タイトル:【ODNK】制圧作戦マスター:安原太一
シナリオ形態: イベント |
難易度: 難しい |
参加人数: 20 人 |
サポート人数: 0 人 |
リプレイ完成日時: 2011/04/03 05:26 |
●オープニング本文
ラストホープ――。
上級スタッフのアン・マーデルは、呼び出し音が鳴る電話の受話器を取った。
「ULTマーデルです」
「マーデルさん、UPC東アジア軍の中山です。先日、北九州の件ではどうも。フローラさんはお元気ですか」
「中山中佐‥‥ええ、フローラは回復したようです。あれからまたすぐに出勤して、元気にやっています」
「そうですか。それは良かった。いえ、少し、気になりましてね。彼女にお見舞いをと」
「恐縮です中佐。フローラにお伝えしておきます」
「彼女によろしくお伝えください。それでは」
「どうも」
アンは電話を切ると、吐息した。フローラが無事で良かった‥‥と思う。それからアンは、内線でフローラを呼び出した。
フローラ・ワイズマン(gz0213)は、以前と変わりなく、落ち着いた様子でやって来た。
「何でしょうか」
「フローラ、今、中山中佐から電話があってね。先日の件で。元気にやっているかって」
「そうですか‥‥中佐が」
「あんなことがあったけど、大丈夫、フローラ? 少しくらい休んだっていいのよ」
「私なら大丈夫です。ありがとうございますアン」
フローラは笑みを浮かべて軽くお辞儀すると、席に戻った。
席に着くと、向かいのデスクの青年が声を掛けた。同僚のダレン・ベントンである。
「アン、何だって?」
「この間の北九州の件で、中山中佐が電話をくれたそうなの。元気にしてるかって」
「そうか。フローラ、ほんとに大丈夫かい? 現場で事件に巻き込まれるなんて、僕たちは兵士みたいな訓練は受けてないからね。君は能力者でもないし、本当に危なかった」
「私なら大丈夫。仕事しましょ」
「大したもんだよ君は。頭が下がるね‥‥と、何だ。九州からだ。そっちにも送るよ」
ダレンは端末を操作して、フローラにデータを転送する。フローラはモニターを確認しつつ端末を操作する。
「春日方面とその周辺でバグア軍の残党が活性化しつつあり‥‥。中間市、若宮市、古賀市、福岡市、大宰府市で現在も散発的な抵抗が発生‥‥。野良キメラ多数‥‥まだ落ち着かないのね」
フローラは吐息して、待機中の傭兵たちに出撃要請を掛ける。
――北九州太宰府市。
大規模なKV戦による制圧は終了していた。しかし、地上部隊は放置された野良キメラの掃討作戦に当たっていた‥‥。
「全くどこまでも湧いて来やがるなあ‥‥このうぞうぞどもが!」
エースアサルトのアキラは、ここ最近地上部隊の援護として対キメラの生身での支援に回っていた。
飛びかかって来るグロテスクな人型キメラを大剣で叩き斬る。更に次々とキメラが群がって来るのを、無双のごとき剣さばきで吹き飛ばした。
「おい! 大丈夫か!」
アキラは前面のキメラを粉砕すると後退した。地上部隊と合流する。
「そっちこそな。体力は無限じゃないだろうが。キメラは切りが無いな」
UPCの軍傭兵は、負傷した仲間の治療に当たっていた。
――と、上空からヘルメットワームが墜落してくる。
「おいやばいぞ! こっちに落ちてくる!」
騒然となる傭兵たちは、慌てて逃げ出した。
炎に包まれたヘルメットワームが落ちてくる。それは何と百メートルを越える大型ヘルメットワームであった。
やがて、もの凄い土煙を上げて、衝撃とともに大型HWは大地に直撃した。
「うわ‥‥凄いな‥‥みんな大丈夫か!」
アキラは仲間たちの無事を確認する。
「ああ! やってくれるな空の連中! 俺たちまで死ぬとこだけどな!」
「全く‥‥ん?」
アキラが見ていると、ワームのハッチが開いて、バグアスーツに身を包んだ人間が下りて来た。そのバグアは、やがて倒れ伏して砂粒のように崩れ落ちて行った。
アキラは恐る恐る近づくと、バグア人だった「もの」を剣で突いた。
やがて――ラストホープからやって来た傭兵たち含め、援軍の軍傭兵たちがジープや輸送車で続々と到着する。
「おい無事か!」
傭兵たちの言葉に、アキラは走って戻って来た。
「どうしたんだ。大所帯だな」
「本部からの指示だ。あの大型HWを制圧しろってな。慣性制御装置を確保しろとのことだ」
「なるほど‥‥どうやら、中にはバグア人もいるようだぜ?」
「一気に制圧する。各チームに分かれて、内部を完全に掌握するんだ。制御室らしきものを優先して確保して行くぞ」
これまでの戦いで確認されている、バグアの施設の中枢に使用されている生体機械の様子を、思い浮かべる。
「まさに事件は現場で起こってるって状況だな‥‥」
アキラは呟く。
「おい行くぞ!」
傭兵たちは、続々と大型HWの中へ乗り込んでいく――。
●リプレイ本文
ヘルメットワーム内部、中央制御室――。
広大な空間の中で、生き残ったバグア人と強化人間たちはほとんど壊滅したシステムと悪戦苦闘していた。
「司令官――!」
「どうした!」
「こちらへ来て下さい! 主通路に敵軍が侵入を開始しました!」
そう言うと、部下のバグア人はカメラの映像を切り替えて行く。
「傭兵どもだ‥‥」
「どういたしますか。このままでは、ここも危ない。敵の数は大部隊です」
「この機を確保するつもりだ‥‥そうはさせんぞ」
バグア司令官は、しばし考えて、部下に言った。
「全艦封鎖だ」
「了解しました――」
バグア人はコンソールを叩く。各所で封鎖が始まり、隔壁が落ちて行くが。
「駄目です、完全には封鎖出来ません。物理的な損傷がひどいかと思われます」
「制圧されるとなれば、何とか機体を自爆するしかない。最悪、回収部隊が来るまでは、我々でどうにか傭兵たちを食い止めなければならん」
「一部の封鎖には成功しました。いくらか時間は稼げるでしょう」
「自爆装置の復旧にはどれくらいかかる」
「損傷具合を見ていませんので何とも言えませんが‥‥そんな簡単には行かないでしょう。最悪の場合、装置の復旧は不可能かもしれません」
「大型HWを奪還されるなど、あってはならんことだ。これだけまだ機体が残っている上、慣性制御装置まで‥‥何としても奴らの手から機体を守るのだ! 各制御室に背水の陣で迎撃に備えるように伝えろ! 奴らはすぐに来るぞ!」
「了解しました司令官。――全艦に告げる。こちら中央制御室。敵が機体に侵入を開始した。回収部隊が来るまで、総員敵を迎撃せよ。白兵戦を覚悟せよ。なお各ブロックで自爆装置の復旧に当たれ。繰り返す。敵が機体に侵入を開始した――」
――西ブロックの通路で。
UNKNOWNは天井を振り仰いだ。うねうねと脈動するパイプのようなものが天井を埋め尽くしている。壁はあちこちで怪しい赤い光を放って点滅している。
「聞いたかねみんな」
「けひゃ、どうやら連中は自爆するつもりのようだね〜、そんな真似はさせないぞ〜」
ドクター・ウェストは言って、目の前の隔壁に歩み寄った。壁を軽く叩いてみる。 隔壁のロックをスキル電子魔術師で開錠を試みる。
「まあ、何事もやってみないと分からないか〜」
鍵を回すような仕草に、口で「ガチャガチャポンッとね〜」と効果音をつける。
――が、隔壁に反応は無い。
「あれ、どうやら電子魔術師では効果が無いようだね〜」
「それならば――」
UNKNOWNは進み出ると、
「ドクター、そっちを頼む」
OR煙草【T】の道具も使い開錠を試みる。と、非常サイレンが鳴り始めたので、
「CUT!」
攻性操作で回路を瞬間過電圧で焼切る指示を出すが、ドアは沈黙している。
「ふむ、駄目か」
「それでは‥‥吹き飛ばすしかありませんね」
終夜・無月は剣を構えると、前に出た。
ソーニャに立花零次、水無月 魔諭邏とヘイルも武器を構えて前に出る。
「それじゃ、行くよ――」
「一、二の‥‥三!」
傭兵たちの激しい攻撃を受けて、隔壁は崩れ落ちた。
「閃光手榴弾――参ります!」
水無月は手榴弾を投げ込んだ。
傭兵たちは目を伏せると、爆発を待った。やがて、閃光が爆発して、獣のような咆哮が上がった。
「早期制圧が肝、とは言え奇襲されては元も子もない。警戒は怠らないようにしないとな」
ヘイルは言って、二槍を構えて目を向ける。
「キメラを確認」
「軍の方はキメラの足止めを! 俺達でバグアを狙うぞ!」
ヘイルの言葉に、軍の指揮官は「注意しろ」と声を掛ける。
通路にキメラが散開して喚いている。
「行くぞ!」
突進する傭兵たち。
「行け行け!」
軍傭兵たちは加速すると、うろたえているキメラに殺到して行く。
ドクター、UNKNOWN、ソーニャ、立花、無月、ヘイル、水無月らはキメラの集団をやり過ごし、西ブロックに侵入する。
「ここが制御室‥‥?」
ソーニャは怪しげな光を放つ室内を見渡して手をかざした。
「敵襲です!」
「来たか!」
室内のコンソールの前に、バグアスーツを身につけた人間の姿をした者たちがいる。
「UPC軍! ここは渡さん!」
「強化人間ですか‥‥」
無月が問うのに、バグア人は壁に掛かっている武器を手に取る。
「強化人間だけではないぞ。私はヨリシロだ。お前たちが束になってかかろうと、私は倒せん」
「なるほど‥‥では‥‥俺も全力で掛からないといけませんね」
「お前たち! 作業を中断して奴らを止めろ! これ以上奴らを通すな!」
ばらばらと、強化人間たちが前進してくる。
「傭兵たち、ここから先は通さん」
「けひゃ、では押し通るまでだね〜、あわよくばバグアのテクノロジーに付いて聞いてみたいところではあるがね〜」
ドクターは銃を構えた。
「掛かれ!」
バグア人の号令とともに、強化人間たちが襲い掛かって来る。
「攻撃の隙は与えん! このまま討たせて貰おうか!」
ヘイルは突進すると、強化人間と激突する。
「援護するよ!」
ソーニャはサブマシンガンを叩きつけ、ヘイルはその隙に突進する。
「猛火の赤龍!」
ヘイルは二槍を叩き込んだ。
強化人間は吹っ飛び、壁に激突した。
「ぐ‥‥!」
強化人間は銃で応戦しつつ態勢を立て直す。
ヘイルは銃撃を受け止めつつ、前進する。
「中々やるが‥‥こちらにもそれなりの覚悟があるんでな」
「覚悟など‥‥こっちは死んだも同然だ! 今更な!」
強化人間は怒声を上げて飛びかかって来る。
一撃、二撃と弾いて、ヘイルは槍を跳ね上げて強化人間の顔面を殴りつけると、敵の胴体に二槍を突き入れた。槍が貫通する。
「ご‥‥お‥‥」
強化人間は貫通した槍を握って、血を吐き出してヘイルに掴みかかって来る。
「ここで貴様等を通すわけには‥‥」
ヘイルは槍を引き抜くと、強化人間を槍で突き倒した。
「水無月魔諭邏、参ります!」
水無月は強化人間に接近戦を挑みかかる。
「来い傭兵! あの世へ送ってくれる!」
強化人間は腰の刀を抜くと、突進してくる。
激しく打ち合う水無月と強化人間。
「わたくしの役割はここを制圧すること! そのためにはあなたに負けるわけにはいきませんの!」
「UPC、それは俺とて同じよ! バグアのテクノロジーをお前たちに奪われるわけにはいかんのだ!」
「あなたたちは負けたも同然です! 降伏しなさい!」
「降伏だと!? 笑わせるな! ここへ来て降伏などあり得ん!」
強化人間の激しい攻撃を盾で弾き返す。
「諦めなさい! そこまでバグアに味方する理由は何ですか! 投降すれば、強化人間の身から解放できるかもしれません! 私たちはスチムソン博士からヒントを得ました! だから‥‥」
「世迷いごとをぬかすな! スチムソンなど‥‥信用できるものか! 能力者を生み出した張本人ではないか! いわばこの戦争の元凶よ!」
「そこまで私たちが憎いのですか」
「ああ憎いとも! バグアの手に捕らわれることなく、お前たちは己の意思で生きている! それが憎い! 俺たちは最初から死んだも同然だ!」
「それだったら、なおのこと、降伏して下さい。生きる道はあります!」
「分からん奴だな! もはや手遅れなんだよ! 俺は後悔なんかしてない! 後戻りは出来ないんだ!」
水無月は吐息して、刀を構えた。
「あなたを倒さねばなりません」
「分かっていることだろう」
強化人間は横目で状況を見やる。
UNKNOWNらが幹部のバグア人を包囲して撃破していた。
「‥‥もはやこれまだ傭兵。俺に生きる道はなさそうだ」
水無月が警戒していると、強化人間は自分の首に刀を当ててそのまま切り裂いた。
「――!」
駆け寄る水無月の前で、強化人間は倒れ伏して死んだ。
「大丈夫か魔諭邏!」
ヘイルが駆け寄って来る。
「はい‥‥この強化人間、自ら命を‥‥」
「そうか‥‥」
ヘイルは室内を見渡し、戦況を確認する。後方から侵入してきた軍傭兵が室内を完全に制圧して行く。
「どうやらここは終わりそうだ。行こう」
「はい」
水無月は立ち上がった。
ヘイルは無線機で仲間たちと連絡を取る。
「こちら西ブロック、制圧を完了した――どうぞ」
南ブロック――。
「んじゃあ行くぜぇ――!」
宗太郎=シルエイトは行く手を遮る隔壁に槍を叩き込んだ。凄絶な衝撃音とともに隔壁が吹き飛び、進路が切り開かれた。
後方では軍傭兵たちがキメラを掃討していた。
南ブロックの制御室には、バグア人が二人と、強化人間が五人いた。
「司令官! 敵が来ます!」
「迎撃するぞ!」
「気を付けてみなさん、バグア人がいるとすれば、並みの強化人間よりははるかに強いはず」
アンジェラ・D.S.はアサルトライフルを構えつつ侵入する。軍傭兵たちも後から続いてくる。
「常に数的優位を作っていくのよ。一人で当たろうとしないで」
「それにしても、ダム・ダルが居らずとも、九州地区の戦火は衰えず‥‥。やれやれ、此処でのワシの仕事はまだ終りそうに無いな! ガッハッハ!」
孫六 兼元は前衛に立って、入って行く。
「目の前に降って湧いて来たお宝、わざわざ逃す手は無いですね」
周囲の傭兵に悪戯ぽっく微笑を向けるソウマ。
「根こそぎ頂いていきますよ」
内心では機密情報の塊であるHWの確保を固く決心。
「行くぜみんな。どうやら敵さんも必死のようだが、俺たちも覚悟を決めて行くとするかね」
那月 ケイは、仲間たちに言って肩をすくめる。
「ようやく来たか傭兵ども! だがここは渡さん! ここは貴様等の墓場となる」
「どうかな」
「ガッハッハ! バグア人はどこだ! ワシが相手になろう!」
宗太郎に孫六らが前に出る。
「僕のキョウ運の恐ろしさ、たっぷりと実感させてあげますよ」
ソウマがするすると側面から回り込んでいく。
アンジェラは軍傭兵とともにライフルを構えてサポートの位置に付いて行く。
ケイもまた銃を構えて支援の位置に付く。
「強化人間ならともかく、私たちバグア人を簡単に倒せると思うなよ」
目立つバグアスーツを着た二人のヨリシロが、前に出てくる。その側面を固める強化人間たち。
「‥‥‥‥」
傭兵たちは威圧的なヨリシロの前に、確かにプレッシャーを感じた。
強化人間たちは銃を構えると、バグア人の合図で攻撃を開始する。
「撃ち殺せ!」
傭兵たちも攻撃を開始する。
宗太郎に孫六は散って、加速する。
「制圧射撃――」
アンジェラはライフルを構えると、制圧射撃を撃ち放った。銃撃の連射がバグア人たちの行動を低下させる。
「行きますよ――ボクに出会った不幸を呪え」
ソウマは側面を掛け抜け強化人間に加速した。
「ぬう――!」
強化人間の銃撃にソウマは壁を蹴って飛び上がり、超機械で攻撃を加えた。
「突撃!」
軍傭兵たちが加速して行く。
「こっちはきっちり援護するぜ。任せなよ」
ケイは銃撃を加えながら戦況を見やる。
軍傭兵たちが強化人間と激突する。
宗太郎は味方最前衛から突出。敵の射撃は遮蔽を上手く利用して避け雑魚を釣れるだけ釣る。
「そうだ、来い‥‥数で押さなきゃ、俺は倒れねぇぞ!」
強化人間たちの銃撃が宗太郎に向く。
――そこで、十分引き付けたところでランスチャージで敵陣深く切り込み、そこから【豪波斬撃+十字撃+両断剣・絶】発動、雑魚を纏めて一掃する。
仲間と制御系の端末は避けるように衝撃波の角度を調整。
「そろそろ耐え切れねぇか‥‥いくぜ、ありったけ! みんな! どいてくれよ!」
「宗太郎が来るぞ! 下がれ!」
「SES、オーバードライブ! くらいやがれぇ!!」
宗太郎の周りに衝撃波が炸裂する。強化人間たちは切り裂かれてばたばたと倒れた。
「何だと‥‥馬鹿な‥‥」
「行け行け! 一気に行くぞ!」
傭兵たちは前進する。
「行くぞバグア!」
孫六も加速した。
「おのれ‥‥!」
バグア人の一人が腕を突き出すと、その肉体が膨張し始める。
「私の限界突破を‥‥見せてくれよう‥‥! 行くぞ!」
バグア人は爆発的な勢いで飛んだ。
受け止める孫六。
剣技――「下段」
剣先を真っ直ぐ相手の足元に向け、低く構える
カウンター主体の構え――
*突っ込んで来た相手に、真っ直ぐ剣先を持ち上げ突進を抑制し、相手が止まった隙に前進し刺突
*敵の攻撃を下から弾き上げ、剣を返して斬る!
*真下の死角から垂直に斬り上げ、「八双」に構え縦斬り!
剣技――「八双」
右肩に剣を担ぎ、腰を落とした構え。
*袈裟斬りから、剣を止めず転身し、横斬り
*右袈裟斬りから、円運動で左肩通り剣を上げ、左袈裟斬り
*縦斬り(袈裟)から「下段」へ移行
激突した孫六は下段から八双に切り替えつつ、スキル「スマッシュ」に加えて「天地撃」でバグア人を地面に叩きつける。
「その程度! ダムの限界突破に比べれば、無いのと一緒だ!」
「何だと‥‥私の限界突破を‥‥」
さらに続々と強化人間たちを撃破して行く傭兵たち。
「我が命尽きようとも‥‥この機体を渡すわけにはいかん‥‥! 何としても食い止める!」
バグア人は起き上がると咆哮して飛びかかって来る。
孫六と再度激突する。
「さすがにしぶといな‥‥孫六さん!」
宗太郎がバグア人に打撃を与える。
「銃撃できる方はあのバグア人を撃って!」
アンジェラは合図を送り、バグア人に集中攻撃を浴びせかける。
「よーし! 撃って撃って撃ちまくれ!」
ケイもまた、銃撃を解しする。
「おのれ‥‥!」
バグア人は孫六と宗太郎に格闘攻撃を浴びせるが、二人ともバグア人を封じ込める。
集中攻撃が限界突破したバグア人を襲う。
「くく‥‥これまでだ‥‥時間切れだ‥‥傭兵たち‥‥」
バグア人は砂のように崩れ落ちて行く。
と、そこで部屋の全ての通路が隔壁によって塞がれ、傭兵たちは閉じ込められる。
「あいつだ!」
ソウマはコンソールを操作していたもう一人のバグア人に超機械の一撃を浴びせた。
「手遅れだ傭兵たち。自爆シークエンスを起動した。ここはもう吹っ飛ぶ」
バグア人は床に倒れてから意味不明な言葉で笑った。
「何だって」
ソウマはコンソールに飛び付いたが、見たこともない機械にさすがに手が出ない。
「これじゃ‥‥えい!」
ソウマは思い切ってパネルを叩いたが、サイレンは鳴りやまない。
「もういい! 出るぞ! 隔壁を吹っ飛ばす! 脱出だ!」
「全ての銃撃を隔壁に叩き込め!」
「行くわよ! 銃撃開始!」
傭兵たちは隔壁の一つを銃撃で粉微塵にした。
「急げ!」
逃げる傭兵たちを、バグア人は笑って見送っていた。
「出ろ!」
ケイは最後の軍傭兵を押して、飛びだした。
直後――南ブロックは大爆発を起こして吹っ飛んだ。
東ブロック――。
「まさか‥‥玉砕覚悟?」
トゥリムは言って、吐息した。
「内部じゃ派手な戦闘はできないね‥‥」
「よし、ここまでさしたる抵抗もない、行こう」
ユーリ・ヴェルトライゼンとヒューイ・焔は仲間たちに呼び掛けると、先を急ぐ。
「さあ楽しい楽しい戦争の時間ですわ。敵船に乗り込んでの殲滅戦なんて燃えますわね」
ミリハナクは湧きたつ攻撃衝動を抑えきれずに、敵の姿を探した。
「キメラの姿を確認した」
先に進んでいた軍傭兵が戻って来る。
「どうやらその先に、広い部屋があるようだ」
「とすると、キメラは警備用か」
「ちゃっちゃと片づけて行こうぜ?」
「ああ、バグア人や強化人間が乗り込んでいるのに、キメラに構っている時間はない。尤も、あのガルガがいたとしたら、そう簡単には行かないと思うけど‥‥」
接近して行く傭兵たち。
巨人キメラと猛獣型キメラが徘徊して通路を塞いでいる。
「ガルガじゃないな‥‥」
「一気に潰してしまいましょう。こちらには数もいるのですし、反撃する間も与えず息の根を止めるべきですわ」
「そうだな‥‥よし、テンカウントで突入。そのまま奥の部屋まで侵入する」
「了解した」
「行くぞ――」
それから、傭兵たちは通路の壁に張り付くように前進すると、キメラとぎりぎりのところまで接近して、突入した。
ヒューイ、ユーリ、ミリハナクら、近接系の傭兵たちが瞬時にキメラたちを沈黙させる。
ユーリが後方に合図を送りつつ、部屋の中へ閃光手榴弾を投げ込む。
やがて閃光が爆発して、傭兵たちは室内に突入した。
中にいたのはバグア人二人と強化人間六人。
「き、来ました! 傭兵たちです!」
「総員迎撃せよ!」
「行きますわよ」
ミリハナクはそのまま加速した。ソニックブームを叩き込み突進すると、更に強化人間一人を吹き飛ばしてバグア人に突撃する。
「にい‥‥!」
バグア人は恐るべきミリハナクの一撃を受けとめたが、吹っ飛んだ。
バグアの限界突破は更に命を燃やしての『変身』や『融合』は発動までにタイムラグがあると今まで殺したバグア人から経験済み。まずは速攻でバグア人を優先目標。
ミリハナクは凄まじい勢いで斧をバグア人に振り下ろした。バグア人はズタズタにされて、何とか立ち上がる。ミリハナクに反撃するが、ことごとく弾かれる。
「無駄なことですの。限界突破はさせませんの」
「何だと‥‥ふざけるなよ傭兵‥‥」
バグア人は後退して限界突破し始めるが、次の瞬間、ミリハナクに一刀両断された。
「馬鹿な‥‥」
ぼろぼろに崩れ落ちて行くバグア人――。
トゥリムは騒然となって行く室内に目を向けながら、ハンドガンで支援攻撃を行っていく。
貫通弾をハンドガンに装填して影撃ちスキルを併用して一撃で仕留めに掛かる。「貫通弾」を撃つ度に涙の量が増える。
「せめて痛み無く‥‥」
一撃打つたびに涙がこぼれる。
「悪く‥‥思わないで」
あふれる涙。
「‥‥‥‥」
貫通弾は強化人間の肉体を貫いたが、壮絶な死闘はトゥリムの感情を揺さぶった。
「おのれ傭兵‥‥!」
強化人間は銃を向けると、トゥリムを打ち抜いた。
バン! とトゥリムは直撃を受けて吹っ飛んだ。壁に叩きつけられて、意識が飛びそうになる。全身がばらばらになりそうな衝撃を受けて、トゥリムはうめきながら転がった。救急セットを取りだすと、自ら応急手当を施す。
「大丈夫ですかトゥリムさん」
サイエンティストが駆け寄ってきて、トゥリムの生命力を回復させる。
「ありがとう‥‥」
「敵は容赦ないですからね。しっかり、トゥリムさん」
「はい」
トゥリムはどうにか立ち上がると、ハンドガンを構えて呼吸を整えた。目まぐるしく動く戦闘は、揺れるトゥリムの感情を飲み込んでいく。
「ここは頂くよ。悪いけどね」
ユーリは剣を強化人間に叩き込み、軍傭兵と連携しつつ撃破して行く。
「司令官! 間に合いません! このままでは全滅です!」
強化人間の一人が叫ぶが、バグア人はヒューイとミリハナクの攻撃を受けて防戦一方だった。
「持ち堪えろ! ここを明け渡すわけにはいかん! 中央制御室を押さえられたらおしまいだ!」
「そうか、だったら、早くここを押さえないとね」
ユーリは攻撃の手を緩めず、強化人間に打撃を与えて行く。連携を重視し、できるだけ早期制圧を目指して一気に攻める。ウリエル使用時は両断剣で威力を上乗せし、他の前衛とタイミング合わせて多方向から攻撃を掛ける形で確実にダメージを入れて行く。
ヒューイはバグア人に対して猛撃を使用した状態でハミングバードで斬撃、隙ができたらカミツレで叩き切り、限界突破を使おうとしてきた場合は剣劇も使いひたすら動きを止める。
ミリハナクは最初と同じく猛烈な勢いで打ち掛かって行く。
「ヒューイ君、いきますわよ。そろそろおしまいにしますの」
「ああ、て、そんな簡単に行くのかね」
「行きますわよ」
だが、二人の攻撃を凌いだバグア人は、限界突破に入る。ばさっと、背中から翼を生やしたバグア人は、肉体が変形して怪物化して行く。
「ここまでだ傭兵‥‥! 私の最後の命‥‥果てる前にお前たちを皆殺しにする‥‥!」
「おい、来たぜ」
「そのようですわね」
警戒するミリハナクとヒューイ。
直後、バグア人は爆発的な勢いで加速した。
「に――!」
ヒューイはカミツレで受け止めた。凄まじい衝撃が来るが、ヒューイは踏みとどまる。
「さすが‥‥だけどね、と!」
次の瞬間、跳ね上げた剣でバグア人の腕を切り飛ばした。
「ぬう――!」
驚愕するバグア人。
「どうやら詰みだなバグアさん、何号かは知らないけど」
「お、おのれ‥‥」
後退するバグア人。
ヒューイとミリハナクはバグア人を追い詰めて行く。
最後に、ヒューイが激突して、剣がバグア人の胸を貫通した。バグア人は苦悶の声を残して、砂粒のように塵となって消滅した。
「さて‥‥あとはキリングタイムですわ。全力で破壊の力たる斧を振り回す暴風となって間合いに入る敵を叩き潰すだけですの。背中や周りは味方を信頼し、私は前だけを見て敵を殺しますわね。さあ絢爛舞踏に戦いを楽しみましょう」
ミリハナクはそう言うと、猛り狂う暴風となって強化人間に襲い掛かって行く。
トゥリムはミリハナクがソニックブーム乱舞で敵を全滅させたらしばし呆然と眺める。
「‥‥いいの? いいんだ‥‥」
「よし‥‥制圧完了。被害は無いな」
ユーリは仲間たちの無事を確認すると、無線機を取りだした。
「こちら東ブロック、制圧完了した――」
北ブロック――。
「直感で罠の確認――解除しない、リスク高い為――と機械室などの発見――伝導を切り制圧――EP、FTとDFを前衛、GP・FCを側面、HGは後衛。探査の眼で調査、HGが制圧射撃、GPとFCは壁蹴ったりしてすり抜けて先へ。FTとDFが回り込んで制圧。バッドスティータスはDF・HA任せ。中央への道を作るコト優先」
夢守ルキアの言葉に、軍傭兵たちは頷く。
「‥‥ダム・ダルが居なくなってからはあっけないものだな。いかん、いかん。気が抜けているな‥‥戦場で油断は大敵だ」
カルマ・シュタットは、吐息して頭を掻いた。
「ルキアお姉さま、凄い‥‥」
キャメロは年上のはずだが、ルキアをお姉さまと呼んで慕っていた。
「大型の慣性制御装置か、確保出来れば使い道は色々ありそうか‥‥」
イレイズ・バークライドは言って、通路周りを見渡した。不気味な震動音が響いている。
「いいか、進行路に罠がないか警戒。頭上や足元、通路曲がり角影など奇襲にも注意し即時対応出来る様に備えておくぞ」
傭兵たちはフォーメーションを組んで前進して行く。
「ちょっと待って、そこ」
軍傭兵の一人が、足を止める。
「別の部屋がある。気を付けろ」
傭兵たちはゆっくり扉に近づくと、開閉ボタンを押して小さな部屋に突入した。
室内にいた強化人間は驚いたように振り返ると、腰の銃に手を伸ばしたが、傭兵に撃ち殺された。
「何だここは‥‥」
傭兵たちは小さなコンソールと、壁中に伸びている脈動するパイプを見て、何かの機械室と判断した。
「よし、伝導を切断する」
傭兵たちは機械室を制圧して、更に通路を進んでいく。通路の広さで、側面から突破出来るようにデルタ陣形で。
「まず、逃走OKね。敵の破壊より、制圧優先で中央への道を作る」
ルキアは、言って傭兵たちに言葉を掛ける。
「了解――」
先に進むイレイズやカルマは、敵襲に備えて前方に注視していた。
キャメロは、ワーム内部の様子に興味深げに観察していた。サイエンティストとして、こんな知識を得る機会は滅多にない。
「待った――」
カルマは、手を上げて、仲間たちを止める。
「先にキメラだ。数は十程度」
「どうするルキア、突破優先でいくか」
イレイズの言葉に、ルキアは肩をすくめた。
「数が多いね。突破は無理だろうね。ここは制圧して行くしかないかも」
「そのようですね。では‥‥俺が先頭で飛び込みますから、みなさん後に続いて」
カルマは言って、指を五本立てた。合図五つで攻撃開始――。
「行きますよ――」
カルマを先頭に、傭兵たちは突撃した。
イレイズも加速して、槍を構えて突進。
軍傭兵たちはキメラの群れに殺到する。
銃撃と咆哮が通路に交錯する。
「みなさん、気を付けて下さい! 負傷は私が回復します!」
キャメロは言って、後方で待機する。
と、ルキアは迅雷で横をすり抜けて敵の背面へ回る。そのままエネガンで狙撃。
「ん、軍のヒトは先にどーぞ、あ、任せても大丈夫?」
ルキアは様子を見て、先に進んで部屋トカ覗く。
「‥‥‥‥」
ルキアは少し進んで、先にある制御室に辿りついた。巨大な生体機械が部屋の中央に立っており、その周りには、コンソールがあって、バグア人らしき人物たちや強化人間たちが操作していた。
強化人間トカが敵が背中に庇ってるトコトカ、注意して見てるトコは優先的に調査するよ‥‥。
「司令官――」
強化人間がバグア人に声を掛ける。
「傭兵たちがすぐそこまで来ています」
「自爆装置は回復しそうか」
「まだです。恐らく回復は不可能かと思われます‥‥」
「ならば、ここで敵の足を止めるしかない。全員に白兵戦の用意をさせろ」
ルキアはそこまで聞いて、仲間たちのもとへ戻る。
傭兵たちはキメラを倒して、通路を確保していた。
「敵はこちらを待ち受けてる。モニターで私たちの接近はばれてる」
「それなら小細工は無用だな。正面から制圧するしかないだろう」
イレイズは言って、自ら先頭に立つと言う。
「行こう。カルマと俺で最初に盾になる」
「よし、こっちも前衛クラスは全て投入しよう。狙撃主に支援攻撃をさせる」
「頼む。――行こう」
制御室の中は静まり返っていた。バグア兵は生体機械の影に隠れて、待ちうけていた。
「敵の姿が見えないか‥‥」
イレイズは敵の迎撃に備え、武装を盾に変更する。
「俺とキャバルリーが守護神でサポートする。敵を発見次第潰せ。いいか」
「ああ」
「よし行くぞ――!」
傭兵たちは突撃した。
直後、バグア兵たちは飛び出してきて銃撃を浴びせる。
「行け行け!」
イレイズとカルマはバグア人に突進して行った。
ルキアは影撃ちで死角を確認、そのままその場所へ迅雷で移動する。
「軍のヒトのSブームや援護射撃期待するよ」
「夢守! 支援する!」
「アリガト」
後衛、遮蔽物や、身体のひねりを使った回避。エネガンで攻撃し、練成治癒で負傷の治療。なるべく練力は温存、戦闘に回したいし軍のSTとキャメロ君頼み。
「敵と何度か交戦すれば、分断されるだろうし側面と前衛を変更トカで、負傷率を一定に。私は足などを狙撃、目が狙えたら目」
移動しながら攻撃、攻撃場所の予測を立てさせないで当てる事を重視。
「夢守を援護しろ! 前後衛、機動的に動け!」
「了解しました!」
激しい銃撃戦の中、キャメロは負傷する傭兵たちの回復に回る。
「大丈夫ですか!」
「いや! 回復頼むキャメロ!」
「はい! 練成治療飛ばします!」
キャメロはさっと手を振って、練成治療を飛ばす。戦闘中、バグア人の様子に注意を払う。キャメロには懸念があった。もしもバグア人がワームと融合してしまったら、あるいはワームの一部が乗っ取られてしまうのではないかと。万が一に備えてくず鉄を握りしめていた。
カルマとイレイズはバグア人との直接戦闘に当たる。
「カルマ!」
イレイズは初動は盾で敵の攻撃を凌ぎ、敵に押し付け動きを阻害し抜刀・瞬で鳴神に変更する。
そのまま隙を突き、懐に踏み込んで心部を貫く。
バグア人は受け止めたが、カルマの攻撃に吹っ飛んだ。
「く‥‥おのれ‥‥何と言う奴らだ。生身で‥‥ちっ」
イレイズは用心しながら接近する。基本、下段の構えで備え、敵の攻撃を払い、受け流し易く構える。
「行くぞ」
カルマは槍を構えると、イレイズと挟み撃ちにする。
豪破斬撃を繰り出し、バグア人に打撃を与えて行く。イレイズは突き、切り上げ、足払いなど連続攻撃で対処する。
「くそ‥‥こうなれば‥‥一か八か、融合に掛けるしかない!」
バグア人は中央の生体機械に駆け寄ると、腕を振り上げた。
その瞬間、注視していたキャメロが駆け寄り、くず鉄を投げつけた。
「ワームとなんか融合させませんよ! えいっ!」
くず鉄は、バグア人の顔面に直撃したが、もちろんさしたる威力はない。バグア人が万が一融合に走るようなら、ダメ元でくず鉄を投げつけそれに融合させようと試みたのだ。
しかし、一瞬の隙が生じたところを、イレイズとカルマに背後から打たれた。二人の槍が貫通する。
「ぬ‥‥お‥‥おのれ‥‥」
バグア人は限界突破を試みたが、既に力は残っていなかった。カルマとイレイズの攻撃を受けて崩れ落ちて行く。
強化人間たちは軍傭兵たちが撃破して行く。最後まで抵抗した一人も撃ち殺された。
「よし、制圧完了――」
軍傭兵の隊長が、室内を見渡して、強化人間の死体や計器類などを確認する。
ルキアは無線で連絡を取った。
「こちら北ブロック。制圧完了したよ。各チーム、応答して」
すると、状況が明らかになる。これまでの戦闘で、南ブロックは敵の自爆装置で吹き 飛んだが、東と西は制圧したと連絡が入った。残る中央制御室に、ドクターにUNKNOWN、ソーニャに立花、無月らが向かっていることが確認された。
中央制御室――。
「司令官!」
部下のバグア人の悲鳴のような声が上がった。
「傭兵の大部隊が各方面を制圧しつつあります! 南ブロックは自爆しましたが、それ以外は敵の手に落ちました!」
「まだここの自爆装置は起動しないか」
「まだです!」
「敵が各所からこちらに向かってきます! 包囲されます!」
「おのれ‥‥このような事態に陥るとは‥‥」
やがて、続々と傭兵たちが中央制御室に到着し始める。ドクター・ウェスト、UNKNOWN、ソーニャ、立花 零次、終夜・無月らは、最初に西ブロックから到着する。
ドクターは中央の内部を見て愚痴る。
「我輩にもコレらの装置を感覚的に理解できればな〜‥‥」
「UPC! ここは渡さん!」
前に出てくるバグア人たちの姿に、ドクターは「けひゃ」と笑う。
「天才的頭脳の君たちを殺すのは忍びないね〜」
「殺すだと? 本気でそんなことが可能だと思っているのか?」
次の瞬間、UNKNOWNのエネルギーキャノンがバグア人を吹き飛ばした。UNKNOWNの一撃を受けたバグア人は半壊していた。
「な、何だ‥‥馬鹿な‥‥」
「降伏は無いバグア人」
それから、UNKNOWNは立ち塞がる強化人間たちに問う。
「降伏するか死か、選びたまえ。言っておくが二度は無い」
降伏する者はいない。
「そうかね。ならば仕方ない――」
UNKNOWNは強化人間を撃ち殺していく。
ドクターはエネガンで支援しながら、突撃するソーニャに立花、無月らを支援する。
竜の翼で飛び込むソーニャ。その勢い利用し、大鎌を振るう。
――キイイイイン! とバグア人は弾き飛ばした。
「貴様はソーニャ傭兵!」
バグア人の叫びに、ソーニャは弾かれた反動を利用し、逆回転にステップを転じ、高速で鎌、及び自身を回転させ攻撃を繰り出した。
直撃がバグア人を捉える。
ダンスの様に身を回転させ体を入れ替え、相手との至近距離を保つ。
鎌の柄を回転させる事と、至近距離を保つ事で防御。
「貴様を知っている! この北九州で忘れ難き宿敵の一人!」
「それは光栄だね」
ソーニャは言いつつ、バグア人と格闘戦を演じる。
黒竜で防御力を上げ竜の血使用で体力を回復。
味方の射撃に合わせて竜の翼で後退。サブマシンガンで攻撃。
「略奪なんてあまり行儀のいい行いじゃないけど、失礼させてもらうよ。これがあれば空(そら)より高い宇宙(そら)へ行けるのかな」
「宇宙だと? 貴様らが? 飛ぶために何でもすると言うのかソーニャ傭兵。お前が地上にまで下りてくるとは‥‥意外ではあるが」
「ボクがなんで柄にもなく白兵戦をやってるかって? 九州ではいろいろあったからね。最後まで見届けないと。ボクが死んだ時、向こうで話さなきゃならない人がいっぱいいるからね」
「そうだろうな。ならば、今ここで、あの世へ送ってやるわ!」
「まだだよ。ボクは約束した」
言って、ソーニャは裂帛の気合とともに突進した。
「ソーニャを援護しろ!」
軍傭兵たちもサポートする。
立花は遠距離からの超機械『扇嵐』による先制、接近して刀での攻撃。
バグア人に挑みかかると、『扇嵐』を盾に持ち替え、【シールドスラム】使用。盾を突き出し視界を塞いで隙を作り、一度ステップバック(一歩下がり)してから勢いをつけて踏み込み、刀での突きを放つ。
「これで!」
「小賢しいわ!」
バグア人は受け止め、立花を吹き飛ばしたが、『扇嵐』・盾で防御しつつ、【自身障壁】で踏み留まる。
「みなさん! 支援をお願いします!」
立花は呼び掛け、バグア人と相対する。
「ここまで来るとは‥‥だが、これまでだ! 我々に人間の力が及ぶところではない!」
バグア人は光線銃を抜いて反撃してくる。
立花は盾で受けて動きを止め、その隙に味方にサインを送る。軍傭兵たちが立花の横から展開して、バグア人に襲い掛かる。
室内には多くの傭兵たちが到着しており、バグア兵たちを圧倒して行く。
立花は混乱する敵に更に『扇嵐』の竜巻で分断を狙う。
「大丈夫かね立花」
UNKNOWNの問いに、立花は頷く。
「限界突破・ワームとの融合がやっかいなバグア人を優先して狙いたいところです。味方は優勢なようですしね」
「ああ、妙な真似をする奴がいなければ良いんだが」
「そうですね」
立花は言って、室内に目を向ける。バグア人・強化人間の動きには常に注意を払い、制御室内の機器を操作する等、妙な動きがあれば、味方への警告と敵行動の阻止に動くもりであった。
「行きます」
立花は突進すると、味方と連携してバグア人に猛攻を浴びせて行く。
「俺の今の力は如何程か‥‥」
無月はバグア人に銃撃を叩き込みつつ突進する。竜の翼で加速。基本は大刀で戦闘。大刀を体の一部の様に扱い且つ持ち前の力も駆使して大刀故の小回りの効き難い様な点も一切無く敵の隙を適確に縫う攻撃と己が体捌きも合せ敵に付入らせる一部の隙も無い戦い実践。
全攻撃基本必中必殺心掛け。可能な限り敵急所を狙い且つ無理なら確実に損傷与える方針で攻撃。
攻撃回避又は防御されても即時追撃を敵回避先又は無防御先に合せ続け結果回避及び防御不能な攻撃とし追詰める。
――無月の一撃がバグア人の腕を切り飛ばす。
「‥‥ぐ‥‥おっ‥‥何だとっ」
「行きますよバグア人‥‥俺の今の最高の力で‥‥ぶつからせてもらいます」
「ぬう‥‥」
他の傭兵たちが強化人間やキメラを討ち取って行くと、残るはバグア人だけとなった。
そこで、バグア人たちは最後の賭けに出た。司令官が叫ぶ。
「残る全員ワームと融合しろ! 全員の力を合わせて、このワームをKVのいるところへ移動させる! 敵の機体にワームを破壊させるんだ!」
バグア人たちはその声に従い、手近な制御装置に腕を突き入れた。融合を開始するバグア人たち。
だが、それは傭兵たちの攻撃が無ければ実行可能な策であった。最悪でも傭兵たちの攻撃をかわせると思っていたバグア人たちにとって、すでに事態は予測を越えていた。
融合を果たしたバグア人たちの肉体は半ばワームと合体して動けない。傭兵たちは、速やかにバグア人たちを撃破して行く。
融合したバグア人たちは通常よりも頑丈になっていたが、それでも傭兵たちの地道な攻撃によって全員が死亡する。
ワームは機能を完全に停止し、遂に傭兵たちに完全制圧される。
ドクターはバグアやキメラ、強化人間の容姿、大きさ、能力、外見から分かる攻撃性能、FFの強度等を観察分析、また細胞サンプルの採取。歯止めがない今、信仰との板ばさみに悩みながら、仲間の能力者も研究対象。負傷状況や治癒過程など観察。
UNKNOWNは機能を停止したワームのコンソールに歩み寄り、適当にパネルを叩いた。さすがにバグア的アルゴリズムの解析は不可能だったが、UNKNOWNは思案顔でバグアのコンピュータを操作した。
「これで、また一つ“勝ち”に近づけたのでしょうか」
立花は、どうにか困難な戦闘が終結して、友軍と連絡を取った。間もなく戦場を確保するためにKV隊と地上部隊が到着すると言うことだった。
「これがワームの中ですか‥‥さすがに彼らのテクノロジーを理解することは出来ませんが‥‥」
キャメロは言いつつ、制御室のコンソールを叩いていた。勘に頼りつつ、コンソールを操作してみるが、はっきりしたことは分からない。何しろモニターに表示されるのは異星人の言葉で、解読不可能だった。
かくして激しい戦闘は終結し、傭兵たちの活躍もあって、UPC軍は大型HWの確保に成功するのであった。