タイトル:始動!AKTV♪マスター:遊紙改晴

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/02/05 01:50

●オープニング本文


●AKTV誕生の日
「ここが私たちの新しい住処になるのね!
 ああ、これでもう公園で惨めな思いをしながら新聞紙に包まって寒さに耐えたり、料理がまっずいのに料金だけボッタくる汚いホテルの世話にならなくて済むわ〜!」
 兵舎の一角に、少女の重機関砲も真っ青な言の葉の弾丸が放たれる。
「ちょっと狭くて汚いけど、文句は言えないわ。掃除して私たち好みに内装を整えましょう!
 私たちの新たなる一歩が、ここから始まるのね! 感激だわー!」
 一つ一つは鈴の音のように美しい声も、こうも連射が続くと騒音でしかない。
 それでも少女は部屋の中の物一つ一つに感想をいい口から吐き出していく。
 少女が蹴り開けた扉を、背をかがめて巨漢が潜り抜けてくる。身長は220センチはあるだろう。
 少女のものだと思われる荷物とアタッシュケースをそっとソファーの横に置く。
「〜〜だわ! そう思わない、熊さん?」
 やっとここで話終えた少女が、巨体の男を振り返り訪ねる。男は無言のまま、優しい笑顔で頷いた。

  少女の名はアナスタシア。ロシアの皇女と同じ名前だが、能力者である以外普通の少女だ。
 炎のように赤い髪に、透き通る陶器のような白い肌。埃まみれのゴスロリなドレスに身を包んだ彼女は灰かぶりと表現するのが適切かもしれない。
 多少、喋り過ぎるところがあるが、両親を失った悲しさを見せない元気一杯の13歳の女の子である。
  男のほうは熊さん。もちろん愛称だ。本名はわからない。手練の傭兵で、無口だがその巨体と自慢の力、優しい笑顔が特徴的だ。太い指から想像できないほど器用で、戦闘から家事まで何でもこなす。
 仲間思いで、他の傭兵たちからも信頼も篤い。
 二人が出会ったのは2年前。アナスタシアが両親をキメラに殺され、自分も命を奪われそうになっていた所を、熊さんが救ったのだ。アナスタシアはそれから熊さんの後について諸国を転々とし、熊さんもそれを拒否しなかった。
  そしてアナスタシアと熊さん、小さな蕾と巨大な獣の二人は流れ流れて、UPCの兵舎へとたどり着いたわけだ。
「それでね、ちゃんと計画も練ってあるの。最初にラストホープに来る高速移動艇の中から考えてたのよ?
 自分たちの部屋をもらえたら、テレビ放送をしよう! って。
 傭兵ってその日暮らしの辛い職業だって、私も依頼をこなしてわかってきた。
 それに、仲間が大切ってことも。私にはくまさんがいるけど、1人で傭兵やってるのって、きっと辛いと思うの‥‥。だから、傭兵さんたちのための番組を作ろうかと思って。
 ほら、私たち見たな新しくラストホープに来た傭兵さんって、どんな兵舎があるかわからないでしょ?
 だから、第一回の放送は私たちが取材してそれをテレビ番組にして、UPC内のコンピューターに流そうと思うの!
 ああ、ネットって素晴らしいわ! 私でも簡単に映像を編集して番組を作れるんですもの!」
 頬を薔薇色に染めて瞳を輝かせるアナスタシアの前に、笑顔の熊さんがはちみつ入りホットミルクを差し出す。
 高速回転した舌を暖かいミルクで休ませながら、アナスタシアは熊さんを上目遣いで見つめた。
(やっちゃ、だめ?)
 幾千の言の葉を操りつつも、一番肝心なところが口に出せない。アナスタシアの性格だ。
 熊さんはそれをよく理解していた。大きな手のひらでアナスタシアを安心させるように、頭を撫でる。

「やろう」

 大きく頷きながら、一言呟いた。
 途端に、アナスタシアの瞳が何倍も輝き、魂のエンジンがフル回転し始める。
「決まりね! 実はもう、ネットで簡単な機材は注文してあるの! 明日にはカメラが届くはずだから、熊さんはカメラマン、お願いね♪ 私は美少女アナウンサー! 取り上げる兵舎を募集しないと!
 受付のアンに頼んで、依頼だしてもらってくる〜!」
 腕を振り回して元気よく部屋を飛び出していったアナスタシアは、まさに小さな嵐だ。
 明日からは兵舎の中をこの嵐が走り回ることになるだろう。

●参加者一覧

緑川 安則(ga0157
20歳・♂・JG
伊佐美 希明(ga0214
21歳・♀・JG
赤霧・連(ga0668
21歳・♀・SN
シエラ(ga3258
10歳・♀・PN
アヤカ(ga4624
17歳・♀・BM
黒羽・勇斗(ga4812
27歳・♂・BM
キャル・キャニオン(ga4952
23歳・♀・BM
ジェレミー・菊地(ga6029
27歳・♂・GP

●リプレイ本文

●始動!AKTV♪ 第一回〜兵舎紹介

 傭兵たちの兵舎が並ぶ通路。仕事帰りの者や休暇を楽しむ傭兵が行き交う中、小さな蕾と巨大な獣の姿があった。
 熊さんがカメラを構え、アナスタシアに指でサインを送る。5、4、3、2‥‥1。
「ラストホープの傭兵の皆さんこんにちは! AKTVリポーターのアナスタシアです。今私は、傭兵の皆さんがいつも利用している兵舎前にいます。今日は皆さんから応募いただいた兵舎を紹介しちゃいますぞ♪ ではいってみましょう!」

 二人が最初に向かったのは、赤霧・連(ga0668)の兵舎『放課後クラブ』だ。
 教室風の兵舎の扉の前に、こちらに背を向け、手に書いた人の字を飲み込む少女が見える。
「うう‥‥生放送、緊張します〜」
「赤霧さん、こんにちは〜!」
 アナスタシアが大きな声で挨拶すると、びくっと身体を震わせ、赤霧が振り向いた。
「最初にご紹介するのは、赤霧さんが作った放課後クラブです。赤霧さん、宜しくお願いいたします」
「は、はい! み、皆さんはじめまして」
 カメラが赤霧と兵舎を一緒に映し出す。
 放課後クラブの内装は学校の教室風に作られている。黒板には傭兵たちの書いたメッセージが残され、メンバーが座るための椅子と机も学校のものそのままだ。
「放課後クラブは交流がメインの兵舎です。季節に沿った行事やレクレーションを主に行っています。今はバレンタインですね」
「内装も小学校そっくりにできてるんですね。私は余り学校に行ってないんですが、懐かしい気分になります。人も多いですね」
「はい、今は46人メンバーがいます。私はこの教室で大切な皆に出会いました。教室の仲間は私の大切な宝物です」
『赤霧さん説明頑張れ〜!』『連ちゃん緊張しなくていいよー』
 放送のことを知ってか、多くのメンバーたちが赤霧の応援とカメラに写るために、教室に集まっていた。赤霧は振り返って仲間たちに手を振り、1人1人声をかけていく。
「兵舎ではたくさんの出会いがキミを待っています。まずは第一歩、その一歩をご一緒、出来たら本当に嬉しいのです。私がここで貰ったモノを、少しでも皆にお返し出来たら嬉しいです!」
「赤霧さんの仲間を思う気持ちが、きっとこれだけの仲間を繋ぐ強い絆になっているんですね!」
 黒板の前にメンバーが集まり、記念写真を撮る。カメラにもメンバーの自然な笑顔がしっかり撮れていた。

「次にご紹介するのは、 黒羽・勇斗(ga4812)さんの兵舎です」
 アナスタシアは、白いゴシックドレスからピンク色のジャージの上下に着替えていた。髪も左右にお団子にして纏めてある。
「黒羽さんの兵舎はどんな兵舎なんですか?」
 眼光鋭く、頬に十字の傷を持つ黒羽に、アナスタシアは恐る恐るマイクを向けた。
「俺の兵舎かはトレーニングジムだ。傭兵たるもの、自己鍛錬を怠るわけにはいかないからな」
 兵舎の中にカメラが向けられる。バーベルにランニングマシン、エアロバイクなど、一般のジムにある器具が一通り揃っていた。
「エアロビクスやスカッシュ、柔道、空手、太極拳等ができるスペースは十分あるぜ。これなら大勢いても自主トレできるだろう? 傭兵じゃない奴にはわかりづらいかもしれないが、あんたら一般人が、フィットネスジムで体力作りをしているような感覚だと思ってくれ」
「なるほど、傭兵に大切なのは何より基礎体力ですからね」
「ああ。アナスタシア、あんたも俺と一緒にトレーニングしないか? そうだなぁ‥‥初心者向けのエアロビクスでもやってみるか」
「じゃあ折角着替えたんだし、ちょっとやってみます!」
 びくびくしながら黒羽の指示に従い、アナスタシアは動きをトレースしていったが、すぐに見た目よりキツイ動きに、汗だくになってしまった。
「もうバテたのか? だらしねえな。説明するのも疲れたし、これで終わりにしてくれ」
「はい‥‥黒羽さんの兵舎は‥‥トレーニングハイな傭兵さんたちには、ぴったりですね」

「わぁ‥‥」
 リポートをするはずが、アナスタシアは目の前に広がる花園に思わず声を漏らしてしまった。一面花に包まれ、風が花びらを舞い上げる。
「あ、今度紹介するのはシエラ(ga3258)さんの兵舎、『ハーベスター』です」
 風が花の香りとともに、美しい歌声を運んできた。アナスタシアが視線を動かすと、花を手入れする小さい白い少女を見つけた。気配に気づいたらしく少女が立ち上がる。
「どなたか、いらっしゃるのですか?」
 少女は二人がどちらにいるのかわからないらしく、周囲に顔をめぐらせた。どうやら視覚を失っているらしい。
「シエラさんですか? AKTVのアナスタシアです」
「取材の方‥‥ですね。伺っています。こちらへ」
 シエラは抑揚のない声でテラスへと案内した。白い杖を使い花を踏まずに進んでいく。髪をなびかせ優雅に歩く姿は、人とは思えない美しさだ。
「‥‥あまりお構いはできませんが、菜園でとれた紅茶をどうぞ」
 と、慎重に紅茶を淹れていくシエラ。手つきはおぼつかないが、カップがどこにあるかわかっているようだ。
「目が見えないのに、熱いお茶をいれても大丈夫なんですか?」
「‥‥不思議ですか? でも、こうやって『普通に』紅茶を淹れられるようになったのはつい最近なんですよ。私はこの通り、目が見えませんが‥‥」
 紅茶を注し終わると、カップを持ち上げて口元へと運ぶ。アナスタシアもそれに習った。深い味わいが口に広がり、鼻腔を繊細な香りが通り抜けていく。
「ですが、香りや味を楽しむことはできますから、少し、頑張ったんです」
「そうだったんですか。でも確かに、こんな美味しいお茶が飲めるんだったら、私も頑張っちゃいますね」
「‥‥武力を持って戦うのも必要ですが、怒りや憎しみ、悲しみだけを、人の全てにしてしまいたくないから。能力者となって、まだ日も浅いですが‥‥。様々な依頼を経て、仇を討つだけが、バグアを倒すだけが、救いではないと‥‥感じました」
 シエラの見えていない瞳が、アナスタシアへ向けられる。真摯な眼差しは心を包みこむようだった。
「私は‥‥心も救いたい」
「シエラさんの思い、きっと皆さんにも届くと思います。人の心にだって、花は咲くから‥‥」
 目に見えぬ涙を拭うように、優しい風が二人の髪を撫でていった。

「四番目に紹介するのは、キャル・キャニオン(ga4952)さんの兵舎『スカイハイドリーミン』です」
 兵舎の前でアナスタシアを出迎えたのは、真紅のドレスに身を包み、松葉杖をついたキャルだ。
「この前の大規模作戦で撃墜されてしまい、今は自宅療養中とのことですが、大丈夫なんですか?」
「ええ、皆さんのお見舞いのおかげで、もうすぐ完治しますわ。ほらっ」
 キャルは杖をつきながら歩いてみせた。まだ足元がふらつくが、もうすぐ完治するというのは本当のようだ。嬉々としてアナスタシアを案内していく。
「とっても大きいモニターがありますね!」
「これが私の自慢のひとつ、二百インチモニタですわ。飛行機関係のものなら持ち込みしていただいてもいいんですの」
 部屋の中には見舞い品が山のように積み重なっている。花輪に始まり果物の詰め合わせや、面白いところでは酔い止めの薬などもあった。
「酔い止めの薬がどうしてお見舞い品に?」
「酔わない、ハイにならないから、灰にならない、墜落しないという縁起担ぎですわ」
 次に案内されたのはKVが格納してある倉庫だった。参戦章や壊れた部品なども綺麗に磨かれて飾ってある。
「この水槽にいるのがペットのトメさんです。ほら、貝を割る仕草が大工さんぽいでしょ?」
「伊勢えびがペットって珍しいですね。でも確かに良く見ると可愛いかも♪ 裁縫しながらゆったり映像鑑賞ができるなんて素晴らしいですね!」
「ええ、今度一緒に新しいドレスでも縫いましょう」

 ぐつぐつと煮えたぎる鍋の前。食欲をそそる匂いがアナスタシアの嗅覚を刺激する。
「うう、皆さんにこの匂いをお届けできないのが残念です。ここはジェレミー・菊地(ga6029)さんの兵舎『日本グルメの会』です」
「昆布だしのおでんに、味噌だしのモツ鍋だ。どっちも材料費は安くて美味いぞ!」
 赤い鉢巻にエプロン姿のジェレミーの手料理だ。おでんはだしが染み込んでいい色に。モツ鍋も煮える音だけでも美味しそうだ。
 昨日から準備で忙しくまともに食事をしていない胃袋を的確に刺激してきた。
「うう、それじゃあお言葉に甘えていただきます。‥‥んぅ〜〜! この大根、味が染みてて美味しい。モツ鍋もこの季節は暖まりますねー。日本人じゃないけど、ご飯が欲しくなりますよ!」
「そうだろう! じゃあ我が兵舎『日本グルメの会』について説明しよう!」
 ジェレミーはわざわざ自分で作ったフリップを取り出してカメラに見せた。
「まず一つ! メンバー募集中だ! 現在俺1人だけだから、興味が沸いた人はどしどし来てくれよな!」
「長ネギの甘さと味噌だしが合わさって口の中に幸せが広がります〜!」
「二つ! 日本食について語り合うだけのお仕事、軽作業です! やる気の無い人でもOK!」
「次は卵を‥‥ん〜! からし付けすぎちゃった、熊さん、水、水!」
「三つ! いつもニコニコ、笑いの絶えない兵舎です」
「ううう、鼻の裏がツーンってする‥‥」
「四つ! 喰ってないで仕事しろ〜〜!!」
「は、はい! 四つ目は採用条件、日本食が好きな方。他国料理の悪口を言わない御方。ジェレミーさんの嫁を希望する方など、ですね! 手料理作って待っていてくれる旦那さんが欲しい女性の方、是非とも日本グルメの会に!」
 いつのまにか用意してあったおでんと鍋は空になっていた。
「ちゃんとリポートしない上に食い逃げかよ!」

「次の兵舎はあのマルチアイドル、アヤカ(ga4624)さんの『フルーツバスケット』を紹介します!」
 兵舎の前で待っていたのは、八重歯が可愛いツインテールの女の子、アヤカだ。
「アナスタシアちゃん、あたしの兵舎『フルーツバスケット』にようこそいらっしゃいニャ☆」
「生アヤカさんだ〜! 握手してください! いや、我慢我慢。兵舎の紹介お願いします」
「うちは芸能人の能力者が沢山居る所ニャ。だから、美人さんが沢山いるニャよ〜☆」
 確かに大きなこたつにあたっているメンバーたちの中には、アヤカと同じくテレビで何度も見たことがあるものがいた。
「基本はビーストマン‥‥って言うのかニャ? そのたまり場になってるニャね。一応芸能活動をする人たちのプロダクションも兼ねているニャよ」
「ではこれを見ている傭兵の人たちにも、ここに入れば芸能界にデビューできるチャンスがあるってことですね!」
「もちろんニャ! みんな、待ってるニャ〜☆ あ、名古屋名物の味噌煮込みうどんがあるニャ☆ みんなで食べるニャよ〜☆」
 コタツの上にはなぜか人数分の鍋が用意されていた。ぐつぐつと煮えたぎって、汁が少し吹き零れている。
「この鍋のふたを取り皿にして食べるのが正式なルールニャよ☆」
「ふたに取ると早く冷めるんですよね。でもこれ生煮えじゃ‥‥猫舌仕様?」
「クレームは却下するニャ☆」
「うう、でも美味しいですよ? 芸能界に羽ばたきたい方、是非とも『フルーツバスケット』へ!」

「うぷ‥‥食べ過ぎたかも。次にご紹介するのは、伊佐美 希明(ga0214)さんの兵舎、『伊佐美道場』です」
 道場は左が剣道場、右が弓道場になっている。弓道場には6畳間の上座があり、そこから弓道場が見渡せた。
 伊佐美は胴着に着替え、お茶を用意して待っていてくれた。
「この道場は基礎訓練、精神訓練を行うことを主体としています。いくら強い力を持っても、強い武器を持っても。自分自身の芯が強くなければ、それはただの暴力。‥‥キメラやバグアと同じになってしまう。私は、強い精神力を作り続け、維持し続ける為に、こういう鍛錬は必要だと思っている。能力者の力、自身の力に、呑まれてしまわないようにね」
「『健やかな身体に健やかな魂が願われるべきである』ですね」
 お茶を飲み終わると、伊佐美が射を披露してくれた。射法八節と呼ばれる弓道の基本体型。伊佐美の身体はその型を美しくなぞっていく。
 足踏みに始まり、胴作り、弓構え、打起し、引分け、会、離れ、残心で終わる。特に会は弓を引き絞ったまま8秒間の静止し、精神を研ぎ澄ます型だ。
 精神に乱れがあれば早気と呼ばれ、数秒に見たずに矢を放ってしまう。
 的に当てようという気持ちさえ振り払い自然体とならねばならないのだ。精神・身体・弓矢が渾然一体となる瞬間である。
 美しい型から放たれた矢は、吸い込まれるように的の中黒に突き刺さった。
「弓道において、的とは、自分自身に他ならない。‥‥敵としてイメージするのは、常に自分自身と向き合う心」
「『敵に勝つのではなく己に克つ』ってことでしょうか。弓道はどこか禅にも繋がるような精神的な部分もあるんですね。心身ともに鍛えられる兵舎、皆さんも是非訪れてください」

「最後にご紹介するのはこちら。えっと、‥‥ぜろやじるし無限大?」
「零→∞(ゼロ・トゥ・インフィニティ)ですよ、ようこそ、戦闘集団零→∞駐屯地へ。小さな姫君アナスタシア。歓迎いたしますよ。駐屯地司令にしてプリネア義勇軍、神盾の騎士、緑川 安則(ga0157)です」
 緑川は挨拶とともに膝をつき、アナスタシアの手の甲にキスをする。
「ふわわ、キスされちゃった、どうしよう、熊さん!」
「ちょっとした挨拶ですよ。さ、こちらへ。中をご案内しますよ」
 紳士的な振る舞いで緑川は部屋を案内していく。部屋の中には戦略情報の載った世界地図やいつでも使えるよう手入れされた武器が掛けてあった。
 本棚には翻訳本から戦術書もあり、空いた場所には精巧に作られた戦車やKVのプラモデルが飾ってあった。
「此処は大作戦などに用いるために準備した司令室、と言ってますけど、私の趣味の部屋ですね。ちなみにライトノベルや漫画などもありますよ」
「なるほど、作戦のときには皆さんがここに集まって、戦術を論議するんですね」
「零→∞(ゼロ・トゥ・インフィニティ)という言葉には戦術を使いこなし、戦略を生かすことで零%にしか見えない勝利の確率を無限大に引き出す。そういう願いと思いがあるのですよ」
「ゼロを無限大に。きっとここから戦争終結の可能性が生まれてくるんでしょうね」
「私の所のアピールとしては少数精鋭でもいい。仲間のために戦える戦士を求む。そういうことですね。近々行われる大規模作戦でも部隊を編成する予定ですから興味ある人は一度来てください」

「皆さんいかがでしたでしょうか。気になる兵舎は見つかりましたか? 戦場で背中を預けられる仲間を、戦場から還ってくるための場所を。この番組で見つけられたら幸いです。それでは皆さん、また次の放送で! SeeYou!」