タイトル:ほしぞらマスター:ユキ

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/11/07 22:54

●オープニング本文


「あ、流れ星っ!」

 空を指差せば、きらりと瞬く小さな光。
 白い吐息に手を温めていた少女は、寒さも忘れて空を見上げる。
 赤い鼻の色も、興奮に染まる頬の紅に霞んでしまう。

 見上げれば、空には煌く星。
 けれど、常に眩い光を放つ幾千幾万の一等星よりも、光を身に受け自らの輝きとする月よりも。
 童心を強くひきつけるのは、一瞬の輝き。
 一瞬で消えてしまったその光は、いつまでも目に焼きついていて。
 もう1回。もう1回みれるんじゃないかな。
 なんて、いつまでも空を見上げていて。
 そんな風に上ばかり見上げていて、なにかにぶつかったり。転んだりして。

 泣きそうになった私を抱き上げて、空を指さす大きな手に、もう一度上を見ると、
 そこには、いくつもの流れ星が、まるで鬼ごっこか、かくれんぼでもしているような光景が。
 涙なんて、どこへやら。
 星に負けないくらい、キラキラ目を輝かせて、夢中になって、手が届くんじゃないかと、空に手を伸ばして。

 そんな私の耳元で囁く、優しい声。

「知っているかい? 流れ星に‥‥」


 ‥‥‥‥ 


「‥‥また1つ」

 カンパネラから望む、真っ暗な空間。
 警戒のための監視任務。どれだけ目を凝らしても、見えるのは黒一色。
 先なんて全く見えないそこに1つ、また1つ。大きな光が輝く。
 それは、消える間際のろうそくが放つ一瞬の炎のように、散り逝く命が放つ最期の瞬きなのか。

 流れ星。
 天体現象の1つで夜間に天空のある点で生じた光がある距離を移動して消える現象。
 その原因は、流星物質と呼ばれる太陽の周りを公転する小天体が、地球や他の天体の大気に衝突、突入し発光したもの。
 目の前で散った鉄の騎士も、この冷たく孤独な海を彷徨った後、いずれ、故郷へと帰る日が来るのだろうか。

「‥‥そんなものに願いごとなんて‥‥」

 音は聞こえない。
 けれど、あの輝きの中に響くのは、きっと、誰かの最期の叫び。

「交代だ」

 近づく足音に振り向けば、支給品の缶コーヒーが差し出される。

「ありがと」

 礼を返し受け取る。
 交代の男はさっそく自分が担当する方向、黒の世界へと目を向ける。

「流れ星、か。縁起のいいもんじゃないな」

「? どうして?」

 目の前でまたひとつ。光が瞬く。それを見た男がぽつりと零した言葉に、ふと疑問をはさむ。

「ん? あぁ。うちの国の昔の話でな。赤い流星が三度流れたのを見て、自分の死を悟った偉人がいたんだってよ」

「なによそれ」 

 こちらを振り向くことなく、缶コーヒーをすすりながら語る男の話はまるで筋の通らない、ただの迷信に聞こえた。

「でも、今こうして宇宙にいて、目の前でたくさんの”流れ星の元”が生まれてくのを見るとよ。
 なんだか、考えちまうもんだよ。昔にここで死んだ人間が、死にそうな奴を迎えに来てる、なんてさ」

 ふと、先ほどまで自分が考えていたことを思い起こす。
 人が夢を描き、憧れ続けた宇宙。
 けれど、実際は夢なんてものはなく、あるのは現実のみ。

「‥‥その時代に、宇宙にいった人間がいたと思う?」

「あ。そういえばそうか」

 ‥‥だけど。
 ハハハと笑う男の後姿をみていて、なぜだろう。ふと、思ったんだ。

「ねぇ、知ってる? 流れ星に3回願いごとを言うとね‥‥‥‥」

 そんな迷信があっても。夢を描いても、いいんじゃないかなって。
 彼が話す迷信と同じ。
 私があの日願いごとを向けた星はきっと、誰かの悲しみを背負ったものじゃない。
 だって、私の夢は叶ったんだから。
 空を飛びたい、宇宙にいってみたいという夢が‥‥

●参加者一覧

秘色(ga8202
28歳・♀・AA
メビウス イグゼクス(gb3858
20歳・♂・GD
D・D(gc0959
24歳・♀・JG
獅月 きら(gc1055
17歳・♀・ER
赤槻 空也(gc2336
18歳・♂・AA
火霧里 星威(gc3597
10歳・♂・HA

●リプレイ本文



 搬入した荷物を作業員が運びこむ。そんないつもと変わらない光景からふと目を離し、秘色(ga8202)は窓の外を見やる。

 ――不思議なものよのう

 見上げるだけの遠い世界だった宇宙。そこにいま自分がいる。とはいえ人工的な施設の中。空気もあり、解放されたはずの重力に縛られた空間。実感は薄い。それでも、外に見える光景は、ここが自分がいた地上ではないことを物語っている。

 ――地上から見上げれば煌いておる空も、何と哀しげに感じるものよ

黒。黒。黒。
暗く、果てない空。かつて見送った2人の家族。あの子が、夫が見守ってくれている。そう思っていた天は一体何処にあるのか。少なくとも、今目の前にある宇宙。争いの場でしかないこの空だとは如何しても思えない。

 あの日から十年以上。あの日が来るまで親子三人、平穏に暮らしていた頃。家族と共に見上げた流れ星に願った願い。

 『いつまでも家族皆幸せで暮らしたい』

 ――やはり消え行くものに願うても叶わぬのかのう。あっさり二人とも逝ってしもうて

 隣にいるはずの人がいない。空いた手。手持ちぶたさにも慣れてしまった。

 ――それでも

 外を見やれば、引力に引き寄せられてまた1つ、デブリが地球へと落ちていく。赤々と輝くソレは、けれど地上に降り立つことは叶わず。また目の前の空は、黒一色の静けさ。今、地上にいる幾千幾万の親子は、流れ星を目にしたのだろう。あの日の自分たちのように。

 ――また目にしたれば、願わずにはいられぬのじゃろうな

 『夫と息子の眠りが安らかであれ』
 そして、もう1つ。
 『わしと同様の想いをする者が少しでもなくなれ』と。
 皆、何かを守りたくて戦っているのだろう。それならば、自分が死んで星となって、地球に降り注ぐ時。帰る時。誰かの「守りたい」という願いくらいは叶えてくれないだろうか。

 ――わしも力の限り守る為に戦う故

 もう一度顔を挙げて外へと目を向ければ。自分と夫が好きだった色。その名が表す青よりもさらに鮮やかなソレに包まれる地球。帰るべき星が浮かぶ黒い空は、先程より少しだけ明るく、闇の中にも光があるように見えた。きっとその空の先。争いの音すら届かない彼方の空で、大小2つの星が自分を見守ってくれている。そんな気がして。




「希望を持ち‥‥誇りを貫け‥‥」

 口からでた言霊は暗い宇宙へと吸い込まれ、誰の耳に届くこともない。ふと自らの掌を顧みる。視線は掌から、揺れる蒼色へ。 メビウス イグゼクス(gb3858)の脳裏に浮かぶのは、このリボンを託してくれたありし日の義姉の姿。幼馴染に奪われた‥‥そう思っていた、愛する家族の笑顔。

 ――復讐の為なら刺し違えても‥‥それがかつての友人だったとしても。‥‥そうあの時に誓った。

 瞳に焼きつく鮮血の朱。それよりもなお鮮やかな、あの男の燃えるような深紅の髪。かつての自分にとって、それは憎悪の象徴だった。

 ――‥‥ですが、それは過ちでした。

 彼は自身の剣を、憎しみを、全てを正面から受け止めた。そして、敗れた私に全てを明かしてくれた。誤解。何故彼を、幼馴染を信じられなかったのか。何故そんなことのために力を欲し、能力者となったのか。悔やむべきは己の心の弱さ。それを教えてくれた友人。
 その日から、傭兵としての力を正しき事に使おうと心に決め、人の為に刃を振るい、仲間と共に数々の敵と対峙しては葬ってきた。

 ふと、リボンから手を離し、もう一度自身の掌に目を落とす。リボンは変わらず涼しげな蒼に揺れ、朱に染まることはない。だがその手は、多くの命を神の御許へと送り返してきた。敵であれ、彼らにも己の信じるものの為に戦い、散っていった者も沢山居た。だからこそ、戦いで生き残った者として、この想いだけは貫き通していく事が、散った者達へのせめてもの償い。

 気がつけば、宇宙などと遠いところまできてしまった。長かった戦いも近い未来、終わる事だろう。おそらく今までにない激戦になり、犠牲も出るかもしれない。命を懸けなければきっとこの戦いは終わらない。自分も戦士として戦いに殉ずる覚悟は出来ている。

 ――…ですが、それは死ぬ為の覚悟ではありません

 かつての自分は、そうだったかもしれない。けれど、今の自分は違う。自分の帰りを待つ人がいる。その人の為に‥‥共に戦い、この戦争を終わらせる。そう、共に。その誓いは腕の蒼に。

 ――そして‥‥

 誓いの蒼から視線を落とし、そっとソレに手を添える。腰に揺れる一振りの剣。それは、もう1人の誓いの主から、自分と同じ金の髪に蒼い瞳の想い人から託された白銀の力。

 ――約束は必ず守りますよ‥‥

 誓いの剣を手にし、目の前の暗い空へと掲げる。口にするのは、彼女の真名。それは、自分だけが口にすることを許された、絆の証。それに応えたい。応えなければいけない。そう思えば、この目の前の闇に臆する心など、その身に宿るはずも無く。この剣が切り開く先に、光が待っていることだろう。

 願わくば、彼女もまた希望を持ち、誇りを貫き、生き抜くことを。そしていつかこの剣が花となり、彼女の元に返す日が来ることを。




 ふとD・D(gc0959)がやってきた食堂は、人も疎らで、静かなものだった。嵐の前の静けさとでもいうのか。初戦を終え、人類とバグア両陣営共、互いに浅からぬ傷を負った。今も見えないところで、技術者たちが寝る間も惜しんで修復に追われていることだろう。

 そんなことを思い浮かべながら眺める宇宙。外に小さく見えるのは、先日まで自分がいた青い星。星の海に浮かぶソレを見ていると、自然と言葉が零れる。

「‥‥小さなモノね」

 小さいのはなんだろう。あの地球か。その地球の、さらに小さな、自分が戦っていた場所か。あるいは、自分自身か。

 ただ、その小さなものの為にこそ人は戦えるのだろう。かつての自分も、そうだったから。
 発端は、生きる為。ただそれだけ。繰り返される地域紛争。ただ明日の糧を得る為に銃を取ったあの頃の自分。

 ――息を整えろ。外す距離では無い

 銃を取って、一体何年経つというのだ。それなのにあの日、自分に言い聞かせた言葉が、なぜか今脳裏に浮かぶ。そういえば、昔は小さな戦場でさえ恐怖を感じていた。ライフルの照準を定める事にさえ震えが止まらなかった。引き金を引くなんて‥‥
それが今では空を駆け、この場所まで辿り付けた。その事に違和感を感じる。臆病な自分が、なぜここまでこれたのか。
 『生きて帰りたい』
 ただそれだけなら、きっと潰れていたのだろう。

「帰る場所が増えた‥‥ということなのだろうな‥‥」

 空と自由。その名を冠し、共に翼を並べて来た者達。そして、自分の場所を示してくれた人。彼らへの思いは、感謝のソレとは、おそらく違うのだろう。あの頃は世界という物は見えていなかったし、宇宙など、見上げるだけの単なる天井のような存在だっただろう。けれど今彼等とならば、この広い海に出ることができる。彼とならここで戦う事ができる。
 軽口で頼りなさそうに見えて、けれど、先日も助けられたばかりだ。自分を「ダリア」と呼ぶ彼。そう呼ぶのは彼だけではない。だがなぜか、彼だけは特別に感じられた。友とは言える。が、それだけなのか? ただの戦友?彼にとっては、そうかもしれない。でも、

 ――‥‥私にとってはそれだけじゃないの、か

 その先を それ以上の感情を抱いている自分。女である自分。ふと自覚すると、思わず苦笑してしまう。

 覚醒の余韻だろうか、不意に口元が寂しくなり、ポケットから1本、煙草を取り出す。火を灯し一息付き、改めて星の海を眺める。見渡す星の海に流れる星。自分は今、この広大な星の海にいる。ここで戦っている。
 いつかあのちっぽけな場所に、ちっぽけな自分が帰る為に。彼と共に帰るために。もう一度、あの土くさい空気を吸いながら、一緒に煙草を吸う。そんな小さな、けれど十分すぎる理由を胸に。

「…帰ろう、いつか皆と…アイツと…」




 かつての学生たちの姿。笑顔。話し声。その面影も身を潜め、周囲を宇宙の黒に包まれた中、ひっそりと佇むかつての学び舎は、まるで自分の知らない場所みたいだった。

 ――‥‥カンパネラが宇宙に来るなんて、思っても見なかったな。

 外観はあの日のままの校舎。そこに通じる石畳を歩く。一度は奪われた学園生活。部屋で1人、古びた教科書を何度も繰り返し開いては勉強した日々。それからもう一度手に入れた学園生活。友達。それが突然目の前からもう一度なくなってしまう。獅月 きら(gc1055)は、カンパネラが宇宙へ飛び立つという知らせに、非常に動揺していた。
だからこそ、その目で確認したかった。今、あの愛すべき校舎がどうなっているのか。

 依頼のない日は毎日通った学園。仲のいい友達と過ごした校舎。大好きな人と思い出を作った場所。歩けば歩くだけ、胸の中の思い出が鮮明に思い起こされて。けれど、そのどれも、宇宙に持っていかれてしまったという現実に引き戻されて。
そう。バグアは肉親だけじゃなく、思い出も居場所もすべて奪ってゆく。昔だけじゃない。傭兵になった今も、尚。

 ふと上を見上げる。授業の時間も、お昼の時間も。いつも自分たちに刻を告げていた大時計。その先にあるのは、地上から見上げた青い空ではなくて、暗い空。幼い頃、眠りにつく前に聞いたお話。『空の向こうには天国があって、皆幸せに暮らしている』と肉親が聞かせてくれた。
 でも、自分が飛び出した「空の向こう」には、バグアしか見えなかった。彼らとの、かわらない、終わらない戦闘が待っているだけだった。

 ――昔、「お父さんもお母さんも、お空の上からあなたを見守っているのよ」って、孤児院の先生が教えてくれたけど‥‥
  
 それは、違う。『ここには、バグアしかいない』から。それを知ってしまった。

 ‥‥けれど、知ったからこそ、分かったことがある。校舎に入り、階段を上る。かつての教室の窓から外を眺めると、目に飛び込むのは、遠くに小さく浮かぶ青い星。やっぱり、お父さんもお母さんも、あの星にいる。私が帰る場所はあの星。そこは、私の大切な義父さんと義母さん、大好きな彼がいる場所で‥‥そして、お父さんとお母さんが眠っていて、いつも私の『傍』で見ていてくれる世界。

「‥‥帰らなきゃ」

 浮かぶのは、彼の言葉。

 ――隣に、いてよっ。僕、LHできらちゃんが笑ってられるように頑張る! だから‥‥僕の隣に、いてくださいっ

 そう、彼にお願いされたから。それに、約束したから。来年には、お祭りで私の好きなものをとってもらうって。彼の作ったオムライスを食べさせてもらうって。 

 彼の元には、大切な2人の‥‥2匹のお友達も、待っている。だから、帰ろう。大切な人がいるあの星に。青く美しい地球に。学び舎でもらった、大切な思い出を胸にしまって。

 校舎は、旅立ってしまった。けれど、独りじゃない。友達も、大切な人も、あの星で待っているから。
 



「わぁぁあ〜スッゴい景色ぃぃ! ね! 空にぃ空にぃ! アンなにおホシがおっきく見えるよ!」
「‥‥おらッ! ヒトの肩の上で暴れんじゃねェッ!」
 肩車をされた状態で窓の外を眺める無邪気な弟分、火霧里 星威(gc3597)がはゎゎわぁ〜と目をキラキラさせながらキョロキョロしているのを注意する、兄貴分にして小隊長の赤槻 空也(gc2336)もまた、目の前の光景に心躍り、魅入られる。
 だが、感動する反面、思い描くのは理想。

 ――戦争がなきゃ‥‥見なかったろうな‥‥

 戦争なんて無ければ良かった。そうすれば、知人が死ぬことは無かった。友達の結婚式にも出れたかもしれない。弟の運動会にも・・‥

 ふと、額の鉢巻に触れる。兄貴分のその仕草に気づく火霧里。彼がその仕草を取る時は、過去を、死んだ人を思い出している時。だから火霧里もまた、自身の過去に思いを馳せる。けれど、彼が思い出せるのは、何も無い。
  
 バグアに故郷を奪われ、家族を奪われた2人。だが赤槻と違い、火霧里にその記憶は無い。思い出せない両親の顔。それが、一見元気いっぱいで、影なんてなさそうに見える彼の心にひっそりと、悲しみの、そして憎悪の泉を湛える。
 
 心に憎悪を抱くのは、赤槻もまた同じ。
 『バグアを倒して』
 いつまでも耳に残る、ダチと弟の最期の言葉。食事もノドを通らず、精神的ショックから、耳鳴りで死ぬかと思う時もあった。それでも戦うと決めたのは、その言葉があったから。

「‥‥はわ、宇宙ってケシキスゴいけど、何だか怖いね‥‥吸い込まれちゃいそう‥‥空にぃも何か怖いよ? どーしたのぉ‥‥?」

 頭の上の弟分に声をかけられ、我に返る赤槻。同じ境遇のこの弟分の、けれど明るいその笑顔に、ふと、素朴な疑問を口にする。

「なァ‥‥星威。おめーはさァ‥‥幸せか?」
「え? 幸せ??」

 突然質問され、うーんうんと考える火霧里。カゾクの顔は分かんない。寝る時は空にぃとか居ないと全然寝れない。時々、スゴい怖い夢も見る。独りぼっちで、だれもいない‥‥
 表情が沈んでいく火霧里。けれど

「‥‥でもでもでもね! 沢山のヒト達に会えたよ! それにガッコのせんせも『でも星威くんは生きてるよ』ってゆったよ!」

 ぱっと顔を上げると、両手を上げて大きな声で答える。思わずぐらりと揺れるのを、下の赤槻がなんとか堪える。
 『生きてる』
 その言葉に、赤槻もまた、自身が歩める新しい道を想像する。何も無かったあの時から、随分と仲間も増えた。仲間たちの顔を脳裏に描きながら、思い浮かべるのは、この戦争が終わった後のこと。

「なァ、俺達の戦いは‥‥バグアども潰すだけじゃねー‥‥そうだろ?」
「え?? ‥‥うん! センソーは後何年でもジンセイはあと何十年だよ! 何十年のコト考えなきゃ!」

 うんうん、と一度頷くと、もう一度、頭の上の弟分に言葉を投げかける。

「戦災復興旅団‥‥なんてどうよ? 需要あると思うぜぇ?」
「え?戦災ふっこー‥‥? なぁにそれ! 正義のシュウダンってヤツ!? かっこいい!!」

 よくわからないままに喜ぶ弟分の様子に、フッと笑みを零しながら、赤槻は思う。戦争が終わった後、この弟分たちと一緒に生きてみたいと。仇討ちを辞めるつもりはない。なんとしても見つけ出す。けれど、戦争は独りでは終わらせられない。ボッチじゃ、弱い自分たちだ。だけど

「俺達ぁ集まりゃ強ぇ。だろ?」
 兄貴分の笑顔に、火霧里も笑顔で元気よく答える。
「あはは♪ このウチューも皆が手ぇ繋いだから来れたんだもんね! いえーす!ボクは弱くっても僕たちは強いのだっ!」

 独りと独り。それぞれに大切なものを失った二人。けれど、今、新しい親友を、ダチを得て。この空で自身を見守る誰かに、元気な自分を見てほしい。独りじゃない自分を。これからもずっと。