引き、左手のハード・ディフェンダーを前方に構え、右手のスクラマサクスは刃を右に向けるように構える。
 裂帛の気合とともに加速してくるティターン、その初撃をディフェンダーで受け――だが、ティターンの刀身は加速してミカガミを切り裂いた。
「馬鹿め、止めをくれてやる」
「神棟!」
 ブロンズたちがガトリングを撃ち込みながら突撃してくる。
 銃撃を受け止め後退するティターン。
 そこへ舞い降りてくるFR。
「気をつけて下さい! FRですよ!」
「ダム司令、いかがなさいましたか」
「我が軍が分断されていると連絡が入った。高橋、出過ぎだぞ」
「申し訳ありません‥‥」
「ダム!」
 ブロンズは吠えた。
「シラヌイS型? またしてもブロンズか」
 ダムはFRを歩行形態に変形させると、ブロンズと向き合う。
「陸には降りてこないかと思ったぜ」
「そう言うお前は、私を落とす気か」
「行くぜ! お前を落とせば、けりは着く! みんな、知覚で一斉攻撃! ペインブラッド、ミカガミ、アンジェリカ!」
 レーザーがFRを捕えるが、小揺るぎもしない。
「超伝導アクチュエータVer.2 起動、いくぞ!」
「まだだな――」
 FRは低空慣性飛行でアクロバットに回避すると、ブロンズ機にプロトン砲を叩き込んだ。瞬く間に炎上するシラヌイS型。
「高橋――」
 ダムが振り返った時、高橋は神棟機を切り伏せていた。
「態勢を立て直すぞ。UPCを押し返す」
「はっ!」

●佐賀方面
「陽動か挟撃か知らんが佐賀方面の注意は熊本を向いている。そこが隙だ。背後を一気に突いて孤立化させるぞ」
 三島玲奈(ga3848)はCWの殲滅に向かう。
「ウーフー、上空からよく監視して敵陣の薄い箇所や奇襲を知らせてくれ――行くぞ!」
 リロード兵器を叩きつけ、CWを撃墜して行く。
「行くぜ! 切り込み隊続け!」
 ヒューイ・焔(ga8434)はリボルバーとバルカンを撃ち込みながら、突撃する。
 飛び交うプロトン砲をかいくぐり、ゴーレム隊と激突する。
「切り裂け白魔!」
 加速してソードウイングを叩きつければ、ゴーレムが両断される。
「ちゃんと動けよポンコツ!」
 湊 獅子鷹(gc0233)はフェニックスを駆り、ライフルを撃ち込み、二刀を構えて突撃する。ゴーレムと激突。一撃、二撃と打ち合い、これを沈める。続いてタロス――。
「UPC! ここが貴様らの墓場だ! 勢い佐賀も制圧してくれるわ!」
「はっ、面白え! そうでなくっちゃ張り合いがねえぜ! しょぼい敵とやり合ったって面白くねえ!」
「ふはは! そんなことを言っている奴に限って先にあの世へ行く! 俺がここで叩き斬ってくれるわ!」
「やってみろや!」
 相手はタロスエース機だった。湊は激しく打ち合う。
 三島は上空でCWを次々と沈めて行く。
「幸いCWに機動力はない。容赦なく潰させてもらうぞ!」
 ソード(ga6675)とアーク・ウイング(gb4432)も、上空でCWからHWを撃退に向かっていた。
「この方面のバグア軍は何としても封じ込めておかないと」
 アークはぐぐっと拳を握りしめると、目の前のHWに銃撃を叩き込む。
「こちらへも押し込まれるとは‥‥バグアの兵力は潤沢ですね」
 ソードはエニセイを撃ち込み、HWを粉砕して行く。
 上空数の上では圧倒的に不利なUPC軍は、バグアの物量攻撃に苦心する。
 地上ではどうにか互角の戦いを演じていたが、それでも圧倒すると言うわけにはいかない。
「CWが落ちて行くか‥‥その前に勝負をつけたかったが」
 青いタロスに搭乗するバグアの指揮官、洋子は、思案顔で戦況を見つめていた。
「こちら洋子、全機攻勢に転じるぞ。優勢なうちに空を押さえる。KVに好き勝手させるな」
 洋子の言葉が回線に流れると、バグア兵たちは「了解しました」と言葉を返し、UPC軍に全面攻勢に出てくる。
「あれは‥‥洋子。敵の指揮官ですか」
 ソードはレーダーを確認すると、レギオンバスターの発射用意を整える。
「敵軍、反撃に転じてきます」
「押さえこみますよ。出ます」
 ソードはブースターで加速するとコンソールを操作して行く。
「兵装2、3、4、5発射準備完了。PRM『アインス』Aモード起動。マルチロックオン開始、ブースト作動――
 ロックオン、全て完了!
『レギオンバスター』、――――発射ッ!!」
 2000発を越えるミサイルが洋子の青いタロス目がけて放たれる。
「これが――レギオンバスターか」
 洋子は最高速でミサイルを回避に掛かるが、次々と直撃を食う。爆発炎上する青いタロス。
「やってくれるな」
 炎の中から現れた青いタロス。ぼろぼろになったタロスのダメージを再生能力で回復させる。
 ソードはさらにブーストとPRM『ツヴァイ』を使用しロヴィアタルの残り1回分を洋子と周囲の敵に発射する。
「こいつが噂のシュテルンか‥‥全機、敵の青いシュテルンを撃て」
 フレイアは強いが、それだけに目立つ。
 敵集団に囲まれて次々とプロトン砲の直撃を受ける。
「と、さすがに被害が馬鹿になりませんね」
 回避行動を取るソード、後退する。
「ソードさんに続いて! いくよみんな!」
 アークは軍属傭兵たちと突進した。
 ライフルを撃ち込み、敵集団へ加速する。
「迎撃せよ。すぐにUPCは限界が来る」
 洋子は後退すると、自身は指揮に集中する。
 分厚いワームの壁がUPC軍の前に立ち塞がる。
「よく訓練されていますね‥‥そこまでして指揮官を守るとは」
 ソードは包囲を脱して、エニセイでHWを撃墜する。
「大丈夫ですかソードさん」
「ええ、助かりましたよアーちゃんさん」
「味方は不利だけど、ここで食い止めないと」
「それにしてもあの指揮官‥‥しぶとい、油断なりませんね」
「指揮官機は奥へ引っ込んだか、ダムの部下らしいと言うか何と言うか」
 合流を果たした三島も冷たく言い放った。

 地上では引き続きヒューイと湊らが奮戦していた。
「幾らでも湧いてきやがるな。この!」
 ヒューイはゴーレムをバルカンで撃墜した。爆発して吹っ飛ぶゴーレム。後退しながら、プラズマリボルバーとバルカンでゴーレムの集団を撃ち抜いて行く。
「おらおらあ! 死にたい奴から掛かって来い!」
 湊はエースタロスを撃墜した後、友軍と連携してゴーレムを撃破していた。
 が、再度タロスの集団が押し寄せてくる。UPCの戦列がプロトン砲で薙ぎ払われた。
「ちっ‥‥! またプロトン砲か、地上じゃあれに敵う長距離砲はないぜ」
 ヒューイは機体を左右に振ってプロトン砲を回避する。
 そこで、上空のKV隊から通信が来る。――敵の足止めには成功するも、戦線の維持は困難、戦域から離脱すると。
「この辺りが俺たちも潮時か‥‥仕方ない。退くぞ!」
「全機後退! 銃撃で敵の足を止めつつ離脱するぞ!」
 そうして、地上からもUPC軍は撤退した。

●戦闘終結後、熊本基地〜
 戦闘が終結した後で、報告を受けた熊本基地の士官たちは吐息した。
「どうやら、敵の攻勢は止めたらしいな」
「ふむ、まずまずの戦果ではあるが、こちらの被害も無視はできん。大破した機体は後方へ搬送するしかない。再配備にはひと月は掛かる」
「待機中の部隊を南から呼ばないと」
「FRはまたしても健在か‥‥」
 バグア軍にも被害は与えたが、すぐに増援が来るだろう。
「熊本から奴らを叩きだすのは、至難だぞ」
 そう呟く士官は、メインモニターを見上げて、前途遼遠に思いを致す。
 そこへ、すすまみれのブロンズが姿を見せた。
「ラストホープのブロンズだ。結果を聞きに来たぜ。俺たちもいつまでも後退するわけにもいかんだろ」
 そう言って、ブロンズは戦いの分析に加わった。