●リプレイ本文
「く‥‥まっさかコイツが飛ぶとはね‥‥(苦笑)」
聖・真琴(
ga1622)は口許を緩めて、全長を現した轟竜號に見入っていた。空から轟竜號を見るのは自分たちが初めてだろう。
「今はゆっくり見ている時間が無いのが残念ですね、急ぎましょうかソーニャ(
gb5824)さん」
ソード(
ga6675)の言葉に、ソーニャは笑みを浮かべた。
「記念写真を撮っておきたいね」
「来なくて良い時に来るなぁ、本当に。もうちょっと空気読めよ。‥‥ま、向こうにしたら読んだ結果がコレかも知れないけど」
ユーリ・ヴェルトライゼン(
ga8751)はちょっと口を歪めて、肩をすくめた。
「轟竜號が飛んだこの記念すべき日に来るとは、バグアも態々お祝いをしに馳せ参じた、ってところでしょうか?」
神棟星嵐(
gc1022)の言葉に、ユーリは吐息した。
「ああ全く、招かれざる客人には早々に退場願いたいね」
「ガッハッハ! 奴らが良いタイミングで来るのは今に始まったことではないからな! ウム! 尤も、奴らが礼儀をわきまえているとは思えんがね!」
孫六 兼元(
gb5331)が言うと、
「兼元、ちょっと礼儀を叩き込んでやってくれよ。反応を見てるか? このティターン、先日のアレン・キングスレーだぞ」
「おお、何とかキングスレーか! あいつ、下調べは相当しとるようだからな!」
と、傭兵たちは編隊を組むと、敵機の方向に向かって加速した。
「アルファチーム、ヘルメットワームを迎撃に向かう。ロッテを組んで各個撃破で行くぞ」
「こちらブラボー、ユーリ、神棟、遅れるなよ」
「おいおい、言ってくれるね」
「全くです」
「こちらチャーリー隊、ソードにソーニャ、よろしく頼む。ラストホープ屈指のフレイアと飛べるのは光栄だ」
「それはどうも」
「各チーム、安心しろ! 後ろはワシと聖氏、フェニックスで守る! 轟竜號の直衛に付く!」
「了解兼元。轟竜號を頼む! ――よーし各チーム、行くぞ!」
ナイトフォーゲルは加速して突進して行く。
「ユニヴァースナイト三番艦からナイトフォーゲルが出ます!」
バグア軍の間にも通信が慌ただしく駆け巡る。
「来たか傭兵ども。ん?」
アレン・キングスレーは、コンソールに目を落とした。
「ほう‥‥またしても奴らが。各機データリンク。敵の情報を送る。インド軍の軍曹に、ラストホープのエースどもがいるぞ」
「情報を確認しました。ナイトフォーゲルも三隊に分かれて接近」
「全機空戦準備。奴らを撃ち落として、三番艦を破壊する」
「行くぞ!」
空戦が始まる――。
ソードのフレイアを先頭に、編隊が加速する。
ソーニャはいつものようにコクピットで心地よい風を感じていた。空を飛べるなら自分は何でもする、彼女は冷徹なまでに飛ぶことに執着するのだ。
「各機データーリンク。僚機を見失なわないでね。はぐれたものから食われるわよ。数を減らされない事、最優先事項ね。ミカガミのブースト、シュテルンのRPM、出し惜しみなしね。轟竜潜行までの時間、決して長くない。集中していくよ」
ソーニャは全機に呼び掛ける。
「長くはないが、ボクらを突破して沈めるに十分な時間。あちらはそう思ってるんだろうけどね」
「了解ソーニャ」
「全機FOX2ミサイル発射用意――」
「兵装1、3、4、5発射準備完了。PRM『アインス』Aモード起動。マルチロックオン開始、ブースト作動」
ピピピピピピピピ――! とワームをロックして行くソード。
「ロックオン、全て完了!」
ソードはコンソールを操作して行く。
「『レギオンバスター』、――――発射ッ!!」
ブースターとPRMを起動。錬力100全てを状況に合わせた能力に使用しミサイル2100発を発射するフレイアの空戦必殺技。
圧巻のミサイル攻撃。2100発のミサイルがヘルメットワームに叩きつけられる。
「来るぞレギオンバスター!」
「受け止めろ――!」
「駄目だ! 持ち堪えられない!」
炸裂するレギオンバスターで爆炎が空中に飛び散った。
続いて――。
シュテルン部隊からもK02ミサイルが放出される。
「FOX2ミサイル発射! 落ちろヘルメットワーム!」
「ミサイル発射!」
「PRMシステム起動!」
2500発のミサイルが放出され、続いてヘルメットワームを薙ぎ払う。
「うおおおおおお――!」
「何だ‥‥と‥‥!」
鮮烈な攻撃が、強化人間の最後の声を残してヘルメットワームを全機破壊した。
ソーニャはソード機の後方に付き死角をカバー。接近してくるタロスにミサイルの照準を合わせる。
「FOX2ミサイル発射、駒鳥だからって甘く見ないでね」
直撃――!
そのままタロスは接近してプロトン砲を連射すると、ミカガミを撃ち抜いて行く。
「ソーニャさん、援護頼みます」
「了解――」
「行くぞチャーリーワンからチャーリーファイブ! 左右に展開してタロスを十字砲火に追い込め!」
「シュテルン隊頼む!」
「ソードにソーニャ、敵エースは任せるぞ!」
「了解!」
ソードにソーニャはティターンに加速した。
「アレン・キングスレーですか。轟竜號へは行かせませんよ」
「アレン・キングスレー、これはまた刺激的な相手だね。あ、やば、また会ってみたくなってきちゃった。空の逢瀬だけで我慢するけどね。ボクなんか眼中にないんだろうけど、こんなに魅力的に飛んでるのにね。女神の影に隠れた恥ずかしがりやの侍女、そんなところかな」
「女神に侍女の組み合わせか、地球人にはさぞや魅力的な存在であろうな。とか冗談じゃない、そこをどけ。轟竜號をこのまま放置はできん。邪魔をするなら撃ち落としていく」
「それなら、やってみるんだね」
「そんな余裕か。行くぞ――」
キングスレーは加速した。
「ブースト起動。行きますよフレイア」
ソードのシュテルンが凄まじい機動力を見せる。
「さすがに速いけど‥‥」
ソーニャは確実には付いて行けないので、ポイントでフレイアの動きに合わせる。
「よくここまで性能を上げたものだな」
しかしキングスレーはフレイアの動きに合わせるように旋回すると、プロトン砲を連射してきた。
衝撃がフレイアに走る。
「さすがですね、バグア人。思った通りですよ」
ソードはエニセイを叩き込んだ。銃撃の直撃をティターンは受け止めて弾き飛ばした。
旋回しつつ激しく撃ち合うフレイアとティターン。
「どっちも凄いけどね‥‥」
ソーニャはエルシアンを滑り込ませ、ソードの後ろからスリップするように飛びだした。
「GP−02S発射!」
ミサイルポッドを放出してバレルロールでソードの機影に戻る。
ティターンは全弾受けとめ、牽制のプロトン砲を撃ち込んできた。
続いてソードがエニセイを叩き込み、ティターンを傾かせる。
「フレイアの攻撃で出来た隙? いえ、その誘いには乗らないわよ」
マイクロブースター、通常ブースト併用で一瞬ソード機の前に出ると、ソーニャはG放電ミサイルを放ってロール機動でソード機影に戻る。それはソード機攻撃前に一瞬の隙を作る目的。
直撃を受けたティターンに、ソードがエニセイを撃ち込む。
「やるな」
キングスレーはティターンをアクロバットに操りつつ、ライフルで応戦しつつ突破を試みる。
「さすがにしぶとい連中だ」
そこで、キングスレーは一瞬バックして直後に前進しながらミサイルポッドを放出した。
「よけきれない‥‥!」
フレイアとエルシアンを捉えたミサイルは二機に打撃を与え、その間隙をぬってキングスレーは轟竜號に向かって加速した。
「――ブラボーチーム、カプロイアミサイル発射用意!」
「行くぞみんな。盛大にぶちかましてやれよ。なんちゃってレギオンバスター」
ユーリの声に、軍傭兵たちは「了解!」と声を揃えた。
「なんちゃってレギオンバスターに加えてもらいましょう」
神棟も言って、銀色の闘気をまとって浮かび上がる青い髪を軽く払った。
「なんちゃってレギオンバスター? 何を言ってるUPC、こっちの戦力は確実に叩かせてもらう」
強化人間の怒号に、ユーリは肩をすくめた。
「驚くなよバグア軍」
「ブラボーワン、ロックオン完了!」
友軍は次々とワームをロックして行く。
神棟も射程に敵を捉えた。
「全機ロック完了、行きますよバグア軍、――全機カプロイアミサイル発射!」
「ミサイル発射!」
「ファイア!」
ディアブロ10機からK02が放出される。神棟もK02を放出した。
5000発のミサイル群がタロスの集団目がけて飛ぶ。
「何だと!?」
強化人間たちは驚愕して回避行動を取るが間に合わない。次々とミサイルが命中して炸裂して行く。
「う‥‥わあああ‥‥!」
「敵ミサイル多数! 回避‥‥不能!」
この最初のミサイル攻撃でタロスが4機撃墜された。
「まだです――」
神棟はバレルロールで加速すると、強化型SES増幅装置『ブラックハーツ』を使用し、GP−02Sミサイルポッドを全弾発射。
「威力は低くともこのミサイル、かわさずにはいられないでしょう?」
「う‥‥おおおお‥‥!」
ミサイルに巻き込まれて爆散するタロス。
「よし、各ユニット、ロッテに切り替えて各個撃破に移行。油断するな。カスタムタロスが残っているぞ」
ユーリは言いつつ、ミサイルを放出すると、友軍の十字砲火にタロスを追いこんでいく。
「食らえ!」
タロスの側面からソードウイングで切り掛かると、タロスを真っ二つにした。
「いかん‥‥このままでは圧倒されるぞ! 全機最大戦速! とにかく轟竜號へ飛び掛かれ!」
「そうはさせませんよ。ブースト起動!」
神棟はタロスの正面に立ちふさがると、ブラックハーツを立ち上げ、フォトニック・クラスターを照射した。フラッシュがタロスに叩きつけられる。
「この隙に周り込んで、撃ち落させて頂きます!」
「ちい! ペインブラッドが!」
すれ違い後にブーストUターンでライフルを叩き込む。
「逃がすなよ。FOX2ミサイル発射」
「撃ち落とせ!」
ユーリ達は加速して、タロスにミサイルを撃ち込んだ。
「くそ! 構うな行け! ユニヴァースナイトさえ落とせば良い!」
タロスは空を駆け抜けた。
「そっちへ!」
アルファチームはヘルメットワームとのドッグファイトに突入し、どうにか突破を押さえていた。
「FOX2!」
「食らえHW! ここは通さん!」
ワームも高機動で突撃するが、軍傭兵は巧みに立ち回って突破を許さない。
「おのれ‥‥! 予想はしていたが、人間も必死だな。このままでは埒が明かんぞ! ユニヴァースナイトを破壊せねば‥‥!」
「敵機来襲! 真琴、兼元! 来るぞ!」
孫六と聖は轟竜號の上空を旋回していたが、レーダーを確認して頷いた。
「どうやら、やってくるみたいだねぇ。鬼さんズをナメんなよぉ♪ いくよぉ兼元さん☆」
「ガッハッハ! オリジナルのZGFと組んでの戦いだ、その機能を最大限に発揮させて貰おう!」
「ティターンにタロスが二機! 後方から友軍! エルシアンとフレイア、ディースにシュバルツケーニッヒ!」
「やあみんな♪ お疲れ様☆ モニターはしてたよ。良い感じだね♪」
「そうもいきません真琴さん。そのティターンを通さないで」
「ガッハッハ! キングスレーか! 聖氏! 行くぞ!」
「了解♪」
オウガが二機、エックスを描いて交差して左右に展開すると、ティターンを迎撃する。
「孫六に聖真琴か。撃ち落とされたいか。どけ」
キングスレーの言葉に、孫六が巧みにその前に割り込む。
「ガッハッハ! 敵に向かってどけはないだろうキングスレー!」
「そんなことを言っていると、海に沈没してメガロワームに食われるぞ。真面目に忠告してやろう」
「そうか‥‥聖氏!」
「やっほ♪」
二機のオウガがブーストでティターンを挟み込むように加速すると、前の孫六がツインブーストAを起動させてターンすると、ミサイルを放出する。同時に、加速した聖がロケットにミサイルを撃ち込んだ。前後での挟撃に、キングスレーは微かに口許を吊り上げた。
「何を――」
キングスレーはそのままミサイルを受けとめ、爆発の中から突進すると、そのまま孫六機に加速した。
「意表を突いたな。だが、それだけだ孫六。――落ちろ!」
「何てね、そうはいかないよぉ」
聖がツインブーストBでソードウイングでティターンにぶち当たった!
「ガッハッハ! 甘いなキングスレー! ダム・ダルならかわした!」
孫六は加速してウイングで切り掛かった。
「ち‥‥! やってくれる」
その瞬間、キングスレーは慣性飛行で真上にジャンプした。
そこへ――。
「フェニックス、行ったよ♪」
聖が見上げる先で、空中変形したフェニックスがティターンに切り掛かる。
「ダム・ダルならかわしたか――」
キングスレーは言うと、アクロバットにジャンプしてフェニックスの攻撃を回避すると、プロトン砲の連射で一機を撃墜した。
「轟竜號は――」
神棟は海上に目を向ける。
巨艦は、ようやく海中に姿を消そうとしていた。
「よし! 聖氏、直衛からは解放された! ドリフトで奴を追い込むぞ!」
「了解したよ☆」
孫六と聖はまた散開すると、加速してティターンを挟み込み、ツインブーストAを使い、高速機動の慣性を活かし、敵機を軸に機体を横滑りさせるような円周軌道を描き攻撃を仕掛ける。2機揃って、車のドリフト様の動きをする。
「行くよぉ、FOX2♪」
「残り弾持ってけキングスレー!」
ドリフトしつつミサイルを叩き込む。
友軍がラージフレアを展開する。ミサイルはティターンを捕えた。
だが、爆発の中から、キングスレーのティターンは不死身のように浮かび上がって来る。
ライフルとマシンガンでティターンと撃ち合う聖と孫六。
ティターンからの激しいプロトン砲で、機体は大きく被弾した。
「キングスレー司令官! ユニヴァースナイトは沈んでしまいました! 残念ですが、これ以上の追撃は困難です! こちらも相当数が落ちましたし、敵艦の水中用KVを突破するには不可能と思われます!」
「そのようだな。――まあいい。また機会はあるだろう。あの艦が飛んでくるなら、どの道決着は海ではないかも知れんのだからな。それに‥‥こちらの部隊は俺の命令を待って待機中だ。また会う機会もあるだろう傭兵たち。撤退するぞ――」
「はっ!」
残ったタロスとHWを率いて、キングスレーは戦場から離脱する。
――戦闘終結後。艦橋部分を海に覗かせて、轟竜號は僅かに浮上していた。
「この艦がホントに飛び立ったら凄いよね♪」
聖が言葉を向けたのは、沖田艦長だった。老艦長は、吐息して軽く聖を見やる。
「まだ世界は驚きに満ちているようだな」
「沖田艦長‥‥」
孫六が沖田のジョークにどうしたものかと手を広げると、老人は肩をすくめた。
「君たちには感謝している。良く艦を守ってくれた」
「任務ですから当然です」
「科学者たちがやってくれそうだ。まだこれからではあるが希望はある」
沖田艦長はそう言うと、傭兵たちをねぎらって笑みを浮かべた。