タイトル:私の大事なお薬‥‥5マスター:優すけ

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/06/21 06:46

●オープニング本文


「え? あんたお酒も造れるの‥‥?」
「はい〜。まあこういう店ですから依頼されない限り造りませんけどね〜」
 今日はマリーの仕事が休みで朝からリアナの店に入り浸っていたのだが、ふとした雑談の中でお酒に関する話題が出たのである。お互いに成人しているので一緒に飲む事もあったのだが、リアナがお酒を造れると聞いたのは今回が初めてだった。
「へ〜、てっきりあんたって怪しげな薬しか作らないものだとばかり思っていたわ」
「‥‥マリー? 私の作る薬は決して怪しくなんかありませんわよ〜?」
「‥‥‥気付いていないのは致命傷ね」
 リアナの拗ねた様な抗議の視線から目を逸らしつつ、マリーがもう一度その話題に触れてみた。
「‥‥まあとにかく、そういうのって結構難しいんじゃないの?」
「そうですわね‥‥材料と時間さえあれば意外と簡単ですわよ。それにこの店の地下室にはお酒の安置に適した空調設備もありますし‥‥」

 

     【カランカラ〜ン】



 にこにこと話を続けるリアナだったが、その時非常に珍しく店のドアがマリー以外の手によって開かれた。入ってきたのは大体30代前半と見られる、こざっぱりした雰囲気の男性であった。
「あら〜、いらっしゃいませ〜♪ 何かご入用ですか〜?」
「あ〜、すまない。表の看板を見て話を聞きに来たのだが‥‥ここはお酒みたいなものも造れるのかな?」
「はい〜、一応お作り致しますけど‥‥お酒屋さんではダメなのですか〜?」
「‥‥何? この測ったようなタイミングでの来客‥‥」
 マリーが思わずガクッと肩を落としていた間に、ドアの傍から近寄ってきた男性がカウンターの前に座る。
「ああ。今度ある女性とデートする予定なのだが、その女性は無類の酒好きでね‥‥」
 男性の言う事はこうである。その女性は昔からの酒好きで、店に売られているような物はほぼ飲み尽くしており、男性も毎回苦労しているのだった。しかし今度の休みがその女性の誕生日なので、それに合わせて珍しい酒をプレゼントしたい‥‥ということなのだが‥‥
「しかしこの周辺はどこも彼女のテリトリーみたいなものでね。下手に自分が動き回るとすぐにばれてしまう‥‥そこでここの看板を見つけたのだ」
「はい〜、とにかく用件は伺いましたわ。お酒の種類等はご希望がありますか〜?」
「そうだな、ここは赤ワインでお願いしようか‥‥重ねて言っておくが、【珍しく】【貴重】な酒を頼む。それでは‥‥」





 そうして入って来た時と同じように男性が出て行った後、じっと黙って様子を見ていたマリーが思わずリアナに詰め寄った。
「あんた、ホントに大丈夫なんでしょうね‥‥? ただでさえお酒に厳しい人らしいのに、そんな人が納得するようなワインだなんて‥‥」
「ふふふ、別に高級ワインを造る必要なんてありませんもの。あくまで【珍しければ】いいんですわよね♪」
「‥‥で、今度はどこに採取しに行くのかしら‥‥」
 もうこういう展開は慣れてしまったマリー。にこにことスケジュールを考え始めるリアナの横顔を見ながら、また軽くため息をつくのであった‥‥

●参加者一覧

比良坂 和泉(ga6549
20歳・♂・GD
小笠原 恋(gb4844
23歳・♀・EP
柳凪 蓮夢(gb8883
21歳・♂・EP
八尾師 命(gb9785
18歳・♀・ER
蒼 零奈(gc6291
19歳・♀・PN
常木 明(gc6409
21歳・♀・JG
エリク・バルフォア(gc6648
18歳・♂・ER
ミティシア(gc7179
11歳・♀・HD

●リプレイ本文

●高原へ向かう能力者達
「それにしても、リアナさんって何でも作れるんだね〜。お料理も研究のうち?」
「そうですわね〜、物質が別のものに変換する・・・という意味なら確かにそうかもしれませんわ〜」
「あんたの【お料理】って言うのは【実験】の延長だからね・・・お願いだから薬を作ったビーカーでお湯を沸かさないで頂戴‥‥」
 高原へ向かう能力者達。その中、にこにこと刃霧零奈(gc6291)とリアナが会話している横で、こっそり呟いているマリーの姿があった。今日の刃霧の姿は、いわゆる【忍び】の姿である。言い伝えによると【影に忍びながら任務を遂行】する職種らしいが‥‥はちきれんばかりに主張しているツインメロン・むっちりとした太ももに張り付いた網タイツ・そして鮮やかな色の組み合わせは、戦国時代だと間違いなく【忍び】の役目を果たす事は不可能であろう(捕まってごにょごにょ‥‥なら話は別だが)。


「平常心、平常心‥‥今度こそ見事に依頼を果たして‥‥」
「あら、比良坂さんどうかなさいましたか? 何だかお顔の色があまりよくありませんけど‥‥」
 何やら俯きながらぶつぶつ呟いている比良坂 和泉(ga6549)に対して少し心配そうに声をかけているのは、何故か頭に【鍋】を被って歩いている見目麗しき女性・小笠原 恋(gb4844)である。何やら深いトラウマに悩んでいる彼に声をかけている姿は、まさに現代に降りた聖母‥‥といった光景なのだが、頭の【鍋】が色々と台無しにしているのは秘密である(秘密?)


「ふむ、彼女が最近噂になっている子か。‥‥見た目は普通そうに見えるが」
「ま、まあ見た目は普通なんだけど‥‥蓮夢さんもきっと知ると思うよ、リアナさんの【特性】」
 どこかの依頼で負った傷を押してまで参加した【武者姿】の柳凪 蓮夢(gb8883)だが、リアナの依頼は初参加である。横を歩いている顔見知り・常木 明(gc6409)は、少しとろんとした目で彼に話しかけていた。刃霧がツインメロンなら彼女はツインスイカ(意味不明)を装着しているだけに、色々といじられてしまうのは天命と思ってもらうほか無い(ぇ


「採取の間はおそらく何も起こらん‥‥問題はその後だ」
「あら〜、何か思い悩む事でもありますか〜?」
 小さく呟いているのは、前回から続けて参加しているエリク・バルフォア(gc6648)であった。常に冷静沈着な彼であるが、前回の最後は衝撃的な結末を迎えており(?)リアナに対する警戒はマックスであった。そして、彼の様子をほんわか見つめている八尾師 命(gb9785)はその被害者である。どんな被害にあったかは、報告書を参照(ぁ
「今度は葡萄〜♪ も一つ武道〜♪ といや〜、といや〜♪」
 そして、その後ろでにぎやかに自作の歌を歌いながら歩いている元気一杯のおこちゃま(犯人)がミティシア(gc7179)である。その無邪気な行動から引き起こす天災はかつての少年を彷彿とさせるが‥‥あくまで彼女は無邪気なだけであり、その行動に意味は無いものだと‥‥信じたい。

 そんな彼らが向かう先は、たくさんのブドウとキメラが待ち構えている高原。さて、作戦開始である‥‥




●たっくさんぶどうを取りましょう〜♪
「お〜い!! そっちはだいじょ〜ぶなの〜!?」
「はい〜。今のところキメラさんでは無さそうですわ〜」
 手元に図鑑のコピーを持って周囲を見回している刃霧の声を受けて、同じく木に近づいて確認を取っていた八尾師が答えを返す。ただでさえ似たような木がたくさんあるのに、まずキメラかどうか・そして【フッサフッサブドウ】か【モウロウブドウ】なのかと二重の判定が待っており、皆の行動は慎重だ。今も向こうでミティシアが慎重そうに‥‥
「うわ〜、何だかお〜いしそ〜!! 早速食べちゃおうかな〜♪」
 ‥‥迷いも無く木に近づいている。どこか【モウロウブドウ】の方を食べたがっているようにも見えるが、あくまで気のせいであろう。
「ね〜ね〜、これって余ったら食べちゃっていいの〜?」
「そうですね、私も少し興味があります。これなんか熟れていてとっても美味しそうですし♪」
 そんな彼女の近くで花粉対策にマスクをつけ、(何度も言うが頭には鍋を被った)小笠原がにこにこと微笑んでいる。あくまで穏やかな表情ながら警戒は欠かさない、その姿は‥‥やはり怪しさ抜群である。
「さて、動かないでくださいよ〜‥‥ふぅ、どうやら大丈夫そうですね」
「この木は丸、か。さて、リアナ。この木は食べられるブドウなの、か‥‥?」
 ぺたっと幹に紙を貼り付けたエリクが、横のリアナに声をかける。このように二重のチェックが必要なだけに、一般人のリアナは優先的に保護されて‥‥
「あらあら〜、こっちの木は面白い形をしていますわ〜♪ 何だか幹と枝が‥‥」
「ちょ、ちょっと勝手に近づいたりしちゃ危ないわよ!?」
「は〜い、分かりましたわ〜‥‥」
 ‥‥ほんの少し目を離せばきょろきょろと周囲を歩いて行くリアナを引き止めるのは、やはりマリーの役目になってしまっている。八尾師やエリクが木に貼り付けた紙を目印にブドウの判定をするのが彼女の役目なのだが‥‥やはり性格は直らないものか。
「え〜と、このブドウは‥‥大丈夫ですわね♪ それでは採取していきましょ〜♪」
「ふむ、それでは私が近くで護衛をしておきますか。下手に動くと危ないのは私も同じですしね」
 リアナの傍で周囲を警戒し始めた柳凪。普段どおりの力が発揮できていないだけに、前衛は他の人に任せて自分は護衛にまわろうと決めたようだった。そんな中、少し離れた場所で‥‥



「‥‥もしかしてこの木は‥‥零奈ちゃん、比良坂さんを呼んできてくれる?」
「あ、分かったよ〜。‥‥少し待っててね?」
 じっとある木を注目していた常木が、刃霧にこっそり声をかけた。どうやら何かを感じ取ったらしく、息を潜めながら持っていた武器を構える。今回のキメラは【人面樹】、つまり気付かれなければただの的にしかならないのであった。
「ど、どうしましたか‥‥って、もしかしてこの木が‥‥?」
「そうみたいだね〜。さて、それじゃあ早速‥‥!!」
 キメラとあれば容赦しないのが能力者の心得。瞬時に覚醒した常木の刀がキメラの大きな枝部分を切り落とし、そこを続くように比良坂の斧が唸りを上げて反対側の枝を叩き落す。
「俺だっていつまでも悪い所ばかり見せるわけにはいきませんからね‥‥覚悟!!」
 何やら悲壮な覚悟を見せている(?) 比良坂の気迫はかなりのもので、見た目にそぐわずパワー攻撃を仕掛けていって、キメラを脅えさせている。しかしキメラもただやられるわけにはいかないとばかりに、わさわさと木を揺らし始め、花粉を撒き散らし始めた。たちまち周囲は黄色の花粉で立ち込めていき、視界まで悪くなっていく。
「わ、ウザッ!!」
「このままじゃリアナさん達まで被害が‥‥ひとまず向こうに知らせて‥‥あれれ?」
 慌ててマスクをつける常木と、狐のお面をかぶる刃霧‥‥というか、こんな可愛いお面で防げるようなやわな花粉などキメラは飛ばしてこない。かくっと力が抜けたように膝を突いてしまう刃霧を見た比良坂が、一瞬で彼女の護衛に入る。
「大丈夫ですか!? お気を確かに!!」
「か、体が痺れちゃって‥‥ちょっと休ませてもらう、ね‥‥」
「はい、今は休んで‥‥ってえぇ!?」
 刃霧を後ろにして立った比良坂だが、その一瞬後に硬直する事となる。ふわっと甘い香りがしたかと思うと、柔らかく背後から抱きしめられる格好で動きを止められた。ぐにゅっと背中で潰れたメロンは弾力があり、間近で漂う香りは彼を篭絡させていく‥‥混乱しているとはいえ、その姿は見事な【くの一】を彷彿とさせた。そしてもちろんその結果は‥‥
「‥‥死してなお、悔い無し‥‥(ぶしゃ〜〜〜!!)」
 こうして戦闘要員が一人となった常木。キュアをかけようにも枝の攻撃が激しく、思うように行動が取れない。そして息がきれそうになったその瞬間‥‥少し離れた場所から光線が放たれ、近寄ってきた枝を焼き尽くす。
「おおっと〜、こっちには近づかせませんよ〜?」
「やれやれ‥‥そう易々とはやらせんよ。‥‥そして、きみは何故死んでいる?」
「で、ですからまだ死んで‥‥がく」
 どうやら気配を感じ取ったのか、他の場所で採取をしていた八尾師やエリクが走りこんできた。すぐにキュアをかけるため刃霧に近寄ったエリクだが‥‥血の海に沈んでいる比良坂を見て少し首を傾げている。
「とにかく今はこれを倒しちゃいましょ〜か。私が援護しますね〜」
「うん、お願いね‥‥それじゃ、そろそろおねんねの時間だよ!!」
 もうかなり弱ったキメラ。後はトドメを刺すだけとなった敵に、八尾師の援護を受けながら常木が桜花の幻影を舞い散らせながら切り込んでいく。そして見事にキメラを両断したのであった‥‥。




●試飲、そして‥‥
 無事にカゴ一杯にブドウを採取できたリアナ。そこで、早速少し離れた場所で簡易ワイン作成装置(リアナ作)を使って製造を開始した。この装置は【不思議な】効果により、都合よくすぐにワインを製造できるのだ!! ‥‥決して手抜きにあらず(ぇ
「それで、こっちがワインでこっちがジュースで‥‥」
「あ、そっちは【モウロウワイン】ですから注意して下さいね〜?」
「‥‥あんた、何作ってるのよ‥‥」
 がくっと項垂れているマリーだが、このまま混ぜてしまっては少し危ない。だから【少し離れた場所に分かるように】そのビンを置いた。その傍でニコニコと柳凪がブドウジュースを飲みながら様子を眺めている。
「へぇ、上手いもんだね‥‥相方になる子は幸せ者だ」
「ちょ、ちょちょちょっと誰が幸せになるっていうのよ!? べ、別にリアナがどうこうじゃなくってその‥‥!!」
「い、いや別にマリーの事を言ったわけじゃないんだけど‥‥」
 やけに慌てて【ガチャガチャと】ビンを揃えているマリーだが、その顔は妙に赤い。しかし、それよりもっと重要な事が‥‥(ぇ



「モグ、モグ‥‥モウロウブドウもなかなか美味しいですね‥‥」
「‥‥何だか普通に食べているが、大丈夫なのか」
 全く警戒する様子も無くパクパク【モウロウブドウ】を食べている小笠原を、エリクが無表情に眺めている。自身に掛かった朦朧状態を自分で治しながら食べている様子だが、あくまで完全に治せるわけでは無い。そして徐々に効果が溜まっていき、そして‥‥
「あ〜、エリクさ〜ん!! こっちこっち〜!! お〜いし〜出来立てジュースがあるよ〜!!」
「む、そうか‥‥では早速行こう」
 少し離れた場所からちょいちょいとミティシアが手招きをしているのを見て、これ幸いと立ち上がるエリク。そして一人残った小笠原は、ひょっこり首を傾げた後【近くにあった】ワインを取ってくぴくぴと飲み始めるのであった。



「暑‥‥ちょっと汗が流れちゃったかな?」
「う、うぅ‥‥まだだ、まだ倒れるわけには‥‥」
 早速完成したてのワインを飲んでいた常木が、ジャケットを脱いで胸元のシャツをぱたぱたさせている。ほんの少し赤くなったツインスイカの間につつ〜っと流れる一筋の汗‥‥そして漂う空気に対して必死に目を逸らしつつ自身の防衛を図っている比良坂。何とか30分ほど前に復活した彼だが、今また生命の危機に晒されているようだった‥‥
「リアナさんも普通の物を作れるんだね〜。少し意外と思わない?」
「え、ええ‥‥そうですね。そ、それじゃあ僕は少しリアナさんの所へ様子を見に‥‥」
「あ〜!! いたいた〜〜!! 二人ともここにいたんだ〜!!」
 このままではまた流血の花を咲かせてしまう、そう感じた比良坂がすっと立ち上がるのを遮る様にミティシアの声が響いてきた。
「ほらほら〜、出来立て【ワイン】だよ〜。ここに置いてくね〜?」
「あ、それは嬉しいな〜。ほら比良坂さんも座って座って♪」
「う‥‥は、はい‥‥」


「やっぱり美味しいブドウですね〜。 この【ジュース】も美味しいです♪」
「ホントだね〜。後で柳凪さんにも持っていってあげよ♪」
 辺りにたくさんのビンが転がっている(途中からミティシアが持ってきた)中、にこにこと食べて飲んでいるのは八尾師と刃霧である。お互い、話がやけに弾んでいるようだったが‥‥顔が若干赤くなっている。その異変に真っ先に気付いたのは八尾師であった。少し(かなり?)鈍くなった頭を何とか働かせながら考え込む。
「あ、あれ‥‥まさかと思うのですが、もしかして違う種類のブドウが入っていたり‥‥」
「気にしな〜い、気にしな〜い♪ ほらほら〜、もっと食べよう〜♪」
「は、はい〜‥‥何でしょう、頭がぼんやり‥‥」



 そして、それから1時間が経過‥‥


「ね〜、ちょっとあちきの話聞いてる〜? ちゃんとこっちを見なさいよ〜」
「も、もちろん聞いていますから、その格好で近づくのは止めて‥‥」
「ふにゃふにゃ〜♪ こっちにたのしそ〜な気配がします〜♪」
 妙に【朦朧とした】雰囲気で近寄るツインスイカ(薄手のシャツバージョン)から必死になって後ずさっている比良坂の背後から、ふにゃっともたれ掛かって来たのは、顔がぼ〜っと赤くなった小笠原であった。腰まで届くような黒髪からは、ほんのりシャンプーの香りが漂って来て比良坂の精神と体を侵していく。そして耳元でそっと息を吹きかけられ、前のツインスイカが目の前に【ドン】とばかりに接近した瞬間‥‥
「‥‥‥(ぶしゃ〜〜〜!!)」
 後で、必死に二人に謝る比良坂の姿があった‥‥合掌。



「さて、私もこっちで一杯楽しむかな‥‥」
「あ〜、柳凪さんだ〜‥‥一緒に食べよ〜?」
「私も〜‥‥少し一緒に飲みたいですね〜♪」
 すっとシートに腰を下ろした柳凪に近づいてきたのは、またもやぼんやりとした刃霧と八尾師の姿であった。かなり【朦朧とした】雰囲気の二人がゆっくりと迫ってくる姿を見ていた柳凪は、そっと優しくその空気を受け流そうと‥‥
「あ、あれ‥‥? 二人揃ってどうして体を押さえつけるのかな?」
「ど〜しよ〜、何だか色々と【暑い】ね?」
「そ〜ですね〜、ですから【脱ぎ脱ぎ】しましょ〜」
「え、え〜と、分かってると思うけど私は怪我人で体調もあまり‥‥あ〜〜〜!!」



「‥‥ここまで計算していた、というのか」
「え〜? 別にそんな事思ってないよ〜?」
 唯一難を逃れたエリクが、ニコニコとジュースを飲みながら様子を眺めているミティシアを少し汗を流しながら見ていた。見事なまでに計算された皆の動き、まさかこんな小さな子が無意識のうちに成し遂げるとは‥‥
「ごくごく‥‥美味しいね〜。‥‥あれれ? 何だか頭がふにゃふにゃ〜って‥‥」
「‥‥ふぅ、まだ詰めが甘いと見るべきか」
 やはり、無意識だったのだろうか。



「あらら〜? どうして皆さんがこんな状況に〜?」
「さ、さぁ〜? 本当にどうしてでしょうね〜?」