●リプレイ本文
●戦場へ向けて
「ばっくだ〜んばっくだ〜ん、な〜げま〜しょ〜♪」
「‥‥完全にノリノリね。皆さん本当にすみません‥‥」
「いえいえ〜。私もサイエンティストとして今回の事件は許せませんから〜」
背中に【ごんべさん】の如く爆弾を背負って歩いているリアナの後ろで、こっそり申し訳無さそうに謝っているマリーの姿があった。どこかのんびりした雰囲気の八尾師 命(
gb9785)だったが、マリーの謝りには全く気にした様子は無さそうである。
「‥‥何と言うか、とりあえず今背中に火でも放たれたら消し屑になってしまうぞ」
「そ〜だね〜。ま〜おねえさんが喜んでいるならいいんじゃないかな〜?」
そのまた後ろからゆっくり歩いているのはエリク・バルフォア(
gc6648)と、お決まりとなったカウボーイ姿のミティシア(
gc7179)である。まぁ確かに、今この状態で背中の爆弾が一つでも爆発しようものなら一般人のリアナなど一瞬で消し飛ぶかもしれないが‥‥そこはそっとしておくのが大人である(ぇ
「う〜ん、私はあ〜いう人好きだね〜。聖さんはそう思わない?」
「え、ええと‥‥まぁ怒ってる理由も分からなくは‥‥って、ちょっとどこ触ってるの!?」
にこにこと話しかけながらさりげなくお尻を触ろうとした弓亜 石榴(
ga0468)の腕を、顔を赤くしながらがしっと掴んだ聖・真琴(
ga1622)。今回が初参戦の彼女達、果たして無事に帰る事が出来るのだろうか‥‥
「え、ええと‥‥前の事はその‥‥気にしないで、ね‥‥?」
「‥‥分かっている。とにかく今は目の前の依頼に専念しろ」
そのまた後ろから歩いているのは、髪をかなりショートにし、色も赤にとかなりのイメチェンを施してきた刃霧零奈(
gc6291)だった。しかし‥‥どこかシン・サギヤ(
gb7742)に対する反応が余所余所しい。どうやら少し前に受けた【依頼】が原因らしいが‥‥こちらも今はそっとしておこう。
「‥‥ふぅ、とにかく早めに終わらせて帰れたらいいのだがな」
「そ、そうですね‥‥特に【無事に】帰る事が一番ですし‥‥」
かなり無愛想な雰囲気で呟きながら歩いているエリク・バルフォア(
gc6648)の横では、どこか冷や汗をかいている比良坂 和泉(
ga6549)の姿があった。どうやら彼も昔の【依頼】で何かトラウマが植えつけられてるようだったが‥‥こちらも(以下略)
そんな彼らの今回の目的は、要するにただの【リアナの憂さ晴らし】である。果たしてどうなることやら‥‥
●キメラとの戦い(前編)
「‥‥な、何だかいつもより楽しそうね‥‥」
「‥‥ええ、以前よりずっと生き生きしてるな‥‥っとリアナさん!! 前に出過ぎですよ!?」
かなり嬉しそうに背中のカゴからポイポイ爆弾を放り投げているリアナの横では、マリーが必死に耳を押さえてしゃがみ込んでいる。そんな彼女達をキメラ達の攻撃から必死に守っているのは比良坂であった。しゅるしゅると伸びてくる触手を短剣で切り払いながら、常に周囲を‥‥と、そこへ背後から触手が襲い掛かる!!
「う、うわあ〜〜!?」
「へへ〜んだ!! そう簡単には近寄らせないよ〜!!」
思わず覚悟を決めかけた比良坂の横からガトリングの掃射を放つミティシアの笑顔があった。しかしそんな彼女の服はすでにあちこち溶解液で穴が開いており、チェック柄の下着がちらちらと覗き込んでいる。
「‥‥ほ、ほらミティシアさん、俺のジャケット着ますか?」
「うん、ありがと〜♪ 今度はあっちを助けにいこ〜!!」
一瞬体が止まったものの、これで反応したら犯罪だと必死に堪えた比良坂。すぐに走り出すミティシアにあくまで紳士的に自分の着ていたジャケットを差し出す。どうやら前回のような事には‥‥今のところ大丈夫そうである。
「あ〜んもう、切りが無いよ〜!!」
「とにかく数を減らしますよ〜。囲まれたら酷いことになりそうです〜。」
銃撃を放つ弓亜を練成強化で支援しながら八尾師が声を上げる。時々寝そうになった弓亜を起こしたりしながら自身も超機械で援護攻撃を仕掛けていく。しかしなかなかキメラも数を減らす様子を見せなかった。
「こうなったら思い切って‥‥え〜い!!」
「よ〜し、そこを狙うよ〜!!」
何故か羽子板を振り回していた弓亜だったが(注:れっきとした武器です)、流石に業を煮やしたのか体ごと体当たりを仕掛ける。そして相手の体がよろめいた所を後ろから聖の爪が切り裂いて、ついに一匹のキメラが崩れ落ちた。
「ふ〜、何とか倒した‥‥ひゃう!?」
「え、ちょっと聖さんどう‥‥えぇ〜!?」
少し安心した所を狙われたのかついに触手に捕らわれてしまった二人。そしてぽ〜いと袋の中に放り込まれてしまう。
「うぅ〜、今の私だけではすぐに助けられそうにありません〜。とにかく助けを〜‥‥」
どうやらすぐに致命的な事にはならないと踏んだ八尾師は、ひとまず近くの仲間を呼びに一時撤退を図るのだった‥‥
「ウツボカズラなら胴体の袋の中を狙うのもいいな。リアナ!! 向こうを狙え!!」
「はい〜♪ そ〜れ〜♪」
上手く周囲を超機械で攻撃しながら、リアナの爆弾を効果的に活用出来るよう誘導しながら戦っているエリク。どうやら今のところは無事な様子だったが、その瞬間‥‥
「え、ちょっと‥‥誰か〜〜!!」
「く!! 間に合うか!?」
何とか身を屈めていたマリーの後ろから、そっと忍び寄っていた触手が撒きつこうとしてくる。しかしいち早くその気配に気付いたシンが、すぐさま自分の剣を振り下ろして切断。
「た、助かりました‥‥」
「気にするな。それより向こうで刃霧が‥‥」
「あ〜んもぅ!! これ以上溶けたら流石に恥ずかし〜よ〜!!」
シンが振り向いた方向には、溶解液を直接浴びてしまったのか最早役目を完全に失った服を纏った刃霧が走り回っていた。
「う〜!! と、とにかく今は気合‥‥ふにゃ〜‥‥」
恥ずかしさが体を鈍らせたのか、今度は息をまともに受けて一気に眠気が襲ってくる刃霧。そこを逃さずもう一匹のキメラがぽ〜いと袋の中に放り込む。
「ちぃ‥‥そこをどけ!!」
シンが前に立ち塞がったキメラを倒しに向かうが、果たして間に合うのか‥‥!?
●キメラとの戦い(後編)
「ちょ、ちょっと何よこの中‥‥身動きが、取れない!?」
放り込まれた袋の中で弓亜が必死になってもがいているのだが、内側のぬるぬるした溶解液+無数のひだが邪魔になっていつもの動きが出せない。
「こ、この程度で私がどうにかなるとでも‥‥は、離してよ‥‥ぅん!!」
溶解液の中に放り込まれているのだから当然と言えば当然だが、完全に生まれたままの姿になってしまっていた。
そして弓亜の見事なツインスイカを包み込むようにひだが動き回ると、思わず口から熱い息が漏れてしまう‥‥
「わ、私までこんな目に合うなんて‥‥聞いてないよぉ〜‥‥」
またすぐ近くのキメラ内では聖が同じように服を溶かされてキメラの餌食となっていた。
他人がこういう目にあっていたら写真を取るつもりであったが、自身が被害にあった時の事は想定していなかったようだ。
「い、いやだよ‥‥それ以上私の中に潜り込まないで‥‥いやぁぁ‥‥」
(どうしたの‥‥何だか、感覚が‥‥熱い‥‥)
意識が朦朧としてきたのか、段々思考が麻痺していく聖。
先ほどまで必死にもがいていたはずの腕や足から徐々に力が抜けていき、段々その未知の感覚に身を任せ‥‥
「すみません〜!! 少しこちらを手伝ってもらえますか〜!?」
「は、はい!! 今行きます!!」
いつもの温和な雰囲気の八尾師が、珍しく慌てたようにぱたぱたと比良坂の元へ走ってくる。その様子からただ事ではないと感じ取りキメラたちの場所まで走ってきた彼らの前には、明らかに人一人分大きくなったウツボキメラが2匹いた。
「この〜!! 中の人を離せ〜!!」
「二人なら負けませんよ〜? 二人を返してもらいます〜」
比良坂の剣戟と八尾師の超機械がそれぞれのキメラを打ち据え、ぐったりと倒れこんだキメラの口部分がぽっかりと開いている。
「私はこっちを助けますから〜、比良坂さんはそっちを〜」
「は、はい!! 大丈夫ですか!? もう安心し(ぶしゃ〜〜!!)」
比良坂の言葉を最後まで言わせる事無く戦闘不能に陥れたのは、ひとえに弓亜のツインスイカだったのは言うまでも無いだろう‥‥合掌。
「は、離してよ〜‥‥やだ、もう手足が痺れてきて‥‥」
そしてここにも放り込まれた能力者が一人‥‥刃霧も先の二人と同じく生まれたままの姿で溶解液の中をもがいていた。中に放り込まれる前に睡眠系の息を吐かれた影響からか、さっきの二人よりも暴れる力が鈍い。
「‥‥だ、ダメ‥‥そんな‥‥く、口の中にまでなんて‥‥」
そして、そろそろと伸びてくる内の一本が刃霧の口内へ侵入する。確実に獲物を消化するべく対象の動きを捕らえようとするひだの動きには容赦が無い。
「むぐ‥‥っ!! ぅ‥‥んぐぐ〜!!」
何とか払おうと刃霧は頭だけでも動かそうとするが、溶解液の粘液も邪魔して上手く動かす事が出来ないまま時間だけが過ぎていく‥‥
「ふ、ふふふ‥‥俺をここまでコケにするとはいい度胸だな‥‥全て殲滅してやろう!!」
「‥‥シン、僕は今の君が一番怖い‥‥」
覚醒状態で縦横無尽にキメラを屠っていくその姿は、クールなエリクをもってしても畏怖を感じさせるものであった。性格が変わったように剣を振り回しながら突撃していく攻撃に、さしものキメラも次々と倒れていく。
「よし‥‥あいつがターゲットか‥‥!!」
もちろんエリクも黙って見ていない。目標を見つけた瞬間に超機械を打ち込み、電磁波で動きを鈍らせた瞬間にシンの一撃が袋を見事に切り裂いてキメラを屠った。
「ふふふ‥‥さて、次の相手はどいつだ‥‥まとめて相手に‥‥」
最後まで言い終わる事無くシンがぱたっと倒れこんだのは練力が切れたせいか‥‥はたまた目の前に突然現れたツインメロンに圧倒されたのか‥‥
「ちょっとちょっと!! もうそろそろ良いんじゃないの!? あんたはどうか知らないけど、皆がもう限界よ!!」
「はい〜、そうですわね〜‥‥では最後の爆弾をぜ〜んぶ投げちゃいましょう♪」
【ちゅどどど〜〜〜〜ん!!!】
「うわ〜、おねえさんまだそんなに残ってたんだ〜〜!! すっご〜い!!」
「‥‥ホント、色々な意味で凄いわ‥‥」
まるで花火の如く周囲に撒かれた爆弾を見て、最後まで横で護衛として残っていたミティシアもきゃいきゃい喜んでいる。‥‥もちろんマリーは呆れる以外に無かったが。
「それじゃ〜そろそろかえろ〜よ〜。あたしも疲れちゃった〜‥‥」
「はい〜、それでは皆さんに連絡を送りませんと〜♪」
「は〜‥‥やっと帰れるのね‥‥」
もうこれ以上ここに残っていてもジリ貧だと判断したマリーは、皆に撤退の連絡を送るべく無線機を手に取るのだった‥‥
●戦いの後のひと時
「は〜、ホントひどい目にあったわ‥‥全部、あんたのせいだからね‥‥」
「うふふ〜、マリーったらそんな顔をしないで下さいな〜♪ せっかくですし背中でも流しますわよ〜?」
どこかつやつやした顔をしながらざばっと湯から上がるリアナに、深々とため息を吐きながらマリーも一緒に立ち上がる。その様子を近くで見ていた刃霧が、ひょこっと首を傾げる。
「あれ〜? もしかしてマリーさんも意外と‥‥大きい?」
「ちょ、ちょっとどこ見てるのよ!? そ、それに刃霧さんに言われたく無いわよ!!」
「むふふ〜、やっぱりここは女同士‥‥しっかり確かめないとね〜♪」
「ば、バカ!! いきなりどこを触ってるの‥‥ぅん!!」
「あらあら、マリーの顔がとっても可愛くなっていますわね〜♪」
「‥‥やっぱり負けてるよ‥‥私」
「うふふ〜、な〜におちこんでいるの、よ!!」
「ひゃう!?」
リアナやマリー達のある一部分を見てとぽんと湯に顔を沈めた聖の背後から、突然現れるように飛び掛ってきた弓亜がぐにゅ〜っと胸を背中に押し付ける。リアナがたぷたぷした水風船のような感覚とするなら、弓亜のはふわふわしたマシュマロといった感じだろうか‥‥(どんな違いかは秘密である)。
「ちょ、ちょっといきなりビックリしたよ〜!?」
「にひひ‥‥リアナさん達も洗いっこしてるんだし、私もしてあげる、ね♪」
「だ、だからそんな湯船の中でごそごそされても‥‥ぁん‥‥」
何やら少し危ない雰囲気が漂っている光景から少し離れた場所では、にこにこと身体を洗っているミティシアと八尾師がいた。
「ふふ〜、色々ありましたが無事に戻れましたね〜」
「そ〜だね〜。‥‥それに〜、今回はすけべ魔人居ないから安心だし♪」
「え〜と、すけべまじん‥‥ですか?」
不思議そうに首を傾げている八尾師だったが、とりあえず今の自分には関係無いとすっと立ち上がる。
「あれ〜、もう洗っちゃったの〜?」
「はい〜。ミティシアさんはゆっくり洗っていて下さいね〜?」
「待って待って〜!! もう今からそっちに‥‥うわ〜〜!?」
一人はイヤだとばかりに慌てて湯を身体に被って立ち上がるミティシア‥‥しかし、完全に流しきれなかったのか足の裏の石鹸がまだ残ったままであった。しかし気にせず走り出そうとした、その時‥‥
「うぅぅ、うぼあぁぁぁ‥‥」
「‥‥君はどこかの皇帝か?」
入浴中に思いっきり雄たけびを上げている比良坂の横では、静かにエリクが湯の中で佇んでいた。少し離れた場所ではシンもぼ〜っと浸かっており、男湯では静かな時間が流れていた。
「ぁぁ‥‥何だかこういう雰囲気って癒されますね〜」
「‥‥ああ。こういう依頼の後のこの時間は大抵ハプニングがあるものだが‥‥」
「‥‥? 君たちはこういう依頼の後はいつも何かあったのか?」
「え、ええ‥‥僕も以前は‥‥」
何かを思い出したのか、突然顔を赤くして湯の中に顔を沈めた比良坂を不思議そうに見つめていたエリクだったが、とりあえず息を抜こうとした‥‥と、その時ふとシンが湯から立ち上がる。
「どうしたんだ? 上がるには少し早い気もするが‥‥」
「‥‥気にするな。俺は基本的に早上がりだ」
少し不思議そうにその様子を見ていたエリク。しかし特に変には思わなかったのか、また湯の中で深く目を閉じる。そしてシンがその場を離れたその瞬間‥‥
【バッタ〜〜ン!!】
「‥‥‥‥?」
「え、ええと‥‥もしかして、このパターンは‥‥」
今までは向こう側に倒れたり穴が開いたりする事が基本的だった仕切り壁。それが‥‥向こう側からこっちに向かって倒れこんできた。もちろん湯気の向こうから現れるのは、スイカやメロン・りんご等の大果実祭りである。しかもある程度のメンバーは甘い雰囲気を出しており‥‥
「‥‥なるほど、これが【何か】、か」
「‥‥‥‥(ぶしゃ〜〜〜!!)」
「‥‥あれあれ〜? 今度はあたしが原因なの〜?」