タイトル:【DR】決壊阻止マスター:安原太一

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 10 人
サポート人数: 1 人
リプレイ完成日時:
2009/04/20 15:40

●オープニング本文


「レナ川上流に敵だと?」
 ヤクーツクの作戦司令本部に座するヴェレッタ・オリム(gz0162)中将は、その奇妙な報告に目を細めた。
「はい。比較的少数の戦力のようですが、哨戒中の部隊が発見、ヘルメットワームと交戦したとのことです。その時は大した戦闘もなく、撤退したとのことですが‥‥レナ川流域で、少しずつ位置をずらしながら何度となく同じような報告が来ています」
「つまり追い払われても懲りずに何事かをしているのか」
「はい。また、ヘルメットワームと遭遇したポイントに再度の偵察を行ったところ、そのポイントにキメラが配置されていたとのことです」
 報告にきた本部付参謀の言葉にオリムは考えをめぐらす。
 バグアが何かをレナ川に仕込み、その守りとしてキメラを配置したのは間違いない。
 だが、具体的に何をしているのかがわからない。
 ウダーチヌイへの進軍ルートからも外れるから待ち伏せの線は薄い。交戦してもすぐに逃げるのであれば、拠点を構築しているとも思えない。
 だが、この一大決戦の最中に小規模とはいえ、部隊を遊ばせておく余裕はさすがのバグアとてないはずだ。
「他に分かっていることは?」
 考えのまとまらないオリムは参謀に次の言葉を促す。
「配置されたキメラはいずれも炎をまとうタイプだったと‥‥」
「炎だと? こんな極寒の地では‥‥っ!」
 この極寒の極東ロシアで炎のキメラの話を聞くとは思いもしなかった。河川が凍りついて幹線道路になるような土地柄である。そのことに思いをはせた時、オリムの脳裏にひとつの可能性が浮かんだ。
「水攻めか?」
 凍りついた河川は天然の堰となる。
 この地域の地勢として緯度が低い上流から氷が融け始めるので、下流の融解が遅れると洪水が起きると出発前に読んだ資料にあったはずだ。本来は、それは5月中旬頃からの話であり、勝っても負けてもそこまで作戦が長引くこともあるまいと思っていた。
 しかし、バグアが4月の今の段階で凍りついた河川を融かす手段を持っているとしたら?
「なんであるにせよ、放置はできないか」
 オリムは傭兵を呼び寄せると、当該のヘルメットワーム、並びに炎キメラの撃退を命じるのであった。

 出発を前にした傭兵たちを前に強面の士官は地図を広げた。
「今回諸君らに向かってもらうのはここ(と士官はレナ川の上流とあるポイントを指差した)どちらかと言えば人類の勢力圏に近い場所だが‥‥炎キメラが十体ほど確認されている。今回の目的はバグアがレナ川に仕込んでいると思われる――ひとまず加熱装置と呼ぼう、その装置を見つけ出し、破壊することだ」
 仕官は思案顔の傭兵たちに視線を落とした。
「現地までは君たちをヘリで輸送する。なお、現状バグアにこちらの無線を傍受されていることから、これは隠密作戦となる。現在展開中の部隊との連携はとれない。君たちには独立部隊として速やかに該当地域での任務を果たしてもらいたい」
 かくして、傭兵達はレナ川上流に埋め込まれていると言う「加熱装置」の破壊、ならびに炎キメラの撃退に向かうことになる。

●参加者一覧

九十九 嵐導(ga0051
26歳・♂・SN
アグレアーブル(ga0095
21歳・♀・PN
九条・命(ga0148
22歳・♂・PN
ロジー・ビィ(ga1031
24歳・♀・AA
シャロン・エイヴァリー(ga1843
23歳・♀・AA
カルマ・シュタット(ga6302
24歳・♂・AA
レティ・クリムゾン(ga8679
21歳・♀・GD
サルファ(ga9419
22歳・♂・DF
吾妻・コウ(gb4331
19歳・♂・FC
テト・シュタイナー(gb5138
18歳・♀・ER

●リプレイ本文

 ヘリが作戦ポイントに近付いていた。能力者たちは白い吐息を吐きながら東シベリアの凍りついた大河を見下ろしていた。針葉樹林が密生する凍土に、凍りついたレナ川が走っている。ロシアの大地を流れる氷の川は壮大な光景である。能力者たちは一瞬作戦のことを忘れてどこまでも続く大河の上流に目を向けるのであった。
「このレナ川を押し流そうってんだ。加熱装置は複数個あっても不思議じゃない‥‥」
 テト・シュタイナー(gb5138)は地図に目を落としながら眉をひそめる。地理を考慮して、地図上に数字を割り振っていく。
「ま、こんなところかね」
 テトは仲間達に地図を配る。
「結構な数ですね」
 写メを取っていたアグレアーブル(ga0095)はもらった地図に目を落とす。
「これで全部ではないかもしれないな」
 テトは肩をすくめる。川に埋め込まれているという加熱装置の探索は地道な作業になりそうだ。
「(ピー、ガガ‥‥)諸君、間もなく作戦ポイントに到着する。降下するぞ、君たちを送るのはここまでだ」
 UPCの兵士が傭兵達を促す。
「んじゃ行くとすっか。出来るだけ手早く片付けたいもんだ」
 九条・命(ga0148)はロープを手に取ると、一番手として氷の川の上に降下して行った。

 能力者たちは二班に別れて行動する。テトが割り振ってくれた数字の順番に探索を開始するが。
「さすがにべらぼうな広さだな。テト、どうだ」
 九十九嵐導(ga0051)は探知機を地面にかざすテトを振り返った。テトは無言で氷を見つめている。
「反応なし。敵さんは出てこないか?」
「今のところはな‥‥」
 と、九条が目を細めて氷の地平を見やった。
「おい、あそこ、蒸気のようなものが上がっているぞ」
 確かに、川の上から湯気のようにもやが立ち上っている。能力者たちはその場所に駆けつける。
 テトが探知機をかざすと、強い反応が出た。
「この辺かな、何かが埋まっているみたいだ」
 テトは歩きながら探知機を氷にかざす。
 九十九は氷に手を置いて感触を確かめる。雪のように削られた氷の粒を九十九はすくい上げる。
「何かを掘った後みたいね?」
 シャロン・エイヴァリー(ga1843)は問いかける。
「気をつけて掘ってみよう。武器は使うな」
 九十九が言うと、九条やシャロン、カルマ・シュタット(ga6302)らも武器を置いて氷を掘り始める。素手だが強靭な能力者の指先が氷を削っていく。
 程なくして感触があった。
「これは‥‥」
 カルマは氷をすくって加熱装置の本体を見つけ出す。
「結構でかいぞ」
 九条は氷を払いのける。加熱装置は直径50センチほどの円盤であった。金属的な部分と、不気味に脈動する生物のような赤い部分が合体している奇妙な物体である。
「B班、加熱装置を発見した。蒸気が上がっているところを探せ、氷の中に埋まっているぞ。こっちはこれから爆破する」
 テトは無線機で伝えると、爆弾を取り出す。シャロンは照明弾を打ち上げた。
 九十九が爆弾を受け取ると、慎重にセットする。
「これだと‥‥念を入れて弾頭矢と、爆弾を何個か使った方がいいだろう」
 テトはさらに九十九に爆弾を渡した。
 そうして傭兵達はその場から離れると、九十九が起爆装置のボタンを押した。
 ドカーン! と氷が吹っ飛んで加熱装置は粉々に砕け散った。
「やったわね」
 シャロンはもうもうと煙を上げる氷の大地を見つめる。

 B班も加熱装置を発見していた。吾妻・コウ(gb4331)が持っている探知機に反応があったのだ。
 アグレアーブル、ロジー・ビィ(ga1031)、レティ・クリムゾン(ga8679)、サルファ(ga9419)らは氷を掘って加熱装置を発見する。
「確かに、周辺の氷が溶け出しているのですわ」
 ロジーは加熱装置に目を落とすと、手で触れてみる。熱はない。一体どういう原理で氷を溶かしているのだろうか。
「不気味な機械だな‥‥生体機械か‥‥」
 クリムゾンは言ってアグレアーブルを見やる。目を向けられた方は無感動に加熱装置を見つめている。
「では、コウさん」
 サルファはコウを促して爆弾をもらうと、それらをセットする。
 それから距離を取って、加熱装置を爆破する。
 と、その時である。遠方から獣の咆哮が響いてきて、鳴き声は連呼して近付いていくる。

「来るわよ! 強さを測るまで、なるべく2人以上で当りましょう」
 シャロンは現れた赤い猛獣キメラに向かって走りながらカルマと九条に呼びかける。
 九十九は銃を構えてシャロンたちの背後につくと、援護射撃の姿勢を取る。
 現れたのは一体。巨体を揺らして氷の上を疾走してくる。
 キメラは炎弾を連発。シャロンたちは炎弾をかいくぐってキメラとの間合いを詰める。
 九条はキメラの側面に回りこむと銃弾を連発して叩き込んだ。
「食らえソニックブーム!」
 シャロンの一撃がキメラのフォースフィールドを貫通してその肉体を切り裂く。
 疾走するカルマは槍を叩きつける。矛先がキメラを貫き、猛獣は悲鳴を上げた。
 直後、キメラは前足をカルマに叩きつけたがカルマはジャンプして飛びのいた。砕ける氷の破片がダイヤモンドダストのように舞い上がった。
 キメラは突進してくるがシャロンは剣で受け止めた。そこを九条が銃で撃ち抜く。
「でやああああっ!」
 シャロンは豪力発現で一気にキメラを吹っ飛ばすと、その上に飛び掛って剣を降り下ろした。ぐしゃ! と骨が砕ける音がして、シャロンの一撃はキメラの腹部を貫通した。
 だがキメラも反撃、炎弾を至近距離で叩き付けると、前脚でシャロンを吹っ飛ばした。
 シャロンの体が空を舞い、氷に叩きつけられる。ズシン! とシャロンは氷にめり込んだ。
「く、やってくれるわね‥‥」
 キメラは立ち上がったが、不利を悟ったのか後退して甲高い声で咆哮する。

「仲間を呼び始めたな」
 ――B班も交戦に入っていた。アグレアーブルは鳴き声を上げるキメラに山林の方を見やった。
「一気に片付けてしまいましょう」
 ロジーは踏み出すが、全身血まみれのキメラは迂闊に接近して来ない。
「こちらB班だ。キメラが仲間を呼び始めたぞ、気をつけろ、まだ来る」
 クリムゾンの警告に無線機からシャロンが答える。
「こっちも同じくよ。さらに二体が‥‥(ドカーン!)」
「大丈夫か」
「大丈夫よ。炎弾に気をつけて」
 クリムゾンは無線をしまい込むと戦況に目をやる。A班と同じくキメラが二体姿を見せて突進してくる。
「あっちもこっちも援軍が欲しいところだが、贅沢は言えないな。やるしかないか」
 サルファは両手剣を構えながら後方のコウを守るように踏み出した。
 キメラは合流を果たすと、能力者たちを半包囲しながらじりじりと距離を詰めてくる。
 と、その時だ。コウが持っている探知機にもう一つ反応が出た。
「加熱装置? こんなところで‥‥」
「コウさん、反応が?」
「ええ、出来れば戦闘は皆さんに任せて、私は氷を掘って見ようと思います。出来るだけ加熱装置を破壊したいですからね」
「よし、援護は任せろ」
 サルファはコウの前に立ち塞がると、前方の三人に呼びかける。
「加熱装置が見つかった! 俺が護衛に付くからキメラを近づけるな!」
 アグレアーブルたちはちらりと後ろを見ると頷いた。
 ロジー、クリムゾン、アグレアーブルはキメラとの間合いを詰める。
「‥‥‥‥」
 片手の拳銃を抜いたアグレアーブルはキメラに向かって黙然と歩きながらトリガーを引いた。まるでマシーンのような冷淡さでキメラを睨みつけて銃弾を浴びせかける。
 直後、キメラがアグレアーブルに向かって動き出す。
 ロジー、クリムゾンはキメラに飛び掛った。
「‥‥甘いですわっ!」
 ロジーはキメラの首筋に刀を叩きつける。刀身がざっくりとめり込んでキメラの首から血が吹き出した。
 反転したキメラはロジーに体当たりを仕掛けるがロジーはジャンプしてかわした。
 クリムゾンも刀をキメラの頭部に叩き込む。鋭い一撃がキメラの額を切り裂き、猛獣は怯んで後退する。
「まだか?」
 サルファはコウの様子を探った。コウは必死に氷を掘っている。そして――。
「見つけました! 加熱装置です!」
「よし急げ」
 コウは爆弾をセットするが‥‥。
「‥‥! もう一体出たぞ! コウ急げ!」
 サルファは新手のキメラに立ち向かう。
 キメラは猛スピードで突進してくると炎弾を連発する。
「くっ‥‥」
 サルファはコウを守るべく炎弾の連射に立ち塞がったが――。
 炎弾の一発がサルファをすり抜け、背後のコウに届き、爆弾を誘爆させた。吹っ飛ぶコウ。
「コウ!」
 サルファは踊りかかってくるキメラを受け止めると剣でキメラの腹部を切り裂いた。もつれるように倒れるキメラとサルファ。キメラの牙がサルファの腕に食い込むが、貫通するには至らない。
「ちいっ!」
 サルファは腕を噛ませたまま、強引に剣をキメラの胴体に突き刺した。さすがのキメラがたまらず離れる。サルファは立ち上がってキメラを牽制すると、コウのもとへ下がる。
 コウは、負傷していたが、頭を振って起き上がった。
「大丈夫か」
「ええ‥‥何とか‥‥頭がくらくらする。加熱装置は?」
「安心しろ、吹っ飛んだようだな」
 サルファは木っ端微塵になった加熱装置にちらりと目を落とした。

「化け物め‥‥不死身か?」
 九十九はスコーピオンをリロードして呟いた。撃っても撃ってもキメラは立ち上がってくる。
「B班、爆発があったようだが無事か」
 九条は銃撃でキメラを足止めしながら無線で尋ねる。
「いや、ちょっとした手違いで戦闘中に誘爆した」
「無事なのか」
「ああ、何とかな‥‥ひとまず敵さんを退けないと」
 無線はそこで切れた。九条は襲い掛かってくるキメラの攻撃にカウンターで拳のキアルクローを叩き込んだ。だが九条も一撃をもらって吹っ飛んだ。転倒しながら銃の引き金を引いた。
「見切ったわ! その程度で、押し切れると思ってるの!?」
 シャロンはキメラの牙を受け止めると、押し返して剣を叩き込む。剣がキメラの頭部を貫通し、ついにこの強靭な猛獣を打ち倒した。
「豪破斬撃!」
 カルマの強烈な槍の一撃がキメラの心臓を貫き、胴体をも貫通する。キメラは口からごぼごぼと血を吹き出して動かなくなった。
 残り一体は逃げ出した。キメラの遠吠えが張り詰めた氷河の静寂にこだました。
「これで‥‥捜索に集中できるな」
 救急セットやテトの練成治療で体力を回復させると、A班は再び探索を開始する。
「B班、こちらは終わった。そっちはどうだ」
 すると、
「こちらも何とか撃退した。捜索を再開する」
「早いとこ片付けてしまおう。寒いのは苦手だ」
 カルマは言って苦笑する。戦闘の緊張から解放されて、束の間だが笑みがこぼれる。

 キメラの抵抗はそれ以上無く、A班は次々と加熱装置を破壊していく。
「芸術は爆発‥‥否、爆発は芸術だ!」
 テトはサイエンティストの血が騒ぐのか、異様に盛り上がっている。
 と、その時である、前方でもうもうと蒸気が上がっている場所があり、近付くと探知機が広範囲にわたって反応した。
「何だ? そこら中に埋まっているのか?」
 傭兵達はこれまでと同じように氷を掘っていく。すると‥‥。
「おいおい‥‥こいつは‥‥馬鹿でかいぞ‥‥」
 氷の上からでは全容が見えないくらい大きな物体が埋め込まれている。
「A班だ。こっちで馬鹿でかい加熱装置が埋め込まれているのが見つかった。ちょっと来てくれ」

 B班はテトが指定した全てのポイントの探索、処理を終えて、A班に合流する。
 彼らもA班が見つけた加熱装置の大きさに驚いた。
「何でしょうこれは?」
 ロジーは形の良い眉を曲げて眼下の氷を見つめる。
「どうやら、潜ってみる必要がありそうだな」
 クリムゾンとアグレアーブルはこれあるを予期してダイバースーツとエアタンクを用意していた。
「気をつけろ、こんな馬鹿でかい装置‥‥何が起こるか分からん」
 九十九は険しい顔で銃を足元に構えた。そうして、みんなで武器と銃を氷に叩きつけて氷河を破壊した。
 潜水できるほどの広さを確保すると、アグレアーブルとクリムゾンはダイバースーツに身を包んで氷河の下に飛び込んだ。

 水中の世界に飛び込んだ二人は、ハンドサインで合図を送ると、分担して水中を捜索し、暗い川の闇に目を凝らした。
「‥‥!」
 アグレアーブルとクリムゾンは驚愕する。
 何と氷の下に張り付いてのは、直径十メートルは越える巨大な円盤であり、赤い光を放っている。そこから更にタコのような脚が伸びて脈動していた。
 改めてサインを交換しながら、二人はこの不気味な物体を観察した。これも加熱装置なのか‥‥。そう言われれば確かに周囲の水温が以上に上がっている。
 二人は合図を送ると、試作型水中銃で装置の破壊を試みた。しかし装置は思いのほか頑丈で、弾数が足りなかった。
 二人は地上に戻ると、このことを仲間達に伝える。みな驚いたようだ。
「ここが最後だ。残りの爆弾全て仕掛けて吹っ飛ばそう」
「そうする他ないでしょう」
 タンクの空気には限りがある。アグレアーブルとクリムゾンは急いで何とか全ての爆弾をセットしてきた。
「‥‥寒」
 火に当たりながら、クリムゾンから温かい飲み物を受け取るアグレアーブル。
「ご苦労だったな」
 九十九は二人を労いながら遠くの加熱装置を見やった。
「これこそ爆発は芸術だな、行くぞ」
 そしてテトは起爆装置のボタンを押した。
 もの凄い爆発が起こって、氷が盛り上がって間欠泉のように水が吹き出した。
 加熱装置は木っ端微塵に砕け散って、傭兵達は歓声を上げた。
「やったな‥‥」
「皆、お疲れさま。熱い紅茶、用意してきたからどうぞ♪」
 シャロンが仲間達に紅茶を振る舞う。
「‥‥こちらイーグルワン、UPCへ、任務は完了。敵キメラは逃走、加熱装置は全て破壊した。回収を頼むぜ」
 サルファは紅茶を飲みながら、無線機に呼びかけた。
「‥‥了解イーグルワン、これより回収に向かう。ご苦労だった」
 ヘリが来るまでの間に、九十九は残っている加熱装置の部品を集めて基地へ持って帰るつもりであった。軍が解析できるかもしれない。
 やがてヘリが到着し、任務の成功を手土産に、傭兵達はヤクーツクへ帰頭するのだった。