●リプレイ本文
「シンディの慣らし運転‥‥と言うには少々重い気もしますが、相手にとって不足なしといったところですか。戦局はこちらが押しているようですけど、追い詰められた相手が何をしてくるか分かりません。気を引き締めていきましょう」
セラ・インフィールド(
ga1889)の言葉にヒューイ・焔(
ga8434)が応じる。
「最後まで何が起こるか分からんさ。俺たちは勝ちつつあるが、まだ終わっちゃいないからな」
アンジェラ・D.S.(
gb3967)は、思案顔で口を開いた。
「報告書は確認してきましたが、ですが、本当に終わりつつあるのですね」
アーク・ウイング(
gb4432)は気合を入れていた。
「いよいよ大詰めになってきたね。だから、今後のためにも、あいつらに痛手を負わせないと」
「敵集団前進してくる――。方位01。距離3000」
そこで、回線に敵の声が流れてきた。
「UPC軍、私は筑紫野方面の指揮官、高橋麗奈である。我々は最後まで譲らない。春日へは行かせん。我々が敗北するはずがないのだ」
「よお高橋、ヒューイだ。その自信はどこから湧いてくるんだ。お前たちは現に負けつつあり、春日は間もなくUPCに包囲されるぜ」
「ヒューイ・焔、私たちは所詮相容れない存在だったな。お前と私が敵であるように、我々の間には血塗られた道しかない」
「言ってろ強化人間。今日止めを差してやるさ」
そうして、前進する傭兵たちの前にバグア軍の戦列が姿を見せる。
「撃て!」
ワームの列からプロトン砲が飛んでくる。直撃を受け止める傭兵たち。
「全機全速前進! ワームとの距離を詰めるぞ!」
部隊長の声が飛び、傭兵たちは加速した。勢い前進するナイトフォーゲル。
「撃て撃て!」
バグア軍はプロトン砲を連射するが、傭兵たちは接近すると懐に飛び込んだ。
「行きますよシンディ‥‥! パンプチャリオッツ!」
セラはアッツェンプッツェルの機体スキルを発動、ゴーレムとタロスの戦列を貫いた。
「行くぜオウガ、破暁、シラヌイ! 奴を引きずり出す!」
ヒューイは友軍と加速すると、ファランクスソウルでゴーレムをなぎ倒し、ナックルでぶん殴った。突進してくるタロスをソードウイングで切り裂いた。
「コールサイン『Dame Angel』、北九州への攻勢に随伴。敵本拠地へ迫る一歩となるわよ」
アンジェラはスナイパーライフルを構えると、テールアンカーを下して狙撃を開始する。じっくり狙いを付けると、スナイパーライフルで確実にゴーレムを沈めて行く。
アークはディアブロ全機と前進すると、ライフルで銃撃しつつ散開する。
「みんな確実に敵を落としていこう。高橋が出てくるまでは他のワームを確実に減らしていくこと」
――と、赤いティターンが前進して来て、プロトン砲と刀で傭兵のKVを一機沈めた。
「傭兵たちよ。私はここだ! 来るがいい! 私の全力を以って、お前たちを撃滅してくれよう!」
「出てきましたね高橋麗奈ですか‥‥臨むところです!」
セラ、アーク、ヒューイは自機を加速させると、友軍とともにティターンへ殺到した。
「高橋麗奈、噂に聞くあなたの最後を見届けに来ましたよ、私もね」
セラはプラズマライフルを連射。
「友軍各機頼むぜ! 高橋行くぞ!」
ヒューイは加速した。破暁、シラヌイ、オウガが散開してティターンを包囲しつつ連続格闘攻撃を仕掛ける。
ヒューイはブーストと翼面超伝導流体摩擦装置を重ねがけし(略して超伝導ブースト)、白雪を起動し腰だめに構えて体当たりをかました。激突するハヤブサとティターン。白雪はティターンを貫通した。
「ヒューイ・焔――お前ともここでお別れだ!」
高橋はハヤブサを引きはがすと、刀でヒューイを吹き飛ばした。凄まじい衝撃が来て、ハヤブサは爆発した。
アークは同伴部隊と共に対応に突進。高橋機に最大火力を一斉に叩き込む。銃撃の集中を浴びて、爆発炎上するティターン。
「行くよ!」
突進するアークたち。
爆炎の中から飛び出してきたティターンは切り掛かって来た
「やあ高橋、春日も終わりが近づいてきたね。今はどんな気持ち? 君は逃げないの? 沈みかけた船と一緒に最後をともにするの」
「アーク・ウイング、そんな言葉で私を撹乱しようとしても無駄だ」
アークは突進してくるティターンにライフルを叩きつけながら、ゆっくりと後退して他の敵と高橋機を引き離す。
友軍部隊に高橋機と他の敵の間に割り込んでもらうことで、高橋機を孤立させようと図る。
アンジェラは位置を変えながら、ティターンは味方に任せ、ゴーレムとタロスの狙撃に専念していた。
「ティターンは任せたわよ。こっちはワタシが確実に足止めする」
リンクスのテールアンカーで狙撃態勢を整えると、スナイパーライフルを確実に叩き込んでいく。
「高橋――今日ここで終わりにします」
セラは白雪を連続で叩き込んだ。ティターンは白雪を受け止めつつ、セラ機の頭部に刀を叩き込んだ。爆発するアッツェンプッツェル。態勢を立て直しつつ、ライフルを放って距離を保つ。
「残念だよ。お前ともここでお別れだよ。言葉が無いぜ――高橋麗奈!」
ヒューイは加速すると、ハヤブサで体当たりをぶちかまして、白雪でめった刺しにする。
「それは‥‥私の台詞だヒューイ・焔!」
高橋はハヤブサの腕を止めると、押し返して刀で吹き飛ばした。
「今だ、そこまで――!」
アークは白雪で切り掛かると、ティターンの腕を切り落とした。
「ぐ‥‥!」
高橋は後退するが、後ろには友軍がいた。
ヒューイとセラ、アークは高橋をじわじわと追い詰めて行く。
「まだ‥‥終わってない!」
高橋は刀を一閃して、プロトン砲を連射しながら突進してきた。
「しぶとい奴だぜ――だがそれもそうだ。ダム・ダルが就任した時からの古参だもんなお前さんは。二年近くお俺たちの前に立ち塞がって来た‥‥それには敬意を払うぜ」
ヒューイは言って、高橋の突進を受け止めた。激突するハヤブサとティターン。
アークとセラは側面からティターンに切り掛かった。爆発炎上するティターンに、ヒューイは白雪を叩き込んだ。
「私の命くれてやる傭兵たち‥‥だが、最後には一人でも道連れにしてくれる‥‥!」
高橋はぼろぼろになった機体を持ち上げると、セラのアッツェンプッツェルに突進した。
セラはツヴェルフウァロイテンで受け止めると、プラズマライフルを至近距離から叩き込んだ。
「私は‥‥まだ‥‥!」
高橋は機体を持ち上げた。
直後、アンジェラのスナイパーライフルの連射が貫き、ティターンは落ちた。
「ヒューイ殿、撃墜完了よ」
「終わったな高橋。ここまでだ」
ヒューイはティターンの前に立つと、白雪を振りかぶった。
「ふ‥‥思えば長かった‥‥強化人間となってから、お前たちと戦い、私は地球を敵に回してきた。ダム・ダル(gz0119)司令の意思に逆らうことはできない。私は捕らわれの身だったが、後悔はない。もう十分だ。殺せ」
ヒューイはティターンを見下ろし、
「お前の名前は忘れない高橋麗奈。さよならだ」
雪村を振り下ろした。深々と切り裂いた雪村が、ティターンに最後の一撃となった。高橋の赤いティターンはスパークに包まれ、高橋もろとも木っ端みじんになった。高橋麗奈は、二年にわたる激闘の末に、ついに死んだ。
「全機エンゲージに備えて。来るよ!」
上空回線に管制官の夢守 ルキア(
gb9436)の声が響き渡る。
「ウーフーは管制補助、レーダー及び波長装置結果を各機へデータリンク、イビルアイズ、敵機へジャミングを仕掛ける、HWへは数機で挑む。シュテルンG、PRMコンボ、ディフェンスで敵陣形の破壊の為の突撃。ロビン、ブースト挟撃でシュテルンの補佐。――自分のKVが戦い易いように、ね?
バラけた所を一気にかきまわし落とす。逆に囮にされたところを囮とそれ以外と一緒に叩く。スルーされたらHWを落とす。やるコトは同じさ、どんな状況でも」
「了解夢守――! 行くぞみんな! 春日への道を切り開く!」
「了解」
「ラジャー、敵さんに泡を吹かせてやろう」
HWが加速してくる。閃光がほとばしる。プロトン砲の光条が傭兵たちを直撃する。
「FRを失ったとは言え、あのダム・ダルの事だ‥‥。必ず戦場に現れる筈だ!」
孫六 兼元(
gb5331)はHWを射程に捕えると、「FOX2!」とカプロイアミサイルを放出する。ミサイル群がHWを直撃して、爆炎が炸裂する。
「みんな――やっかいなのが来る前に数を減らすよ。まぁ、この新型自体、けっこうやっかいなんだけど」
ソーニャ(
gb5824)は軍フェニックス×2機に随伴を要請。エルシアンが初撃突入攻撃。レーザーでHWを撃墜した。
「ソーニャに後れを取るなよ。さすがに速いなエルシアン――」
アリス常時起動。Mブースター適宜起動する。
バレルロールで螺旋を描きがら敵をかわし攻撃。ターン機動を少なく、高速を維持。
狙いを定めると、目前のHWをレーザーで撃ち落とす。
夢守は適度な距離を保って戦況を確認する。ティターンの機動に注意を払う。回避、行動1温存の迎撃。HWを遠距離射撃、煙幕弾使って冷やかしそのまま狙撃。
「狙われるって思うと、遊びたくなるもん」
ピアッシングキャノンをを主に、ロングレンジライフルは遠距離の味方援護を援護する。
「ダム・ダルはまだ生きてる、俺の勘がそう告げてる」
ブロンズ(
gb9972)は言って、友軍と突進する。
「おらいくぞ、FR落としたからって気を抜くなよ」
軍属のシラヌイと雷電と組んで行動。
「FOX2」
「ミサイル発射――!」
ブロンズもK−02でHWを攻撃。軍KVもミサイルを同時発射。
ティターンは加速してくると、軍KVを一機瞬く間に撃墜した。
「ただのティターンじゃない」
夢守はその動きを確認しながら、警戒を呼び掛ける。
「全機ティターンに注意。トップレベルのエース級が乗っている可能性大」
「ぬう‥‥やはり奴か‥‥!」
孫六は中型HWを撃破して、旋回した。夢守に情報を随時送信し、ダム・ダルとの戦闘パターンを照合して貰い特定を図る。
「今まで前線に出て来たダム・ダルが、今回出て来ない筈は無い! おそらく、一機だけ居るティターンが『奴』だと予想しておる!」
K−02を撃ち込み探りを入れ、動きを確かめてみる。
「奴なら、この程度は軽く捌ける筈だ!(ニヤリ」
ティターンはアクロバットな動きでミサイルを回避する。
「その機体! お前、ダム・ダルと見た!」
ソーニャもその動きを見ていた。
「ティターンのカスタム? 高橋が乗り換えたか、高橋の上位か? 高橋の上位となると一人しか思い浮かばないんだけどね。ん、孫六さんがマークに付いた? フォローに付くよ」
ブロンズはティターンと回線をつないだ。
「なあ、あんたダム・ダルだろ、やっぱ生きてたんだな、ほんとにしぶといやつ‥‥まあこれからきっちりとトドメ刺してやるけどな!」
しばし間があって、答えが返って来る。
「私はまだ生きている。地球人的に言えば、まだ死神の抱擁から逃れていると言ったところか。運命とは予測不可能だなブロンズ」
「言ってろ――行くぞ! 各機ラージフレア展開。雷電、シラヌイ、超伝導アクチュエータを使用しろ。ティターンはFRと違って光学迷彩は使えない、囲んで一気に倒すぞ!」
ブロンズたちは加速した。
「友軍各機、断続的に攻撃」
「了解」
超伝導アクチュエータVer.2を起動して、ブロンズもドゥオーモで攻撃。
断続的な味方の攻撃に合わせて突っ込む
バレルロールで突貫。螺旋弾頭ミサイルを叩き込んだところで至近距離から強化型ショルダーキャノンをコクピット狙って叩き込む。
「今度こそ終わりにするぞ、ダム・ダル!!」
「ブロンズ‥‥お前もしぶとい奴だ!」
ダム・ダルは攻撃を弾き返す――ブロンズは裂帛の気合とともに体当たりをぶちかました。
「ちっ‥‥」
ティターンは傾いたが、ダム・ダルは態勢を立て直す。至近距離からプロトン砲を叩き込む。
「ミカガミ隊、ワシがダム機へ接近出来るように支援射撃をして貰いたい! ただティターンは、空中で格闘戦が出来たと記憶しとる。もし奴が格闘戦を挑んで来たら、ミカガミ隊はブーストを掛けつつティターンに総攻撃を仕掛けてくれ!」
間合いが取れたところで、すかさずOGRE/Bを発動し、UK−11AAMを打ちつつ刃翼で斬り付ける!
「ついに己が機体を失ったか! だが退くも地獄、進むも地獄なら進むしかない。お互い武人とは因果なモノだな!!」
「孫六兼元か――全くお前とは因果なものだが――!」
言いつつ、ダム・ダルはティターンを操り、オウガのウイングを受け止めた。しかし、ブレードウイングはティターンの装甲を激しく切り裂いた。
「逃がすものかよ! ここで決着を付ける!」
ブロンズは加速したが、ダム・ダルはアクロバットに回避しつつ後退すると、プロトン砲で反撃。ブロンズは超伝導AECを発動して受け止める。
ソーニャも突進。アリス、Mブースター、ブースト、フル起動突入。同時にフェニックスはドゥオーモ発射。AAEMからG放電を放ちつつ突入。
ミサイルやエルシアンの影に隠れフェニックスはオーバーブースト、空中変形スタビライザーB+起動突入。ティターンに組み付き格闘戦、動きを封じる。
同時にエルシアンはブースト反転。AAEMからG放電、レーザを近距離で叩き込む。
「ダムって策略家か参謀タイプかと思ったら、もののふだったんだね。己が道を進む。希望はないが絶望もない。求めるのはただ前だけ。もしボクが君を終わらせてもそれは前進なんだろうね」
ソーニャは言葉をつないだ。
「ボクは君にとってなにか意味ある存在になれたのかな。ボクは君のおかげでちょっぴり強くなった。それが君の求めるものでもあったなら、君の成果、見せてあげるよ」
「ソーニャ、私はいつだったか答えは戦いの中にあると言った。誰も知恵の及ばぬことに手は届かない。求めるものは手の届くところにある。戦いの記録、それだけが確かなもの、事実でしかない」
夢守も回線を開いた。
「FR自爆で、での敬意は貰ったケド。するべき、やるべき、それしかない‥‥責任転嫁してないで、今したいコトを見付けなよ。私は全部自分で決めてきた、少ない手段の中で最大限に。確かに、諦めれば傷つかないで済むケド。私もきみも、自分の命しか持てない。此処にいるのはきみの意志なの?」
「夢守ルキア、少ない言葉で意思を表すことなど難しい。私の意思はと言われれば、これまでの戦いで私が取って来た行動が全てだ。私の意思はそれ以上でも以下でもない。信じるか否かはお前次第だが」
そうして、被弾したダム・ダルはティターンを後退させる。
傭兵たちはHWを撃破して、UPC軍は春日の南を制圧しに掛かっていく。春日包囲網は大きく前進する。
「決戦は近いだろう‥‥」
ブロンズは一人ごちた。それは、確かに迫りつつあるのかもしれない。